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Column

はじめてのJAIRO Cloud:個別か一括か それが問題だ。

JPCOAR広報・普及作業部会

26/5/15

とある大学図書館を舞台に、はじめてリポジトリ業務を担当する後輩さんと、それなりに経験を積んできた先輩さんが、アイテムを登録しようとしています。

二人と一緒に、JAIRO Cloudにアイテムを登録するときの、個別登録と一括登録の違いについて、概要を確認してみましょう。



|登場人物|


後輩さん




他の図書館業務も行いつつ、リポジトリ業務も担当しはじめました。JAIRO Cloudにはまだ慣れていないので心配です。会ってみたい図書館(美術館)猫はエルミタージュの猫。



先輩さん




大学図書館でのお仕事もリポジトリ担当としてもそれなりに経験を積んできました。JAIRO Cloudは頑張って勉強中です。好きなAIはTARSとCASE。




1. 機関リポジトリ運用の重要性


後輩さん




今日から紀要のアイテム登録を任されたんですけど、これってどういう意味があるんでしょう? JAIRO Cloudも初めてだし正直、ちょっと不安です……。



先輩さん




機関リポジトリの運用は、大学の『知』を世界へ可視化するための、重要で戦略的な仕事なんですよ。




後輩さん




戦略的、ですか? 大げさじゃありません?



先輩さん




全然。JAIRO Cloudに登録されたメタデータは、IRDB(学術機関リポジトリデータベース)やCiNii Researchへと繋がっていろいろな場所で公開されていくんです。リポジトリ業務は単に登録するというだけでなくて、大学の『デジタルの顔』として世界中の研究者に公開され、研究成果の国際的評価にもつながる業務なんですよ。もし登録手法を間違えたり、入力が不正確だったりすれば、検索にヒットしない『見えないデータ』になってしまいます。




後輩さん




大事な業務なんですね。……急に責任の重さを感じてきました。




先輩さん




不安にならなくても大丈夫。まずは、JAIRO Cloudでのアイテム登録作業にどのような選択肢があるのか整理してみましょう。




2. 個別登録と一括登録(インポート)の違い


先輩さん




JAIRO Cloudのアイテム登録には、画面上でシステムと対話しながら進めるアイテム個別登録と、データを一括で流し込むアイテム一括登録があるんです。それぞれの違いを理解することが、効率的な運用の第一歩ですよ。



登録手法の比較表

評価項目

アイテム個別登録

アイテム一括登録(インポート)

推奨ケース

  • まだJAIRO Cloudに慣れていないとき

  • 学術雑誌論文など1件ずつメタデータの内容が違うとき

  • JAIRO Cloudに慣れてきたら

  • 紀要1号まるごとや博士論文などメタデータに共通する内容が多いとき

メリット

  • 初心者でも直感的な操作ができる

  • 入力内容をすぐに確認できる

  • 外部データベースからメタデータの自動取り込みができる

  • 大量データの一括処理ができる

  • Excel上でメタデータ作成ができるので似たようなデータをたくさん作りやすい

デメリット

  • 1件ずつ作業するので時間がかかる

  • 文字化けやサーバーエラーが起きることがある

  • 一括登録用テキストファイルの作成に慣れが必要

制約や留意点

  • ブラウザで「戻る」ボタンを押すと登録完了しない

  • 同じユーザIDで複数の担当者が同時に作業ができない

  • 同じアイテムを複数の担当者が同時に編集できない

  • 推奨件数は〜300件程度(サーバー環境のため)

  • 一度にアップロードできる上限は20GBまで



後輩さん




個別登録と一括登録の違いがわかってきました。



先輩さん




いいですね。メリットとデメリットを理解して、やりやすい方法を使っていきましょう。



3. 失敗しないメタデータ準備:外部データベースとの連携のために


先輩さん




次はメタデータ登録の上で注意することを確認しましょう。登録したデータが外部のデータベースに正しく拾われる(ハーベストされる)ためには、とても重要です。間違えると、IRDBでハーベストエラーが起きたり、検索結果に表示されなくなったりするんです。せっかく登録したのに、流通しなければ成果として見つけてもらえないですから、もったいないですよね。




後輩さん




それは避けたいです! 特に注意すべき項目はどこですか?



先輩さん




必須項目をちゃんといれることとJPCOARスキーマを守ることが特に大事ですね。




後輩さん




JPCOARスキーマというと、リポジトリでメタデータを登録するためのルールブックのようなものですか?



先輩さん




その通りです。JPCOARスキーマガイドラインを参照して入力していきましょう。気を付けた方がいいところをまずは4つ上げますね。

  • 識別子の入力

    • CiNii Researchに連携する際、同じデータか、連携できるデータはあるか、などはそれぞれ固有のID(識別子)を元に行われます。

    • このため作成者や所属、出版社版の論文などを一意に表すことができる識別子がわかる場合は、積極的に入力します。

  • メタデータ要素の追加

    • JAIRO Cloudのアイテム個別登録では、メタデータの要素を追加するときに「+New」をクリックします。どの要素(階層)に追加するのかを間違えないように注意しましょう。

    • 親要素の「+New」はその要素のメタデータ項目を増やすときに使います。例えば、複数の著者がいて2人目の著者を入力したい場合は、親要素になる作成者の「+New」をクリックします。

    • 子要素の「+New」はその要素の中に新しいメタデータの値を入れたいときに使います。例えば、同じ著者の氏名を日本語と英語の両方で登録したい場合は、同じ作成者の枠内にある「+New」をクリックします。

    • これは、JAIRO Cloudの操作と正しくメタデータを入れるという両方の点で気を付けたいですね。

  • 収録物識別子

    • JAIRO Cloudでは、収録物の識別子にPISSN(冊子版)またはEISSN(電子版)の利用が推奨されています。ISSNは非推奨で、冊子版か電子版かがわからない際に使用します。JPCOARスキーマに則ったメタデータを作るうえで留意しましょう。

  • 巻・号の入力ルール(階層の読み替え)

    • JPCOARスキーマでは、号(issue)または通号のみを持つ場合は、巻(volume)の階層に記入することになっています。これは、書誌情報の階層構造において、上位階層(巻)が空欄のまま下位階層(号)だけに数値が入っていると、データの構造が不完全であるとみなされて、外部のデータベース等で書誌情報が正しく表示されないことがあるからです。

    • そこで、資料に号しかない場合でも、メタデータを入力するときは巻の項目に号の数字を入力します。(例:第1巻第8号の場合は、巻に「1」、号に「8」を入力する。第15号 の場合は、巻に「15」を入力、号は空欄とする)

    • これはJPCOARスキーマの特徴のひとつです。ガイドラインに倣って登録するよう留意しましょう。



後輩さん





なるほど、必須項目をきちんと入れること、JPCOARスキーマに沿って入力することは基本的に思えますけれど大事ですね。識別子はデータを連携して世界に届けるためのものですよね。はじめに説明された、リポジトリ業務の重要性とつながってきました。



先輩さん



そう思ってくれて嬉しいです。では作業に取り掛かりましょう。




4. 個別登録と一括登録、それぞれの注意点



後輩さん




作業を始める前に、気をつけるべきことを教えてください。



先輩さん




まずは個別登録です。基本的な操作なのですが、次の3つは気を付けましょう。

  • ブラウザの「戻る」ボタンを使わない

    • 個別登録の操作中に、Webブラウザの「戻る」ボタンで前のページに戻るのはやめましょう。これをすると、ページ未検出エラーが出るなど、処理が不安定になってしまいます。

    • 前の操作に戻って修正したいときは、WebブラウザではなくJAIRO Cloudのシステム内の「戻る」を使ってください。

  • 同時に複数のタブを開いて作業しない

    • 同じブラウザ内で複数のタブを開き、同時にアイテムの登録や管理画面の操作を行うのはやめましょう。これをすると、ページ未検出エラーや操作のロックなど、思わぬ不具合が出ます。

  • 承認(Approval)ステップを忘れない

    • 編集内容は保存しただけでは公開されません。「図書館員」の権限を持つユーザーで承認(Approval)して初めて、リポジトリに反映されますので、忘れないようにしましょう。




後輩さん




ついつい癖で戻るボタンを押しちゃいそうです。気をつけます。一括登録の方はどうですか?



先輩さん




一括登録(インポート)は、データの構造がとても重要です。次の2つは特に覚えておいてください。

  • 文字コードと改行コードに注意する

    • 一括登録するときは、メタデータをタブ区切りのTSV形式で保存する必要があります。

    • このTSVファイルでは、文字コードは「UTF-8(BOM付き)」、改行コードは「LF」で保存します。メタデータの編集後、必ずテキストエディタ(たとえばWindowsのメモ帳など)でファイルを開き、文字コードと改行コードを確認しましょう

    • Excelは便利なのですが、 日本語版Excelの文字コードのデフォルト保存形式はShift_JISです。Excelで保存するとせっかくUTF-8で作ったファイルのコードが置き換えられて、文字化けやエラーになります。

  • 一括登録用のZipとTSVファイルの情報を一致させる

    • 一括登録用ファイル(ZIP)内の物理的な「フォルダ構成とファイル名」が、TSVファイルに記載された「file_path(パス情報)」とが一致している必要があります。

    • PDF等のファイルは任意のディレクトリ(フォルダ)において問題ありませんが、TSV内の「file_path」列の記述と、実際のディレクトリ構造は同じにしましょう。特に、ファイル名に半角スペースや特殊文字が混ざっていないかなどをよく確認しましょう。




後輩さん




一括登録は便利だけど、それだけ緻密な準備が求められるんですね。じゃあ、間違いをなくすにはどうしたらいいんですか?


先輩さん




過去のデータをエクスポートしてそれを元に作成することかな。うまく登録できているメタデータをお手本にして、それに倣うのが一番確実です。でも、もしエラーが起きても解決策はあるから安心してくださいね。




5. 役立つトラブルシューティング


後輩さん





一括登録をした後、アイテムタイプを編集しようとしたら『Error: Item type cannot be updated because import is in progress.』というエラーが出て保存できませんでした!



先輩さん





一括登録中に、インデックスの追加や編集、アイテムタイプの編集を行うと起きる「インポートロック」というエラーですね。ほかにも起きやすいトラブルがあるので3つ紹介しますね。どれも解決策があるので安心してください。

  • 「インポート中」ロックで操作不能になる

    • インポート中はインデックスやアイテムタイプの操作ができません。インポートに時間がかかっている場合は、終わるまで待ってからもう一度作業してみましょう。

  • 一括登録での環境依存文字によるサーバーエラー

    • ローマ数字(Ⅰ, Ⅱ)や著作権マーク(©)は、インポート時に「?」に化けたり、エラーを引き起こします。事前に「I, II」や「(C)」のようにラテン文字(IIなら大文字 I (アイ)を2つ)や記号に置き換えましょう。

  • 個別登録での再現性のない「必須未入力」エラー

    • まれに発生することがあります。一度強制終了してログインし直すか、解消しない場合はメーリングリスト(ML)へ状況を報告し、他機関の知恵を借りましょう。



6. 一歩を踏み出すために


後輩さん





ありがとうございます! 単なる入力作業ではなく、世界に成果を広めるお手伝いができるのだと感じて前向きな気持ちになりました。登録作業も不安でしたが、まずは慎重に、個別登録から始めてみます!



先輩さん




素晴らしいですね。最後に、着実に習熟するための3ステップです。これはあくまで私の考えなので、状況に応じて自分でもよい方法を身につけていってくださいね。

  1. 「個別登録」でJAIRO Cloudを理解する

    • まずは1件、必須項目の挙動や承認までの流れをマスターし、システムに慣れましょう。

  2. 「小規模一括登録」で検証する

    • 2〜10件程度の「パイロット登録」を行い、文字コード、改行コードの維持やディレクトリ構造が正しいかを確認しましょう。

  3. コミュニティの知見を活用する


リポジトリ業務、はじめは不安ですよね。でも機関リポジトリを担当している人やJAIRO Cloudを使っている人はたくさんいます。資料をよく読んで、時には他機関のだれかと助け合って、業務をしていきましょうね!



※この記事はJAIRO Cloudのマニュアルや研修資料をNotebookLMを使って情報の整理と素案の生成を行い、広報・普及作業部会の担当者が作成・編集しました。監修はJAIRO Cloud作業部会です。ソースは下記のとおりです。

JAIRO Cloudサポートポータル

JAIRO Cloud(WEKO3)基本マニュアル アイテム一括登録(インポート)

JAIRO Cloud(WEKO3)基本マニュアル アイテム個別登録

JAIRO Cloud(WEKO3)基本マニュアル 著者DB管理

JAIRO Cloud(WEKO3)操作説明会(2024年度第5回JPCOAR Webinar)事前質問

JAIRO Cloud(WEKO3)操作説明会(2024年度第5回JPCOAR Webinar)当日質問

2024年度リポジトリ担当者の基礎知識研修(2024年度第3回JPCOAR Webinar)機関リポジトリの 実務と機能

JAIRO Cloud (WEKO3) 非公式まとめ - Code4Lib JAPAN


編集後記

  • はじめてJAIRO Cloudでの登録業務を担当される方などに、少しでもお役立ていただける点があれば幸いです。ちなみに小中学生の頃は人工知能RDが登場する児童書が好きで、よく読んでいました。(野村)

  • 最初にテーマ案をもとにNotebookLMなどで作成された記事案を見て、「今はこんなことまでできちゃうんだ」とびっくりしたのが、遠い昔のように思いだされます。ちなみに好きなAIはタチコマ/フチコマです。(金子)

  • リポジトリ業務に携わる方々の経験や環境は多様だと思いますが、皆様の業務の一助になれば幸いです。ちなみに小説に登場するAIで思い出すのは〈ムネーモシュネー〉というコンピュータです。(熊﨑)


ヘッダ画像はUnsplashKalen Emsleyが撮影した写真を改変して作成


 

本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンスの下に提供されています。
ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。
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