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  • 刊行要領 | JPCOARウェブマガジン

    2023年2月1日制定 2025年12月11日改定 オープンアクセスリポジトリ推進協会運営委員会 JPCOARウェブマガジン 刊行要領 1.趣旨 JPCOAR は、会員および学術情報流通に関わる全ての者が対話・交流する場として、オープンアクセスや学術情報流通に関する先進的かつ実践的な情報等を発信する、JPCOARウェブマガジン(以下、「本誌」とする)を刊行する。 2.編集・刊行 (1)本誌の編集・刊行は広報・普及作業部会に設置する編集室(以下、「編集室」とする)が担当する。編集室が年度ごとに企画内容を検討し、運営委員会に承認を得ることとする。 (2)編集室は企画内容に従い、以下の者に記事の執筆を依頼する。 ・JPCOAR 運営委員会委員・作業部会員 ・JPCOAR 会員機関関係者 ・上記の者以外の、編集室及び運営委員会が依頼を適当とした者。 なお、記事の執筆は、本誌執筆要項に従うものとする。 (3)公開にあたっては編集室で確認したのち、運営委員会の承認を経るものとする。 (4)本誌は各記事をオンラインで配信するほか、JPCOAR の機関リポジトリでDOIを付したうえで保存・公開する。 3.記事の内容 本誌で取り扱う記事の内容は以下のとおりとする。 (1)機関リポジトリやオープンアクセス、オープンサイエンスに関する情報 (2)JPCOAR 及び関連団体が主催するイベントに関する情報 (3)JPCOAR の作業部会等の活動報告・紹介 (4)会員の事例報告 (5)その他、学術情報流通に関する情報全般 4.著作権と公開ライセンス 本誌に掲載される記事の著作権は著者に帰属する。ただし、本誌の記事は原則、オープンアクセスとし、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「CC-BY(表示)」の下で刊行する。 5.記事内容の責任の所在と取り下げについて (1) 記事内容については執筆者が責任を負うこととする。万一、記事内容が第三者の権利を侵害した場合や適法性や正確性に疑義が生じた場合は、運営委員会了承の元、編集室から執筆者に連絡を取り、以後の対応を委ねることとする。 (2) 連絡がつかない場合や対応に緊急を要する場合等、運営委員会が認める場合は、執筆者の了解を経ずに取り下げ等の処置を取ることとする。 (3) 記事の公開後は、執筆者からの申し出による記事の修正・取り下げは原則行わない(内容の変更を伴わない軽微な修正や誤字等の修正、必要な追記等を除く)。ただし、第三者の権利侵害が生じているなど特段の事情がある場合は、必要な理由を付して編集室に申し出る。申し出について運営委員会が認める場合は、取り下げ等の処置を取ることとする。 6.CoCOAR:JPCOAR Newsletter 本要領の制定に伴い、従来の「CoCOAR:JPCOAR Newsletter」の名称および「JPCOARオンライン情報誌刊行要領」は廃止する。

  • 年末スペシャル もう一度読みたいウェブマガジン記事 | JPCOARウェブマガジン

    Column 年末スペシャル もう一度読みたいウェブマガジン記事 JPCOAR広報・普及作業部会 24/12/20 早いもので今年も残すところ、あと数日となりました。 今回は「年末スペシャル もう一度読みたいウェブマガジン記事」と題して、今年アクセス数が多かった人気の記事を、ご執筆された方々のコメントを交えながらご紹介します。 既に一度読んでいただいた方も、読み逃してしまっていたという方も、ぜひチェックしてみてください。 JAIRO Cloud(WEKO3)ビギナーQ&A ~リポジトリ登録で困った時は~ 一つ目にご紹介する記事はこちらです。JAIRO Cloudの操作で困っている方は多いのか、こちらの記事はアクセス数が頭一つ抜けておりました。 JAIRO Cloud(WEKO3)ビギナーQ&A ~リポジトリ登録で困った時は~ / 広報・普及作業部会 広報・普及作業部会のコメント: 初心者だけでなく、「基本的な知識をおさらいしたい」という経験者の方も多いのではないでしょうか。 「迷ったらとりあえずここを見よう!」と思ってもらえるよう、必要な情報を一か所にわかりやすく集めたいとの思いでこの記事を企画しました。 知識だけでなく、作業に関する悩みや戸惑う気持ちに寄り添い、読むと励みになるようなそんな内容になっていればいいなと思います。 リポジトリ登録で困った時はいつでもこの記事を読みに来てください。きっと解決の糸口が見つかるはずです。 オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?) / 新たなる脅威「査読工場(review mill)」 続いては、同志社大学の佐藤翔先生による大人気連載「かたつむりの気になる国際動向」より2つの記事をご紹介します。いつも新鮮なトピックをご紹介いただいており、とても勉強になります。 オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?) / 佐藤 翔 新たなる脅威「査読工場(review mill)」 / 佐藤 翔 佐藤翔先生のコメント: 「特集号」を軸に非常に多くの論文を掲載する新型オープンアクセスメガジャーナルの登場、なにが目的なのか異なる論文に対する査読レポートに同じ文章を使いまわし「査読工場」と化している査読者の存在など、学術情報流通の世界では次々に新しいトピックや問題が登場してきます。 良い面も悪い面も含め、本連載ではこうした新動向を今後も追っていきたいと考えていますので、引き続きよろしくお願いいたします。 「博士論文の公表」を振り返る 続いては、広報・普及作業部会員でもある岡山大学の植山廣紀さんの記事です。機関リポジトリでの博士論文の公表について全3回でまとめられた労作で、作業部会内でも「ウェブマガジンにはもったいない(?)」と大評判でした。 「博士論文の公表」を振り返る / 植山 廣紀 植山さんのコメント: リポジトリの担当者だったとき、博士論文のリポジトリ登録にあたって色々調べながら苦労しており、かねてからまとまった情報が欲しいと思っていました。 ウェブマガジンが始まって企画をあれこれ考えていたあるとき、「博士論文の公表って、そもそもなんでやることになったんだろう??」 -と疑問に思ったことが、この記事を書くことになったきっかけです。「そこになければないですね……、いや、自分で記事を書いてみよう!」とチャレンジしてみて、全3回の連載となりました。 記事を書くにあたって所属館の状況を調べるために、博士論文が収められている書庫に入りました。その時にまず目に飛び込んできたのが、記事のヘッダー画像にある「博士学位論文」の背表紙です。書架いっぱいに並ぶ博士論文の迫力もあわせて、お楽しみください! メゾン・ド・ヌイグルミ 続いては、個人のリポジトリ的なことがらを熱く語ってもらいながらお仕事紹介もしていただく連載企画「ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ)」から、国立情報学研究所の佐藤知生さんの記事です。佐藤さんのお人柄がよく伝わってくる、とても個性的な記事となっています。 メゾン・ド・ヌイグルミ / 佐藤 知生 佐藤さんのコメント: ある日「ぶっ飛んだ人の記事が欲しい」という発注を受けまして、それならばと頭のネジを2~3本抜いてしたためた拙稿が存外好評だったようで恐縮です。なんであれがそんなに読まれているんでしょう。もしやみなさんお疲れではないですか? そんなお疲れ気味のみなさんには、神戸の某通販会社で入手できるシャバーニ(名古屋のゴリラ)の腕枕クッションがお勧めです。大胸筋と上腕二頭筋がたくましいですよ。朝起きて横を見たらイケメンゴリラ。これは気合が入ります。 「光る君へ」をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ 最後にご紹介するのは、毎回テーマを決めて機関リポジトリに搭載された文献を紹介する企画「OA論文紀行」の記事です。源氏物語Yearとも言えた今年の締めくくりとしてふさわしく、「源氏物語・紫式部・平安文学」についての文献をまとめた記事となっています。 「光る君へ」をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ / 広報・普及作業部会 広報・普及作業部会のコメント: 今年は「源氏物語」の注目度が高かったこともあり、多くの方にご覧いただき、ありがとうございます! この記事の作成のために論文を検索するなかで、とても多くの論文が機関リポジトリで公開されていることに改めて驚かされました。これも皆様の遡及や日々の登録のおかげかと思います。 気軽に学術的な知識に触れられる事がオープンアクセスの醍醐味かと思いますので、今後もいろいろなテーマで、さまざまな文献を紹介していきたいと思います。 画像は『 源氏物語橋姫図 / 伝俵屋宗達 』 ( 慶應義塾(センチュリー赤尾コレクション ) CC BY )を改変して作成 来年からはいよいよ公的資金を用いた研究成果の即時OA義務化が始まります。 来年も学術情報流通に関わる皆様にとって有益かつ励みとなるような記事を作成していきますので、JPCOARウェブマガジンをどうぞよろしくお願いいたします。 皆様、どうぞよいお年を! 本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • Global Summit on Diamond Open Access 2023 参加報告 | JPCOARウェブマガジン

    Report Global Summit on Diamond Open Access 2023 参加報告 前田 隼 23/12/26 国立情報学研究所 1.はじめに  2023年10月23日~27日にかけてメキシコ合衆国・トルーカにて開催されたダイヤモンド・オープンアクセスに関する国際会議、Global Summit on Diamond Open Access 2023 に参加してきましたので、その様子を報告します。  実際に私が参加したのは、会期中の10月25日・26日の2nd Diamond Open Access Conference と、27日午前の閉会式の正味2日半です。 2.ダイヤモンド・オープンアクセスとは?  まず、本会議でのダイヤモンド・オープンアクセス(以後ダイヤモンドOAと表記)の定義を以下に示します。  「ダイヤモンド・オープンアクセスとは、著者にも読者にも費用を請求することなく、研究成果をオープンに利用できる学術コミュニケーションモデルのこと」  著者がオープンアクセス費用を負担するゴールドOAモデルや、読者(多くは著者でもありますが)が費用を負担する購読型モデル(この場合はそもそも論文がオープンアクセスではない)とは異なり、両者に費用負担がなく、かつ最初からオープンアクセスで出版されるモデルがダイヤモンドOAです。 3.ダイヤモンドOAの課題  今回の会議の目的は、ダイヤモンドOAを取り巻く諸問題について、個々の国・地域でバラバラに取り組むのではなく、グローバルな枠組みで解決に向けて動こうという、その合意形成にありました。  ダイヤモンドOAの諸問題というのは、ダイヤモンドOAの特徴とも言える点で、主に以下の3つが挙げられます。 ・小規模 ・散在 ・多言語  一言でいうと、ダイヤモンドOAジャーナルは、小規模で散在しており、世界中の様々な言語で出版されている、といえるでしょう。  このことと、オープンアクセス・オープンサイエンスで重要とされる以下のキーワードを関連付けて考えると、散在している状態のダイヤモンドOAジャーナルをグローバルスケールで結び付けて、大きな力にすることが必要ということがご理解いただけると思います。 Keyword: equity(平等性)、transparency(透明性)、sustainability(持続可能性)、community-led(コミュニティ主導)  特にダイヤモンドOAジャーナルの半数以上は、出版にかかる費用(運用コスト)の助成が得られなくなると1年以内に出版が立ち行かなくなることが明らかにされており、特に持続可能性という点から、世界的に一つのまとまりを作ろうというモチベーションが高まっています(ただ、この点では日本の「紀要」は少し状況が違うかもしれません。紀要の出版は既存の業務として大学の教職員(図書館職員を含む)に組み込まれており、助成に頼らないビルトイン・モデルとして持続してきた面があるともいえそうです)。 4.ダイヤモンドOA推進のモチベーションはなにか?  UNESCOやEuropean Committeeが特に声高に叫んでいたのは、オープンアクセスは「基本的人権」のひとつである、という点です。これが参加者共通の、もっとも根幹的なダイヤモンドOA推進のモチベーションであったように思います。  このモチベーションを、ヨーロッパにおける非営利で学術界主導(非出版社主導)のOA出版の加速の動きが後押しをしています。例えば、2023年5月のEU 理事会では以下のような結論が出されています。 “Authors should not have to pay fees (..) Non-profit scholarly publishing models should be supported...” 5.インフラと助成金の統合  冒頭で述べた「散在」というキーワードは、ダイヤモンドOA周辺のインフラと助成金(運営資金)についても言えることです。数多くの出版プラットフォームがあり、ダイヤモンドOAジャーナルごとに利用しているプラットフォームが違うことも普通です。これを統合する動きとして、ヨーロッパのOpen Research Europeが紹介されました。これは全分野を対象にしたダイヤモンドOAジャーナルで、間もなくEU諸国全域で利用可能になるということで、国レベルではなく地域レベルの出版プラットフォームとして機能することが期待されています。  また、助成金についても統合が必要との意見で議論が収束しました。現在は散在するダイヤモンドOAジャーナルに対して、散在する助成団体・個人が資金提供を行っているため、スケール・メリットが働きづらい状態だからです。また、ダイヤモンドOAに関して、多くの団体や活動、イニシアティブが混在していることで、取り組みのスピードとスケールに限界があること、このままの散在した体制では大手出版社との対抗(特に転換契約の先の展開への対応)が難しい、また単にスケール・メリットによるインフラ・資金の効率化という側面のほかに、Community of Practice、Open Science ecosystem の構築といった側面でも統合することに意味があるといったコメントもありました。解決へのスローガンは、”Together we are stronger.” でした。 6.4段階で世界をカバー  「統合」に関する具体的な構想として、またインフラや資金、人的リソースのガバナンス(運用と組織化)のアイディアとして、ダイヤモンドOAのグローバル組織立ち上げが提案されました。これは4つのレベルでダイヤモンドOAを世界的に組織化・統合しようという構想です。以下にその4つのレベルを示します(写真1)。 Global: Diamond Federation(GDF) Regional: Diamond Capacity Hubs (DCH) National/Local/Disciplinary: Diamond Capacity Centers (DCC) Community: Diamond journals 写真1: 世界のダイヤモンドOAを4つのレベルで統合していく構想について議論する登壇者ら  ここで、Community となっているのがダイヤモンドOAジャーナルのことで、この部分は”Community-led”、つまり、学術界主導です。具体的な役割として、科学コミュニティ(研究者)によって組織される編集委員会で編集ガバナンス(ジャーナルの品質基準の策定・査読・採否決定)とコンテンツの保持を担います。  “Diamond Capacity Center (DCC)”は国、分野レベルの組織で、ダイヤモンドOAジャーナル刊行の補助業務を行います。具体的な業務として、著作権処理、タイプセッティング、予算管理、ジャーナルの品質基準・ガイドライン遵守に関する補助が挙げられ、そのほか、編集・刊行ツール、プラットフォーム利用に関する補助、多言語対応も担います。  “Diamond Capacity Hubs (DCH)”はDCCの上位組織で地域レベル(ヨーロッパ、アフリカなどの地理的大陸区分に対応するイメージ)でひとつ設置されるものです。主な任務は、DCCの人員・資金の確保です。人員の確保に関してはダイヤモンドOA出版に関わる専門職員について、国をまたいで異動させることも想定しています。  “Global Diamond Federation (GDF)”はDCHのマネジメントを行うとともに、出版プラットフォームの相互運用性の確保、サービスや資金の地域レベルでの均衡化などを行います。GDFの設立に向けた合意形成というのが本会議の大きな目的の一つです。冒頭で述べた通り、サービス・インフラ・資金の統合がダイヤモンドOAの課題であるため、このような4つのレベルでの組織化を行い、究極的にはGDFの設立によって世界レベルでの統合を図ろうという試みです。 7.一番白熱した議論「研究評価とダイヤモンドOA」  本会議で最も白熱したのが、研究評価とダイヤモンドOAというトピックでした(写真2)。議論の核となったのは、インパクト・ファクター(以後IFと表記)です。ダイヤモンドOAジャーナルは小規模で散在していることから想像できるように、IFがもともと小さく、ジャーナルとしてのインパクトは大きくありません。これは大前提として、IFがジャーナルのインパクトあるいはブランド力を示す指標であるという定義に基づいています。 写真2 研究評価に関して白熱した議論が繰り広げられた  議論では、IFがジャーナルのインパクト・ブランド力を示す指標であることは確かだが、研究者の研究評価に用いられているため、研究者がIFの高いジャーナルに投稿する傾向がある点について、問題提起がありました。つまり、研究評価にIFを使うのをやめるべきだとの主張です。  つづいて、ダイヤモンドOAジャーナルの発展という視点からも発言がありました。現状、研究者が学会を支え(組織し)、学会が出版社を支えている(学会誌の出版を委託)構造のため、ダイヤモンドOAに研究者を巻き込むにはこの構造を変える必要があるという主張です。これは本質的にはさきほどのIFの主張と同じで、研究者の出版(投稿・研究評価を含む)への関わり方を変えるべきだという意見です。この議論の流れの中で、合意が得られたのは、新しい評価システムの構築が必要かつ重要であることです。新しい評価システムとは、具体的には「メトリクス」、「OAかどうか」といった指標です。  一方で研究者サイドからの反論もありました。メトリクスやOAかどうかということでは、現在の評価制度において評価されないこと(IFの高い雑誌に掲載されることがキャリアパス上重要であること)が指摘されました。そのため、研究者サイドからは、図書館業界からの提案である、ダイヤモンドOAを主語にした研究評価の変革やダイヤモンドOAエコシステムの構築について、正直楽観的に受け止められないとのコメントがありました。これに対して会場からは、「長い目で見てエコシステムを作るのが研究者にとってもよいはずで、20年後にはこの取り組みが研究者に感謝されるものになっているだろう」とのコメントがありました。  筆者の私見を述べるとすれば、ダイヤモンドOAを推進するコミュニティ側と研究者のすれ違いが大きな問題であろうと思います。ダイヤモンドOAコミュニティのモチベーションが、知の共有は基本的人権というところであるのに対して、研究者はいかに早く不安定な雇用を脱し、パーマネント・ポジションを得るか、そのためにいかに魅力的なCV(履歴書・業績リスト)を準備できるかというところに関心(とプレッシャー)があるように思います。業績のうち、論文のことを考えると、投稿先のジャーナルがOAかどうかや各種メトリクスがどうだといった議論は、研究者=投稿者の側からすると眼中にないものだと思われます。たとえば、まずは論文数、そして内容と投稿先のジャーナルがあっているか、という点で評価されることもしばしばと思います。「内容と投稿先のジャーナルがあっているか」という評価の際には、すでに確立された有名なジャーナルが想定されていることも多く、ダイヤモンドOAジャーナルのように知名度という点で不利になる(=投稿先として選ばれない)場合もあると思われます。もちろん、すべての分野においてそういった評価軸とは限りませんが、いわゆるNature、Science、Cellなどの自然科学系、生命科学系には当てはまる部分が多いのではないでしょうか。  また、メトリクスなど(特に社会的インパクト)を重視してしまうと、実学分野ばかりに高評価が偏る結果となり、本来大学でこそ遂行できるはずの基礎研究が窮地に立たされかねない点を、筆者個人は特に危惧しています。 8.購読型ジャーナルはペイしているのか  ツールの話として、UnsubとOpenAlexの紹介がありました。まず、購読型モデル等、ダイヤモンドOA以外のジャーナルが本当にペイしているのかを自分で確かめるため、Unsubの利用が紹介されました。  次にダイヤモンドOAジャーナルが含まれていないデータベースであるScopusやSciVal、Web of Scienceからの脱却手段として、OpenAlexの紹介がありました。 9.トルーカ・ダイヤモンドOA宣言・・・ならず  当初最終日には、トルーカ・ダイヤモンドOA宣言が取りまとめられ、発表される予定でしたが、宣言としてではなく、”Conclusions and Way Forward”として発表されることになりました。この詳しい経緯は不明ですが、宣言とするための強い合意形成が関係機関の間で得られなかったのではないかと想像しています。  それはさておき、この文書の内容を要約したものは以下の通りです。 「ダイヤモンド・オープンアクセス(OA)とは、著者にも読者にも料金を請求することなく、研究成果をオープンに利用できる学術コミュニケーションモデルです。このモデルでは、コンテンツに関連するすべての要素は、学術コミュニティが主導し所有します。  既存および新規のダイヤモンドOAのジャーナル、リポジトリ、プラットフォームをグローバルに支援することで、公的資金による研究へのアクセスと普及の障壁を大幅に下げることができます。ダイヤモンドOAは本質的に “書誌多様性”を内包しています」 原文は以下です。 "Diamond Open Access (OA) is a scholarly communication model in which research outputs are openly available, without charging fees to either authors or readers. In this model, all content-related elements are led and owned by scholarly communities. Support for existing and new Diamond OA journals, repositories, and platforms globally can significantly lower barriers to accessing and disseminating publicly-funded research. Diamond OA inherently embraces the concept of bibliodiversity.” この文書の発表をもってスタンディング・オーベーションで会議は幕を下ろしました(写真3)。 写真3 スタンディング・オーベーションで閉幕した  私個人の感想ですが、本会議では、ダイヤモンドOAに関してヒト・モノ(インフラ)・カネの世界的「統合」を目指すこと、そのための課題と解決の見通しについて登壇者・参加者間で活発な議論が行われたというのが最も有意義なことだったと思います。また、その会場がメキシコといういわゆる欧米ではなかったことも意味のあるものだったと思います。つまり、中南米の核となるメキシコで開催することで、ダイヤモンドOAに関する欧米の潮流をうまく中南米に取り込む役割があったと感じています。そのような意味では、日本で同様の国際会議を開催することも有意義であろうと思います。特にダイヤモンドOAに関しては、日本には(それがダイヤモンドOAであるという強く明確な意識がなくとも)「紀要」を発行してきた歴史と文化があり、しかし同時にそれは世界からある種分断された形でのガラパゴス的進化(進化か?という議論はあるにせよ)だったと言えるからです。平たく言えば、本来”No border(国境はない)”である科学の世界、あるいはそのコミュニティが主導する(それこそCommunity-ledな)出版モデルを検討していくのであれば、日本はいままでのようなガラパゴス的な、あるいはGoing my way的な歩き方を見直し、世界の潮流を取り入れる必要があると思います。研究力の低下が否定できない状況の日本の現状を見ていても、世界から学ぶことの重要性は増してきていると感じます。 10.大学図書館の窓から  もうひとつ筆者個人の感じたことを述べたいと思います。それは大学の役割が少し変わってきたということです。筆者が大学に入学した2000年代初頭は学術情報、つまりジャーナルにアクセスできることが大学に入る大きなメリット(あるいは特権)の一つでした。しかし、ダイヤモンドOAの登場を待たずとも、2010年代には方法はどうであれ、オープンアクセスの占める割合が大きくなり、2020年代にはその勢いはより増してきています。この変遷を目の当たりにして思うことは、分野にもよりますが、ジャーナルにアクセスできることはもはや特権ではなく、確かに当たり前の権利のようになってきていること、そして、大学に入ることで学術情報の見つけ方・扱い方・見極め方などの訓練を受けることができ、その重要性が増してきたことです。大学図書館では従来から学術情報の見つけ方や見極め方などを教員や学生に広報してきていますが、同じことをやり続けていても、その需要や重要性が増してきているという点は指摘しておきたいと思います。大学図書館の窓から見ると、オープンアクセスによって見える景色が確かに少し変わってきていると感じます。 11. おわりに  以上駆け足でしたが、2023年10月23日~27日にかけてメキシコ合衆国・トルーカにて開催されたダイヤモンド・オープンアクセスに関する国際会議、Global Summit on Diamond Open Access 2023 の報告といたします。 文:前田 隼(国立情報学研究所) 北海道大学附属図書館職員(2015.4~現在) 国立情報学研究所 図書館連携・協力室 出向職員(2022.4-2024.3) オープンアクセスを一歩引いて見守る北の図書館員。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 発表!2025年度もっとも読まれたJPCOARウェブマガジン記事トップ5 | JPCOARウェブマガジン

    Column 発表!2025年度もっとも読まれたJPCOARウェブマガジン記事トップ5 JPCOAR広報・普及作業部会 26/3/24 2025年度も残すところあとわずかになりました。 「即時OA義務化」の本格実施が始まり、機関リポジトリの現場はその対応に大きく揺れた一年だったと思います。 そんな現場の皆様に、少しでも役に立つ情報をお届けしたいと、広報・普及作業部会では今年度もさまざまな記事を企画してきましたが、いかがだったでしょうか。 このたび、2025年度にもっともよく読まれた記事トップ5をプレイバック。 作者からお寄せいただいたコメントと共にご紹介します!   第1位:オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?) オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?) 佐藤翔先生による人気連載「かたつむりの気になる国際動向」。そのなかでも別格のアクセス数を誇り、2年連続で上位に君臨しつづけているのが、この記事でした。 ~~佐藤翔先生のコメント~~ 「特集号」を軸に非常に多くの論文を掲載する新型オープンアクセスメガジャーナルの話……が、まさかの2年連続アクセス数上位ランクインとのことで、特集号問題への関心がそれだけ高いのだろうと思います。最近もXを中心に学生の論文発表先としての、特集号ビジネスを手掛ける某社の妥当性について盛り上がって(炎上して)いましたが、そこでも賛否入り乱れた意見が飛び交っていました。みんな困っている、あるいは混乱していて、そうして情報を求めてこの記事に到達したのではと思います。公開時の一時にとどまらない注目度の高さがうかがえ、そうであるならばまたぜひ本連載でも続報等、扱っていきたいと思います!    第2位:JAIRO Cloud(WEKO3)ビギナーQ&A ~リポジトリ登録で困った時は~ JAIRO Cloud(WEKO3)ビギナーQ&A ~リポジトリ登録で困った時は~ こちらも前回に続きランクイン。システム運用や登録実務に直結するQ&Aとして、現場の担当者から継続的に参照されている定番記事となりました。 ~~広報・普及作業部会(永井)のコメント~~ JAIRO Cloudの実務に関係する記事は、やはり根強い人気がありますね。 2025年のJPCOARウェブサイト移転に伴い、記事内のリンクの多くが変更されていますが、ご心配なく。現在は「JAIRO Cloudサポートポータル」をはじめ、新しいサイトにて最新のサポート情報を集約しています。 https://jpcoar.org/support/ ぜひ、ページをブックマークしてご活用ください。    第3位:「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」って何?~はじめてのリポジトリ担当者の疑問~ 「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」って何?~はじめてのリポジトリ担当者の疑問~ 「即時OA義務化」前夜の2025年2月に公開されたこの記事が、第3位にランクイン。変化の大きい一年となった現場において、実務の指針を求めるニーズの高さがうかがえる結果となりました。 ~広報・普及作業部会(熊﨑)のコメント~ 政策や学術情報流通の変化を前に、実務の一助になればと当時のメンバーと企画しました。私自身も悩みながら書いた記事が、多くの方に届いたことを大変光栄に思います。 日々の業務は困難も多いかと存じますが、JPCOARのSlackやMLをぜひ頼り、知識や経験を共有し合えると嬉しいです。そして、皆で支え合う場として、JPCOARという繋がりを共に育てていければ幸いです。    第4位:ジャーナルってどうやって作ってるんですか?(BarOA|第1夜 : 浦上裕光氏×鈴木雅子氏|1杯目) ジャーナルってどうやって作ってるんですか?(BarOA|第1夜 : 浦上裕光氏×鈴木雅子氏|1杯目) 新企画BarOA第1話が第4位にランクイン。 本誌初となる外部ゲストをお迎えした対談企画です。Springer Natureの浦上裕光氏とJPCOAR運営委員会委員の鈴木雅子氏による、リラックスした雰囲気での対談が注目を集めました。 ~~浦上裕光さんのコメント~~ Bar OAの記事を多くの方々にご覧いただきまして、本当に光栄です!どうもありがとうございます! Bar OAで鈴木さんとお酒を交えて出版やOAにまつわるさまざまなお話ができて、とても楽しかったです(実際には飲んでいませんが…)。本記事を通じて、出版社を少しでも身近に感じていただき、有用な情報をお届けできていたら嬉しいです。今後もさまざまな形で情報や意見の共有・交換に貢献できればと考えております。 今回お話しできなかったテーマも多くあったかと思いますので、今後もこのような機会がございましたら、ぜひまたBar OAでよろしくお願いいたします!    第5位:OA加速化くんを使ったグッズを考える会議 OA加速化くんを使ったグッズを考える会議 第5位は、広報キャラクター「OA加速化くん」をテーマにした企画記事です。 キャラクターを活用した広報のアイデアを提案するユニークでエキセントリックな内容が、実務の合間のトピックとして広く関心を呼びました。 ~~南雲修司さんのコメント~~ この記事の作成中、他のお二人が作ってくれた動画やゲームをみて「これは万バズいったわー」と私の中の承認欲求モンスターが騒いだのですが、力不足で爆ぜさせることができずに申し訳なく思っていました。 ですので、今回この記事のアクセス数が多かったと聞いて、とても嬉しく思っています、ありがとうございました。OA加速化くんの生みの親の大分大学さんにも改めて御礼申し上げます。 記事でも書きましたが、OA加速化くんは海外でもウケるポテンシャルを持っている(多分)と思いますので、これからの活躍も楽しみにしております。 ~~~~~ 2025年度人気記事ランキング、いかがだったでしょうか。 2026年度も、「オープンアクセスで世界を幸せにするウェブマガジン」をモットーに、皆さまとともに、より有益で魅力的な情報発信に努めていきたいと思います。 そこで、より充実した誌面づくりのため、ぜひ読者アンケートへのご協力をお願いいたします。皆さまの声をお待ちしております! アンケートURL: https://forms.gle/PkVhzCpSRJncKecU9 ヘッダ画像は、葛飾北斎『冨嶽三十六景 凱風快晴』(江戸東京博物館所蔵/Tokyo Museum Collection)を改変して作成( https://museumcollection.tokyo/works/6249368/ )(参照日:2026-3-17)   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • COARってなに? ~COAR Annual Conference 2024への参加報告から~ | JPCOARウェブマガジン

    Report COARってなに? ~COAR Annual Conference 2024への参加報告から~ 前田 隼 24/9/18 北海道大学  日本のリポジトリ担当の皆さんは、JPCOARは知っていても、COARという国際組織があることを知らない人も多いのではないでしょうか。COARは毎年、国際会議 "COAR Annual Meeting"を開催しており、次回のCOAR Annual Meeting 2025は東京で開催予定です。  本記事では、COAR Annual Meeting 2024に参加された前田さんに、COARとAnnual Meetingについてご紹介いただきます。 COARとは? COAR (Confederation of Open Access Repositories) とは、以下のビジョンとミッションに賛同する世界中の機関で構成する世界最大規模のリポジトリ団体です。 ビジョン A sustainable, inclusive and trusted global knowledge commons based on a network of open access digital repositories. (オープンアクセス・デジタルリポジトリのネットワークにより、持続可能で包括的、かつ信頼できるグローバルなナレッジコモンズを目指すこと) ミッション To enhance the visibility and application of research outputs through collaboration across the global repository network. (リポジトリネットワークのグローバルな連携を通じて、研究成果の認知と活用を向上させること)  2009年に28の参加機関から始まったCOARは、2024年現在130以上の機関が参加するリポジトリを代表する団体となっています。2024年現在本拠地はドイツにありますが(2025年にオランダへ移転予定)、Executive DirectorであるKathleen Shearer氏はカナダ・モントリオールから指揮を執り、事務局員はポルトガルからリモートで業務を行っています。COARには、COARのビジョン・ミッションに賛同する世界中の機関が「メンバー」あるいは「パートナー」として参加し会費を支払うことで、COARが推し進める先進的リポジトリ機能の開発や各種オープンアクセスに関するミーティング、年に1度のGeneral Assembly・Annual Meeting等の活動を支えています。アジアでは COAR Asia という地域(region)レベルでの活動も行われており、日本を含むアジア地域でのリポジトリの活用、オープンアクセスの推進活動が活発に行われています。 JPCOARとの関係は?  JPCOARはCOARのパートナーとして活動しています。COARのAnnual Meetingに参加したり、タスクフォースに参加したりすることで、リポジトリに関する世界の潮流を知り、議論を深め、国内の活動に反映させてきました。実際、コロナ禍を除くと、毎年のようにCOAR Annual MeetingにJPCOARから参加者が派遣され、各種講演を聴講することに加えて、日本からの報告を行い、議論に参加してきました。さらに、国際会議の多くがそうであるように、COAR Annual Meetingは人と人とのネットワーキングの場というもう一つの側面を持っています。JPCOARからの参加者がCOAR関係者や世界中のリポジトリ運用担当者、あるいはリポジトリ開発者と顔を合わせて話をすることで、日本のプレゼンスを維持してきています。近年ではCOAR Notifyプロジェクトに関して、ダッシュボードの設計やリポジトリとの連携に必要な機能について意見交換が行われています。 COAR Annual Meetingは何をやっているのか?  2024年6月6日~7日にスウェーデンで開催されたCOAR Annual Meetingの様子をお伝えします。プログラムは全体で2日間、1日目は公開セッション、2日目はクローズドセッション(COARメンバーやCOARパートナーのみ参加可)となっていました。会議の形態としては、一般的な国際会議と同様、講演が主で、その他参加者を巻き込んでのディスカッションが織り交ぜられているスタイルです。 2024年6月に開催されたCOAR Annual MeetingでCOAR Notifyについて説明するKathleen Shearer氏  2024年のミーティングのテーマは「次世代リポジトリに求められる先進的機能や課題を語ろう」というもので、実際、現在開発中のCOAR Notifyのデモが行われました。COAR Notifyはプロトコルのことで、これを活用することでリポジトリをプレプリントの出版プラットフォームとして使い、著者や査読者、リポジトリ間でバージョンの管理や査読の進行状況などを記録・共有することができます。またほかの参加者からはCitation通知をリポジトリ同士で行うアイディアの発表などもあり、今後リポジトリが出版プラットフォームとして発展していく勢いを感じました。このようにネットワーク化されたリポジトリ同士が、査読や引用などについて、相互に直接コミュニケーションをとっていくインタラクティブな世界が議論されました。さらに、グリーンオープンアクセスの意義といった根幹的な議論も行われ、大手5社の転換契約が100%オープンアクセスに転換されるまでには、少なくともあと70年かかるといった報告もありました。このようにオープンアクセス全体の潮流の中で、リポジトリの位置を再認識し、そのうえで次世代リポジトリにはコンテンツの保存だけではなく出版プラットフォームとしての新機能を付加していくことが議論されていた、という印象です。これらの講演やディスカッション、COARの各作業部会の活動の様子などは国立情報学研究所、JPCOARで共有され(本記事やリポジトリのグッドプラクティスのためのCOARコミュニティフレームワーク 第2版*等)、日本国内のリポジトリ運用や将来構想に反映されます。 * https://doi.org/10.34477/0002000225 おわりに  駆け足の報告になりましたが、普段あまりなじみのないCOARとJPCOARの関係、そしてCOAR Annual Meetingの様子についてご紹介しました。本記事がCOARやその活動、そしてJPCOARとの関係について少しでもご理解いただく一助になりましたら、筆者として大変うれしく思います。 文:前田隼(北海道大学附属図書館) オープンアクセスを一歩引いて見守る北の図書館員。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 18th International Digital Curation Conference 参加報告 / OA義務化等に関するスコットランドの大学へのインタビュー調査報告 | JPCOARウェブマガジン

    Report 18th International Digital Curation Conference 参加報告 / OA義務化等に関するスコットランドの大学へのインタビュー調査報告 有馬 良一 24/4/26 神戸大学  英国はスコットランドの首都エディンバラで2024年2月19日(月)~21日(水)にかけて開催されたDigital Curation Centre (DCC) 主催の国際会議 18th International Digital Curation Conference (IDCC24) に参加するとともに、スコットランドに所在するエディンバラ大学、グラスゴー大学、ストラスクライド大学の図書館職員に対し、オープンアクセス (OA) 義務化への対応や研究データの管理等についてのインタビューを行いましたのでその報告を行います。 18th International Digital Curation Conference  18回目の開催となるIDCC24は、19日のWorkshop Day及び20日と21日のConference Dayの2部制であり、後者については初の完全ハイブリッド形式として開催されました。公式が利用を推奨するイベント管理アプリ Whova の名簿によると全体で270名を超える参加者があったようです。また、今会議のテーマは「Trust Through Transparency(透明性による信頼)」ということで、データやデータリポジトリの「信頼性」に重きを置いた発表が多く行われました。スペースの都合上、ここでは参加したプログラムのうちの一部のみを紹介します。  まず19日に開催されたワークショップの前半では maDMPsの10原則 の各項目について、現在の原則が「適切か / 現実的でないか / 不足があるか」の3段階で評価するというディスカッションが行われました。国や組織によって実現性の難易度には差があるなど問題点は出されたものの基本的に現在の原則は原則として適切であるとの結論が出ていました。また後半ではDMP (Data Management Plan) プラットフォームとRDM (Research Data Management) プラットフォームをつなぐ、ということをテーマに各種のステークホルダーの視点からユーザーストーリーを作成する、という内容のグループディスカッションが行われ、様々な立場による多様なユーザーストーリーが作成されました。 ワークショップ休憩時の風景。 50人以上の参加があった。  本会議の発表のなかからは、今後の日本の政策にも類似しているように思えたストックホルム大学の発表を取り上げます。スウェーデン政府は公的資金による研究成果のOA化を2021年までに、研究データについては2026年までにFAIR原則に則ったかたちでオープン化することを求めているようですが、ストックホルム大学で行った調査の結果によるとアットランダムに選んだ研究成果のうち根拠データについて少なくとも何らかの言及を行っていたのは39%程度で、このうちDOI付きでリポジトリに登録されていたのは10%ほどに過ぎなかったようです。中には補足資料のなかに研究データが含まれているものもあったとのことでした。これを踏まえて、当該発表では研究成果のより適切なオープン化を進めるために、大学はもっと研究者に情報を提供するとともに適切なデータキュレーションサービスを提供する必要があり、研究者はデータを補足資料に載せずに区別して扱うとともにDOIをもっと使用するべきだと提言しています。また出版社に対しても適切な根拠データと補足資料の扱い方を研究者に伝えるとともにDOIの付与についても推奨すべきだとしています。筆者自身も論文の根拠データについての十分な知識がないため混乱することも多いのですが、2025年からの即時OA義務化に向けてこのあたりの動きもフォローして参照していければと思っています。  なお、今回聞けなかった/報告できなかったものも含めた全発表の抄録がIDCC24のWebサイト「 Accepted Submissions 」からご覧いただけます。また一部の発表資料は Zenodo 上に公開されておりますので、興味のある方はこちらもぜひご覧ください。 ランチタイム兼ポスターセッションの様子。 OA業務等に関するインタビュー  以下では今回行った調査のうちOA義務化に対するものを特に抜粋して記載します。なお、上記調査はいずれも佐桑諒氏(神戸大学)とともに行ったものです。  エディンバラ大学は、UKRI(英国研究・イノベーション機構) によるOA義務化をきっかけに学内の弁護士や学術コミュニケーションチームと協働して方針を策定し、弁護士による文書を出版社に通達して同制度を開始したとのことです。現在はPureという研究情報システム(Current Research Information System: CRIS)にCC BYのライセンスを付与した原稿の提出を教員に依頼しており、その結果OA率は92%ほどになった、ということで権利保持方針はうまくいっている、という認識を持っているようでした。  グラスゴー大学のOA義務化の始まりはUKRIによるOA義務化以前に英国の旧ビジネス・イノベーション・スキル省からOA推進の依頼があったことに端を発しており、その際に業務のワークフローもOA義務化に対応できる体制に変更したとのことでした。また同校は他の2校と異なり、教員がCRISに直接記載するのではなく、論文がアクセプトされたタイミングで図書館にメールを送るように依頼しているとのことでした。これは同校が euroCRIS に参加するとともに、非営利のCRISを使用していることが要因ということです。  ストラスクライド大学への訪問調査は諸事情により行えませんでしたが、メールでやり取りをしたところによるとエディンバラ大学と同じくPureへの研究成果の登録を教員に義務付けており、教員がPureに登録した論文がそのまま機関リポジトリ(IR)に流れる仕組みとなっているようです。なお、OA義務化にあたってはPureとIRをつなぐコネクタの開発を行ったとのことで、この取り組みはうまくいっているが、研究者のインパクトファクターへのこだわりやワークフローの複雑化による理解不足を払拭しきれていない、との課題も挙げられていました。  3大学に共通した点としては、即時OAや権利保持戦略は現状うまくいっているとの声が聞かれたものの、UKRI等によるブロックグラント(助成)はすべてAPCの支払いやRead & Publish契約の費用に使われており、今後APCの値上げやADCのような仕組みが出てきた際の対応は今後の課題となっているように感じました。また研究者が行う論文の登録フローは比較的簡便なため基本的には好評であるとのことでしたが、その一方でOA化のための様々な助成金があるため、その点がやや煩雑になっているとの意見も聞かれました。 おわりに という名の雑談  初の国際会議は、記念すべき32歳の誕生日に家を出て成田・ドーハ経由でエディンバラに着くまで36時間、機内でもホテルでもなかなか寝付けないハードな旅となりました。  国際会議はワークショップ以外基本的に発表を聞くだけなのだろうと思っていたのですが、ランチタイムやコーヒーブレイクなどフリータイムが多く、如何にほかの参加者とコミュニケーションを取って関係性を築いていくかが重要なのだな、と身をもって感じました。またデジタル・キュレーションというこれまで業務で行ったことのない分野の会議でしたので、これまで意識してないことを意識したり、知識不足をいつも以上に痛感したりするいい機会となりました。この経験を今後に活かしていければなと思っています。  最終日は早朝に起きて、一人「Arthur’s Seat(アーサー王の王座)」に登りました。自然豊かで素敵な場所でしたが、ばっちり花粉症チックな症状が出て、帰りのフライトもまた厳しいものとなりました。 Arthur’s Seatからエディンバラ市街を見下ろす。 文:有馬良一( 神戸大学 ) ガードレールが夏みかん色の県出身。京都で学生生活を送った後、2014年神戸大学附属図書館に入職。 サービス担当→リテラシー担当→システム担当と異動して、2022年10月から現職の電子図書館担当となり、翌4月からJPCOARの作業部会員に。イノシシは見るより食べる機会のほうが多い。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 「転換雑誌」は「転換」しない cOAlition Sの分析から | JPCOARウェブマガジン

    かたつむりの気になる国際動向 Series かたつむりの気になる国際動向 「転換雑誌」は「転換」しない cOAlition Sの分析から 佐藤 翔 24/1/10 同志社大学 1.「転換雑誌」とPlan S  連載第1回は機関リポジトリ≒グリーンOAの話をしたので、第2回はゴールドOA(OA雑誌)関連の話題から。  2018年の発表以来、OA界隈をリードしてきたPlan S(cOAlition Sによる助成研究成果の完全・即時OA方針)ですが、その中でも「転換雑誌」モデルに採択されている雑誌の2022年の状況の分析結果が、2023年6月に公開されていました[1]。  Plan Sではいわゆる転換契約(購読料とAPCの一括契約モデル)に応じている出版社のハイブリッド誌(購読型雑誌だけれども、APCを追加で払えばOAにできる)であれば、APCの支払い分についても研究者を補助するという形で、これまで転換契約を推進してきました。そして出版社丸ごとの転換契約を結べない場合の代替策として、雑誌単位でOAに転換する「転換雑誌(transformative journals)」という枠も設け、この対象と認められた雑誌についてもAPCを補助してきました[2]。2022年には16出版社、2,326タイトルの雑誌が転換雑誌プログラムに採択されていました。  転換雑誌プログラムの対象となるのは単なるハイブリッド誌ではなく、完全OAに「転換」する姿勢がある……つまり、いずれは購読費を一切求めず(当然、ビッグディール契約の対象タイトルからも外れる)、APC等のみで運営され読者は誰でも無料でアクセスできる、いわゆる完全なOA雑誌になる用意がある雑誌です。その「姿勢」の有無を判断する具体的な要件としては、毎年、前年に比べて「絶対値で5%以上」、「相対値で15%以上」、OA論文の割合が増加していること、そして出版する論文の75%以上がOAとなった場合には完全OA誌に「転換」することが求められます。「絶対値で5%、相対値で15%ってなんだ?」と初めて聞いたときはしばらく首をひねりましたが、どうやら単純な前年のOA割合とその年のOA割合の差が「絶対値」、その差を前年のOA割合で割った値が「相対値」ということのようです……まだわかりづらいな(汗) 式で書くと以下のようになります。  絶対値 = (n年のOA割合) – (n-1年のOA割合)  相対値 = ((n年のOA割合) – (n-1年のOA割合))/(n-1年のOA割合)  例えば雑誌Aの2021年のOA割合が5%、2022年が12%だったとしましょう。絶対値は12% - 5% = 7%なので、「絶対値5%」の割合はクリアしています。相対値についてはは7% / 5% = 140%なので(なんで100倍しないといけないのかは%表記の意味が云々とかを考える必要があります)、余裕でクリアです。しかし同じ絶対値7%増加でも、2021年のOA割合が60%、2022年が67%だと、相対値は7% / 60% = 11.7%にしかならず、要件を満たせていない、ということになります。要は、OA割合が低い時期はちょっとでもOA割合が増えていればいいことにするけれども、それなりにOA割合が増えてきたならOA割合を増やすペースも加速させなさいよ、ということです。  転換雑誌プログラム参加出版社は毎年、データをcOAlition Sに提出する義務があり、そうして提出されたデータの分析結果が今回、報告されたわけですが……その結果や、如何に? 2.「転換」した雑誌はわずか1% 68%は目標達成できず  如何にも何も結果はタイトルに書いてあるわけですが、まず転換雑誌プログラム参加2,326タイトル中、2022年に完全OAに「転換」した雑誌は26誌のみでした。約1%! 内訳としては米国機械学会(ACM)1誌、オクスフォード大学出版局(OUP)3誌、ケンブリッジ大学出版局(CUP)5誌、Elsevier 6誌、Springer Nature 11誌とのことです。数だけ見るとSpringer Natureすごいと思えますが、Springer Natureは転換雑誌プログラム自体に1,721誌と桁違いのタイトル数を登録しており、「転換」達成率はむしろ全体平均よりも低いです。この中だとOUPが4誌しか登録していないうちの3誌が「転換」達成したのが突出しています。OUP、誠実。ちなみに5誌が「転換」したCUPも、2024年からはさらに40誌も「転換」予定だそうで、これもすごい!  「転換」は達成していないものの、「絶対値で5%以上、相対値で15%以上、前年よりOA割合が増加」の要件を達成できた雑誌は695誌で、全体の約30%でした。逆に言うと「転換」もせず、要件達成もできなかった雑誌が約68%(1,589誌)もあります。やる気あるのか!……ないのかもなあ……(なお残る約1%は自らモデルから離脱したり休廃刊した雑誌)  内訳としてはBMJは登録32誌中、転換達成はないものの30誌が要件をクリア、英国Royal Societyが登録4誌すべて要件クリアなど、全体にいわゆる学会出版系の雑誌の方が成績が良い傾向にあると報告されています(学会系以外だとKargerは7/7が要件クリア)。それに比べて成績が悪いのは完全な商業出版者系で、Elsevierは約63%が要件未達成、Springer Natureは約77%が未達成です(大手商業出版者のうちWiley、Taylor & Francis等は2022年の「転換雑誌」モデル参加誌なし)。特にSpringer Nature、非現実的なプログラム参加数といい、端から達成できると思わず参加していたのでは……? 同社についてはさらにひどい話として、「転換」の条件である75%以上のOA割合に至ったのに、一方的にプログラムから離脱した雑誌が少なくとも6タイトルあったとのことです。中には100%の論文がOAになっているタイトルや95%がOAになっているタイトルもあったとのことで、それなのに完全OAにならないってどういうことなのか……プログラム参加雑誌は「今年、ほとんどの論文がOAになったのはたまたまで、いずれまたAPCを支払ってOAにしようという著者が減ってくるかもしれないし、完全OA誌にしたら投稿が減ってしまうかも!」と思っているのかもしれませんが、しかしそうした完全OA誌もビッグ・ディールタイトルの中に含まれているとすると、今現在に限定すれば、購読者はいったい何に金を払っているのか、という話になります。というか、そんなことを危惧するならそもそも転換雑誌プログラムに応募しないで欲しい。cOAlition Sのレポートでも「このレベルのOAで転換する用意がないのであれば、唯一の論理的な結論は、完全なOAに転換することはないということだ」と悲しい結論を述べています。 3.「転換」しない「転換雑誌」とcOAlition Sの今後の方針  要件を達成できなかった雑誌は転換雑誌プログラムの対象から除外されるため、2023年の対象雑誌は大幅に減少しています。先のSpringer Natureのひどい事例を見ても、どうも「転換雑誌」プログラムはうまくいったとは言い難いようです。  元々、cOAlition Sは「転換」の支援を2024年までと定めていたこともあり、転換契約や転換雑誌への支援は2024年を以て予定通り終了すること、転換雑誌については新規の受付も停止することが2023年1月付けで発表されています[3]。予定通りの終了なので転換雑誌プログラムの進捗状況が影響した、というわけでもないのかもしれませんが、この様子だと購読型雑誌からOA雑誌への「転換」が、一部の雑誌にとどまらず全体に波及するという未来予想図は、あまり現実的には見えないような……? [1] Kiley, Robert. Transformative Journals: analysis from the 2022 reports. Plan S. 2023-06-20. https://www.coalition-s.org/blog/transformative-journals-analysis-from-the-2022-reports/ [2] 船守美穂. プランS改訂版発表後の展開―転換契約等と出版社との契約への影響. カレントアウェアネス. 2020, (346), CA1990, p. 17-24. https://doi.org/10.11501/11596736 [3] cOAlition S confirms the end of its financial support for Open Access publishing under transformative arrangements after 2024. Plan S. 2023-01-26. https://www.coalition-s.org/coalition-s-confirms-the-end-of-its-financial-support-for-open-access-publishing-under-transformative-arrangements-after-2024/ 文:佐藤 翔( 同志社大学 ) 1985年生まれ。2012年度筑波大学大学院博士後期課程図書館情報メディア研究科修了。博士(図書館情報学)。2013年度より同志社大学助教。2018年度より同准教授。図書館情報学者としてあっちこっちのテーマに手を出していますが、博士論文は機関リポジトリの利用研究で取っており、学術情報流通/オープンアクセスは今も最も主たるテーマだと思っています。学部生時代より図書館・図書館情報学的トピックを扱うブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」を開始。ブログの更新は絶賛滞っているものの、現在は雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』誌上で同名の連載を毎号執筆中。本連載タイトルもそれにちなんだもの。ちなみに「かたつむり」は高校生の頃に友人が適当につけたハンドルネーム(みんみんじゃあ。関東の一地方のかたつむりの方言であると直前の授業で紹介されていたとか)が由来で、佐藤本人は特にかたつむりに強い思い入れはありません。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 狂乱列車をもう一日はダメ、ゼッタイ | JPCOARウェブマガジン

    ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ) Series ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ) 狂乱列車をもう一日はダメ、ゼッタイ 阿部 潤也 26/6/19 東京歯科大学 JPCOAR作業部会のメンバーにお仕事紹介をしていただきながら、個人のリポジトリ的なことがらも語っていただく連載企画「ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ)」。 今回はJPCOAR運営委員会委員の阿部潤也さんにご執筆いただきました。 Judas Priest、Deep Purple、Michael Schenker Group これらは高市早苗首相が好きだと公言しているヘヴィメタルバンドです。 ヘヴィメタルはジャズやポップスと同様に音楽のいちジャンルで、ロック(岩)からハードロック(硬い岩)と進化して、さらに音楽性を激しく、そして重くしたのがヘヴィメタル(重金属)です。ヘヴィメタルは略してヘヴィメタ、あるいはメタルと呼ぶことが一般的ですが、そこから派生したスラッシュメタル、デスメタル。さらには地域による音楽性の違いを現わしているLAメタル、NWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)等もあり、それらの音楽をジャンル分けすること自体に無理が生じるほど多様化していることがうかがわれます。 今回のワタリポでは筆者が愛聴する3組のヘヴィメタルアーティスト、バンド、ユニットを紹介したいと思います。万人受けするものではないので決してオススメはしません(笑。 まず、はじめはOzzy Osbourne。1960年代から活躍するヴォーカリストでメタルの帝王と呼ばれています。ファーストソロアルバム収録のオープニングナンバーであるCrazy Trainが今でもファンから一番愛されているのは周知の事実です。晩年はパーキンソン病を患い闘病していたものの、2025年7月5日に4万人以上を集めたチャリティコンサート「Back To The Beginning」では玉座に座りながらも、これまでと変わらぬ歌唱パフォーマンスを披露していたことから、さらなる音楽活動を期待していたファンも多く、私自身もそれを疑いませんでした。ですが、その17日後に亡くなるという、まさに帝王らしい生き様を見せてくれました。 高校生の時のバイト代で形として残っているのは運転免許証と、このOrville LPC-75 次に紹介するのはDream Theater。冒頭にメタルのジャンルをいくつか紹介しましたが、そのまたひとつにプログレッシブメタルがあります。変拍子を多用する変態的でありながらもメタル然とした重々しく、激しい音楽を高度な技術で演奏し、独自のジャンルに昇華させた第一人者的なバンドです。先述のOzzy Osbourneを聴き始めたきっかけは忘れてしまいましたが、Dream Theaterは高校の同級生であるYくんが勧めてくれたのは今でも鮮明に覚えています。彼らは音楽大学出身のエリート音楽家で、激しくもインテリジェンスな作風が魅力的なバンドです。 90年代、円高のおかげで手に入れられたFenderアメビン62ストラト 最後に紹介するのはBaby Metal。アルバムがビルボードランキング9位になった実績はもちろん、海外に日本人によるメタル文化をアピールした功績ははかり知れません。彼女たちの歌唱とダンスパフォーマンスはもちろんのこと、神バンドと呼ばれるバックバンドの確かな演奏力、アイドルとヘヴィメタルを融合させたこのプロジェクトを成功へと導いたプロデューサーの慧眼と力量には感服するしかありません。真面目にふざけているところに筆者は惹かれたわけですが、そういう意味でのお気に入りは1stアルバムで、名盤中の名盤と個人認定しています。ヘヴィメタルも演者、聴衆ともに少子高齢化が加速度的に進んでいるわけですが、そこに風穴を空けたことも貢献としては多大だと思います。 コロナ禍中に血迷ってDIYで全塗装(一年以上かかりました)したIbanez RX 最後に少しだけ真面目な話を。 日本全体、そしてどの業界も決して元気があるとは言えない今日このごろなわけですが、音楽業界もCDが100万枚、200万枚、売れたような時代を経て、昨今ではサブスク(ここでは月額制音楽サービスのことで、図書館業界における年間購読ではありません(笑。)全盛になり、非常に厳しい状況にあることはみなさんもご存知かと思います。しかしながら、現在はどのバンドも、アルバムをリリースしようが、そうでなかろうが積極的にライブ活動を行い、モノからコトへとビジネスをシフトしています。どの業界でも変革が求められている現状に甘んじず、元気になるにはどうしたら良いか、業界を盛り上げるにはどうしたら良いかを考え続けることが求められているのです。図書館業界が元気になるには、その元気を大学に、そして社会に還元していくにはどうしたら良いかを一緒に考え、実現していくきっかけが得られるJPCOARであって欲しいものです。私自身は運営委員として、またコミュニティ活性化部会の一員として活動しており、新たな知識・知見を得られたのはもちろん、多くの方と知り合うことが出来ました。活動に興味のある方は是非「中の人」としてご一緒できたらうれしいです。 文:阿部 潤也 (東京歯科大学) 今回は裏ワタリポということで3本のギターを紹介させてもらいましたが、最近はギターをゴルフクラブに持ち替えてせっせと緑の中を駆けずり回っている今日この頃です。 ※意味不明すぎるタイトルは、それぞれのアーティストの代表曲:「狂乱列車」=Crazy Train、「もう一日」=Another Day 「ダメ、ゼッタイ」=イジメ、ダメ、ゼッタイ   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 『ばけばけ』をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ | JPCOARウェブマガジン

    オープンアクセス論文紀行 Series オープンアクセス論文紀行 『ばけばけ』をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ JPCOAR 広報・普及作業部会 25/10/9 国内の大学や研究機関、助成機関では、様々な調査研究の文献を機関リポジトリで公開しています。「OA論文紀行」では、毎回テーマを決めて専門家の方以外にも親しみやすい日本語文献を紹介します! 今回は、2025年後期に放送を開始したNHK連続テレビ小説『ばけばけ』にちなんで、「ラフカディオ・ハーン/小泉八雲:世界の民間伝承」をテーマとしました。気になる文献があったら、是非ご覧ください! Google Mapを見る→ ウイルタ語北方言テキスト : 人喰いお化けの話 山田 祥子, 北方言語研究, 5, 261-280, 2015 北海道大学学術成果コレクション (HUSCUP) 「マヨヒガ」伝承に込められた心意の再考 : 柳田國男・佐々木喜善を出発点として 佐々木 赳人, 東北宗教学, 7, 177-200, 2011 東北大学機関リポジトリTOUR 信仰に対する思考 : 佐渡島におけるムジナをめぐる民間信仰の民俗誌 山岸 哲也, 現代民俗学研究, 11, 51-61, 2019 つくばリポジトリ(Tulips-R) ハーンと日本の原風景 ―松江― 三成 清香, 外国文学, 62, 77-94, 2013 宇都宮大学 学術情報リポジトリ(UU-AIR) フィールドワークに基づく物語創造型のワークショップの実践モデルの開発 「妖怪採集」と「切貼民話」の手法を踏まえて 市川 寛也, 平山 雄大, 群馬大学教育実践研究, 42,57-65, 2025 群馬大学リポジトリ 明治前期の怪談作品解説 : 日本近現代怪談文学史7 三浦 正雄, 埼玉学園大学紀要. 人間学部篇, 12, 295-304, 2012 埼玉学園大学・川口短期大学機関リポジトリ 昔話「三枚のお札」と謡曲「黒塚」「山姥」 : 山と里の対比から 津金 澪乃, 国立歴史民俗博物館研究報告, 240, 55-76, 2023 国立歴史民俗博物館学術情報リポジトリ ヌシ伝承と治水事業 : 見沼・印旛沼の事例から 伊藤 龍平, 國學院雑誌, 124(3), 1-21, 2023 國學院大學学術情報リポジトリ「K-RAIN」 ラフカディオ・ハーン旧蔵書『ギリシア詞華集』仏訳版の書き込みについて : 昆虫譚と幽霊妻をめぐって 中島 淑恵, 富山大学人文学部紀要, 66, 175-189, 2017 富山大学学術情報リポジトリ ToRepo 小泉八雲と周囲の人々 染村 絢子, 資料館紀要, 2, 7-47, 2001 金沢大学学術情報リポジトリKURA 雪女はどこから来たか 大澤 隆幸, 国際関係・比較文化研究, 4(1), 69-86, 2005 静岡県立大学・短期大学部機関リポジトリ ラフカディオ・ハーンとケルト文化 渡辺 忠夫, 文化科学研究, 16(2), 45-52, 2005 中京大学学術情報リポジトリ グリム・メルヒェン「踊って擦り切れた靴」とハンガリーの民話「靴をはきつぶす王女たち」について―舞踊とハンガリーの伝説を手がかりとして 鶴田 涼子, 人文論叢 : 三重大学人文学部文化学科研究紀要, 36,45-55, 2019 三重大学学術機関リポジトリ研究教育成果コレクション MIUSE ジャーナリストとしての小泉八雲 : 中国に注ぐ目線 鄭 芝媁, 文化交渉 : 東アジア文化研究科院生論集, 7, 201-216, 2017 関西大学学術リポジトリ 手にまつわる怪談 : ハーン、ルファニュ、モーパッサン 平川 祐弘, 大手前大学人文科学部論集, 6, 163-183, 2005 大手前大学・大手前短期大学リポジトリ ラフカディオ・ハーンと繋がりの意識 : 『怪談』における再話の方法について 門田 守, 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学, 53(1), 257-273, 2004 奈良教育大学学術リポジトリ ラフカディオ・ハーンの文化資源的活用に関する実践報告 小泉 凡, 島根県立大学短期大学部松江キャンパス研究紀要, 48, 37-45, 2010 島根県立大学機関リポジトリ 小泉八雲と怪異の世界 貝嶋 崇, 比治山大学紀要, 27, 25-33, 2021 比治山大学学術リポジトリ ウクライナ民話の紹介 : 日本の昔話との比較 林 伸一, 異文化研究, 17, 21-37, 2023 山口大学学術機関リポジトリYUNOCA 人間から樹木へ受け継がれる生命 : ラフカディオ・ハーンが『怪談』で再話した松山ゆかりの桜の物語 矢次 綾, 松山大学論集, 34(5), 147-162, 2022 松山大学機関リポジトリ ラフカディオ・ハーン『飛花落葉集』の検討 : 「舞台の裏」と「幽霊の接吻」における空間構造を中心に 秦 裕緯, 熊本大学社会文化研究, 17, 243-253, 2019 熊本大学学術リポジトリ 琉球諸島の民話と星 山里 純一, 人間科学, 31, 145-192, 2014 琉球大学学術リポジトリ 編集後記 島根大学で勤務時に、イベント企画で『怪談』収載の「むじな」の朗読劇を行ったのを、懐かしく思い出しました。映画『怪談』がこれを機にデジタルリマスターとかされて劇場にかかりませんかね。(金子) 様々な視点の論文があり、探すのが楽しかったです。中でも、ハーンにとって松江がどのような場所だったのかを掘り下げた論文は、特に興味深く印象に残りました。(野村) テーマはおなじでもいろいろな主題・方法・観点の論文があり、研究の幅広さを感じられたようでわくわくしました。(熊﨑) ヘッダの画像は 河鍋暁斎 画『暁斎百鬼画談』,岩本俊,明22.8. 国立国会図書館デジタルコレクション(コマ番号7) (参照 2025-09-29)を改変して作成   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • JPCOARウェブマガジンがスタートします!:広報・普及作業部会の11人が語る新ウェブマガの魅力  | JPCOARウェブマガジン

    Talk JPCOARウェブマガジンがスタートします!:広報・普及作業部会の11人が語る新ウェブマガの魅力  JPCOAR広報・普及作業部会 23/10/23 JPCOARの広報誌が変わります! 約6年半もの間、皆様にご愛読いただいた「CoCOAR:JPCOAR Newsletter」の後継として、この度「JPCOARウェブマガジン」がスタートします。 2022年春より、JPCOAR広報・普及作業部会が中心になり、ウェブマガジン化に向けた準備を進めて参りましたが、本日総勢11名の現メンバーが集結し、ウェブマガジンの魅力や展望について語り合います! ※なお、各発言は所属機関の公式見解ではなく発言者個人の見解です。 野中雄司(富山大学)|  私は今年から担当なんですが、どんなきっかけでウェブマガジンの企画がスタートしたんでしたか? 永井一樹(兵庫教育大学)|  CoCOAR(※JPCOARの前広報誌)って面白くて役にたつニュースレターなのに、たどり着くのが結構難しい。まずこの問題を解決すべきではと提案したことが最初ではなかったかと思います。 安田 翔子 (富山大学)|  そうですよね。JPCOARの掲載ページから“ダウンロード”をするのって業務が忙しいとつい後回しにしてしまいがちな気がします。紙だと閲覧が回ってきたら目を通すのも自然とできるんですけど…。 南雲 修司 (東京学芸大学) |  確かに…供閲でまわってくると見てしまいますね。そういえば、CoCOARはPDFだったので、それよりもブログのように記事ごとに固有のURLが発行されたほうがSNS等で拡散しやすいという話もありましたね。 植山 廣紀 (岡山大学)|  ありました、ありました。他に速報性の話も出ましたね。ここ数年はCoCOARは年2回の発行になっていましたが、できるだけタイムリーな情報提供が課題になっていましたよね。 井上 尚紀 (広島大学)|  編集側の観点で言うと、記事をいただいてから誌面のレイアウトにも気を配る必要があるので発行まで時間がかかることが多いですよね。ウェブマガジン方式が一記事から入力・公開ができるので編集側の労力省力化や読者向けの速報性も期待できるかなと思います。 山下真人(兵庫教育大学)|  期待したいですね! 打ち合わせでは、スマートフォンでPDFを読むのは少し手間がかかるため、ウェブマガジン化でレスポンシブル等の機能で対応できるならといった話も出ていたような気がします。 伊藤文(富山大学)|  スマホで簡単に読めるのはよいですね! せっかくなのでリポジトリ担当者だけでなく、気軽にいろんな人に読んでもらえるものにしたいですよね。 山下|  そうですね! わたしの場合もPCではあまり読まないですし、読んだとしても短時間です。 野中|  ウェブマガジンの記事内容はどういったものを想定しているのでしょうか? 南雲|  そうですね…、「OA論文紀行」(注)みたいに一般の人も興味を惹きそうなものは、結構バズる可能性を秘めているのではという気がします。 注:オープンアクセス論文紀行というタイトルでCoCOARで不定期に掲載していた連載コーナー。毎回テーマを読者から募集して、専門家以外の方にも親しみやすいオープンアクセス文献を紹介していた。 永井|  想定読者をどうするかは検討当初から今に至るまで、すったもんだが続いています。山下さんは、できるだけ広くアカデミアを超えた読者までと言ってましたよね。 山下|  そうですね。南雲さんが挙げられた「OA論文紀行」がまさにそれを象徴するように思えました。 まず「オープンアクセス」という言葉や取り組みを関係者にとどまらず、広く一般に伝える記事も重要ではないかと思っています。 安田|  ちなみに「オープンアクセス」という言葉は世間ではどのくらい認知されているんでしょうかね。 テレビで「オープンソース」とごっちゃになって使われているのを見かけてむず痒くなることがありました。X(Twitter)のアンケート機能で集計とってみるのも面白そうです。 山下|  たしかに認知はあげていきたいですね。認知を上げるための一般向けの記事内容としては、OA論文紀行も、CoCOAR最終号に載った在野研究者の荒木優太氏の記事(注)もそうなのですが、「オープンアクセス」を身近に感じられる内容が個人的には好みです。 注:CoCOAR16号掲載 リンク: https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/records/2000266 野中|  認知をあげていくのも、どのターゲットに、何の目的で、ということを考えながらやりたいですね。 永井|  たしかにそうだと思います。一般の方も想定しつつ、読者の第一はJPCOAR会員のみなさまだとも思います。会員向け記事と一般向け記事はずいぶん内容も書き方も違ってくると思うのですが、この辺のスタンスがとても難しいですね。 南雲|  そうですねー、どちらも大事という意味では、全体としてはぶれてしまうかもですが、記事ごとに読者を想定するということでもいいのかなと個人的には思います。 野中|  誰向けか、というのは今後様々な記事や記事のアイデアが出てくると思いますし、あえて狭める必要もないのかなとは思っています。こういうの(誰に読んでほしいか)タグとかなんかでわかるようにできないものですかね? 熊崎 由衣(千葉大学) |  なるほど、そういうタグの使い方もありますね。 永井|  ウェブマガジン化で拡散性が高まり、スマホでも読みやすくなれば、読者の範囲もこれまでより広がると思います。誰向けかということにあまりこだわらず、バラエティ溢れる記事づくりをしていければいいですね。 野中|  今後、編集部だけではなく、JPCOAR全体からも記事アイデアをもらっていきたいと考えているので、風呂敷は大きいほうがいいかなぁと。あと、JPCOARという(現状では)団体の性格関係上、編集部の考え方も変わっていきそうです。 熊崎|  会員向け記事と一般向け記事では内容等を考慮した方がいいという点ですが、 JPCOAR会員機関は多様ですし、勤務されている方も様々だと思います。会員機関を対象にした記事であっても、リポジトリ業務初任者、あるいはリポジトリ業務に携わっていなかった方も意識した記事にできれば、と思います。その結果、図書館員でない方にも届いたら嬉しいです。研究者や研究コミュニティなどと協力していくのも重要だと思うので。 金子 尚登(広島大学) |  想定読者層は、ぼんやりこんな感じかなと思いましたが。「リポジトリ担当者向け」「大学・研究機関図書館員向け」「研究者向け」「一般向け」…あまり意識しない方がいいのですかね。 永井|  読者層は多様だけど、記事を書くときは読者想定を明確にする必要があるかと思います。 植山|  リポジトリはいまや各大学・研究機関が(ほぼ必ず)持つインフラとしての側面もあるので、研究者の皆様とリポジトリ担当者のモチベーションアップにつながるといいですね。たとえば、以前リポジトリの管理を担当していたときは、一担当者として研究者の方から「オープンアクセス」や「リポジトリ」への期待とか、課題(もっとこうなったらいいのにな)などを率直に知りたいなと思っていました。 永井|  How情報も大事だけどWhyもほしいですよね。Whyがあると、俄然血がみなぎってきたりします。 野中|  自分はそういう意味ではWhyをたくさんやりたいですねー。また、CoCOARの後継という位置づけかとも思いますが、うまく引き継ぎつつ新しい概念でスタートしたいとも思っているので、今までになかったタイプの記事も受け入れていきたいかな、と。 やっぱり記事のアイデアが大事だと思いますし 、これはいろいろな人からいろいろなアイデアが出てくると面白いかなと思っています。みなさんは、特にCoCOARにはなかったようなタイプで企画してみたい記事などありますか? 南雲|  JPCOARの会員館は小規模館の方も多いかと思いますので、そういう方に焦点を当てた記事があると共感しながら読んでいただけるのかなと思いました。 野中|  小規模館でも、10年20年前と比較してもオープンアクセスに関する距離は近づいてきていると思いますので、JPCOAR外にもそうですけど、JPCOAR会員館に対して、まずはきっちり広報していくというのは大事かなと思っています。あと、こっちは先進的というか、とんがってるほうですが、永井さんが以前言っていましたけど、Elsevierの社長にOAの今後の方針をインタビューするとか、真面目にいいなぁ、とか。とはいえ、「 論文等のオープンアクセスについて(論点とりまとめ) 」(内閣府 科学技術・イノベーション推進事務局 / 2023年5月25日 ) とか、こういう情報をできれば何をやっていけばいいのかが想像できるようなかたちできちんと会員館に届けねばならないのかな…とも思います。ウェブマガジンに手段は限らずですが。 植山|  確かに内容の要点をまとめたり、かみ砕いて解説した記事があると助かりますね! 私もそういうのを発信していきたいです。私もまだまだ専門的な文書を読むには知識が足りずわかっていないことが多いので、サポートしてくれる記事があるのは助かります。難しいこと、専門的なことはそれだけでクローズドな情報になりがちなので、そこをできる限り紐解いてオープンにしていくことで読者や会員機関に役立つ内容にしたいです。 野中|  いいですね。個人的にはWhyのとんがったやつやりたいですけど、まずは自分ところの会員館にしっかり、現状のオープンアクセスに関する国の方針とか、そういうところをかみくだいたわかりやすい記事なんかもやるべきではないかなぁと思ったりします。 熊崎|  これまで、企画を考えるときは、ふんわりと「業務が大変だけれど新しいことをしたい人が読んで頑張れる記事はなんだろう」「海外に関心がある方が励みになる記事になるかな」くらいのことを考えていました。対象と目的を考えて記事にしていくのは大事ですね。 安田|  各機関のリポジトリ担当者の職場レポートのように横のつながりが広がっていく内容があるといいかなと思います。 リポジトリは図書館の中でも担当者は1人だったり、他にわかる人がいなかったりで孤立しがちな分野だと感じます。 各館の担当者が「こんな事で苦労した」「困った時はこんな風に解決した」のような体験を共有し合ったり、あるある話みたいな共感できるものがあるとリポジトリ担当者の励みになりますし、担当したことがない図書館員にもどんな事をしているのか理解してもらいやすくなるんじゃないでしょうか。 金子|   確かに、大部分の機関では担当者(係)は他の業務も兼任しているのでしょうし、実際リポジトリ業務にそこまで大きな労力もさけないでしょうし。業務内容の継承もうまくいかないこともあるでしょうし。サポートってとっても大事ですよね。 野中|  そうですよね担当者は孤立しがち! 今後は、オープンサイエンス、オープンアクセスは誰しもが知らなければならない業務知識になってくると思いますし、うまく言えないけど、リポジトリ担当者という概念もなんとなくはずしていきたい気持ち…。 安田|  そうですね。私が初めて担当になった時はキャンパス内で誰もわかる人がいなかったので、他のキャンパスに行って教わったりネットで他の大学の情報を集めたりしていました。 世代間や地方や都市部、機関の規模の差でも意識は様々だと感じます。「自分はリポジトリは担当外だから…」と敬遠してる図書館員、実は結構いると思います…。 植山|  わかります!! ネットで他の大学の情報の検索、私もやりました!! そして、内部情報でもあるためか意外と出てこなかったり、仕方ないのでIRDBでざっくり探して他大学のメタデータを参考にしてみたりして…。担当者になると本当に手探りで不安なところありますよね。 「このウェブマガジンを読めばオープンアクセスのいまがわかる」ようにできたらいいですね。CoCOARやほかの媒体では既出かもしれないような(「そもそもオープンアクセスって何?」的な記事、とか)も、改めてここ数年の潮流を踏まえて出せたらいいかも、と思いました。 南雲|  スキーマやハーべスティングに関する知識が、NACSIS-CATのコーディングマニュアルぐらいに、大学図書館員の共通知識になるといいんですかねー。 金子|   JAIRO Cloud未採用館にとっては、移行するかどうか、移行するならいつするかなど、情報収集する必要もあります。 野中|  JAIRO Cloud未採用館!! そうですね! これけっこう大事ですねー。 井上|  すそ野を広げる場合だと記事中の用語の使い方にも気を使いますよね。専門者向けならそのまま使えますが一般向けなら平滑な語彙を使うなど。用語集とかもあっても良いのかもしれません。(ウェブマガジンでは無いですかね?) 「リポジトリ」の単語でも、図書館の世界ではInstitutional Repositoryですけど、IT系ならソースコードや設定情報などの集積場所(Githubとか)にもとれますから。 安田|  植山さんがおっしゃるように 担当者になると本当に手探りで不安なところあります! 不安ですし、初めたばかりの頃はカタカナの専門用語がズラッと並んだマニュアルにクラクラしたり…。なので井上さんのご提案の用語集などがあると初心者には本当にありがたいです。 南雲|  うーん。やっぱり想定している読者や内容が人それぞれでおもしろいですね。みなさんそれぞれがやりたいと思える企画を記事にしていけるといいなぁと思いました。 野中|  ほんとにそうですよね。これまで編集方針について、部会内でかなり議論してきましたが、まとめはできたのでしたっけ? 永井|  先日の会議で 以下のように まとまりました! JPCOARウェブマガジンがめざすもの 1 キャッチコピー 「オープンアクセスで世界を幸せにするウェブマガジン」 2 ミッション 「オープンアクセスが広がることで、世界はきっと幸せになる」という信念のもと、オープンアクセスリポジトリ(以下、リポジトリという)に携わる人々や学術情報流通に関わるすべての人々を応援するメディアになる。 3 ターゲット オープンアクセスや学術情報流通に関する先進的・実践的な情報をわかりやすく編集し、JPCOAR会員および学術情報流通に関わる人々にとって、有益かつ励みとなる記事づくりをめざす。ただし、先進的な記事であっても、誰もがわかりやすい記事づくりを意識する。 4 姿勢 ① 個人的な思いが込められた記事づくりを心がけること(ウェブマガジンを通じて、会員機関や関係する人々に伝えたいメッセージがある)。 ② リポジトリ業務の初任者やリポジトリ業務に携わっていない読者層をも意識し、わかりやすい記事づくりを心がけること。 ③ リポジトリに携わる現場の人々が、業務の励みとなるような記事づくりを心がけること。 ④ オープンアクセスの意義や、リポジトリが社会や世界とつながっていることが実感できるような記事づくりを心がけること。 ※ 編集室(広報・普及作業部会)の姿勢 ⑤ 成長していくウェブマガジンを目指し、変化を面白がる気概をもつこと。 ⑥ Must(でなければならない)やShould(べき)ではなく、Can(できる)やMay(かも)で企画を語れる空気の醸成に努めること。 ⑦ 編集室がそこに属するメンバーにとって、仕事として意味があり、楽しく、やりがいのある場として機能すること。 山下|  「オープンアクセスで世界を幸せにする」って良いですね!! 具体的には誰が幸せになるんでしょうか? 雑誌の価格高騰によって情報格差が生まれた研究者? 南雲|  私の理解では、オープンアクセスによって研究が促進されることで世界がよりよくなって幸せな人が増える、でしょうか。 山下|  ありがとうございます! つまりオープンアクセスが促進されることで、広く一般も幸せになるということでしょうか。思い浮かぶのは…専業主婦も、商店街の駄菓子屋さんも、レストランのコックさんも、子どもたちも………オープンアクセスで幸せになるイメージでしょうか。 南雲|  そうですねぇ、例えばですが、地球温暖化が解決したり、難病の治療が進めば、そういう方々も幸せになるというイメージかなぁ。 山下|  昨年のOAWのテーマも「気候正義のためのオープンデータ」(注)でしたね。 注:オープンアクセスウィーク(Open Access Week)の略。毎年10月に、世界各地でOAに関するイベントを開催する取り組み。オープン・コミュニティでのつながりと協力を促進することを目的としている。 今年2023年のJPCOAR特設ページ: https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/oaw2023 南雲|  そういえば、先ほどの「 論文等のオープンアクセスについて(論点とりまとめ) 」では、「オープンアクセスの国民に対するメリット」について示されていましたよ。 熊崎|  オープンアクセスの例でよく話題になりますが、コロナ関連の研究の進展もありますよね。論文がプレプリントサーバで公開されたり、データセットが公開されたり。感染者数のデータなどを集計・公開されている個人の方もいらしたと思います。 山下|  SDGsの第4の目標である“だれもが公平に、良い教育を受けられるように、また一生に渡って学習できる機会を広めよう”は関連ないですか。 南雲|  確かにそういう生涯学習的な観点もあるかもしれないですねー。学芸大に異動して思いますが、教育大学は研究大学とかなり観点が異なるので、こういう別の観点も大事だなと思います。 熊崎|  そういえば、 「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」 ( 中央教育審議会 / 平成30年11月26日 )でも、リカレント教育の重要性について書かれてましたね。 山下|  SDGsと言えば…、最近奥さんが「コンポスト」(生ゴミを土に還すこと)に凝り出して、口酸っぱく「地球温暖化やSDGsなど高尚なことと遠ざけるのではなく、自分事として捉えることが大事だ」と言います。様々な社会課題を「オープンアクセス」とつなげることって意外に難しいですね。例えば、「今年は特に暑いなぁ」→「地球温暖化」→解決策としての「オープンアクセス・データ」につなげるって、なかなか難しいですよね。 熊崎|  確かにそんなにストレートにはつながらないかもしれませんね。個人的な例ですが…。私が図書館で勤務する前でも、業務に関連する情報を得るために機関リポジトリの論文などもよく読んでいました。私は直接恩恵を受けているのですが、業務上関わりのある方は (オープンアクセスを知らなくても)影響があった、と言えるかもしれません。間接的に何かがつながっていって、どこかでよい瞬間が生まれればそれでいいのかな、とも思います。 野中|  なるほど間接的影響もありますよね!! 私が考える誰が幸せになるかの答えは、“人類”です!!! 山下|  “人類”ですね!! 海外事例も含めてオープンアクセス・データがノーベル賞級の人類の発見を生んだという事例等はないのでしょうか? 南雲|  (ノーベル賞を受賞していなくても優れた研究は多いと思いますが)逆にジャーナルの高騰等で研究者が自由に論文を読めなくなることで、ノーベル賞級の発見の芽が摘まれてしまうということはあるかもしれませんね。 野中|  ここで少し新しい話題を。今回CoCOARのリニューアルに近い形でウェブマガジン化という流れもありますが、これをきっかけとして新しいメディアとして考えてもよいのかなとも思っています。 その際、JPCOAR全体の広報と考えた場合に、ウェブマガジン含めて現在のJPCOARのツール・メディアの使い分け、位置づけというのは話し合わなければならないかなぁと思っておりますが、例えばWebサイトとウェブマガジンの位置づけと使い分け、といったことはみなさまいかがでしょうか?というのも先に出ていたサポート情報や用語集的なものはこういった全体の広報媒体の中で考えていかねばかなぁとか思うんですよ。 大澤紗都(国立情報学研究所)|  なるほど。個人的なイメージとしては、固定的だったり正確性を求められる情報はWebサイト、旬があって流動的な情報はウェブマガジンかなと思いました。ウェブマガジンは、作成者(発話者)の体温が感じられるうちに記事を公開して、読者と温度を共有できる場になったらいいな…と想像しています。逆に用語集は温度をもつ性格のものではないかな?と思うので、Webサイトで確かな情報を発信できたら良いかしらと思います(サポート情報は迷っていて、体験談的なものだったらウェブマガジンで公開してアーカイブにアクセスしやすくしておくといいのかなぁと思ったり)。先ほどの「JPCOARウェブマガジンがめざすもの」の姿勢にもちょっと通じるところがあるかも。 野中|  ありがとうございます。なるほど、そうですね。ウェブマガジンも含めて、今後できれば戦略的に広報していきたいですね。さてさて。いろんなお話が出ましたね…さあ、とりあえずウェブマガジンの準備にかからなきゃ!   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • ゲイツ財団新OA方針の波紋! プレプリント公開義務化、APC補助廃止 | JPCOARウェブマガジン

    かたつむりの気になる国際動向 Series かたつむりの気になる国際動向 ゲイツ財団新OA方針の波紋! プレプリント公開義務化、APC補助廃止 佐藤 翔 24/5/23 同志社大学 1.ゲイツ財団がOAポリシーを改訂!  オープンアクセス方針の過激派、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団(以下、ゲイツ財団)が2025年1月からの新たなオープンアクセス(OA)方針を発表し[1]、またもオープンアクセス、学術情報流通界隈を沸かせています。新OA方針ではプレプリントの公開を義務化するとともに、APCへの支援は終了するというのです。主要な研究助成機関として、プレプリントの公開を義務化する初めての例であると言われています[2]。  ゲイツ財団は言わずと知れた、マイクロソフト社の創業者、ビル・ゲイツ氏とその配偶者が創設した慈善基金団体です。2017年からは助成を受けた研究に対し、エンバーゴなしの出版後即時CC BYライセンスつきのOAを義務付け、そのOA方針を掲げて即時OAを認めない有名雑誌・出版社と対峙し、多くのケースで出版社側が折れる形となりました(ハイブリッドを認めていなかった雑誌等にも例外的に導入)。さらにF1000 Researchと組んで論文公開プラットフォーム ‘‘ Gates Open Research”も創設し、被助成研究の受け皿を自ら作ったことも話題となりました[3]。2021年からはOA義務化の対象を研究論文に加えて研究データに拡大した上で、「出版後即時に一般に利用可能なリポジトリに、CC BYライセンス付きで公開すること」と、リポジトリでの公開に限定する形に方針を転換しました。加えていわゆる権利保持戦略に関する文言を論文投稿時に含めることも義務付けており[4]、Plan S等のリポジトリでの公開を再評価する方向性とも歩調を合わせています[5]。いわばゲイツ財団は、即時OA、権利保持戦略といった昨今のOA方針の新潮流の、先駆的な実現者であり続けてきたと評価できるでしょう。  2021方針で義務化されているのは、いわゆる著者最終稿(AAM)のリポジトリ公開ですが、OA雑誌等(ハイブリッドは不可、など条件あり)での発表にあたっての論文処理加工料(APC)の助成も継続されていました。しかし2025年からの新方針においては当初(2024年3月27日段階)、プレプリントをCC BYライセンスで公開することを義務付けること、APCへの助成は廃止すること等のみが発表されていたため[6]、査読後のバージョンへのアクセスはどうなるのかといった懸念の声も一部から上がっていました。しかし4月に入ってから公開されたより詳細な方針案により、懸念の一部は杞憂であったことも明らかになってきています。 2.新OAポリシーの概要は?  現在(2024年4月17日)、発表されているゲイツ財団の新OA方針の要点は以下の通りです[7]。なお()内は佐藤が補った内容です。 ・助成論文は可能な限り速やかに、財団が認めたプレプリントサーバー等においてプレプリントとして公開すること。 ・(その後、雑誌等に投稿され)採択された論文は、出版後即時に、PubMed Central等のオープンアクセスリポジトリで(著者最終稿等を)公開すること。 ・すべての助成論文は、重要な結論に対するその後の更新も含め(つまり、査読で大きな修正があった場合にはそれを反映したバージョンも)、CC BY 4.0または同等のライセンスで、一切のエンバーゴなしに直ちに入手可能とすること。 ・助成を受けた者は、助成論文をオープンアクセスリポジトリで、CC BY等のライセンスを付与して公開できるよう、著作権を保持すること。 ・根拠データについても助成論文を公開した時点で即時に、可能な限りオープンアクセスとすること。助成論文には根拠データの利用可能性宣言(データの入手方法、利用可能かどうか等の説明)を含むこと。FAIR原則の遵守を奨励する。 ・財団はAPCを負担しない。必要であれば助成を受けた者、あるいは共著者が負担すること。 ・以上を遵守することは資金提供の要件であり、(その研究が)全面的に財団の助成によるものか、部分的にとどまるかに依らず、すべての助成論文が対象となる。遵守状況は継続的に審査され、遵守していない場合は助成対象者及び著者に連絡する。 ・助成を受けた研究者は必要に応じ、以下の文言を論文の謝辞等に含める。:「この研究は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団(助成金番号)の支援により行われた。本著作物において表明された結論および意見は、著者個人のものであり、財団に帰属するものではありません。財団の助成条件に基づき、この投稿から生じる可能性のあるAuthor Accepted Manuscript版には、クリエイティブ・コモンズ表示4.0ライセンスが既に付与されています。プレプリントとして投稿された作品は、査読プロセスを経ていないことにご留意ください」  方針本体の公開前には、「義務化されるのはプレプリントの公開である」「APCの助成を廃止する」という点が専ら強調されていましたが、実際の方針では出版後即時の著者最終稿等の公開の義務化についても現方針から継続されることとなっていました。そのため現方針からの大きな変更点としては、「プレプリントのCC BYライセンスでの公開も義務化される」「APCの助成はなくなる」「根拠データ公開のタイミングは雑誌での論文出版時ではなく、プレプリントの公開時になる」の3点になります。  ゲイツ財団ではこのOA方針の変更を ‘‘ Policy Refresh”である、としており、10年にわたるOA方針運用の経験を経て、学術出版の現下の問題を解決し、体系的な変革を起こすには「刷新」が必要であると考えるようになった、としています[8]。より具体的には方針改訂の目的として、プレプリント公開を義務付け、プレプリントの査読を推奨することで、特定のジャーナルではなく研究そのものについての、準備が整ってすぐのアクセス実現を優先する、APC等の出版社への支払いを廃止することで、現在の出版モデルの不公平に対処し、その分をより研究に投資する、といったことが掲げられています。  プレプリント公開に関する「財団が認めたプレプリントサーバー」に関しても早速動きがあり、またもF1000と組んでプレプリントプラットフォーム ‘‘ VeriXiv”の立ち上げが発表されています[9]。VeriXivでの公開によって財団の新方針の要件を満たすことができ、著者はさらにGates Open Researchに投稿して査読を受ける、もしくは他の出版物に投稿する、というオプションを選ぶことができます。さらに、「検証済みのプレプリント」としてVeriXivのみで公開し続けることも選択可能、とのことです。 3.ゲイツ財団の新方針に対する反響  研究助成機関がプレプリント公開を義務化することで、研究への普遍的・自由なアクセスを実現でき、研究成果の拡散をより加速し、さらに査読や研究評価に関する新たなイニシアティブを動かす機会ともなる、というアイディアは ‘‘ Plan U”(UはUniversalのU)という名前で、medRxiv立ち上げ等に関わったRichard Sever氏らが2019年に提唱しています[10]。ゲイツ財団の新方針はPlan Uの路線に乗ったもので、OA運動の新時代を切り拓くものと評価する声があります[11]。  Plan UならぬPlan Sの推奨者、cOAlition Sも早々にゲイツ財団のOA方針刷新を歓迎するコメントを発表し、新方針がcOAlition Sや英JISC、PLOS、それにゲイツ財団も加わっているワーキング・グループ ‘‘ Beyond article-based charges”の方向性に沿ったものである、としています[12]。このワーキング・グループの目標はAPCに代わるビジネスモデルへの移行なので、ゲイツ財団の新方針はまさにそれに則るものと言えるでしょう。ゲイツ財団のTorok氏は新方針公開にかかわるブログ記事の中で、ゲイツ財団が年間に支払うAPCは年間600万ドルにも至っているとしており、この資金を別の形で使うべきであるとしています[13]。Natureの取材によればVeriXivの他にもダイヤモンドOA実現など、より公平なOAモデルへの資金振り分け計画があるとのことで[14]、そういう意味では、今回もゲイツ財団の方針はその後のOA方針潮流の尖兵的な役割を担っているようです。ただしNatureの取材によると、新方針を歓迎するとは言っても、Plan Sは少なくとも2025年時点で、APCへの支援を打ち切る方針は持っていない、ともされています。  方針本体の発表前には、論文公開後の著者最終稿の扱いが不明であった(つまりそこが現在の方針と変わらない、と言い切れなかった)こともあって、新方針が本当にOAを加速化するのかわからない、という意見も多数、出ていました[15][16]。プレプリントの公開のみが義務化される、そしてAPCの助成もないとなると、論文本体は購読誌に投稿され、査読後のバージョンは購読者のみが読める状態になるのでは、それはむしろOAの後退ではないか、という危惧です。しかし蓋を開けてみれば出版後即時OAの義務化も方針には盛り込まれ続けていたので、この危惧は杞憂に終わりました。  ……と、言い切っていいのかは微妙なところで、APCの助成がない状態で出版後即時のOA義務化だけが残るとなると、即時セルフ・アーカイブを認めない出版社の雑誌には投稿できなくなるのではないか、という意見もあります[17]。これに対しては「そのための権利保持戦略だろ」と一蹴し、権利保持戦略を認めないところとはガチンコでやりあえばいいと思いますが、ガチンコでやっても解決できないケースが確実に一つ、いや現在の学術出版を見渡せばかなりの数、あります。  OA雑誌です。 4.「転換」後の世界に責任を持たなくてよいのか?  いわゆるゴールドOA、APCによってビジネスモデルを成り立たせている雑誌については、そもそもそこでの論文公開にAPCが必要なわけなので、権利保持戦略もへったくれもあったもんではありません。もちろんOA雑誌のほとんどはCC BYライセンスなので、OA雑誌で出版した論文について、ゲイツ財団の要件である出版後即時のリポジトリ登録を行うことに特に問題はありません。図書館情報学の名門、イリノイ大学アーバナシャンペーン校の教授で、Scholarly Kitchen執筆者の一人でもあるHinchliffe氏は、こうしたゴールドOAになっているものをOA方針の要件を満たすためにリポジトリにも載せることを ‘‘ green-via-gold”(ゴールド経由グリーン)と呼び、リポジトリでの即時公開を義務化するOA方針下では多数、発生するだろうと予測しています[18]。実際、過去の本連載で取り上げた英国REFの場合も、REFの要件を満たすためにリポジトリにも登録されているが、元々、ゴールドやハイブリッドで公開されている、という論文は多数存在するとされています[19]。  購読型雑誌に載ったものについて、権利保持戦略でバトルするのが嫌だからリポジトリ掲載要件を満たすためにAPC払ってハイブリッドにして楽をしようとか、そもそもそういうことを考えるのが面倒だからOA雑誌に投稿しちゃおうどうせAPCは払ってもらえるしとか、そういう「ゴールド経由グリーン」について、「そういうことにお金を使うのは違うんじゃないか」と考えるのは、当然です。載せたい雑誌に載せた上で、権利保持戦略でバトルをすればいい。  一方で、本当に投稿したい雑誌がOA雑誌だった場合は? あるいは、その分野あるいは論文の投稿先候補として、OA雑誌しかなかった場合はどうでしょう? そもそも長く、OA運動界隈は購読型雑誌や、一部のみをOAにするハイブリッドOAに対抗し、OA雑誌を増やしたり、購読型雑誌をOA雑誌に「転換」しようということをやってきたわけです。ある面ではその努力が実ってOA雑誌も増え、投稿先としてよく選ばれるようになり、その当然の帰結として、「成果を発表するには金(APC)がいる」世界が領域によっては実現しつつあります。今までAPC助成があったからそういう世界が実現しても特に問題がなかったのが、助成が切られることで、他に予算のあてもないので困ったことになる、というケースがゲイツ財団の新方針によって発生するのではないかと、先述のHinchliffe氏は想定しており[20]、この懸念はもっともなのではないかと思います。実際に特にAPC助成等のない日本では、APCさえ払えればいくらでも論文を出すのに、としばしばXにぼやいている研究者の姿もあります[21]。  「助成機関等がそこまで責任を持たなくてはならない話か?」という疑問はもちろん成立しますが、しかし、それこそゲイツ財団の2017年方針などは、出版社にOAへの転換を促すものだったはずで、Plan Sにしてもそのほかにしても、一時は転換・転換よく言ってきたわけです。実際にはなかなかOAに完全転換しないし、転換してもAPCが余計にかさむばかりだから、じゃあOAへの転換・APCを補助する路線から、プレプリント義務化・APCは補助しない方針へさらに「転換」しよう……というのは、やってる側からすれば至極、妥当な判断かもしれません。しかし話に乗って実際にOA雑誌に転換したり、OA雑誌になじんだ人々に向かって、「この方向はやめます」と言ってしまっていいものなのか……だって、ゲイツ財団の助成以外に全然、研究費を持っていない研究者の場合、ゲイツ財団の要件を満たす最適な行動は「プレプリントを公開し、論文は購読型雑誌(APCがかからない)に投稿し、著者最終稿をリポジトリに載せる」であって、OA雑誌を選ぶよりも購読型雑誌を選ぶ方にインセンティブがかかっちゃうわけです。「購読型(クローズド)雑誌が残っていてよかったね!」って話になるの? なんか変じゃない??  財団的には「そこはVeriXivで公開し、Gates Open Researchなどで査読だけ受けて完結ってことにしましょう、それならお金も大してかからないし」という、それこそPlan U的世界線を目指していくことになるんでしょうが、「査読済みプレプリントで業績としてOKっていう研究機関は今、全然ないじゃないか」という突っ込みもあり[22]……いやまあ、それはゲイツ財団以外の価値判断の話なので、そこに適合することはゲイツ財団以外のお金でやりなさいよというのも、それはそれでまっとうな意見なのですが……。  実際にはゲイツ財団の助成を受けた研究の出版数は年間4,000本程度、世界の論文の0.07%程度に過ぎず、影響力はそこまででもない、という指摘もあります[23]。しかし図書館界にとって完全に他人事というわけでもありません。もし転換契約等で実際に多くの雑誌がOA化するという、大変うれしい事態が発生したとして、しかしその後、機関として契約が維持できませんとなったとき(APCを各研究者の研究費や私費から負担しないといけなくなったとき)、「今までだったら投稿はただでできたのに、余計なことしやがって!」という怨嗟の声が出てくる可能性、いわば「転換」後の世界に責任を負う覚悟みたいなものを、我々は持っているでしょうか。ゲイツ財団の新OA方針がそのことを考える一つの契機、とも言えるかもしれません。  まあ、考えた上で言い返せればいいわけですが。「それでも論文を誰でも自由に利用できることの方が優先やろがい!」 [1] “2025 Open Access Policy". The Bill & Melinda Gates Foundation’s Open Access Policy. https://openaccess.gatesfoundation.org/open-access-policy/2025-open-access-policy/ , (参照2024-04-18). [2] Lenharo, Mariana. Will the Gates Foundation’s preprint-centric policy help open access? . Nature. 2024-04-04. https://doi.org/10.1038/d41586-024-00996-8 , (参照2024-04-18). [3] 佐藤翔. Gates Open Researchのいま. 情報の科学と技術. 2019, vol.69, no.1, p.40-42. https://doi.org/10.18919/jkg.69.1_40 , (参照2024-04-18). [4] “Current Policy”. The Bill & Melinda Gates Foundation’s Open Access Policy. https://openaccess.gatesfoundation.org/open-access-policy/ , (参照2024-04-18). [5] Hinchliffe, Lisa Janicke. “Gates Open Access Policy Refresh Increases Compliance Burden and Eliminates Financial Support”. the Scholarly Kitchen. 2024-04-15. https://scholarlykitchen.sspnet.org/2024/04/15/gates-2025-open-access-policy/ , (参照2024-04-18). [6] Torok, Estee. “Who loses when scientific research is locked behind paywalls?”. Bill & Melinda Gates Foundation. https://www.gatesfoundation.org/ideas/articles/research-paywall-open-access , (参照2024-04-18). [7] 前掲1) [8] “Policy Refresh 2025 Overview”. Open Access | Policy Refresh 2025. https://gatesfoundationoa.zendesk.com/hc/en-us/articles/24810787662100-Policy-Refresh-2025-Overview , (参照2024-04-18). [9] “Gates Foundation Collaborates with F1000 to Launch Verified Preprint Platform”. F1000. https://www.f1000.com/verixiv/ , (参照2024-04-18). [10] Sever, Richard et al. Plan U: Universal access to scientific and medical research via funder preprint mandates. PLOS Biology. 2019, vol.17, no.6, e3000273. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3000273 , (参照2024-04-18). [11] Drake, Tom. “Advancing Equity and Innovation in Research Publishing: Time for a New Era in the Open Access Movement?”. Center for Global Development. 2024-033-27. https://www.cgdev.org/blog/advancing-equity-and-innovation-research-publishing-time-new-era-open-access-movement , (参照2024-04-18). [12] “The Bill & Melinda Gates Foundation’s Open Access Policy Refresh”. Plan S. 2024-03-29. https://www.coalition-s.org/the-bill-melinda-gates-foundations-open-access-policy-refresh/ , (参照2024-04-18). [13] 前掲6) [14] 前掲2) [15] 前掲2) [16] Brainard, Jeffery. In a bold bid to avoid open-access fees, Gates foundation says grantees must post preprints. Science. 2024-04-01. https://doi.org/10.1126/science.zqvd4bu , (参照2024-04-18). [17] 前掲5) [18] Hinchliffe, Lisa Janicke. “The Double-Cost of Green-via-Gold”. the Scholarly Kitchen. 2023-04-25. https://scholarlykitchen.sspnet.org/2023/04/25/green-via-gold/ , (参照2024-04-18). [19] Brayman, Kira et al. A review of transitional agreements in the UK. JISC, 2024, 174p. https://zenodo.org/doi/10.5281/zenodo.10787391 , (参照2024-04-18). [20] 前掲5) [21] @momentumyy. “出張はいいんだけど,論文を掲載するための金が全くないのが本当に困る。少しでももらえたらなんぼでも論文出すんだけど。”. X. https://twitter.com/momentumyy/status/1763080002437050745 , (参照2024-04-18). など、関連するX投稿をしばしばされています。なお投稿者は心理学における再現性問題等を扱った単著も刊行されている、九州大学の山田祐樹氏です。この本も学術情報流通関係者にとっても大変参考になります: 山田祐樹. 心理学を遊撃する: 再現性問題は恥だが役に立つ. ちとせプレス, 2024, 240p. [22] 前掲16) [23] 前掲5) 文:佐藤 翔( 同志社大学 ) 1 985年生まれ。2012年度筑波大学大学院博士後期課程図書館情報メディア研究科修了。 博士(図書館情報学)。2013年度より同志社大学助教。2018年度より同准教授。2024年度より同教授。 図書館情報学者としてあっちこっちのテーマに手を出していますが、博士論文は機関リポジトリの利用研究で取っており、学術情報流通/オープンアクセスは今も最も主たるテーマだと思っています。学部生時代より図書館・図書館情報学的トピックを扱うブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」を開始。ブログの更新は絶賛滞っているものの、現在は雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』誌上で同名の連載を毎号執筆中。本連載タイトルもそれにちなんだもの。かたつむりと言えば最近、わが子が石をひっくり返してなめくじを見つけるのにプチハマり中なのですが、なめくじには危険な寄生虫(広東住血線虫)がいることがあるのでやめて欲しい。 本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

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    Report そもそも研究者の考える「メタデータ」は図書館員の考える「メタデータ」とは違う!?~報告:ジャパン・オープンサイエンス・サミット2024 セッションD1「研究データのメタデータのあるべき姿とは?」 三上 絢子 24/11/1 北海道大学 1. はじめに~本記事で紹介するセッションの趣旨  こちらの記事は2024年6月17日にオンラインで開催されたジャパン・オープンサイエンス・サミット2024(JOSS2024)の セッションD1「研究データのメタデータのあるべき姿とは?」 の内容を紹介する記事となります。本記事の執筆者は、このセッションへは講演者の1人として参加しました。  このセッションでは、研究データに付与するメタデータ項目をおおまかに『公開・流通用メタデータ』『研究用メタデータ』の2つに整理し、研究者の側から見たメタデータのあり方と、学術情報流通側から見たメタデータのあり方の相違点に注目した講演・議論が行われました。  このセッションで「公開・流通用メタデータ」と呼ぶものはリポジトリ上での公開や学術情報流通向けのメタデータ項目のことで、例えばタイトルや作成者、DOIなど、機関リポジトリや各種学術情報サービスで公開・流通する際に利用される項目が含まれます。一方で、「研究用メタデータ」はその名の通り、研究者が研究の過程でデータを扱うために付与する様々なメタデータ項目のことを指します。  リポジトリ担当者から見た研究データへのメタデータ付与については、従来の論文の場合と比較し、未だ手探りの状態が続いている部分が多いと思います。また、研究者、メタデータスキーマの制定・運用に関わる側、政策担当者や資金配分機関など、各ステークホルダーの立場によっても、メタデータに関してそれぞれ異なる認識を持っていることも、研究データのメタデータのあり方を複雑にしている要因の一つだと思われます。  このセッションは、そのような立場ごとに異なる研究データのメタデータへの認識があることを踏まえながら、メタデータのあるべき姿について掘り下げていく試みの一つとして実施されました。 2. 講演紹介  本セッションでは4つの講演が行われました。それぞれの講演の概要を紹介します。 〇研究データへのDOI登録ガイドラインの改訂版の紹介・メタデータに関する複数の観点  まずは本セッションの代表者である白井知子氏(国立環境研究所)より、「 研究データへのDOI登録ガイドライン 」の改訂版の紹介がありました。このガイドラインの改訂は、 研究データ利活用協議会(RDUF) が設置し、白井氏が委員長を務めた「研究データへのDOI登録促進小委員会」によって実施されたもので、本セッションを企画したきっかけでもあるとのことです。 (講演内容の要約) 「研究データへのDOI登録ガイドライン」は、ジャパンリンクセンター(JaLC)が2014年から2015年に実施した「研究データのDOI登録実験プロジェクト」で作成されたガイドラインです。しかし、当時は実例が少なかったこと、またこの8年間に研究データへのDOI登録の重要性が高まったことから、2021年11月より「研究データへのDOI登録促進小委員会」による改訂作業を開始し、2024年6月に改訂版が完成しました(公開は2024年9月)。  本ガイドラインの改訂の終盤、小委員会では立場によって想定しているメタデータが異なっていたために議論が噛み合わないことがあり、逆にそれを利用して、異なる立場間の議論を整理してガイドライン本文に反映しました。 この経験に基づき、改訂後のガイドライン内においては、立場ごとに想定される研究データのメタデータを、以下の3種類に整理しています。 研究用メタデータ:研究データが研究の過程で生成され、分析・利用・管理される際に必要に応じて作成されるメタデータ 公開用メタデータ:研究データをリポジトリ等で共有・公開する際に作成されるメタデータ 流通用メタデータ:データ流通を促進するために作成されるメタデータ 加えて、このような研究データへのメタデータ付与の背景となっている要因の一つである、国の研究DX政策である「 公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方 」(令和3年4月27日統合イノベーション戦略推進会議)においては「資金配分機関用メタデータ」(メタデータの共通項目+資金配分機関がそれぞれの特性に応じて独自に求める項目)が求められています。  この4種類のメタデータの存在を踏まえて、下図のように研究データに付与されるメタデータの概念を整理しました。 出典:白井知子, 研究データへのDOI登録ガイドラインの改訂版の紹介 : メタデータに関する複数の観点. JOSS2024 セッションD1「研究データのメタデータのあるべき姿とは?」, 2024.  また、ガイドライン改訂の過程において、「研究用メタデータと公開/流通/資金配分機関用メタデータの重なり度合いは、研究分野によっても異なる」という点にも気がつきました。  今回のセッションは、こういった異なる性質を持つメタデータについての議論を深めるために企画いたしました。 〇公開・流通用メタデータに求められる項目と入力例の紹介  続いての講演では、本記事の執筆者である三上絢子(北海道大学附属図書館)より、学術情報支援に携わる立場から見た公開・流通用メタデータについての解説を行いました。 (講演内容の要約)  公開・流通用メタデータは、学術情報流通においてのオープンサイエンスの実現を目標としており、より具体的には「 FAIR原則 」を踏まえた上で付与されるメタデータであると言えます。学術情報流通は、データが登録されるリポジトリと、データの集約・検索やDOI付与を担う複数の学術情報サービスが連携することを想定しているため、公開・流通用メタデータの狙いはこれら学術情報サービスにFAIR原則を満たすようなメタデータ項目を提供することにあると考えられます。  要求されるメタデータの内容は連携先の学術情報サービスによって異なりますが、概ね下記のような項目が付与されます。 検索性を高めるためのメタデータ項目  タイトル、作成者、内容説明、関連する論文など 研究データ記述向けの項目  資料種別(集計データ/実験データ/地理空間データなど)、時間的範囲、位置情報 研究データの再利用のために必要なメタデータ項目  再利用のための利用条件・ライセンスの記載、Creative Commonsライセンスなど 公的資金の助成情報    三上が担当していた機関リポジトリにおいては、研究データ公開の要望があった際に都度登録希望者に「タイトル/公開希望日/関連資料/利用条件/(あればデータの説明)」を確認し、メタデータとして付与していました。 〇研究用メタデータと公開・流通用スキーマとの乖離の例(大規模実験データのメタデータ)  中西秀哉氏(核融合科学研究所)の講演では、核融合実験分野における研究用メタデータの特徴の紹介と、公開・流通用スキーマと比較した場合に様々な乖離が見られることについての紹介がありました。 (講演内容の要約) ◆核融合実験分野におけるデータの特徴  核融合科学研究所が現有する核融合実験装置LHDは、今年で稼働26年目になる、超電導磁場コイルを用いた磁場閉じ込め核融合プラズマ実験装置です。  この装置で生成される研究データ、およびその研究データに付随するメタデータについては、以下のような特徴を持ちます。 実験回数とデータ数が多い(180秒周期で自動的に繰り返される実験が、1日120回程度行われる) データの種類が多い(約130種類の生データに加え、200~400個ほどの解析データが生成される) 実験からデータ収集、データ生成までが全て自動化されており、人手を介さない メタデータは自動システムの処理性能を優先した設計・運用がされている(主な研究メタデータは実験装置の運転パラメータの指定である) 実験の提案書、実験の予定表、運転パラメータ、結果概要は別々のデータベースに保存されている ◆核融合実験分野における研究用メタデータと、公開・流通用メタデータの乖離について  分野によっては、研究用メタデータと公開・流通用メタデータの間には重なりが見られることもありますが、核融合実験分野データにおいては、研究用メタデータと公開・流通用メタデータの重なりはほとんどありません。例えば、流通用メタデータの内、DOIの付与に必須なメタデータ項目(タイトル、作成者、発行機関、発行年)はいずれも研究用メタデータには含まれません。 実験により生成される研究用メタデータにおいては、タイトル(データ名)は「プロジェクト名+計測(器)名+実験番号」でユニークに生成されています。作成者は各計測器の開発・運用担当者が該当するものと思われますが、担当者名の記載された実験提案書・実験予定表と、運転時刻のみが記載された研究用メタデータを照らし合わせて、作成者を記入することには大変な労力がかかります。また、データの収集日時についても時分秒の単位となるため、年月日単位のメタデータではデータの前後関係を表現できないという問題もあります。  加えて、核融合実験分野では実験装置に依存したデータの計測結果・解析結果が出ることが多く、データ交換の文化があまりないと言えます。データの概要を流通用メタデータに記載する場合には、各計測器の特性、出力データ仕様が、開発論文等に散在しているため、これらを文献等から新たに集録してDB化しなければならないことも負担が大きいといえます。  また、「計測(器)名+実験番号」の単位で管理されるユニークなデータの件数は4000万件程度と非常に多いのですが、これは学術情報流通でこれまで一般に想定されてきた、一プロジェクト当たりのデータ件数の範囲を大きく超えていると思われるため、DOIのようなグローバルPIDの付与・登録をどのように行っていくべきであるか、難しい問題です。 ◆今後、核融合実験分野における研究データのメタデータが目指す展望について  核融合実験の分野は現状、メタデータ標準化があまり進んでいない分野ではありますが、実験データの処理やデータのアクセスは現状ほぼ完全にデジタル空間上で行われており、今後はオープンサイエンスやオープンデータの考え方を踏まえて分野内の(メタ)データ標準化が進んでいく可能性は大きいです。ただ、この標準化の動きは研究用(メタ)データの観点からのものであり、公開・流通用メタデータスキーマの整備と同じ方向に進めるかはまだ大きく疑問が残っています。 〇宇宙地球科学分野における研究用メタデータから公開・流通用メタデータへの変換の取り組み  続いて、能勢正仁氏(名古屋市立大学)の講演では、宇宙地球科学分野において研究用メタデータとして標準化されてきたメタデータスキーマ(SPASE)に依拠したメタデータを、JPCOARスキーマに依拠する形式に自動で変換する取り組みの紹介が行われました。 (講演内容の要約) ◆SPASEメタデータについて  太陽や地球周辺の宇宙空間、オーロラといった大規模な現象を対象とする宇宙地球科学分野では、単一の観測では全体像を把握するのが難しいため、観測データの共有の文化が長らく育まれてきました。この分野ではメタデータのスキーマの標準化も進んでおり、NASAを中心とした国際共同研究機関によるメタデータスキーマを策定するコンソーシアムであるSpace Physics Archive Search and Extract(SPASE)が策定したSPASEメタデータスキーマがデファクトスタンダードとして広く利用されています。このスキーマでは、約2200項目の記述が可能です。 ◆今回の取り組みの背景と狙い  政策決定機関や研究資金配分機関からは、研究データの把握や研究資金による成果を検索できるよう、 「 公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方 」におけるメタデータの共通項目を、NIIの研究データ基盤上に流通させるように求められています。  研究者にとって必要なのは研究用の詳細なメタデータの方ですが、宇宙地球科学分野では研究用のメタデータ項目数(約2200個)が「メタデータの共通項目」の項目数(15個)よりも非常に多く、白井氏の発表で出てきた図で言えば、研究用メタデータが公開・流通用メタデータを包含している関係にあります。研究に必要となる詳細な研究用メタデータから「メタデータの共通項目」を自動的に生成し、流通させるような取り組みを実施できれば、研究者にとっては研究用データのみを一元管理するだけで済むということです。 ◆取り組み内容と結果について  今回の取り組みにおいては、SPASEメタデータスキーマから一般的なメタデータスキーマ(JPCOARスキーマ)への項目対応表を作成し、それに基づいてメタデータを自動的に変換するシステムを開発しました。  まず初めに、宇宙地球科学分野の研究者・図書館専門職員・情報科学エンジニアが協同し、実装に必要なメタデータのフォーマットやパラメータ、項目の内容などの情報を含めた対応表を作成しました。次に、このメタデータ項目対応表をXSLT (XSL Transformations)で実装し、名古屋大学で作成しているSPASEメタデータスキーマに基づくメタデータ284件をJPCOARスキーマのメタデータへと変換し、名古屋大学の機関リポジトリ上で公開しました。  この仕組みの実装により、研究者は研究データを自分たちの研究に必要なメタデータの形式で管理しつつも、政策的に求められるメタデータも自動的に生成し、機関リポジトリに登録できるようになりました。  今回の取り組みの成果としては、当初目標としていた「研究データの把握や研究資金による成果を検索できるような共通メタデータ項目を、NIIの研究データ基盤上に流通させる」ことが達成できただけではなく、副次効果として、研究データの検索性が高まったことが挙げられます。  名古屋大学の機関リポジトリ上に登録したデータはNIIの研究データ基盤だけではなく、 データカタログ横断検索システム や Google Dataset Search など他の検索サービス上でも検索できるようになり、広い範囲でより見つけられやすくなりました。このことは、共同研究、データそのものの評価向上、データの作成者・管理者の評価向上が期待できるものと考えられます。 3. ディスカッション  ここからは、講演者4名に、司会・モデレーターの八塚茂氏(製品評価技術基盤機構)とコメンテーターの武田英明氏(国立情報学研究所)、村山泰啓氏(情報通信研究機構 NICT ナレッジハブ)を加え、メタデータに関するディスカッションを行いました。ディスカッションの中では、異なる分野や立場から見た望ましい研究データの登録方法について意見が交わされました。 1. DOIの粒度について  白井氏は、DOIのガイドライン改訂にあたって一番難しかった点として、共通解のない問題についての書きぶりを取り上げました。例えば、DOIの粒度について、白井氏の地球科学分野ではDOIは引用してもらうために使うものであるため、引用の単位でDOIをつけるのが良いと考えられます。一方で、中西氏の核融合実験分野においては状況が異なり、実験データの利用や解析のためにIDを付与することが強い目的となっています。このように分野ごとに異なる状況全てをガイドラインにまとめるのは難しいため、コミュニティ内での共通知識を高めていきたいと白井氏は述べました。 2. サプリメンタルデータの登録方法  次に、会場より「1つの論文に複数のサプリメンタルデータが紐付けられるようなケースについては、どのようにリポジトリに登録することが望ましいか」という質問がありました。また、この質問には「機関リポジトリと研究分野別のリポジトリとで役割分担が必要ではないか」というコメントも合わせて記載されていました。この質問およびコメントを受け、サプリメンタルデータの登録方法に関する議論が行われました。  白井氏の場合は、紐づく論文に関わらず、あくまでもデータが使われる単位でメタデータを付与するようにしていると述べています。  中西氏は、核融合実験分野においては論文に掲載される最終データを機関リポジトリに登録する一方で、量の多い背景データは分野のデータリポジトリやそのアーカイブに格納するという役割分担をしていると述べました。  能勢氏の意見では、地球科学分野でも同様に、長期のデータから1年分のみを研究に用いるというケースがあるため、研究に用いた部分のみを機関リポジトリに登録するという使い分けも考えられると言います。  また、村山氏は、オープンサイエンスにおいては、データの作成者の学術的貢献を評価する仕組みが不可欠であると強調し、サプリメンタルデータであっても、貢献者が明確に分かる形で公開することが重要であると述べました。  一方で、三上(筆者)が機関リポジトリ業務で扱った事例では、複数のサプリメンタルデータの公開は、単に論文が受理される要件を満たすために要求されたケースが多く、複数の研究データを一まとめにして公開したケースがほとんどであると述べました。ただし、機関リポジトリを運用する図書館からはこれまで登録方法について指示やアドバイスを行ったことはなく、機関リポジトリ側から「望ましい登録方法」を提案するなどの働きかけが必要かどうかは検討する必要があるとしています。  これらを受けての白井氏の意見として、機関リポジトリと研究分野別データベースとでは確かに役割分担が必要であり、論文に紐づくサプリメンタルデータの公開方法について、研究分野別のデータベースに担当者がいる場合、その担当者に相談することで、より良いアドバイスが得られる可能性があると述べました。また、研究現場がデータ公開のために労力を割く余力を持っているかどうか、個別に公開をする価値のあるデータであるか等、様々な要因によっても、研究データの登録方法は変わり得るとの指摘がありました。  ここまでの議論を踏まえ、研究データの登録方法についてはやはり分野別、あるいは分野と機関リポジトリの間での話し合いが大事であり、異なる事情を認識し、議論をしていくことに意義があると、進行の八塚氏がまとめました。 3. 各分野におけるメタデータの今後  最後に、それぞれの分野におけるメタデータの未来について意見が交わされました。  バイオ分野の八塚氏は、分野のデータベースのユーザーが非研究者層にまで広がっていることで、メタデータに使う用語のレベルをどうするかが課題である一方、この課題には同義語の変換などの技術的な解決策が期待できることを述べました。  白井氏は、地球科学分野では異分野間でのデータの統合解析が課題となっていることに触れ、分野間でどの程度共通してデータを扱えるかという点も、メタデータ設計において重要だと述べました。  中西氏は、核融合実験分野においては次世代プロジェクトに向け実験データの実質的な標準化が進行中であることを紹介し、分野内の研究者だけでなく産業界にもデータが活用されるようになる見込みを示しました。  能勢氏の宇宙地球科学分野においてはSPASEメタデータスキーマについて国際的な議論が進む一方、現状、日本からはメタデータの専門家が出せておらず、議論に対しては研究者が苦労しながらついていっているという事情があるため、分野内に1人でも、分野の事情とメタデータの話題の両方に精通した人材がいると大変助かると述べていました。 4. 本記事のまとめ  本セッションでは、研究データに付与されるメタデータを「研究用メタデータ」「公開・流通用メタデータ」と整理することで、この2種類のメタデータの重なり具合が分野ごとに異なり、分野によって研究データの公開・流通への対応の難易度や論点が大きく変わってくることが紹介されました。  今回の講演やディスカッションで挙げられた、それぞれの研究分野においてメタデータ付与に関わる事情が異なる理由としては、主に以下の点が挙げられると思います。 1.公開・流通用メタデータを新たに付与する場合にかかる労力 2.これまでのデータ共有文化の有無 3.これまでの分野内でのメタデータ標準化の状況 4.データ共有により達成したい方向性(引用による功績評価/デジタル処理の最適化/異分野間の連携…) 5.どのようなデータのまとまりを引用・根拠データとして提示したいか  1.~3.については、これまでに研究データのメタデータや引用に関する情報収集を行っていても何となく感じられるものだったのですが、個人的には4.と5.についてはまた新しい論点だと感じました。  4.については、普段、学術情報流通を支援する立場から「研究データのメタデータ」と言えば、検索性の向上や引用を目的とした項目ばかりをどうしても連想してしまうのですが、中西氏の講演で触れられたように、核融合実験分野の「実験システムをデジタル上で運用する上で、処理を進行するため、あらかじめ準備されるパラメータ」もまた、「研究データのメタデータ」という括りに含まれるものだと思いました。ただ、こういった分野内でのデータ管理に特化したメタデータ項目を機関リポジトリ担当が把握することは勿論不可能だと思いますので、もしできることがあるならば、「研究者の想定するメタデータ」の性質をできるだけ考慮した上で、こうした分野内メタデータと学術情報流通インフラ(DOIやNII研究基盤など)で流通するメタデータとのギャップを埋める方法を考えることくらいかなとは思います。  5.についてはディスカッション中で色々触れられていましたが、こちらについても機関リポジトリ担当が決めるというよりは、各研究者の意図する形でのデータ公開・流通の形式を行えることが第一だと思います。白井氏が述べたような「機関リポジトリと研究分野別データベースとの役割分担」や能勢氏の述べた「背景データ全体はDOIで引用し、論文の証拠データとなる部分を機関リポジトリに登録する」という手法のように、機関リポジトリに登録という形式に拘らず、広い視点で学術情報流通の流れを見たときに最適と思える形式を考えることができるのが、学術情報流通を支援する立場としては理想であると思いました。 余談:関連したJPCOAR作業部会での活動について  本セッションにて能勢氏の講演で紹介された「SPASEメタデータスキーマとJPCOARスキーマの変換の取り組み」については、現在、JPCOAR研究データ作業部会の方でSPASEメタデータスキーマ(ver2.4)とJPCOARスキーマ(ver2.0)それぞれのスキーマアップデートに対応したバージョンアップ作業を継続しています。  また、執筆者も参加しているJPCOARコンテンツ流通促進作業部会では、 JPCOARスキーマガイドラインサイト 上にJPCOARスキーマの活用事例紹介ページを作成し、2024年度中にはこの取り組みを紹介する予定で現在作業を行っております。 三上絢子(北海道大学附属図書館) 2016年北海道大学附属図書館に入職。学習支援→機関リポジトリの管理・システム→図書受入と担当しており、2020年頃からJPCOAR作業部会員です。 DX化の波が押し寄せる昨今では、時々ちょっぴりVBAやPythonやRPA用のコードを書いて過ごしています。 職場付近の野鳥の撮影にハマっており、北大正門徒歩5分圏内ではこれまでに18種類くらい撮影しました。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

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