
Report
RA協議会参加レポート
市地 七実子 / 髙橋 辰弥
26/2/27
岡山大学
RA協議会、正式にはリサーチ・アドミニストレーション協議会。毎年秋に開催される年次大会ではリサーチ・アドミニストレーション業務に携わる方々が研究支援の最新知見や課題を共有されているとのこと。2025年の第11回年次大会に岡山大学から図書館職員のお二人が参加、ポスター発表をされました。JPCOARとしては、OA(オープンアクセス)やOS(オープンサイエンス)の話題が気になるところですが...。お二人にお話を伺いました。 話し手 : 市地七実子 / 髙橋辰弥 (岡山大学) 聞き手 : JPCOAR広報・作業部会:大園(岡山大学)/ 中谷(鳥取大学)/ 村木(北海道大学)
1. なぜ図書館職員がRA協議会年次大会へ?
JPCOAR(以下J)|RA協議会というと、大学からは主にURAが参加するものというイメージですが、今回、図書館職員としてRA協議会年次大会(以下、年次大会)に参加された経緯をお聞かせください。 市地(以下I)|岡山大学では、昨年度実施されたオープンアクセス加速化事業において、図書館とURA協働による研究支援の取り組みが進みました。図書館に配属されているURAから、その成果を年次大会で発表してはどうかと提案をいただきました。さらに、図書館とは異なる職種のイベントに参加することで図書館職員の役割や業務を客観的に見つめ直す良い機会になるだろうという上層部の考えもあり、参加が決定しました。 J|岡山大学では 図書館にURAの方がいらっしゃるのですか? 髙橋(以下T)|岡山大学はOA関連の経費でURAを一名雇用しています。主に図書館と連携したオープンサイエンス推進に関わる業務を行っていただいて、現在は1週間のうち2日を図書館で勤務しています。 J|年次大会はどのような雰囲気なのでしょう。図書館で言うと図書館総合展のようなイメージでしょうか? I|はい、毎年参加して情報共有する場なのではと思います。岡山大学のURAは昨年も参加していました。参加されていたURAの方々は、知的探求心に溢れた方が多かったです。ポスター発表の際、図書館という異なる畑からの参加なので質問はあまり来ないのではと心配していましたが、実際にはこちらが想定していたよりも多くの質問が飛び交いました。全体を通して、熱意を持って活発に議論されている場という印象を受けました。
2. ポスター発表 : URAとの協働
J|ポスターは二つ[1][2]発表されたのですよね?会場での反応についてお聞かせください。 T|はい、一つは岡山大学のOA支援に関するポスターです。岡山大学では、2023年から転換契約を導入しました。また、2024年の即時OA義務化への対応として転換契約を拡大し、転換契約でカバーしきれないものについてはAPC支援、さらにAPC支援が適用されないものについてはリポジトリ登録支援、という三つの支援を行っており、これらの取り組みを紹介しました。発表の目玉はURAと共同で作成した「オープンアクセス支援制度マッチングツール」で、投稿先の出版社やジャーナルランク等の質問に回答していくと研究者がどの支援を利用できるかを簡単に判断できるというものです。 J|URAとの共同作業は、主にマッチングツールの作成に関わる部分だったのでしょうか。 T|URAとは転換契約の選定やAPC支援制度の設計段階から共同で取り組んできました。例えば、研究成果のインパクトを向上させるにはどの出版社と転換契約を結んだらよいか、どのジャーナルにAPC支援するのが適切かなど、URAが分析した上で決めています。支援制度が少し複雑になってきたので、わかりやすくする仕掛けがあったらいいね、ということで作成したのがマッチングツールです。今回のポスターでは、オープンアクセス加速化事業の部分だけではなく、図書館にURAが関わった上でどういう支援を行ってきたのか、ということを発表させていただきました。 J|どのような反応があったのでしょうか? T|APC支援については、支援額の決め方、転換契約については、契約の進め方や著者負担金の決め方といった具体的な仕組みに関する質問を受けました。URAと図書館の連携事例として関心を持っていただけたかと思います。 J|もう一方のポスターについてはいかがでしたか? I|もう一つは、人文研究支援を目的とした資料のデジタル化に関する内容で、昨年度のオープンアクセス加速化事業で図書館に新設した電子化スタジオの取り組みを紹介しました。このスタジオでは、研究者による電子化と図書館職員による電子化とを想定しています。前者は研究者自身が管理する資料のデジタル化を支援するもので、他者の権利侵害の恐れがない資料を対象としています。後者では図書館が所蔵する貴重資料のデジタル化を進め、IIIF対応のアーカイブで公開予定です。最終的には、JAPAN SEARCHとの連携やメタデータの共通化を進め、研究支援に繋げることを目指しています。発表は、図書館はデジタルヒューマニティーズの文脈で電子化を通した研究支援に力を入れています、ということをURAの方々にアピールする目的もありました。 J|反響はあったのでしょうか? I|研究者自身がデジタル化できるのがよい、という肯定的な感想がありました。図書館と研究者で求めるデジタル化の質が異なる場合があり、研究者自身がこだわりを持って作業できる点を評価されたようです。一方で、研究者は忙しいのに自分で作業するのかという指摘や、学外利用の可能性に関する質問もありました。また、単にスキャンして電子化するだけでなくメタデータを付与しなければいけない、その作業にAIを活用すべきという意見も出ました。これは図書館配属のURAの方からの意見でした。 T|わたしたちの他には、直接OAやOSをテーマとしているポスター発表はなかったと思いますが、セッションではOSに関するものがありました。

ポスター発表
3. セッションに参加して
J|OSに関するものとして、どのようなセッションがありましたか?
T|セッション「データスチュワードが切り開く研究の新境地」がOSやJPCOARに関連が深そうかと思いました。初めて知ったのですが、「データスチュワード(Data Steward)」という、研究データ管理(Research Data Management : RDM)やOS推進を目指してデータの収集・管理の面で研究者を支援する職種があるそうで。ヨーロッパではすでに配置されている大学がいくつかあるということで、データスチュワード先進国のオランダで実際に働いている方が発表されていました。
J|データスチュワードは図書館職員や研究者ではないのでしょうか。データ管理は分野ごとに異なるかと思いますが、データスチュワードには分野による専門などあるのでしょうか、それとも、分野を横断して業務をされているのでしょうか?
T|図書館職員や研究者とは別で、RDMに特化した新しい職種ですね。立場としては日本におけるURAと似ているかと思います。発表事例では分野横断的にデータ管理をされているようでした。日本ではまだデータスチュワードの雇用がなく、RDM支援がまだ制度として必須化されていない状況もあって、あまり浸透していないという話もありました。今後、日本でRDM支援が必須化された際に必ず出てくる職業なのかなと思いました。中小規模大学でURAがデータスチュワードの役割を担う必要が出てくる可能性についての懸念がある一方、そのことに前向きなコメントなども寄せられていました。
J|セッションのタイトルにある「新境地」とはどういったことでしょう。
T|RDM支援の専門職を紹介しつつ国内でそれを広げていくにはどうすればいいのかという話もあったので、「新境地」という言葉で目指すところは、国内でRDM支援をしっかり行っていくことに伴って、データスチュワードの存在が知れ渡って表に出てくるような状況になるのかなと思います。個人的な感想になりますが、データスチュワードの役割については、RDM支援をすべて任せるのではなく、リーダーシップを取ったり全体のハブになったりしてもらうとよいのかなと想像しました。
J|RDM支援をどうするかという問題意識がURAにもあるのですね。それでは実際に誰が支援を行うのかという課題に繋がるかと思うのですが、そのあたりの話はありましたか?
I|「「結局誰が何をやる?研究データ管理支援」を 議論の場はどこなのか?」という「イエス・ノー」の札を用いた会場参加型のディスカッションがありました。テーマごとに札をあげて、少数派の方に積極的に意見を聞くというような流れでした。「RDMの主体は基本的に研究者自身だと思うか?」というテーマでは約7割が「イエス(研究者自身)」で、「ノー」と答えた大学からは、既にデータ管理を担う部署があるためという意見が出ました。「当該機関のRDM・公開支援体制は万全だ」では、「イエス(万全)」との回答は3%くらいで、多くが「ノー(構築中)」でした。「イエス」と回答していた大学からは、URAと共同で研究者が管理しやすいシステムを構築し、運用が軌道に乗っている事例が挙げられました。「支援体制構築に学内連携は不可欠だ」では、9割以上が「イエス」と回答していて、図書館・研究推進部門・情報部門との連携がメインという事例が紹介されていました。
J|誰がやるかについて結論は示されたのでしょうか。
I|結論は出されず、議論を通して最適な地点を探ることが目的だったのではと思います。個人的には、単独の部署で行うことは難しいと感じました。
T|各大学の事例などを聞きながら、それぞれの部署が強みをもっていることが会場全体で共有され、学内で連携してRDM支援を進めていくことが大事だよねという雰囲気になっていました。

セッション会場
J|参加者が多かったり、印象に残っているセッションはありますか。 I|RDMに関するセッションは参加者が多くて、URAの方も関心が高いなと感じました。他には、事務職員出身のURAのセッション会場が埋まっていたなという印象です。 J|「立ち上がれ!ジム(事務)~URAの多様性を考える~」ですね。どのような内容だったのですか。 T|URAは民間とか研究者とか色々な出身の方がいらっしゃるんですが、事務職員出身という方々もいて。そのURA3名で事務職員出身の強みと弱みについて議論するという内容でした。強味としては学内のルールに詳しいこと・異動を通じて得た豊富な経験があること、弱みとしては博士号を持つ研究職出身者などと比べて専門性が低いことが挙げられていました。登壇者の事例として、事務職員が2年間事務系URAとして現場を経験する研修プログラムも紹介されていて、おもしろいなと感じました。
4. 年次大会で見えた課題:URAからのヒント
J|今回の年次大会への参加を通して、OAやOS、RDMの支援におけるURAとの連携などについて気づいたことはあったでしょうか? T|OAは図書館が担当するイメージなのか、あまり話題にあがっていない印象でした。RDM支援やOSについてはURAの方々も問題意識は持っているものの、具体的に誰が、何を、どう進めていくのかという体制や役割分担については、まだ固まっていないと感じられました。 I|ポスター発表でお会いしたURAの方から、図書館は研究者へのアプローチが上手くないなどの耳の痛いご指摘がありました。例えば、研究者に対してCCライセンスの説明をする際「広く再利用される上に、許可のやり取りの手間も減る」といった研究者目線のメリットを伝えればよいのにできていない、などですね。こういったことはやはり言われないと分からないので、指摘していただいたり、URAと図書館の協働や、あるいはURAの方に研究者との交渉をお任せするなど、いろいろ交えながらやっていかなきゃいけないと思いました。 T|岡山大学ではURAが週2日図書館勤務しているので、そういった視点も入ってきているかな、と思います。今回の年次大会参加の提案もそうですが、生成AIを利用した文献検索の講習会を図書館で実施したり、図書館職員が研究室のメンバーとなって研究データ管理の実務に触れてみてはどうですか?と提案したり、前例にとらわれずに自由に考える人なので、その自由さが図書館職員にもいい影響を与えていると思います。 J|今回、お二人は別の職種のイベントに参加して、さまざまな気づきがあったのですね。今後に向けてのヒントなどは見つかったでしょうか。他の図書館職員に伝えたいことはありますか? I|やはりURAの方を見て感じたのは多様性があるなと。民間出身の方、研究者出身の方、事務出身の方とか、多様性があることに強みがあると思います。URAの方と協働するのも大事ですし、幅広い経歴の方が図書館の職員になったり図書館から違う部署を経験するようなキャリア環境の整備も考えていかなきゃいけないのかな、ミックスしていかないと変わっていかないのかなと思いました。 T|多様性が図書館には不足しているポイントかなっていうのは本当に感じました。今回、参加して図書館にはなかった視点を共有することができたので、良い経験となりました。幸いと言っては何ですが、岡山大学図書館では組織改編があり、2025年10月から地域連携などを担うグループが図書館の中に加わりいろいろな方々と一緒に仕事をするので、多様性が広がる状況になっています。
5. 参加の意義と今後の展望
J|来年以降も年次大会に参加したいと思われますか?また、どのような方に参加をおすすめされますか? I|情報収集という意味でも、ぜひまた参加したいです。URAは多様な経歴の方がそれぞれの専門分野を活かして業務を進めており、図書館とは別の職種の視点に触れることができたのが新鮮でした。ただ、現在私は利用者サービスを担当していて、研究支援については理解しきれないところがあったと思うので、OS関係の業務を担当されている方が行ったら理解が進むのかなというのが正直ありました。色々理解した上で参加したいなっていうのはすごくあります。 T|転換契約を担当している方もいいですよね。でも、その人たち以外だったら得るものがないっていうことはなくて。URAがどのような方々で、どのような業務をされていて、どのようなことを気にされているかもセッションを通じて学べるので、参加はとても良いと思います。今回はポスター発表があっての参加で、図書館総合展のように誰でも参加できるイベントではないようなのですが、そのハードルを越えても参加の意義はありましたし、今後も機会があれば参加したいなと感じています。
[1]一つめのポスター研究者とURA・図書館が築くオープンアクセス:岡山大学図書館の研究支援事例 https://www.lib.okayama-u.ac.jp/documents/20251021_RA2025_OA.pdf [2]二つめのポスター岡山大学図書館における人文系研究データデジタル化支援:OS時代に向けて図書館ができる研究支援業務 https://www.lib.okayama-u.ac.jp/documents/20251021_RA2025_denden.pdf

話し手 : 市地七実子 (岡山大学附属図書館) 広島県出身。2014年岡山大学入職。ILL、リテラシー、電子ジャーナル契約担当を経て、2021年から2年間、文部科学省行政実務研修で文化庁著作権課に勤務。2023年からサービスを担当。


