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  • AIってもう出版に関わっているんですか? | JPCOARウェブマガジン

    BarOA|第1夜 : 浦上裕光氏×鈴木雅子氏|2杯目 Talk BarOA|第1夜 : 浦上裕光氏×鈴木雅子氏|2杯目 AIってもう出版に関わっているんですか? 浦上 裕光 / 鈴木 雅子 25/5/30 Springer Nature / 九州大学 とある下町にある雑居ビル。裏手の階段を降りた先にあるBar Open Access(BarOA)では、様々な思惑を秘めた大人たちが和やかに好きな飲み物を片手に談笑している。さて、今宵はどんなお話が展開されているのやら......。 店名のとおりオープンアクセスの話、と思いきや、それぞれの立場から見たジャーナル、投稿、査読の話へ。ホットなAI活用の話題もつまみながら、また新たなグラスがカウンターに並びます。 (2025/10/27追記)Springer Nature Japan公式ウェブサイトでご紹介いただきました: 【お知らせ】学術情報の舞台裏を探るBarOA(Open Access)シリーズ記事の公開 — JPCOARウェブマガジンより | https://www.springernature.com/jp/news/20251024-announcement-jpcoar-baroa-jp/27822716 \今宵のお客様/ 浦上 裕光(Springer Nature) 岡山県生まれ、千葉とカリフォルニア育ち。大学からポスドクまでアメリカとドイツで化学関連の分野で研究に携わり、国内企業の研究職に。その後、出版業界に転職し11年強。化学は好きなので、まだ時々論文を眺めます。最近は読書と海外旅行から離れてしまっているので、そのうちまた再開したいと考えております。 鈴木 雅子(九州大学) 学術情報センター(現国立情報学研究所NII)で採用され、大阪大学に転出。諸事情により北海道大学に転勤したのち、小樽商科大学、北海道大学、旭川医科大学、静岡大学、NII、名古屋大学、神戸大学、九州大学、と転々としてきた。住んだ所みな都。『月刊DRF』やJUSTICE『jusmine』を創刊・命名した若かりし頃のヒラメキやパワーが今や見る影もないため、最近は体力をつけるべく山登りを楽しんでいる。 〔  1杯目  2杯目  3杯目   4杯目  〕 1. オープンアクセスとの出会い 浦上(以降U)| 大学図書館ではどういったお仕事をされているのですか? 鈴木(以降S)| 図書館にはいろんな仕事がありますよ。いろいろやってきました。 U| じゃあ、例えば今までの、図書館でのお仕事の経験で、一番楽しかったことはどういうことですか? S| 一番楽しかったのは……このバーの名前から言わされているわけじゃないんですけど、やっぱり、最初にオープンアクセス(OA)が入ってきた時です。機関リポジトリを構築して学内の先生方の著作論文を公開していくグリーンOAですね。図書館の新しい仕事をイチから作ってるって感じました。 U| なるほど。 S| 先生方が研究論文を書くための支援、必要な論文を読めるようにする仕事だったのが、加えて、先生方が書いた研究論文を学外に公開する支援を始めることになったわけで、今まで図書館では思いもしなかった仕事だったので、どうやったらいいのか全然わかんなくて。手探りで本当にいろんなことやりました。海外の事例をできる範囲で真似したり、国内他大学の担当者と相談したり、先生方へのインタビューもたくさんやって。どの先生の話も興味深かったし、応援してくれる先生が増えて、楽しかったですね。そこで教えてもらったことをつなげて機関リポジトリを作っていったという感じです。 あ、ちょっと順番が前後して、その前のことになるんですが、あの方、ハーナッド(Stevan Harnad)先生が日本に来られて、図書館総合展で檄を飛ばされたんです。「論文著者はもっとたくさんの人に読んでほしいし、出版社もOKだと言っている、あとは大学図書館が機関リポジトリのサービスをやるだけなんだ、何やってるんだ」って。単純だから、「そうなんだ、うちの先生方のためにやらなくちゃ!」と思いました。ハーナッド先生は世界を提唱して回っていたんですよね、なんかこう、世界とつながっているというか、海外の大学図書館の人たちと一緒に取り組んでいるという感じも面白かったです。……あれがもう20年近く前の話ですか。 U| 今振り返ると、化学分野はOAが入ってくるのはあまり早くなかったのでしょうね。大学院を卒業する15年前やその後のポスドクになって、ようやく、OAってものがあるんだ、出版に費用がかかるらしい、っていう感じでしたね。僕が鈍感なだけだったのかもしれませんが。本当、分野によって違いますよね。 S| そうですね、本当に。20年前も、プレプリントとしてどんどん出していく分野もあった一方で、化学の分野ではグリーンOA一切許してません、というジャーナルが多かった印象があります。浦上さんが最初にOAに触れたのって、いつぐらいの話ですか? U| 本格的に関わったのは、出版社に入ってからでしたよ。自分も論文をいくつか出しているんですけど、博士課程の頃もポスドクの頃も、OAってあんまり考えたことがなくて。出せそうなジャーナル、出したいジャーナルに出す、って気持ちが先にきますし、所属していた機関では幸いにも多くのジャーナルが読めたので、OAに意識して触れる機会はあまりなかったですよね。気付いたらOA論文が少しずつ増えてきたっていう感じだったのかな。 2. ジャーナルに対する意識:投稿・購読 S| やっぱり研究者にとっては、OAかそうでないかとかよりも、早くその論文を出したいっていう気持ちの方が強いんでしょうか。 U| 論文によると思うんですよ。自分のベストワークの場合は、おそらくOA、非OA関係なく、まず出したいところ、出せるところに出したいっていう気持ちが一番強いと思います。 基本的には、まずは出したいところに出すだとか、自分のコミュニティー内で、自分の仲間が読んでいるところにまず投稿する、というのが一番多いと思うんですよね。 少し話がそれますが、例えば、 Nature Communications というOA誌がありますが、あれは一般誌なので、研究領域的にはどんな研究でも投稿できちゃうんですよね。これはすごい強みだなって思います。 どういうことかと言うと、化学の研究者から聞いた話ですけど、化学の研究者が生物学者とコラボレートする時、化学の専門誌からは出しづらいことがあるようです。場合によっては内容も合わないかもしれませんが、生物学者からすると、自分の分野で読まれていない、あまり知られていないジャーナルに出してもバリューがないわけです。それが、どの分野の研究も掲載していて、またさまざまな分野に認識されている一般誌・学際誌で、さらにOAだと、誰もが読めて共通の価値ができてくる。分野を超えて認識されているジャーナルは強いなと思いました。 S| なにしろ、Natureってついたら、読みたいって思いますしね。 U| 恐縮です。 S| Natureとつく雑誌もいっぱい出てますね。 U| いっぱい出ているんですけど、とりあえずジャーナルを出している、というわけでもないんです。 やっぱり世に送り出す以上は、コミュニティーにとって意味のあるものを出版したいと考えています。研究者コミュニティーからの需要、研究の動向や市場の要望を見ながら発刊が決められていくのだと思います。そういった理由がないと、新しい分野でジャーナルを出しても貢献できないと思うので。新しい分野での出版は、基本的にはどの出版社も戦略的に決めているとは思いますけどね。 S| 図書館でも、どの雑誌を購読するかは委員会で決めるんですけど、新しい雑誌を買って欲しいっていう希望は多いんですよね。だけど、予算は限られているから、何か購読を止めないといけない、そう言うと、止めるのは困る、っておっしゃる。お気持ちは大変良くわかるんですけどね。 研究者である先生方が「こういう雑誌がほしい」とおっしゃって雑誌のラインナップが増えているとすると、なんだか自分で自分の首を絞めてしまっているのかもしれないですね。 U| ちなみに、読みたいジャーナルを決めていく時って、どういう判断で優先順位を付けたりされるんですか? S| 大学によって違いますし、やり方はそれぞれです。 でも、もう実際問題、新しい雑誌買う余裕全然ないです(泣)。止めていく話しかないし、中止してもね、雑誌の価格が上がっていくから。 U| そこは難しいところですね。以前 STMのレポート で見た情報だと思うのですが、ジャーナル数に関しては300年ぐらい前からの増加傾向のようです。どうやら、研究開発への投資額と、研究者の数と、論文やジャーナルの数に相関があるようです。国の研究開発への投資が増えれば、研究者の数やアウトプットの情報も増え、またそのような中、新しい分野が育つと、ジャーナルの数も増えてくるということだと思います。なお、学会側の需要の可能性もあるかと思います。 3. 1本1本の論文の価値 S| でもさぁ! あ、でもさぁとか言っちゃいけない。ちょっと酔っぱらってきたのかな。 その、雑誌の数だけじゃなくて、論文が出過ぎなような気もしないでもないです。例えばOAジャーナルだと1号に100本とか論文が載っているものもありますよね。 U| はい。多いですよね。先程の投資額、研究者数、ジャーナル数増加の話に加え、1本1本の論文の価値とは何か、すなわち研究評価や習慣の影響も大きいと思います。現時点では、研究者としても質の高い論文をたくさん出した方が多分メリットが大きいのではないかと思います。キャリア形成に重要である、外部資金の獲得や賞の対象になりやすいだとか、学生のエンカレッジやトレーニングの一部等、色々あると思うんです。さまざまな要因が合わさって増えるんだと思います。 S| 最近は数よりも、主要な業績3つを評価対象にしているような例もありますよね。たくさんあっても読めないし。 仮に、論文数が減ると、出版社の方は困りますか? U| どうなんですかね。ジャーナルによりけりだと思いますが、研究者や研究コミュニティーに選好されるジャーナルの方が持続性があるのではないかと思います。 今って確かに論文が多すぎて、たぶん、研究者も読みきれないと思うんですよ。 以前目にしたことのある 統計 で、昔に比べて今の研究者は論文の数は多く読んでるんだけど1本に充てる時間が短いのではないかという説明が出ていました。また、論文工場(Paper mills)からのクオリティーの疑わしい論文だとか、フェイクデータとかが増えてくると、今度は別の問題として、そういったものを取り込んでしまったAIが、もしかしたら質の高い情報を生成できなくなる、ということも考えられますよね。研究環境全体として、論文の量ではなく質で、という方向に評価や関心の軸が向くことは良いことだと思うのですが……。 S| そうですね。AIの話が出ましたけど、もう今、AIで論文書けちゃいそうですよね。そうすると、さらに論文が増えちゃうような気がしますね。 U| 最近、Sakana AIが、 AIサイエンティスト というのを作って、そのAIが研究をする、っていうのをやってましたね。まずアイディアを作って、それを実験して、その論文を書く、っていうのを全部。確か arXiv で最近出たんじゃないかな。 S| 本当ですか! アイデアまで……。人間は、どこに……。 U| 細かくは覚えていないのですが、テーマの枠決めとチェックぐらいだったかもしれません。ぜひ読んでみてください! S| 今後、どうなっていくんでしょうね、学術情報流通は。 AI査読とか、チェックはもうAIでやってます、みたいな話はありますか? U| いや、査読プロセスの全てをAIに置き換えるのはまだ難しいかなと。おそらくどの出版社も、AIを使った査読は、頭にはあると思っています。ただ、AIに全部任せるとまでなると、まだ先の話かなと個人的には思っていて。 著者としても、AIに判定されて落ちました、で納得するのかっていう話もあるかもしれません。現時点ではまだ整ってないんじゃないかなっていう気はしています。 Springer Natureでも、論文審査の話ではないですが、AIを使って、AIが作った文章やフェイクイメージを検知するソフトウェアとか、そういったものは作り始めています。なので今後、出版業界にも色々出てくると思います。 S| AIチェックってどんなチェックをしてるのか、気になりますね。 U| プレスリリース も出てますのでお送りします。ぜひ見てみてください。 研究機関側が、自分たちでどれだけチェックしたいのかな、っていうところにちょっと関心があります。面白かったのが、海外のある研究機関に行った時に、自分たちの機関から投稿される論文は全部AIチェックにかけたい、やばそうなものは投稿前に全部検知したい、よくないリサーチプラクティス等の傾向をピックアップできるかもしれない! みたいな話をされてたんですね。 査読の目的は、研究の明確性、堅牢性、および再現性を向上させるのに役立ち、掲載の可否を決めることに活用することで、不正チェックじゃないんですよね。もちろん、大学内で論文投稿を全部見るなんて現時点ではおそらく無理ですけど、もうちょっと、こういった不正防止なんかの話し合いができたらいいなって、この話を聞いたときに思いましたよね。 S| いいですね! 共催でセミナーやってみたいですね。 U| はい、喜んでさせていただきます。 あと、これはAIに限らない話ですが、色々出てくるって意味ではおそらく、研究者の方々は大変だと思います。従来型のジャーナルもあれば、プレプリントもあれば、Taylor & FrancisがやっているF1000みたいなものもあったり。査読モデルも、シングルブラインドからダブルブラインドからオープンから……。あとは、プレプリントからジャーナルへの投稿に連携するようなものが出てきていますよね。さらに、データジャーナルだとか、プロトコルとか、あと最近、ブロックチェーンを使ったものも試みがあるらしく、今後さまざまな出版の形が出てきたりするだろうし。 それを研究者が全部フォローするのはかなり大変だと思います。 4. 査読と投稿 S| 今おっしゃった、ブラインドの査読の方法、シングル、ダブル、オープンって? バーにいるとウィスキーの話みたいですね。 U| そうですね。シングルブラインドは、従来型ですね。著者から査読者の名前は分からないけど、査読者の方は著者の名前がわかるんです。ダブルブラインドは両方分からなくするっていうものです。 シングルブラインドでは、査読者に著者の名前、所属、国とかがわかると、あるいは名前から男性か女性か推測できるとUnconsious Bias(無意識の偏見)で審査に影響を及ぼすのではという懸念があって、なら、ダブルブラインドで両方隠したら、よりフェアになるんじゃないかな、っていうのが元々の始まりだと思います。 ただ、ダブルブラインドも結構難しくて、中には、著者の名前を隠しても、論文を読めば内容やレファレンスから著者が誰かわかると言う先生方もいらっしゃるんです。また、名前を隠すっていうのは逆バイアスになる場合もあるらしく、ある海外の先生から聞いた話だと、自分の名前や所属を隠すのは自信が無いという逆のバイアスに繋がる可能性があると言うんですね。難しいです。 オープンは、2種類あって、査読者の名前をオープンにするものと、査読の中身、やりとりは公開するけれども、査読者名はクローズドのままのものがあります。 確か、トリプルブラインドの試みか提案もあったんじゃないかな。編集部の方も名前が分からないみたいな。コミュニティーを使ったものもあるし、ほんといろいろです。 S| 査読と言えば、昔、 PLoS ONE が、APCも安くて、最低限の査読だけして論文を世に出します、読む側が評価するんだ、って「OAメガジャーナル」として出てきたのがインパクトありました。そういうOAジャーナルも増えているのかもしれないけど、ブラインドかオープンかの他に、ちゃんと査読するか、間違いが無いかだけ査読するかみたいな種類の違いもあるんでしょうか。ジャーナルによって。 U| ジャーナルによって役割が違うじゃないですか。新規性がどれくらい大切かとか。ジャーナルのフォーカスによって、しっかりしたサイエンスを出版することは大切だけれども、新規性はそこまで求めないジャーナルであれば査読もそのような目的でされると聞いております。 査読者として、特に新しいジャーナルであまり親しみがない場合、査読の対応は結構難しいんじゃないかなとも思います。 S| 今はみんな電子ジャーナルになって、掲載する論文の数やページ数は気にしなくてもいい感じですか。例えば昔は100本投稿があってもこの号には何本しか載せられないというのがあったかもしれないけど、今はどうなんでしょう。 たくさん論文が載る号もあれば、今号はちょっと不作ですね、みたいなのもある……あれ? もうそもそも号なんてないんでしたっけ? U| それもジャーナルによってやり方が全然違うと思うんですよ。でも、憶測ですけど、冊子体がないジャーナルは、出版数は気になっても、昔ほどあまりページ数は気にしていないのかもしれないですね。 → 3杯目へつづく ~ 今宵のドリンク(2杯目) ~ U| 大好きなジン S| オリオンビールのエール? 珍しいですね ※BarOAは架空のバーです。 ※対談は2024年11月に行われたものです。内容・所属等は対談時の情報に基づきます。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • ジャーナルってどうやって作ってるんですか? | JPCOARウェブマガジン

    BarOA|第1夜 : 浦上裕光氏×鈴木雅子氏|1杯目 Talk BarOA|第1夜 : 浦上裕光氏×鈴木雅子氏|1杯目 ジャーナルってどうやって作ってるんですか? 浦上 裕光 / 鈴木 雅子 25/4/21 Springer Nature / 九州大学 とある下町にある雑居ビル。裏手の階段を降りた先にあるBar Open Access(BarOA)では、様々な思惑を秘めた大人たちが和やかに好きな飲み物を片手に談笑している。さて、今宵はどんなお話が展開されているのやら...... (2025/10/27追記)Springer Nature Japan公式ウェブサイトでご紹介いただきました: 【お知らせ】学術情報の舞台裏を探るBarOA(Open Access)シリーズ記事の公開 — JPCOARウェブマガジンより | https://www.springernature.com/jp/news/20251024-announcement-jpcoar-baroa-jp/27822716 \今宵のお客様/ 浦上 裕光(Springer Nature) 岡山県生まれ、千葉とカリフォルニア育ち。大学からポスドクまでアメリカとドイツで化学関連の分野で研究に携わり、国内企業の研究職に。その後、出版業界に転職し11年強。化学は好きなので、まだ時々論文を眺めます。最近は読書と海外旅行から離れてしまっているので、そのうちまた再開したいと考えております。 鈴木 雅子(九州大学) 学術情報センター(現国立情報学研究所NII)で採用され、大阪大学に転出。諸事情により北海道大学に転勤したのち、小樽商科大学、北海道大学、旭川医科大学、静岡大学、NII、名古屋大学、神戸大学、九州大学、と転々としてきた。住んだ所みな都。『月刊DRF』やJUSTICE『jusmine』を創刊・命名した若かりし頃のヒラメキやパワーが今や見る影もないため、最近は体力をつけるべく山登りを楽しんでいる。 〔 1杯目  2杯目   3杯目   4杯目  〕 1. お互いの職場・業種 鈴木(以降S)| ちょっとお隣座ってもよろしいですか?鈴木と申します。 浦上(以降U)| はい、ぜひぜひ。浦上です。 S| マスターから、Springer Natureにお勤めとお聞きしたんですけど。Springer Natureって、元々はSpringerとNatureと別々の会社でしたよね。 U| そうですね。2015年に合併しました。その頃、僕はまだいなかったのですが、Springerがドイツの企業でNatureがイギリスで、それぞれの背景があるので、2つの違う文化が合わさった、っていうようなことは聞いています。 S| じゃあ、どちらかにいらっしゃったわけじゃなくて、別の会社からSpringer Natureに。 U| はい。全く違う出版社にいまして。 2021年2月に Springer Natureに転職しました。COVID-19のため、当初はほぼフルリモートでした。 S| 転職されたんですね。出版社の方って出版社から出版社に移られる方が多いイメージがあります。 U| 国内の営業職はそういったイメージがあるかもしれません。逆に国内において編集関係者の転職は少ないような気がしています。海外もそうかもしれませんが、印象としては業界内、社内の転職・異動が多いような気がします。国内において、本当はもうちょっと、出版社から大学や研究機関、逆に大学や研究機関から出版社みたいな転職があれば、もっと面白いんじゃないかな、と思うんですけど。 S| 今のお話だと、社内でいくつか部門があって、社内で異動があるってことですか?意外です。 U| Springer Nature Japan内の社内の異動もありますよ。日本オフィスでも200名以上いるので。 S| そんなにたくさんいらっしゃるんですか! あ、図書館もよくそう言われるんですよ。カウンターにいる職員だけと思われて、バックヤードに本を買ったり整理したりする職員がたくさんいることに驚かれがちなんですが、200名とは・・・ U| そうです。結構大きくて。エディター関係、つまり編集部でおそらく30人ぐらいですね。 S| ん?後の170名の方は? U| 営業だったりマーケティングだったり広報であったり、普通の会社にある課が基本的に揃っています。いろんな方がいますよ。 S| 海外の会社って、ポストに応募して働くのかなと思ってました。会社に終身雇用されて、社内で部署をぐるぐる回る日本とは違うというイメージ。 U| そうですね。会社に入ってから配属を決めていくとか、キャリアアップするために色々な部署を経験させて、といったなんとなくイメージとしてある伝統的な考え方とはちょっと違う感じです。自分の限られた経験からの話になりますが、欧米では雇用の時点で専門性を見ているのかなという感じがしました。そもそも雇用の方法も違います。日本は一括採用を行っている会社が多いと思うのですが(通年採用を行っていながらも)、私が把握している範囲での欧米の組織では通年がスタンダードのような気がします。 図書館ってどんな感じなのでしょうか。 S| 図書館も色々だと思うんですけど、私が勤めているのは国立大学の附属図書館で、昔は国家公務員の採用試験でした。法人化後も、全国共通の一般試験と図書館の専門試験を受けて、その上で各大学での試験をして採用されます。「図書系職員」枠で採用されるので、図書館の中でぐるぐる回るって感じですね。小規模大学では、図書系として採用せず、大学内でぐるぐる回るところもあります。 2. 志望動機・来歴 U| ちなみに鈴木さんは、どうして大学図書館司書になられたのですか? S| 元々中学か高校の図書室の先生になりたかったんですけど、大学の時に図書館でふと、カウンターに座ってるお姉さんはどうやって図書館のお姉さんになったんだろうって、興味があって突撃したんですよね。そしたら、じゃあちょっといらっしゃい、って事務室に案内してくれて。そこで色々教えてもらって、大学の図書館に勤めるのもいいな、って思ったのがきっかけでした。浦上さんはなぜ出版社に入られたんですか? U| 僕は元々、歴史が好きだったんですよね。でも高校生の時に、なんとなく歴史じゃ将来食べていけないと思って理系コースに入りました。遺伝子組み換え食品が騒がれている頃で、サイエンスと社会の捉え方との差を埋めるようなジャーナリストになりたいと思って、「ドクターまで行かないと」とまだ大学にも入っていなかったのに何となく思ったんです。ドクターを取った後は普通にポスドクをやっていました。 研究は面白かったんですが、アカデミアに残るのは難しそうだと思って、出版社やコンサル、メーカー等、色々就職活動しました。最初はメーカーに就職したんですが、そこは結構アンハッピーで……。入社初日ですね、もうここにいるのは長くて2、3年だなと思って。そう思っているうちに、ヨーロッパのポスドク時代の仲間から、出版社にこういう採用があるから応募したらと言われて、それで出版社に入ったのがきっかけですね。 S| ヨーロッパの大学で学ばれてたんですか!じゃ、海外の大学図書館で勉強してたんですね。 U| 大学と大学院がアメリカで。ポスドクがドイツですね。社会人になって、日本語でメールを書くのに苦労しました! 大学の頃は図書館で勉強することもあったんですけども、大学院では、あまり通いませんでした。僕の頃にはジャーナルは基本的に電子化されていたと思うので、図書館に行く必要ってほとんどなかったんですよね。だから、博士論文を提出する時ぐらいしか使った記憶がなくて。学部生の時に大学図書館で初めて論文の検索方法とか教えてもらった記憶はありますね。 S| Springer Natureの前は、どこにお勤めされていたんですか? U| 英国王立化学会(Royal Society of Chemistry、以下RSC)ですね。そこに7年半ぐらいいました。 S| どんなお仕事をされてたんですか? U| RSCに入った時、日本オフィスは1人だったんですよね。その後3人になって、事務の方、営業の方とEditorial Developmental Manager兼Japan Managerの私でした。Editorial Developmental Managerですが、ざっくり申し上げると出版をとおしたエンゲージメント活動で、プライオリティとして、高いクオリティの論文投稿を増やすことと、ボードメンバー(Board member)、 編集委員ですね、の数を増やしていくっていうこと、またジャーナルのビジビリティを上げること。RSCへの親近感の向上やブランドを展開していくために、さまざまな学会やシンポジウムでの協賛やコラボレーションをとおして賞のセットアップをさせていただいたり。シンポジウムの開催・共催や論文執筆や出版に関する講演もしたりしていましたね。 S| 化学会ですもんね。ちょうどご自身が研究されてた分野だからなじみ深いですね。 U| そうですね。とはいえ、大学と大学院はアメリカだったので、当時はACS(American Chemical Society)のジャーナルを主に読んでおり、RSCのジャーナルは日常的にはそこまで読んでいなくて。それに、研究生活のほぼ全てが海外だったので、日本の事情が全くわからなくて。すごい有名な先生なのに、当初はそれを深く知らないままお付き合いさせてもらってたこともありましたね。 3. 編集委員(Editorial board)と査読(Review) S| 編集委員というお話がありましたが、ずっと疑問に思っていたことがあって、お聞きしていいですか?出版社があって、ジャーナルがあって、それぞれスタッフがおられる、ジャーナルの編集委員会の委員もいらっしゃる、どういう関係になっているんでしょう?例えば、投稿論文の査読者を決めるのは誰なのか?各ジャーナルの値段を決めるのは誰なのか?教えていただきたいです。 U| 編集委員、それは、エディトリアルボードメンバーですね。ボードメンバーやエディターとも言いますね。たぶん出版社によって違うんですけど、査読者を決める、つまり論文のハンドリングって観点から見ると、大きく分けて三つのタイプがあるんですね。これはSpringer Natureに限った話ではなく、私が見てきたものになりますが、一つ目は、大学の先生等、外部の専門家の方が論文をハンドルするタイプ。二つ目は、外部の先生でなく出版社の専門のエディターが論文のハンドルを全部するタイプ。で、最後の三つ目は外部の専門家の先生方、出版社の専門エディターの両方がハンドル可能なタイプ。 S| どのタイプが多いとか、やりやすいとかあるんですか? U| 聞いたことのあるフィードバックでは、投稿者からすると、外部の先生の方が、より専門性のある人に論文をハンドリングしてもらえるっていう見込みがあったり。一方外部の場合、さまざまな理由、状況から、投稿先のジャーナルにおいて論文のハンドリングが難しいかもしれない、ということもあったり。出版社のエディターはその分野において先生方ほど専門性はなくともさまざまな論文を見てきているので幅広い知識があるんじゃないかと思います。両方がハンドル可能なタイプのいいところは、投稿する側として、自分の好みのモデルを選べるところですね。 S| 査読者を決めるのは編集委員、エディターというお話でしたが、1つのジャーナルに何人くらいいらっしゃるんですか?そんなにはいらっしゃらないですよね。 U| ジャーナルやそのサイズで結構変わってきますが…Springer Natureだと全体で何万人の単位ですよ。Springer Natureのジャーナルは約3,000誌あるので、例えば1つのジャーナルで10人と考えても3万人です。2023年のデータでは17万人ぐらいですね。 S| そんなに!とはいえ、3,000誌で17万人なら、単純計算で1つのジャーナルに50人か60人ですか。たしかに、年に12号出たとして、論文単位では何本出るんだって話ですね。オンラインになってページ数も増やせますもんね。 U| それぞれの分野の中で更にサブカテゴリーがあるからその専門家の先生がいらっしゃらないと、論文って適切にハンドリングできないんですよ。耳にしたことのある話だと、学際研究の場合、研究のある一面だけでは新しくなくても、合わせると新しいということがあり、内容にあわせて各分野の適切な査読者に投げてレビューを返してもらうのですが、各査読者からのフィードバックをあわせた上での適否の判断というのは結構難しいようです。 S| 自分の研究分野ではない分野の査読者はどうやって見つけるんですか? U| 難しいですよね。だから、学際的なコンテンツをちゃんと回している雑誌のエディターやチームはすごいなと思いますね。それだけ見識や視野が広くないと、そういった人にちゃんと査読を依頼できないので。 今は査読者候補の選定をサポートしてくれるようなツール もあって、それを利用することもあるとは思うんですけど。それでもとても大変な仕事だなとは思いますね。 S| 先ほど、出版社が論文をハンドルして全部やるタイプもあるというお話がありましたが、それは出版社のスタッフがエディターもする、今の「大変な仕事」もやっちゃうということですよね?大変だ。何人くらいいらっしゃるんですか?私はこの雑誌の担当、みたいな感じですか? U| 社内で論文をハンドリングしているエディターは多数いるのですが、人数は把握しておりません。対象のジャーナルはそれほど多くないですが、例えばNatureおよびNatureリサーチ誌、Nature CommunicationsやCommunicationsシリーズがそれにあたります。出版社のエディターで、実際に論文をハンドルする役割の場合、私の把握している範囲では、1誌のみの担当なんですよね。一方で、査読には直接関わらないエディターもいて、そのような場合は複数ジャーナルを持っているような感じです。ただ、その場合は査読には入ってこないです。独立していることは大切だと思います。エディターの仕事の内容によって、何誌を受け持つかっていうのは変わってきますね。 基本的にNature系列は一人1誌ですね。Springer系列だと10誌ぐらい持っている人もいます。他の出版社で、中には50誌持っている人とか聞いたこともあるんですが、そうなるとおそらく内容面でなく、編集方針に関するディスカッション、データ分析や学会誌の編集委員の先生方との関係をマネージメントするような役割になるんじゃないかなと推測しています。 →2杯目へつづく ~ 今宵のドリンク(1杯目) ~ U)まずは豆乳ハイ S)生ビール。あ、撮る前に飲んじゃいました ※BarOAは架空のバーです。 ※対談は2024年11月に行われたものです。内容・所属等は対談時の情報に基づきます。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • サッカーからオープンアクセスについて思うこと | JPCOARウェブマガジン

    ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ) Series ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ) サッカーからオープンアクセスについて思うこと 大谷 周平 24/5/17 琉球大学 JPCOAR作業部会のメンバーにお仕事紹介をしていただきながら、個人のリポジトリ的なことがらも語っていただく連載企画「ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ)」。 第2回は「次期JAIRO Cloud移行タスクフォース(-2023年度)」の大谷周平さんにご執筆いただきました。  ここ数年は息子がサッカー部に入ったことの影響で、地元のJリーグチームの観戦が趣味になっています。毎週末、一喜一憂の日々、憂の割合が高めな気がしますが…。そんな地元チームやサッカー観戦に関する記事を調べてみると 熱狂的サッカーファンは負けたら命の危機!? 英大学が“ストレス”を研究「悲惨な試合になるほど…」(サッカーダイジェスト 2020年1月26日付) https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=69203  この記事の元になった論文は購読型のジャーナルに掲載されていますが、共著者がリポジトリに掲載しているので、オープンアクセスで読むことができます。 元論文:Devoted fans release more cortisol when watching live soccer matches https://doi.org/10.1002/smi.2924 同論文が公開されているリポジトリ: https://pureportal.strath.ac.uk/en/publications/devoted-fans-release-more-cortisol-when-watching-l ive-soccer-matc  また、自分が応援しているチームについては、国内のリポジトリにも以下のような論文が公開されています。 プロスポーツチームが根差す「地域」とは? : マルチスケールで展開するFC琉球をめぐる多様な主体の思惑と戦略 http://hdl.handle.net/10748/00010154  冒頭に書いたようにここ数年で観戦するようになっただけなので、歴史的な経緯や調査分析された論文があるというのは興味深く読みました。  センセーショナルな記事の根拠となっている論文であったり、日常にかかわるものが一定のルールに従って記録され、オープンになっていることは、普段は意識しなくても重要なことに思えます。メディアでDOIやURLなどの典拠が示されないことに不満を感じることが多くあります。これは紙幅の制約が最大の理由だとは思いますが、あわせて学術論文などへのアクセスが限定的であり、例え典拠を示してもアクセス出来ない人が大多数であったということも影響しているかもしれません。多くのメディアがウェブ上でも情報を展開していることから、すくなくともウェブでは紙幅による制約はありませんし、オープンアクセスが一般的になり、識別子やライセンスの明示など利用に関する環境が整備されることで、メディアでも典拠が適切に記載されるようになることを願っています。  と、無理矢理、趣味の話からオープンアクセスに繋げたところで、業務では機関リポジトリ、図書館システム、雑誌契約、大学出版会などを所掌する係にいます。学生時代に、NACSIS-CATの多言語化に伴い、韓国語目録の遡及アルバイトをしたことで、情報を組織化することで、広く資料が認知され利用可能になるということに感銘を受けて、大学図書館員になりました。自機関のコンテンツをオープンしていく、機関リポジトリの業務はそれに通じるものと考えています。    一方で、オープンアクセスの注目度が上がっている昨今ですが、正直なところ、仮にグリーンオープンアクセスが理想的な形で実現したとして、それは現在の学術情報流通の抱える問題の解決につながるのであろうか、という疑問はあります。当然ながら、簡単に解決する問題であればとうの昔に解決しているはずなので、現在のような機会を活かし、関係者と問題を共有し、模索していくことが重要だと考えています。私もその一端に関わる者として、今後も出来ることや面白くなりそうなことに取り組んでいきたいと思います。  JPCOARでは2017年度から、広報・普及作業部会、コミュニティ強化・支援作業部会、コンテンツ流通促進作業部会、次期JAIRO Cloud移行タスクフォースなどに参加してきました。JPCOARウェブマガジンの前身?である、JPCOAR Newsletter: CoCOARの編集企画や、JPCOARウェブサイトの運用、メーリングリストの立ち上げ、SCPJの移設、JAIRO Cloudの問い合わせ関係の業務をやってきました。2020年度以降は、ほぼ次期JAIRO Cloud移行(WEKO2→WEKO3)に伴う仕事でした。いろいろ反省はありますが、兎にも角にもWEKO3への移行が終わったことにほっとしています。  作業部会に参加することのメリットは、やはり全国のオープンサイエンスやオープンアクセスに関わる機関の方々とのつながりができることだと思います。作業部会に入ったからといって、初めから高度な知識が要求されるわけでもないので、それこそ学内で機関リポジトリの運用について相談出来るような人がいないと悩まれている方ほど、得るものは大きいのではないでしょうか。誰でも最初は初心者ですので、お気軽にご参加検討してください。  つながりという意味では、JPCOARの活動を通じて2回の海外発表の機会(2017年韓国、2018年台湾 ※ヘッダ画像は韓国の天帝淵の滝です)も得ることが出来ました。それぞれの国でもちろん事情は違うのですが、意外と悩んでいることは似通っていると感じ、勇気づけられたのを覚えています。韓国のときには、出張旅費の調整が出来ていなかったり、2回目は台風のせいで滞在を延期したり(帰国後も自宅が一週間停電断水…)と、出張事務でJPCOAR事務局には迷惑を掛け通しということばかり覚えています。新型コロナ禍を経て一時期はオンラインイベントばかりでしたが、最近は現地開催も増えています。 韓国 Asia Data Weekでの発表 台湾 ETD 2018の表彰  JPCOARのような組織は海外出張に限らず、個々の大学ではなかなか機会を作ることや取り組むことが困難な問題を共同で検討する場でもあります。コミュニティとしてやるべき事はやりつつ、やりたいことを実現するための場として作業部会に参加いただければと思います。  サッカーに限った話ではありませんが、さまざまな個性をもった選手が勝利という共通の目的に向かっていくことが、観戦の魅力だと感じています。オープンアクセスのコミュニティも、個人としても機関としてもそれぞれの個性を活かして、持続可能な学術情報流通の構築(そもそもの共通の目的は?という議論はありそうですが)に向かっていければと願っていますし、私も自分にできることを続けていきます。 [1] ストラスクレイド大学はElsevier社のPureを使っているんですね。サッカーダイジェストの記事は、BBCの記事を元にしたものなので、この論文が典拠というわけではないのですが…。 [2] Asia Data Week 2017  https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/records/60 [3] ETD 2018  https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/records/137 文:大谷 周平 福岡県北九州市出身。そろそろ地元よりも沖縄で過ごした期間の方が長くなりそうです。普段はかりゆしウェアで仕事しているので、年に数回ネクタイしたりすると、周囲から驚かれます。業務でプログラミング(おもにPython)を書いている時間が楽しかったのですが、生成AIに書かせれば事足りてしまうことが多くて、楽にはなりましたが楽しい時間はへってしまって、すこし残念な今日このごろです。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • JPCOAR10周年記念! JPCOARウェブマガジン名記事選! | JPCOARウェブマガジン

    Column JPCOAR10周年記念! JPCOARウェブマガジン名記事選! JPCOARコミュニティ活性化作業部会 26/10/13 オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)は、2026年7月27日に設立10周年を迎えました。 10周年記念企画のひとつとして、JPCOAR Community Slackでは「ウェブマガジン名記事選」を全10回にわたって紹介しました。本記事は、Slackで投稿した紹介文をまとめ、再編集したものです。 JPCOARウェブマガジンやその前身にあたる「CoCOAR:JPCOAR Newsletter」に掲載された記事の中から、10周年を迎えた今、改めて読み返したい記事をピックアップしてご紹介します。 「今読んでも学びになる記事」「当時と今との比較ができる記事」「JPCOARの歴史を振り返る記事」など、さまざまな視点で選定しました。 〈目次〉 【歴史】JPCOARウェブマガジンがスタートします!:広報・普及作業部会の11人が語る新ウェブマガの魅力 【学び】「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」って何?~はじめてのリポジトリ担当者の疑問~ 【歴史】JPCOAR Newsletter: CoCOAR; 創刊号 【学び】OA義務化に備えてCCライセンスについて考える:横浜国立大学附属図書館での実務経験から 【比較】座談会「機関リポジトリはどこへ向かうのか?」 【学び】OA加速化くんを使ったグッズを考える会議 【歴史】汗と涙のJPCOAR新ロゴ誕生秘話 【学び】ジャーナルってどうやって作ってるんですか? 【学び】ずっと応援してた地下アイドルがメジャーデビューしちゃったような感じ 【学び】シリーズ「かたつむりの気になる国際動向」 【歴史】JPCOARウェブマガジンがスタートします!:広報・普及作業部会の11人が語る新ウェブマガの魅力 JPCOARウェブマガジンがスタートします!:広報・普及作業部会の11人が語る新ウェブマガの魅力 (JPCOARウェブマガジン. 2023/10/23公開) 「JPCOARウェブマガジン」は「CoCOAR:JPCOAR Newsletter」の後継として2023年10月にスタートしました。 キャッチコピーは「オープンアクセスで世界を幸せにするウェブマガジン」。 このJPCOARウェブマガジン最初の記事では、スタート時のメンバー11名が集まり、ウェブマガジンの魅力や展望について語り合っています。 スタートから約3年が経過した今あらためて読み返すと、実際に記事化された企画のアイデアも数多く語られていました。 実現したアイデア(一部) 「オープンアクセス」という言葉や取り組みを広く一般に身近に感じられるように伝える記事 記事内でも触れられていたOA論文紀行はウェブマガジンでも連載を続けています!専門家の方以外にも親しみやすい日本語文献を紹介していますので、ぜひご覧ください! 「べらぼう」をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ 「光る君へ」をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ 『ばけばけ』をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ リポジトリ業務初任者やリポジトリ業務に携わっていなかった方も意識した記事 Q&A形式で参考資料を紹介した記事と、後輩さんと先輩さんの会話形式で読める記事の2本が公開済みです! JAIRO Cloud(WEKO3)ビギナーQ&A ~リポジトリ登録で困ったときは~ はじめてのJAIRO Cloud:個別か一括か それが問題だ。 それぞれ実際にどんな記事になっているか、リンクからぜひご一読ください!   【学び】「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」って何?~はじめてのリポジトリ担当者の疑問~ 「学術論文等の即時オープンアクセスの実現に向けた基本方針」って何?~はじめてのリポジトリ担当者の疑問~ (JPCOARウェブマガジン. 2025/2/5公開) いよいよ本格的に始まった即時OA義務化による論文・データ等の公開。そんな今こそ読み返したい1本です。後輩さん🐦と先輩さん🐧との相談形式を通じて、担当者目線での「どうすればいいの?」に寄り添い、分かりやすく解説しています。 3つの観点でスッキリ整理 「国のOA基本方針とは」「何を求められているのか」「リポジトリ担当者の対応」の3点を軸に、方針そのものの理解から、政策文書だけでは見えづらい実務対応まで、一連の流れとして整理されています。 着任したばかりの方はもちろん、自機関の状況を改めてまとめなおしたい方にもおすすめです。 制度の理解から支援の実践へ 公開が求められる学術論文と根拠データ、制度開始から実際に研究成果が生まれるまでの時間差など、研究者をサポートするために理解しておきたいポイントも。 制度の概要を知るだけでなく、研究や成果物の流通そのものについての理解も深め、自機関で「誰が、何を、どのように支援するか」を考える出発点として活用できる記事です。 記事とあわせて、JPCOARウェブサイトの「 オープンサイエンス関連の基本ドキュメント 」もぜひご活用ください。主要な政策文書や関連資料がまとめられており、初めて学ぶ際や学内関係者へ説明する際の情報源としても役立ちます。    【歴史】JPCOAR Newsletter: CoCOAR; 創刊号 JPCOAR Newsletter: CoCOAR; 創刊号 (CoCOAR:JPCOAR Newsletter. 2017/9/27公開) JPCOAR10周年に原点をプレイバック! JPCOAR設立直後の熱気漂う『CoCOAR:JPCOAR Newsletter』創刊号を紹介します。 JPCOARスキーマの誕生やCoCOARロゴ決定の秘話など、今のリポジトリ基盤へとつながる歴史の第一歩が詰まった1冊です。 CoCOARロゴ決定の秘話と誌名に込められた思い 会員機関からの公募によって決まった誌名「CoCOAR(ココア)」の由来や、日本の伝統文様「束ね熨斗(たばねのし)」をモチーフにデザインされたロゴマークの誕生秘話を紹介。全国の機関が結束して学術情報を未来へつなぐという、当時の強い願いが込められています。 JPCOARスキーマ誕生へのステップ 今やリポジトリ運用に欠かせない「JPCOARスキーマ」のガイドライン案や、Junii2からの改訂背景、国際的な相互運用性を目指した技術的議論など、現在の標準基盤がどのように形作られていったのか、その出発点をたどります。 全国の仲間と歩んだ初期の取り組み JAIRO Cloudの導入事例や研究データ管理(RDM)トレーニングツールの開発、各タスクフォースの活発な活動報告など、コミュニティ全体で課題に立ち向かった熱気あふれるレポートが満載です。 今改めて読み返すことで、私たちが歩んできた道のりと、これからのオープンアクセスの展望を再発見できる1冊です。ぜひリンクから創刊号の内容をご覧ください! 【学び】OA義務化に備えてCCライセンスについて考える:横浜国立大学附属図書館での実務経験から OA義務化に備えてCCライセンスについて考える:横浜国立大学附属図書館での実務経験から (JPCOARウェブマガジン. 2024/10/15公開) 即時OA義務化対応も始まり、論文をリポジトリに登録する際にクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)に出会うことも増えてきたのではないでしょうか? 本記事では、CCライセンスの基礎知識や付与するメリット、実務上の注意点について、横浜国立大学附属図書館での実務経験をもとに分かりやすく解説しています。 CCライセンスを付与するメリットは? リポジトリの中には、「ライセンス」が検索条件の中に入っている場合があります。そのような場合、CCライセンスがついているかどうか、ということを理由に検索してくる人がいるかもしれません。ライセンスがひとつのアクセスポイントとなり、国際的にも利用されやすくなる可能性もあります。 また、二次利用時の条件を明示でき、利用案内の簡便化にもつながる点もメリットの一つです。 論文へのライセンス付与時に気を付けることは? ポリシーを調べる際に便利なツールは様々ありますが、注記が欠けているものや情報が古くなっているものが含まれていることがあります。担当者自身が、出版社ウェブサイトの著作権ポリシーに直接アクセスして内容を確認することは欠かせません。 当時の記事では触れられていませんでしたが、現在では研究データの扱いについてポリシーを公開している出版社もあります。研究データ登録依頼があった際には、論文とあわせて研究データに関するポリシーの有無も確認するとよいかもしれません。 CCライセンス、聞いたことはあるけれど説明には少し自信がない……という方は、この機会に改めて確認してみましょう! 【比較】座談会「機関リポジトリはどこへ向かうのか?」 座談会「機関リポジトリはどこへ向かうのか?」 (CoCOAR:JPCOAR Newsletter. 2021/2/19公開) 当時の若手作業部会員による「リアルな本音」が詰まった座談会記事です。かつての担当者の期待や戸惑いが、現在どこまで整理され、また一方でどこに新しい希望や課題が生まれているのか。各機関の現場感覚と照らし合わせながら、これからの「向かう先」を考えるきっかけにもなる1本です。 座談会では、機関リポジトリの存在意義に関わる問いが率直に語られています。出版社版と著者版が併存するグリーンOAをどのように利用者へ説明するか、限られたリソースを何へ振り向けるかといった論点は、即時OA対応が本格化した今さらに過熱しているかもしれません。日々の登録業務をあらためて見つめ直す手掛かりになるでしょう。 現在にもつながる、今も共感できる様々な課題や苦労が語られる中で、ひときわ印象的なのは、機関リポジトリは図書館だけで運営するものなのか、大学として何を目指すのか、そして限られた人員の中ですべてを担うことが本当に最善なのか、という問いです。明快な結論を示すのではなく、研究者との小さな対話から始めるという方向性を提示している点も本記事の特色です。 何より、こうした「担当者同士ならでは」の迷いや試行錯誤を分かち合い、共に悩むことも、コミュニティが果たす大切な機能のひとつではないでしょうか。その意味では、コミュニティとしてのJPCOARを象徴した記事のひとつかもしれません。 【学び】OA加速化くんを使ったグッズを考える会議 OA加速化くんを使ったグッズを考える会議 (JPCOARウェブマガジン. 2025/4/23公開) 2024年に開催され大いに盛り上がった「OA広報素材『イイネ!』祭り」で、見事1位を獲得した大分大学の公式キャラクター「OA加速化くん」。この愛らしいキャラクターを活用した広報グッズを勝手に考案してみるという、遊び心あふれる企画記事をご紹介します! 「即時OA義務化」に向けて熱く広報のアイデアを練り上げていた当時の熱気と、本格的な運用・報告段階に入った「今」の業務とを対比しながら、ぜひ業務の合間の箸休めにお楽しみください。研究者や学内を巻き込むヒントが詰まっています! Slackカスタム絵文字からブロック崩しゲームまで!? Slackのリアクションで使えるカスタム絵文字や、扇風機やおもちゃを使ったクスッと笑える動画表現、さらにはWebARを用いた卓上フィギュアや「Pay Wallをぶっ壊す」ブロック崩しゲームまで、ユニークな5つのアイデアと制作秘話を公開。 研究者や学内を巻き込む広報のヒント 一見ふざけているようでいて、実は「いかにして研究者や学内に興味を持ってもらうか」「オープンアクセスを身近に感じてもらうか」という広報の本質的な問いへの工夫が凝縮されています。 CC0素材の活用実践ケース 二次利用が可能なCC0(パブリックドメイン)素材を自機関でどう展開できるか、コミュニティのオープンな発想から生まれた実践例としても必見です。 現場で奮闘する皆さんにクスッと笑える癒やしと、次なる広報のアイデアをもたらす記事です。 ぜひ記事本編をチェックして、自機関での広報のヒントにしてみてください! 【歴史】汗と涙のJPCOAR新ロゴ誕生秘話 汗と涙のJPCOAR新ロゴ誕生秘話 (JPCOARウェブマガジン. 2024/2/29公開) JPCOARのサイト上でも見かける、鳥かごの上に一羽の鳥。2023年6月に決定したJPCOARの新ロゴマークは、きっとみなさんの中でももうすっかりおなじみでしょう。このシンプルなモノクロのデザインを考案したのは、兵庫教育大学の山下真人さんです。ロゴに込めたメッセージや制作の舞台裏についてのインタビューがこちらの記事です。 「論文」のメタファーとしての鳥 最初の案では、鳥はおらず鳥かごだけだったそう。それではロゴを目にしたときに何を表しているのかすぐにはわからないということで、論文のメタファーとして鳥が登場しました。この鳥、フクロウなどの特定の種ではなく、囲われた場所から羽ばたいていくことを表現するための純粋な「ただの鳥」なんです。 囲い込みの「外側」 このロゴのポイントは、鳥かごの「外側」に鳥がいることです。 実はこのロゴには「論文を囲っていてはいけない」というストレートなメッセージの裏側に、もう一つ隠されたメッセージが……本文を読んで、その答えを見つけてみてください👽 新ロゴに込められたメッセージを知ってから改めてロゴを見てみると、見え方も少し変わる……かも? 【学び】ジャーナルってどうやって作ってるんですか? ジャーナルってどうやって作ってるんですか? (JPCOARウェブマガジン. 2025/4/21公開) とある雑居ビルの裏手にあるという「BarOA」を舞台に、Springer Natureの浦上裕光氏とJPCOAR運営委員の鈴木雅子氏による対談が、計4回にわたって繰り広げられます。査読や編集の裏側、それぞれの立場から見たオープンサイエンス、そして共に研究者を支えるための可能性など、出版社と大学の垣根を越えて語られる、Barならではの微醺を帯びたOA茶話です。 知ってる出版社の知らない裏側 編集委員、出版社、エディター、査読者などなど、学術論文出版に関わる様々な立場とそれぞれが担う役割、ご存じでしたか? 購読者、投稿者からはなかなか見えにくいジャーナル出版の舞台裏を垣間見ることができます。この知識があるとないとでは、研究者に対する支援の姿勢もきっと変わってくるのではないでしょうか。 ホットトピック全部盛り 研究評価と論文数、AIによる不正検知、新たな査読方式、研究データの公開とメタデータ、APCやダイヤモンドOAの持続可能性などなど、各回ホットな話題をこれでもかと巡っていきます。よく見かける話題もそうでないものも、異なる立場のざっくばらんな対話を通じて捉え直せることこそ、このシリーズの大きな魅力です。 出版社と図書館は、契約や価格交渉をめぐって向き合うだけの存在ではなく、ともに研究者を支える立場でもあります。互いの仕事や課題への理解を深めることが、新たな協働の可能性や自機関での研究支援のヒントになるかもしれません。学びと気付きに満ちた4杯を、ぜひじっくりとご賞味ください。 【学び】ずっと応援してた地下アイドルがメジャーデビューしちゃったような感じ ずっと応援してた地下アイドルがメジャーデビューしちゃったような感じ (JPCOARウェブマガジン. 2023/10/23公開) JPCOARのキーパーソンである運営委員会委員長の杉田茂樹氏と、広報・普及作業部会主査の野中雄司氏によるスペシャル対談の第1話です。 実は当初、編集して1回完結の記事として公開される予定でしたが、編集担当者から「これ以上カットできるところがありません!」と切実な訴えが入るほど濃密な内容に。急遽ボリュームを拡大し、全3話の連載形式でお届けすることになった話題作です。 エッジの効いたタイトルの真意とは? 「ずっと応援してた地下アイドルがメジャーデビューしちゃったような感じ」というエッジの効いたタイトル。草創期からリポジトリ事業に携わってきた杉田氏が、近年のオープンアクセスをめぐる国の動きや時代の変化をどう捉えているのか、その独特でリアルなタイトルの真意は本編で明かされます。 「ILLという病」と図書館の存在意義 「図書館は利用者のためではなく、科学の進歩のためにある」——。かつて物議を醸した刺激的な言葉の裏にある、学術情報流通の本質や「世界平和・人類の幸福」へとつながる図書館員のアイデンティティについて熱く語り合います。 熱気あふれる草創期の物語と、その先へ LANケーブルを床に這わせていたシステム管理係時代から、スティーブン・ハーナッド氏の情熱に触れた体験まで、日本のオープンアクセスが歩んできた歴史を振り返ります。 歴史の振り返りから始まったこの対談は、第2話・第3話と進むにつれて「国際化のリアル」や「学術コミュニケーションの未来」といった、より深遠で実践的なテーマへと展開していきます。 まずはそのすべての出発点となる第1話を、ぜひじっくりとお楽しみください! 【学び】シリーズ「かたつむりの気になる国際動向」 シリーズ「かたつむりの気になる国際動向」 (JPCOARウェブマガジン. 連載中) 言わずと知れた、同志社大学の佐藤翔先生による大人気連載! ユーモアあふれる語り口と、実務へのヒントに満ちた深い考察で、難しそうな国際動向も身近に、そして面白く学べるシリーズです。 毎回異なる著者近況コメントも必見のこのシリーズ、選出担当者が好きすぎて1記事に絞り切れなかったため連載全体をピックアップしつつ、泣く泣く選んだ個人的おすすめ記事3組をご紹介します。 「 オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?) 」&「 変わりゆくオープンアクセスメガジャーナル 」 まずは2年連続でアクセス数トップとなった大ヒット記事と、その後の変化を追った1本。掲載論文数などのデータを基に、従来型とは異なるメガジャーナルの成長や特集号を中心とする出版モデルを読み解き、大量・迅速出版と研究成果の質をめぐる問題へと考察を進めます。変化の速い学術出版を構造から理解したい方におすすめです。 「 G7±αのオープンアクセス海外動向 」 各国のOA政策を紹介するだけでなく、公開データを同じ物差しで比較し、政策と実際のOA実現状況との関係を検討する大ボリュームの記事です。海外制度を日本の状況と照らし合わせ、機関リポジトリやグリーンOAが果たす役割を考えるための材料が詰まっています。 「 リポジトリ収録論文が『撤回』されたらどうする? 」 いつ自分に起こるかもしれない、リポジトリ登録のその後を考える記事です。情報の信頼性を保つために、撤回情報をどう表示し、出版社側の更新とどう結びつけるか。公開して終わり、ではない、学術情報流通の一部としてのリポジトリのあり方、その運用やメタデータ設計などに直結する問いを投げかけます。 国際動向を追う楽しさと、明日の実務を考える視点を一緒に味わえる本シリーズを、ぜひ気になる回からお楽しみください。 いかがだったでしょうか。 10周年を機に過去の記事を読み返してみると、変わったこともあれば、今なお参考になる話題も多くありました。 今回ご紹介した記事のほかにも、JPCOARウェブマガジンやCoCOARには魅力的な記事が数多く掲載されています。ぜひ気になる記事を探してみてください。 JPCOARウェブマガジンではこれからもみなさまの興味・関心を刺激するような記事をお届けしていきます。 今後の記事もどうぞお楽しみに!   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 2nd Global Summit on Diamond Open Access 参加報告 | JPCOARウェブマガジン

    Report 2nd Global Summit on Diamond Open Access 参加報告 坂本 拓 25/4/11 国立情報学研究所 はじめに  JPCOARオープンアクセス推進検討タスクフォースの活動の一環として、2024年12月9日から同13日まで、南アフリカ共和国のケープタウンで開催された、ダイヤモンドオープンアクセス(以下、ダイヤモンドOA)に関する国際会議“2nd Global Summit on Diamond Open Access”に参加させていただきました。非常に盛りだくさんの内容だったので、いくつか要点をかいつまんでご報告させていただきます。 会議の位置づけ    このダイヤモンドOAの会議は、単なる図書館系の団体が集まった会合ではなく、国連の専門機関であるユネスコが中心的な役割を果たすものでした。ユネスコは2021年の第41回ユネスコ総会にて、「オープンサイエンスに関する勧告」を193か国が共通基準を遵守することに合意する形で採択しています。この「勧告」の担当者の方が当会議でも頻繁に登壇され、「ダイヤモンドOAが、この勧告の実施プロセスの非常に重要な部分である。」と話されており、この会議はユネスコの「勧告」との関連が強いものである印象を受けました。 会場の南アフリカ・ケープタウン大学 会議のテーマ  この会議が扱うダイヤモンドOAとは、著者・読者の双方とも費用を負担することなく研究成果をオープンにできる出版モデルのことです。購読料もAPCも発生しない、或る意味理想的なOAです。そしてこの会議のテーマとして、下記が掲げられていました。 「研究を「公共財」として推進するために、学術情報流通において「社会正義」を重視する」 原文 “Centering social justice in scholarly communication to advance research as a public good“   つまり、研究の遂行およびその成果は障壁なく全ての人が享受するべき権利であり、それを推進するために、学術情報流通における社会正義を重視する、ということです。ここでいう社会正義として、具体的に下記の3点が挙げられていました。 ・Inclusivity (包括性) ・Demarginalization(脱・疎外) ・Decolonization(脱・植民地主義)  Inclusivity(包括性)やDemarginalization (脱・疎外)は、欧米の英語論文だけでなく、様々な地域の多様な言語の研究成果物の価値(言語的・書誌的・地域的多様性)を確保しようというものです。Decolonization(脱・植民地主義)は、途上国およびその研究者が、欧米の研究者・出版者の支配的な地位による搾取によって、いつまでも途上国の立場に固定されてしまう構造を打破する、ということでした。   これらの社会正義の実現について、ダイヤモンドOAは非常に大きな役割を担いうるというのが、この会議のメインテーマでした。 ゴールドOAの忌避  この会議は欧米の人もいましたが、アフリカでの開催ということもあり、アフリカ、ラテンアメリカの参加者の割合が高い印象でした。それもあってか、APCに基づくゴールドOAを拒絶する言及がとても多かったです。「言葉は生き物」と言いますが、ゴールドOAも元々は、「研究成果が発表される時点からオープンアクセスになっていること」を意味する言葉だったのですが、大手出版社が大々的にAPCのビジネスを始めたために、今では多くの人が「ゴールドOA = APCが必要なOA」と定義するようになってしまったように思います。  話を戻します。先の「包括性」や「脱・疎外」の話とも関連しますが、ラテンアメリカやアフリカでは、いわゆる欧米のジャーナルからは排除されてきた歴史があります。それは主題的・言語的・地域的・経済的理由からです。そのためこれらの地域では、欧米のジャーナルとは異なるルートで自身の成果物を流通させる必要があり、その選択肢として、自身でプラットフォームを構築する等して実質的にダイヤモンドOAを実現していました。ダイヤモンドOAという概念が生まれるよりもずっと前からです。そのため、これらの地域においては、ダイヤモンドOAへの意識が非常に強く、投稿時にAPCを取ってビジネスにしようとする出版社のゴールドOAは、「私たちの目指すオープンアクセスとは全く異なり、到底受け入れ難いものである」との発言が複数ありました。 ダイヤモンドOAのコストと財政基盤  APCも購読料も取らないダイヤモンドOAは、いったいどこから運営予算を確保しているのか? これは誰しもが抱く疑問です。これに対する事例報告としてラテンアメリカの“RedALyc”というプラットフォームが紹介されていました[1]。これは2003年から続いている、完全に無料のオンラインジャーナルのプラットフォームです。月間100万人を超える利用があり、ユネスコやDOAJとも連携しています。そして肝心の運営予算については、メキシコ州立大学等の教育・研究機関、政府機関からの助成と、協賛機関の援助により賄われているとのことでした。実質的な出版コストは営利出版社の5%以下で運営できているという話が印象的でした。  また別のセッションでは“KnowledgeE”というドバイの学術情報コンサルタントの担当者が、自前でOAジャーナルを刊行する際のタスクとそのコスト計算について説明していました。Webサイトの立ち上げ、投稿システムの構築、ISSNの取得、DOIの取得、XML化などなど、非常に詳細にジャーナルの刊行に必要なあらゆる作業を列挙し、それぞれのコストとマンパワーを具体的に数値化して計上していました。詳細は当日のスライドが公開されていますので、そちらを参照いただければと思いますが[2]、日本円換算した場合、人件費込みで、おおよそ論文1本に必要なコストは月刊誌掲載論文の場合で約28,000円、季刊誌掲載の場合で約40,000円ぐらいでした。現在の商業出版社のAPCに比べると格段に安価です。このセッションの意見交換の際には、 「出版社に高額な購読料やAPCを支払うのをやめ、その予算をダイヤモンドOAのインフラ構築に『転換』すべきだ!」 といった声や、「ジャーナル購読料の値上がりで、機関内の財務担当者と話をする際に、ダイヤモンドOAに切り替えると予算が大幅に節約できる、ということを主張するべきだ」と言った声が参加者から上がりました。そしてすでに商業出版社は、ビジネスとしてダイヤモンドOAのプラットフォーム運営も計画しているため、強く警戒する必要があることも、複数の参加者が述べていました。 ダイヤモンドOAの課題 -研究評価-  ダイヤモンドOAは、誰もが研究成果を発表し、研究成果にアクセスできる基本的人権を保障する素晴らしいものである点は間違いないのですが、現状ではいくつかの課題があると指摘されていました。  複数の参加者から、現時点ではダイヤモンドOAジャーナルに掲載されている論文の「質」について問題があることも多い、という声がありました。ですが何と言っても最大の課題は、やはり研究評価です。Web of ScienceやScopusといったデータベースに採録されインパクト・ファクターを持っているジャーナルに論文を投稿し、被引用数を多く獲得することが、一般的に研究者のキャリアにおいて大きな意味を持ちます。しかし、ダイヤモンドOAジャーナルは、言語的・地域的・主題的に多様であり、上記のデータベースの採録基準には合致していないこと、またインパクト・ファクターを持っていないことが多いです。そのような状況で、大手商業出版社の、評価の確立したジャーナルではなく、ダイヤモンドOAジャーナルに貴重な研究成果を投稿してもらうことは、やはり非常に困難であり、それこそが欧米出版社の優位性を打破できない最大の要因です。  これに対し、複数の参加者から、当会議のテーマであるダイヤモンドOAの道義的価値、つまりダイヤモンドOAが、研究に関する基本的人権を保障するものである点を研究評価の指標の中に盛り込むべきだ、といった声があがり大きな拍手が沸きました。  しかし、このやや過熱したダイヤモンドOA至上主義とでも言うべき空気に、ケープタウン大学の学長であるMosa Moshabela教授が冷静になるように呼びかけます。  大学の3つのミッション、すなわち教育・研究・社会貢献のうち、社会貢献にダイヤモンドOAは大きく貢献するものであることを認めながらも、やはり研究者には研究の自由があり、それはどのジャーナルに成果を発表するかを選択する自由も含まれる、また商業出版社のジャーナルに掲載された非常に優れた論文の価値と、ダイヤモンドOAの道義的価値が対立するようなことになってはいけないとおっしゃられ、ダイヤモンドOAのイデオロギーが先走りしすぎるリスクを指摘されました。従来の研究者コミュニティの価値観と、ダイヤモンドOAの掲げる価値とを時間をかけてすり合わせる必要があることを説かれ、これに対して会場からは再び非常に大きな拍手が沸きました。 グループディスカッション  登壇者によるパネルディスカッションの後、10人ぐらいずつに分かれて、研究評価とダイヤモンドOAについてのグループディスカッションがあり、そこで交わされた意見をいくつか紹介します。 ・ダイヤモンドジャーナル掲載論文に光を当てることにとらわれすぎず、本当にすべきことは、学問・科学・研究がオープンに行われて、その全体を適切に評価できるシステムを築くことではないか。 ・現在の研究評価システムから恩恵を受けている研究者も多い。研究評価の改革は、彼らの給与・待遇に関わってくるので、大きな困難を伴うと思われる。 ・ダイヤモンドのオープンアクセス モデルの利点を、研究者と研究者コミュニティに粘り強くアピールする必要がある。 ・我々のコミュニティが、ダイヤモンドOAで出版・貢献する研究者を、表彰したり報酬をあたえるような制度を開発したら良いのではないか。 閉会式 - 宣言の発出 宣言の発出  3日間の長い会議の最後に、この会議の議論を踏まえた「宣言」が発出されました[3]。その翻訳を以下に記します。   ダイヤモンドオープンアクセスに関するトルカ/ケープタウン宣言  2023年開催の世界サミット(メキシコ・トルカ)を踏まえ、2024年の世界サミット(南ア・ケープタウン)の参加者として、われわれは、知識の共有は基本的人権に属するということをここに確認する。  この観点から、学術的知識は公共財であらねばならない。知識は、読者や著者を含むすべての関係者にとって障壁や対価なくアクセス可能でなければならない。知識の創出と流通には、不利益や不公平が存在してはならない。  2021年のUNESCOオープンアクセス勧告にあるとおり、ダイヤモンドオープンアクセスはコミュニティのものであり、コミュニティが主導する、非営利の所為である。  社会正義(social justice)、公正性(equity)、誰も取り残さないこと(inclusivity)がダイヤモンドオープンアクセスの基底をなし、このことによって、ダイヤモンドオープンアクセスは他者による支配構造からの脱却、疎外の根絶への原動力として機能する。  われわれは、学術コミュニケーションにおける地域的多様性、言語上の多様性を重視する。ダイヤモンドオープンアクセスの実装には、地域特有の課題、世界共通の課題の双方に対する目配りが必要であり、また研究評価の仕組みにおいても尊重される形で実現されねばならない。  (翻訳:杉田茂樹 JPCOAR 運営委員長)  この宣言は、2023年にメキシコのトルカで開催された、第一回の会議で発出する予定だったものが諸事情でそれが叶わなかったのですが[4]、そこでの議論も踏まえて今回の宣言が発出されたため、「トルカ/ケープタウン宣言」となっています。宣言が読み上げられると、参加者の全員が立ち上がって拍手をし、会議は大団円を迎えました。  終了後は、ケープタウン大学の広場で屋外パーティが開催され、“Braai”という南アフリカの伝統的なバーベキューと、名産のワインが振る舞われ、とてもとても楽しい打ち上げとなりました。 懇親会のバーベキュー 参加しての感想  私はこれが初めて参加させていただいた国際会議でした。事前課題への回答やグループディスカッションへの参加を通して、私もこの会議や宣言に少しでも参画できたのだと思うと、大変達成感がありました。また、会議の途中、ランチや懇親会で他国の参加者といろいろな意見交換ができたことも非常に大きな刺激となりました。このような国際会議に参加できる機会は非常に限られますが…、 なんと、今年は東京で同様の国際会議が開催されるので、外国まで行かなくても参加できます!  国際的なリポジトリコミュニティであるCOARの年次大会が、2025年5月に東京で開催されます。参加費は無料です!世界各国のリポジトリ担当者と意見交換をして知り合いになれる絶好の機会です。ぜひ皆様、ご参加ください! COAR Annual Conference 2025  日時:2025年5月12日(月)~5月14日(水) 会場:一橋講堂(東京都千代田区一ツ橋 2-1-2) 申込: https://jpcoar.repo.nii.ac.jp/news/2024#news_20250217 おまけ  個人的にアフリカはいつか訪れてみたい憧れの大陸だったのですが、このような形で叶うとは思っていませんでした。ただ治安に対する懸念はあったので、宿の近くを少し徒歩で買い物したりはしましたが、基本はUberで移動をしていました。何度も乗車しましたが、どのドライバーもとても人懐っこく、楽しくいろいろな会話ができ、車内のラジオから流れるアフリカの音楽もとても素敵でした。景色・気候・食べ物も素晴らしく、帰国して2ヶ月半以上経ちますが、今でも南アフリカを思い出すととても朗らかな気持ちになります。  その反面、市街地を出て空港に向かって車で10分も行くと、アパルトヘイト時代に作られた「タウンシップ」というスラムが点在しているのが目につきます。下水道等のインフラが整備されていないようにも見え、貧富の差がかなり激しいこの国の負の面も感じられました。 タウンシップ  日本からは、飛行機で片道合計24時間近いフライトになりますが、他では得られない刺激を得られる南アフリカ。機会がありましたら、ぜひ一度行ってみてください。病みつきになるかもしれません。 注 1) Session 2b “Open Access is / as a Public Good” Prof. Arianna Becerril García http://doasummit.uct.ac.za/wp-content/uploads/2024/12/2.-Prof-Arianna-Garcia.pdf (参照 2025-2-28) 2) Session 3 “Social justice and diamond open access: perspectives from the Globe” Dr Emily Choynowski http://doasummit.uct.ac.za/wp-content/uploads/2024/12/4.Dr-Emily-Choynowski.pdf (参照 2025-2-28) 3) “Toluca -Cape Town Declaration on Diamond Open Accees” 原文 https://doasummit.uct.ac.za/ (参照 2025-2-28) 4) 「Global Summit on Diamond Open Access 2023 参加報告」前田隼 https:// www.magazine.jpcoar.org/news/592b738c-5128-4f0a-97f4-c0bf153be9f2 (参照 2025-2-28) 文:坂本拓(国立情報学研究所) 生まれも育ちも大阪ですが、ドイツが心のふるさとです。ドイツでは専用に飼育された生食用の豚肉がありまして、この生肉が極めて美味です。「Mett」と言います。スーパーの精肉コーナーでも売ってます。ドイツに行かれたらぜひこの豚の生肉を食べてください。本当に美味しいです。ただし生食用と加熱用を間違えたら、即ゲームオーバーになるのでご注意を。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • クローズドなデータをどう流通させる!? Data Spaces Symposium 2026参加報告 | JPCOARウェブマガジン

    Report クローズドなデータをどう流通させる!? Data Spaces Symposium 2026参加報告 坂本 拓 26/8/4 国立情報学研究所 はじめに  2026年2月10日と11日の2日間、スペインの首都マドリードで開催された、“Data Spaces Symposium 2026”[1]に参加してきましたのでその報告をしたいと思います。  さて、そもそもですが、この会議名にある「Data Space(データスペース)」という言葉、おそらく初めて目にする方が多いのではないかと思いますので、まずはその説明からしたいと思います。 データスペースとは? -公開できるデータとそうでないデータ  ご存知のとおり即時OA方針では、論文の根拠データを公開することが求められています。またそれ以前から、オープンサイエンスへの取り組みとして、私たちはリポジトリでの研究データ公開を推進してきました。この文脈でいう「データ」は、全世界の人々にオープンにして差支えのないデータですが、その一方で公開することができないデータも世の中には多数あります。医療機関が保持している個人情報に紐づいたデリケートなデータ、企業の開発部門が日々生み出している競争性のあるデータ等です。私たちの大学の中にもこのような公開できないデータは少なからず存在しているはずです。  ではそういうデータは、ずっと、厳格なセキュリティがかかった状態で、誰にも見せずに塩漬けにしておくべきなのでしょうか? そのようなデータを研究等の正当な目的のために必要とする人がいて、適切な条件を遵守できるのであれば、そのデータを提供しても構わない、というケースも多々あるのではないでしょうか? データスペースとは、そのような一般公開できないデータとそれを必要とする人を結びつけて、社会に新しい価値を生み出そうとする仮想的な広場、とでもいうべきものです。 EUとデータスペース  このデータスペースが群を抜いて活発な地域が欧州です。EUは2020年に“A European strategy for data”という政策文書を発表しました[2]。この中で、米国や中国の少数の大手プラットフォーマーが世界のデータの大部分を独占的に所有していることへの強い危惧が述べられました。また「データ経済における今後数十年間の競争は、今、決定づけられる」という強い言葉とともに、プライバシー・セキュリティ・安全性・倫理基準を維持しながら、EUにふさわしい方法で、データ経済(ビッグデータの分析・活用により新しい価値を生み出す経済)でのプレゼンスを高めることの必要性が述べられました。この「EUにふさわしい方法」こそが、データスペースになります。 データスペースを構成する要素  現在のデータスペースは、主に次の4つの概念で構成されています。 ・データ主権  データスペースでは、誰にどのような条件でデータを利用させるかの決定については、プラットフォーマーではなく、データ提供者のみが絶対的な権利を持ちます。 ・信頼性  データスペース参加時に厳格な認証を行うことで、データ受領者・データ提供者が相互に相手が何者なのかの信頼性を担保します。 ・相互運用性  多様な参加者・システムとのデータの送受信・アクセスが可能です。 ・非中央集権  原則として、データスペースで交換されるデータは、各参加者のローカルに保存されたままで、データスペースには格納されません。  もう少し具体的にデータスペースの利用の流れを自動車産業を例として説明します。  自動車産業の省エネ化技術に関する最新のデータを交換したいAさんが、自動車産業のデータスペースに参加します。参加の際には、Aさんが当該データスペースに参加するにふさわしいかどうかの審査があります。  審査をパスしたらデータスペースのメンバーになります。あくまでも自動車産業のデータ「交換」を目的とするコミュニティであって、もらうことしか考えていないクレクレくんはだめです。データスペースによっては、参加するだけで費用が発生するところもあります。  その後、データスペース内のデータを検索できる「データカタログ」を検索し、メタデータによって自身が必要とするデータをBさんが持っていることが確認できると、Bさんにそのデータがほしいと伝えます。Bさんは、認証機能によってAさんが何者なのかを確認できるので、Aさんにデータを提供しても構わない、と判断したら、Aさんにデータを提供してあげます。その際、データをAさんに渡すのか、それともBさんのストレージ内でAさんにデータへのアクセスを認めて閲覧させるのか、また無償で提供するのか、どれだけの価格で提供するのか等を決めます。Aさんには厳しいセキュリティ基準が要求されることもあります。  そしてめでたくデータを入手できたAさんは、それを生かして新たな製品・機能の開発を進めます。もちろん、後日、今度はAさんが持っているデータに対して、誰かから提供依頼が来る可能性もあります。  そして、欧州にはとてもたくさんのデータスペースがあるのですが、それらとは別に、EUは上述の2020年の政策文書にもとづき、下記の14の主要な戦略分野の「欧州共同データスペース(Common European data spaces)」を創設しています[3]。  これら欧州共同データスペースについて、データ保有者が、誰にどのような条件で利用させるのかを決定することができるのは他の一般的なデータスペースと同じなのですが、特徴的なのは、全ての組織・個人が参加可能であることと、データスペースの中にデータがプールされる点です。EUはこれらの欧州共同データスペースが、データ駆動型イノベーションのインフラとなることを期待しています。 今年の会議  さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、会議の報告に入りたいと思います。この会議は、データスペースに対して関心を持つ人たちが毎年1回欧州に集合するもので、今年は35ヵ国から合計1,200名以上が参加していました。私が見た限りでは、企業の方がほとんどで、図書館関係者は私以外いなかったのではないかと思います。 会場の様子  2日間、朝から夕方までみっちりセッションが入っており、今年は特にAIが大きなテーマになっていました。私が参加したセッションでもAIの話が多かったので、主にそれに重点を置いて報告します。 データスペースとAI  2020年にEUがデータ経済に関する政策文書を発表したと前述しましたが、その続編として、2025年11月に「A European Data Union Strategy - Unlocking data for AI(欧州データ統合戦略:AIのためのデータの解放)」という文書が発表されました[4]。2020年のものはGAFAMといった大手プラットフォーマーを警戒したものですが、今度は副題にあるとおり、生成AIへの対応を強く意識したものとなっています。この文書の中でEUは、生成AIを成長させるためのデータの確保を目的に「AIとイノベーションのための高品質データへのアクセス拡大」を戦略として掲げ、その具体的な対応として「AI Factories(AI工場)」の設立と稼働を進めています。  AI工場とは、中小企業や研究者がビジネスや研究のために生成AIを使用したい時に、自前でAIを作成したり、トレーニングしたりすることができる、バーチャルな工場のことです。このAI工場は2つのパーツで構成されており、1つ目がAIのエサとなる未公開の高品質データ群で、2つ目が高い演算能力を持つスーパーコンピュータです。このうち1つ目の高品質な未公開データ群を、先ほどの、欧州共同データスペースが供給することをめざしています。図で示すと下記のようになります。  現在は米国製の生成AIが主流となっていますが、ヨーロッパではデータスペース内にある未公開の高品質データを用いて、米国に依存しない独自の生成AIを開発・育成することを目指していることが強く感じられました。また会議にはMicrosoftの人も参加しており、米国のAI関連企業も、データスペースを無視できない存在だと認識しているように感じられました。 ヨーロピアーナのジレンマ  大学図書館員である私が、一番「ホーム」を感じたのが、ヨーロピアーナ(Europeana)によるセッションでした。ヨーロピアーナは2008年に創設された、欧州の博物館・美術館・図書館のコレクションのデジタルアーカイブです。33万点を超える画像データを公開しており、日本でもご存知の方が多いのではないかと思います。  そしてこのヨーロピアーナが、先ほどの欧州共同データスペースの「文化遺産」部門を担当するデータスペースとなっています。最初は、「公開デジタルアーカイブであるヨーロピアーナがデータスペースってどういうこと??」と理解できなかったのですが、担当者の発表を聴くと納得できました。おっしゃるには、現在、ヨーロピアーナはAIにより、下記のような問題が起きているということでした。 ヨーロピアーナ内のパブリックドメインの全データを取得し、AI用のデータセットとして転売される AI関連企業がデータを取得するけれど、再利用の際にライセンスを守らない AIのボットによるクローリングがヨーロピアーナのインフラに深刻な悪影響を与える  最後のクローリングの悪影響については、私たちにも馴染みのある話ですね。ヨーロピアーナの方は、できるだけ広く利用してもらえるように公開をしたいが、完全に公開すると、(おそらく米国の)AI関連企業が、自身のビジネスのために根こそぎ収奪しようとして、欧州の公的資金で運営されているヨーロピアーナのインフラにダメージを与える。このジレンマをどうするべきか非常に頭を悩ませたが、データスペース化により解決を目指しているとのことでした。具体的には通常のヨーロピアーナは、個人利用に限定し、アクセスする際に、ロボットではないことを確認することで、APIやAIボットのアクセスを排除しています。そしてAPIやAIボットについては、データスペース版ヨーロピアーナの方から申請させることで、APIのキーコードを付与したり、AIボット利用の申請を条件付きで認可したりするという方針をとっているとのことでした。 オープンサイエンスとデータスペース  ヨーロッパにはオープンサイエンスの最大のインフラとして、EOSC(European Open Science Cloud)というものがあります。EOSCは、ヨーロッパじゅうの研究データを取り扱う基盤を結びつけて、それらの研究データを一元的に公開することを目指すものです。クローズドなデータではなく、オープンデータを取り扱う、いわば私たち側の組織です。  さきほど、見ていただいた「欧州共同データスペース」の14分野の中に「研究・イノベーション」というものがありましたが、実はEOSCがこの「研究・イノベーション」のデータスペースを担当することになっています。まだ研究・イノベーションのデータスペースは稼働していませんが、EOSCでは立ち上げのための複数のプロジェクトが進行しており、欧州ではオープンサイエンスとデータスペースの連携が始まっていることに個人的には強い衝撃を受けました。 日本のデータスペース  データスペースについては欧州が最も盛んですが、実は日本もかなり活発で、今回の会議にも日本から数名の登壇がありました。日本はデータスペースという概念ができる前から、類似の活動はしていたのですが、2023年に国レベルで、経済産業省、IPA(情報処理推進機構)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)等が主導する「ウラノス・エコシステム」が動き出しました。今回の会議ではこのウラノス・エコシステムを支えるアーキテクチャ・プロトコルであるOpen Data SpacesについてIPAからの報告がありました。クローズドなデータの取扱いについて、日本では経済産業省主導で世界的にも比較的リードしているのに対して、私たちアカデミアの側は関連するはずなのに、取り残されているように強く感じました(EOSCが研究・イノベーションのデータスペースを担うということを聞いたため、よりいっそう)。 おわりに  トランプ政権発足以降、米国はEUに対して高関税を課すなど、経済的・政治的に非友好的な態度をとっています。EUとしてはそれもあってか、生成AIやプラットフォームの分野で米国1強になっている現在の状況に、非常に強い危機感を抱いているように感じられました。そのような中、米国のAnthropic社の最高性能のAI「Claude Fable 5」と「Claude Mythos 5」は、米国民しか使えないことになりました。ですが、Anthropic社のAIがここまで成長する元となったエサは、決して米国内のデータだけではありません。  生成AIが学習するデータは2032年までに枯渇する可能性が指摘されています。また、ブログ等ではなく、査読等によって学術的に認められたコンテンツの方が生成AIには価値があると言われています。つまり、我々の機関リポジトリの中にあるデータは生成AIにとってとても有益なコンテンツなのです。しかし、私たちがリポジトリでオープンにしたコンテンツを学習した米国のAIが、その成果を米国人以外にはオープンにしないという、対等ではない状況が生まれている現実を前に、今後データスペースはとても大きな意味を持つようになるだろうと強く考えさせられました。 さらにおわりに  スペインに行くのは初めてだったので、個人的にとても楽しみにしていました。ですが滞在していた間、ずっと雨で、気温も低く、街並みは美しいのですが、空はまるでドイツのような鉛色をしていました。  しかし、たとえ天候には恵まれなくてもスペインにはバルがあります。最終日の夜、用務終了後に、傘をさしながらバルに行き、スペインの思い出を胃袋に刻みこみました。その時食べたお料理を少し紹介したいと思います。 パタタス・ブラバス 揚げたジャガイモにピリ辛マヨネーズをかけたスペインバルの代表料理。冬でも汗だくになるぐらいホットで美味しいです。 マテ貝のソテー 磯の香りがしつつも身がプリプリです。 ラボ・デ・トロ 香味野菜と赤ワインで煮込んだ牛のしっぽ。隣で食べていたスペイン人の青年が、「良いチョイスだ!それはマジでアメージングにうめーぞ!」と興奮しながら絡んできただけのことはある、素晴らしい味でした。  皆さんもスペインに行かれることがあれば、是非バルに行ってみてください。帰りの飛行機の席が少し窮屈に感じるぐらい、豊満な体型になって帰国できます。 [1] “Data Spaces Symposium 2026”. https://www.data-spaces-symposium.eu/ , (参照 2026-07-31). [2] “A European strategy for data”. https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/strategy-data , (参照 2026-07-31). [3] 欧州共同データスペース(Common European data spaces). https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/policies/data-spaces , (参照 2026-07-31). [4] “A European Data Union Strategy - Unlocking data for AI”. https://digital-strategy.ec.europa.eu/en/library/data-union-strategy-unlocking-data-ai , (参照 2026-07-31). 文:坂本 拓(国立情報学研究所) 2006年に京大に入職し現在はNIIに出向中。生まれも育ちも大阪ですが「関西弁じゃないよね?」とよく言われます。食べることとお酒と音楽が大好きです。 本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?) | JPCOARウェブマガジン

    かたつむりの気になる国際動向 Series かたつむりの気になる国際動向 オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?) 佐藤 翔 24/7/10 同志社大学 1.メガジャーナルは衰退しました……?  2006年に創刊されたPLOS ONEは、対象とする分野を細かく限定せず、査読を簡略化し、手法と結果の解釈が妥当なら論文を掲載する、その分、査読も早く終わる……という斬新な編集方針が研究者に受け、一時は1年間の掲載論文数が3万本以上という、超巨大タイトルとなりました。PLOS ONEの立役者のBinfield氏は同誌のモデルを「オープンアクセスメガジャーナル」(以下、メガジャーナル)と名付け、いずれはNature等のハイブランド雑誌を除けば、多くの論文はメガジャーナルに掲載されるようになり、結果的に全世界の論文OA率も飛躍的に向上するだろうと予想しました。実際にPLOS ONEを真似したクローン雑誌も続々と誕生し、世はメガジャーナル一色となるかに思われました[1]。  しかしBinfield氏の予想から7年後。Springer Natureが創刊したScientific Reportsが後発でありながらPLOS ONEを論文刊行数で追い越すなど、メガジャーナル内部での勢力図の変化はありつつも、出版される学術論文数全体に比べれば、メガジャーナル掲載論文数は3%未満。年間1万本以上の論文を刊行する雑誌も、結局はPLOS ONEとScientific Reportsのみで、他のクローン誌は休刊するほどではないが「メガ」にはなり得ていない。メガジャーナルは興隆したが、その後は停滞している……という話を、かつて『情報の科学と技術』誌上でおこなわれていた、「オープンサイエンスのいま」という連載のトップバッターとして、自分が紹介しました。この連載は後に書籍化もしましたが、書籍編集段階ではScientific Reportsが完全にPLOS ONEをぶち抜いていて、PLOS ONEの論文数は年間15,000本前後と最盛期の半分くらいで落ち着き、だいたい年間4万論文にいかないくらいがメガジャーナルの需要ということで落ち着いたのかなあ……などと考えていました[2]。  このとき自分は、裏で着々と進行していた、新型メガジャーナルの興隆に、まるで気がついていなかったのです。 2.新型メガジャーナルの興隆  学術情報流通の世界でPLOS ONEやScientific Reportsとはやや性質の異なる、新たなタイプの「メガジャーナル」が勢力を強烈に拡大していることを報告したのは、2023年に米国医学会JAMA誌に掲載された、スタンフォード大学のIoannidis氏らによる調査でした[3]。この調査では文献データベースScopusを用い、2022年に出版された生命医学分野の論文の掲載誌と、掲載本数を集計しています。その結果、1年間に2,000本以上の論文を掲載している雑誌が55誌存在し、その掲載論文数は合計で30万本以上で、生命医学分野の年間発表論文数のおおよそ4分の1に達していることが判明しました。2015年には年間2,000本以上の論文を掲載していたのは11誌と2022年の5分の1、総掲載論文数も全論文の6%程度であったということなので、大型雑誌の勢力は大幅に拡大しています。さらに年間3,500本以上論文を掲載している雑誌は、2015年にはPLOS ONEとScientific Reportsだけだったのに対し、2022年には26誌も存在していました。それどころか、2022年には2つの雑誌がPLOS ONEを抜き去り、年間15,000本以上の論文を掲載する、まごうことなき「メガジャーナル」の域に達していたとのことです。  JAMA掲載の調査は2022年の、生命医学分野の雑誌のみを対象とするものでしたが、同様にScopusを用いて、2023年の、全分野の雑誌の場合を佐藤が新規に集計したのが表1です(上位10位まで)。2023年にはPLOS ONEが再び2位に返り咲いており、またJAMAの調査で2022年の世界2位だった雑誌が収録対象から除外されるなどの変化が起きていますが、年間掲載論文数が1万本を超えている雑誌がPLOS ONEとScientific Reports以外にも出てきているのはご覧のとおりです。このうちIEEE AccessはIEEEの、HeliyonはCell Press系列(Elsevier)の、いわゆる「メガジャーナル」の系譜に属する雑誌です。Nature CommunicationsはNature本誌に比べればインパクト低めとはいえ、「科学的に妥当」なら載るという体裁のメガジャーナルではありませんが、掲載論文数はメガジャーナル一歩手前(10,000本目前)まで来ています。 表1. 2023年の掲載論文数上位10誌 雑誌名 論文数 出版社 Scientific Reports 22188 Springer Nature Plos One 14525 PLOS Sustainability 13627 MDPI International Journal of Molecular Sciences 12614 MDPI Applied Sciences 12135 MDPI IEEE Access 10074 IEEE Heliyon 9398 Elsevier Sensors 8488 MDPI Chemical Engineering Journal 8242 Elsevier Nature Communications 8008 Springer Nature Scopusを用いて集計。対象は雑誌掲載論文、原著論文に限定。 2024年5月30日データ取得  これらの伸長もそれぞれ興味深いところではありますが、表の中で異彩を放っているのはMDPI出版の雑誌が4誌もランクインしていることでしょう。これらはいずれも、それなりに広い分野を扱っているとはいえ、これまでのメガジャーナルほどに広く分野をとって論文を受け付けている、というわけではありません。また、別に科学的に妥当であればインパクトは考慮しないよ、等とわざわざ方針で明記していたりもしません(新規のアイディアを積極的に受け付けるよ、等と書かれていることはありますが)。そういう意味ではある程度、分野を区切った、メガジャーナルではない普通のオープンアクセス雑誌に見えなくもない……のですが、それらの雑誌がPLOS ONEのようなメガジャーナルに匹敵するほどに伸びてきている、というのが昨今の状況です。図1に表1に示した10誌の、過去10年間の掲載論文数の推移をまとめましたが、MDPIの雑誌は10年前は、多くても1,000本少々(それでも十分大きいですが)の論文が載る程度で、PLOS ONEには比べるべくもない状態でした。それがじわじわと論文数を増やし始め、2020年にSustainabilityが年間10,000本を突破、2021年にはApplied Sciences、2022年にはInternational Journal of Molecular Sciencesも10,000本を突破しました。各誌とも2023年は伸びが鈍化、もしくはやや減少していますが、依然として多くの論文が掲載され続けています。 図1 . 2023年の掲載論文数上位10誌の過去10年間の論文数推移 Scopusを用いて集計。対象は雑誌掲載論文、原著論文に限定。 2024年5月30日データ取得  ちなみに日本所属の研究者に限定した場合、Scientific Reportsが1,945本でほかを大きく引き離した首位、次がPLOS ONEの763本、3位には応用物理学会のJapanese Journal of Applied Physics(678本)が入ってきて、次がNature Communications(600本)、5位にやっとInternational Journal of Molecular Sciences(591本)がランクインと、世界全体とはかなり様相が異なりますが、一応、上位にMDPI出版の雑誌も入ってきます。 3.新型メガジャーナルの特徴  日本での存在感はまだそこまでではありませんが、少なくとも2018年から状況は大きく変化し、現在では従来のメガジャーナルとはちょっと違う、必ずしも分野を広く取らない新型メガジャーナルが新たに興隆し、従来型メガジャーナルが成しえなかったシェアの急速な拡大を実現しています。年間10,000本前後の超上位陣に限定しなければさらに多くの雑誌がランクインするわけで、JAMA掲載の調査によれば、生命医学分野で年間3,500本以上を掲載する26誌のうち、11誌はMDPI刊行タイトルで、ほかに7誌がSpringer Nature傘下に収まった、Frontiersの刊行タイトルであった、とされています。Fronitersの方もFrontiers in Immunology(免疫学)、Frontiers in Oncology(ガン)など、分野を限定した雑誌であるのはMDPIと同様です。  ここまであえて触れてきませんでしたが、これら新型メガジャーナルの共通する特徴は、掲載論文の大半が特集号(Special Issue)掲載論文である、という点にあります。いずれの雑誌においても、通常の定期刊行の巻号とは別に、独自のゲスト・エディターが編集(査読体制)を監督し、特定のテーマの論文を受け付ける特集号の企画を、大量に並行して動かしています。先に挙げたMDPIの例でいうと、2024年6月現在、Sustainabilityで1,500以上[4]、Applied Sciencesでは1,900以上[5]、International Journal of Molecular Sciencesでは2,800以上[6]、Sensoersでも1,400以上[7]の特集号について、論文を受け付けています。掲載論文数ではなく、論文を受け付けている「特集」の数がこのオーダーですから、それぞれの特集で数本の論文が集まるだけでも、総掲載本数はえらいことになるわけです(中には論文が集まらず成立しない企画もあるでしょうが……)。実際、個々の特集を適当に開いて見ても、その特集としての掲載論文数は数本程度だったりします。  ゲスト・エディターや投稿者にとってみれば、自分たちの扱いたいテーマの論文を集めて刊行できる、それも一定の知名度のある雑誌上でできるわけで、うまく行けばそのテーマの存在感の向上にもつながります(端的にいえば次回の投稿者獲得につながります)。雑誌側としてはゲスト・エディターは公募することが多く、そもそも特集企画自体も公募で受け付けたものであることも多いため、自身や専属の編集委員会の労力をかけずに、多くの論文、そして多くのAPCが得られます。良いことづくめです。  特集号に大きく依拠する運営体制については、通常号で獲得した雑誌の評価を、質の管理が不十分な特集号で食いつぶすことになるという批判もあります[8]。一方で実態としては特集号がほとんどを占めるようになったからといって必ずしも評判が下がっているわけではないようで、例えばSustainabilityのScopus上のCiteScore値は絶対値でも年々、上昇傾向にあり、分野内での相対的ランクもわずかずつながら上昇しています。ゲスト・エディターが多すぎて編集方針の一貫性が保てないのではないかという指摘もありますが、MDPIの査読レポートについて、他社の雑誌の査読レポートに比べても特に問題は見いだせない、というプレプリントも出ています[9]。なんなら、特集号掲載論文の方が通常号掲載論文より被引用数が多い場合もあるという研究もあります[10]。 4.新型メガジャーナルに問題はないのか?  大量の特集号で成り立っている新型メガジャーナルになんの問題もない……かといえばしかし、まったく問題がないわけでもなく、むしろ昨今はその問題点に注目が集まっています。JAMAの2022年調査で世界2位の掲載論文数だった雑誌が、2023年からScopus収録対象外となっていることにも、その問題が現れています。また、MDPIやFrontiersほど目立ってはいませんが、やはり特集号に力を入れていたHindawiが、ブランドとして廃止されることになったのも、まさに特集号がはらむ問題のためでした。  ではその特集号がはらむ問題とはいったいなんなのか!……を、扱うには、いささかこの記事は長くなりすぎました。特集号の問題点が気になる方は、2024年7月に刊行された『情報の科学と技術』誌7月号から始まった新連載、「続・オープンサイエンスのいま」第1回で、佐藤が詳しく解説していますので、ぜひそちらをご覧ください![11]  ……あまりにも露骨な宣伝ですが、『情報の科学と技術』では分量の関係で広げきれなかった昨今の新型メガジャーナル情勢を扱いつつ、一回やった話は繰り返さないで済むという、実に合理的な手法であるとご理解いただければ……。JPCOARウェブマガジンはウェブ媒体だからカラーで細かいグラフを載せるのもやりたい放題だし……。 [1] 佐藤翔. オープンアクセスメガジャーナルの興隆,と,停滞. 情報の科学と技術. 2018, vol.68, no.4, p.187-188. https://doi.org/10.18919/jkg.68.4_187 , (参照2024-06-07). [2] 南山泰之編. オープンサイエンスにまつわる論点:変革する学術コミュニケーション. 樹村房, 2023, 168p. [3] Ioannidis, J. P. A. et al. The Rapid Growth of Mega-Journals. JAMA. 2023, vol.329, no.15, p.1253-1254. [4] “Special Issues”. Sustainability. https://www.mdpi.com/journal/sustainability/special_issues , (参照2024-06-07). [5] “Special Issues”. Applied Sciences. https://www.mdpi.com/journal/applsci/special_issues , (参照2024-06-07). [6] “Special Issues”. International Journal of Molecular Sciences. https://www.mdpi.com/journal/ijms/special_issues , (参照2024-06-07). [7] “Special Issues”. Sensors. https://www.mdpi.com/journal/sensors/special_issues , (参照2024-06-07). [8] Crosetto, P. Is MDPI a predatory publisher?. Paolo Crosetto. https://paolocrosetto.wordpress.com/2021/04/12/is-mdpi-a-predatory-publisher/ , (参照2024-06-07). [9] Maddi, A.; Boukacem-Zeghmouri, C. Fast, furious and dubious? MDPI and the depth of peer review reports. Research Square. 2023. https://doi.org/10.21203/rs.3.rs-3027724/v1 , (参照2024-06-07). [10] Repiso, R. et al. The prevalence and impact of special issues in communications journals 2015–2019. Learned Publishing. 2021, vol.34, no.4, p.593-601. [11] 佐藤翔. オープンアクセス雑誌における特集号(Special Issue)の問題(Issue). 情報の科学と技術. 2024, vol.74, no.7, p.267-270. 文:佐藤 翔( 同志社大学 ) 1985年生まれ。2012年度筑波大学大学院博士後期課程図書館情報メディア研究科修了。博士(図書館情報学)。2013年度より同志社大学助教。2018年度より同准教授。2024年度より同教授。 図書館情報学者としてあっちこっちのテーマに手を出していますが、博士論文は機関リポジトリの利用研究で取っており、学術情報流通/オープンアクセスは今も最も主たるテーマだと思っています。 学部生時代より図書館・図書館情報学的トピックを扱うブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」を開始。ブログの更新は絶賛滞っているものの、現在は雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』誌上で同名の連載を毎号執筆中。本連載タイトルもそれにちなんだもの。かたつむり(というかなめくじ)ネタが続きますが、うちの子どもが見つけて面白がっていた自宅周辺のなめくじたちに、その子どもが育てているひまわりの芽が食べられる被害が発生。なめくじ駆除剤が散布されることに。諸行無常。 本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 汗と涙のJPCOAR新ロゴ誕生悲話 | JPCOARウェブマガジン

    Interview 汗と涙のJPCOAR新ロゴ誕生悲話 山下 真人 / 永井 一樹 24/2/29 兵庫教育大学 / 兵庫教育大学 2023年6月にJPCOARの 新ロゴマークが決定 しました。 鳥かごの上に一羽の鳥。このシンプルなモノクロのデザインを考案したのは、兵庫教育大学の山下真人さんです。ロゴに込めたメッセージや制作の舞台裏について伺いました。 聞き手:永井一樹(兵庫教育大学 / JPCOAR広報・普及作業部会) あなたは、大学図書館界のジョージですよ N|この度は、JPCOARの新ロゴ採用、おめでとうございます。 Y|ありがとうございます。 N|今の率直なお気持ちをお聞かせください。 Y|いや、そりゃ、うれしいです。 ロゴ作成者の山下真人氏(右) N|去年6月の国立大学図書館協会総会で、新ロゴがお披露目されたとき、会場で山下さんの名前が高らかに呼ばれましたよね。 Y|一橋講堂で、自分の名前が紹介されるなんて、こんな名誉なことはないと思っています。 N|しかし、なぜ山下さんの名前しか紹介されなかったんでしょう。 Y|と言いますと? N|いや、私だって、今回のロゴのコンセプト・メイキングでは結構貢献したと思うんですけど。 Y|この期に及んで、著作権の主張ですか。勘弁してください。 N|漫才で大賞を取ったのに、授賞式に相方しか出てなかったら、おかしいと思うでしょう。 Y|何言ってるんですか。僕が素人ながら、日々デザインに苦闘している脇から、あーだこーだ口を挟んできただけじゃないですか。 N|僕は、ツッコミ担当ですから。ところで、あなた、「おさるのジョージ」っていうアニメ知ってます? Y|はい。というか、熱烈なファンです。 N|はっきり言って、あなたは、大学図書館界のジョージですよ。 Y|どういうことでしょう。 N|説明します。ジョージはおさるですね。でも、人間の社会に生きている。 Y|はい。それは知ってます。 N|つまり、人間にとって、ジョージは「エイリアン」なわけです。 Y|はい、まあ。 N|だけど、ジョージは人間の真似をするのが大好きですよね。つまり、我々は、人間の真似をする「エイリアン」を通じて、人間というものを見せられている。メタなんですよ、構造が。 Y|よくわかりませんけど、それでなぜ僕がジョージなんでしょう? N|つまり、大学図書館の外側(エイリアン)から、大学図書館を見ることができるのが、山下さんなんです。 Y|ああ、なるほど。僕は図書館採用ではないですからね。図書館に来て、まだ3年です。 N|NIIが何の略か最近知りましたもんね。 Y|NIIは国立情報学研究所の略称です。 N|ロゴマークなどの、いわゆるCI(コーポレート・アイデンティティ)を作る上で必要になるのが、多分対象に関する適度な無知とそれ故の純粋な好奇心、そして観察力や想像力。つまり、ジョージのような資質だと思うんです。 Y|なるほど。僕が毎日のように子どもに読み聞かせしている元祖おさるのジョージこと『ひとまねこざる』の締めくくりはこうなんです。「…かわいい こざるでしたが、ただひとつ、こまったことが ありました。それは、とても しりたがりやだったことです…」[1]。 N|よく覚えてますね。そうなんです、知的好奇心が半端ないんですよ。 Y|確かに、このロゴマークを作る前、永井さんにJPCOARのことやオープンアクセスのこと、根掘り葉掘り聞いてましたもんね、好奇心に駆られて。 N|そうですよ、まあまあ忙しいのに。ちなみに、山下さんがジョージだとすると、僕は黄色い帽子のおじさんですよね。 Y|ほう。 N|黄色い帽子のおじさんはね、ジョージが家中散らかしたり、どんな騒動を起こしても絶対に怒らないでしょ。イラストレーターで仏像マニアのみうらじゅんが言ってましたけど、あれは黄色ではなくて金色なんだと、つまり黄色い帽子のおじさんは「無怒菩薩」だと[2]。ジョージのようなエイリアンを扱うには、本当に仏のような忍耐と寛容の心がないとやっていけません。山下さんにおいて“をや”です。 Y|さぞ、ご苦労をされたんですね(泣)。 N|それなのに…。 Y|国立大学図書館協会総会で名前を呼ばれなかった。 N|そう。運営委員長に自分の名前を呼んでもらえなかったのが、残念で悲しくて。 Y|これ、一体何のインタビューなんですか。「ロゴ誕生悲話」って、永井さんの悲話になってる。 N|ああ、すいません。あと何か…言い残したこととかありますか? Y|JPCOARのロゴの話、全然してませんけど。 N|では、どうぞ。 一番の変化球は、ストレート Y|ありがとうございます。あれはね。暑い夏のことでした。永井さんもご存じのように、実は採用いただいたものとは別にもう一案作りましてね、故障してクーラーの効かない事務室で汗だくになって。 N|僕の推しだったやつね。 Y|そうなんですよ。これには相当愛情と時間をかけましてね。 N|ローマ字の「JP」とカタカナの「コア」を同時表現するという遊び心がよかったと思います。 Y|そうですね。いろんな意見はあると思うんですが、広く一般の人が、まず何をする団体なのかがわかることが重要だと、朝の妻との会議で訥々と語られた結果・・・却下でした。 N|確かになんの団体かさっぱりわからないですね。そのシュールさに逆に僕は惹かれましたけどね。秘密結社みたいな。 Y|確かにね。私も情報をそぎ落としたミニマルな感じも大好きなんですが、オープンアクセスという概念をロゴで表現しなければと思いました。永井さんの大好きなあのロゴのようにね。リンゴの? えーと、ああイギリスの CORE だ。 N|ああ、COREはいいですよね。リンゴなんだけど、食べたあとに残る芯(Core)がモチーフになってるところがいい。だって、芯ってゴミじゃないですか。それをアイコンにしちゃう遊び心がいいんですよね。もちろん、遊びと共に、「知恵の実を食べ尽くせ」っていう真面目なメッセージも込められている。これはコミュニティではなく、サービス(日本で言う IRDB )のロゴですけど、イギリスのコミュニティって面白い人が一杯いるんだろうなというメタ情報が、この芯のシンプルなイメージから饒舌に伝わってくるんです。 Y|そうですね。「コア」のロゴでその遊び心は実現できたかなと思っていたんですが、単にロゴを見て何となくでもメッセージが伝わることが重要かと思いなおしました。いや~ロゴの奥深さを思い知らされました。 N|確かに、COREでいう「知恵の実を食べ尽くせ」という意味的なメッセージが、「コア」のロゴにはなかったですね。 Y|そうなんですよ。まずは伝えるべきことは伝えなければならないというロゴの鉄則を失念しておりました。それで鳥かご案を作った。そういえば、最初の案では鳥はおらず、鳥かごだけだったんですよね。もう鳥かごの鳥は羽ばたきましたよという。(今あらためて見るとスカスカで鳥羽ばたき放題ですね…(笑)) N|う~ん、でもちょっと遠かったですね。ロゴ認知の3秒ルールから逸脱していた。つまり、そのロゴを目にしてから3秒以内で、それが何を表しているかわからないとダメっていう、我々のローカル・ルール。別の言葉でいうと、詩的過ぎましたよね。かっこつけすぎと言えばいいか。 Y|結構ディスりますね(笑)。でもね。あまりに直接的すぎると、飽きるのも早くなるんですよね。その絶妙なバランスが必要だ...と、朝の会議で妻が言ってました(笑) N|どんだけ妻頼みなんですか。ぱっと理解できるロゴでないといけないし、かといってわかりすぎると面白くないし。その微妙なさじ加減が問題なんですね。 Y|そうなんです。そこで、「論文」のメタファーとして鳥を登場させたわけです。 N|鳥が鳥籠の上に止まっている。これがこのロゴの肝ですね。 Y|そうですね。数あるメタファーの中から今回は鳥を選ばせていただきました。他には、鳥は鳥でも知恵の象徴のフクロウ、そして、シャボン玉なんかもありましたね。でも、いったん囲われているところから羽ばたくメタファーとしては純粋にただの鳥がいいのかなと思ったんです。 N|鳥は、かなりベタですけどね。 Y|永井さん。一番の変化球って何か知ってますか? N|何ですか? Y|…ストレートです! N|(苦笑) Y|ここはストレートでメッセージを表現しました。「論文を囲っていてはだめですよ」ってね。 N|やはり、囲い込みの「外側」というのがポイントですね。つまり、エイリアンです。 Y|そうですね。エイリアンといえば、僕の好きなキリンジの曲に「エイリアンズ」っていう名曲がありましてね。その歌詞がまた秀逸なんですよ。恋人どうしの恋心を僕らがエイリアンだったら…って想像して書かれた詩なんです。この曲を聴いていると、地球人である自分の置かれた場所や価値観って、まさに捕らわれた檻だなって思うんですよ。 N|なるほど。それでいうと、僕の好きな太宰治の小説に『女生徒』っていうのがありましてね。 Y|お得意の太宰治ですか。 N|主人公の女生徒の何気ない日常が一人称で綴られているんですが、家路に向かう描写があるんですよ。歩き慣れた道なんだけど、自分がそこに初めて訪れた人になりきって歩いてみるんです。つまりエイリアンになって、自分の住み慣れた環境を見つめるという視点です。その描写がすごくヴィヴィッドで面白い。 Y|いいですね。 N|昨年、リポジトリ新任担当者研修の場で久しぶりに杉田茂樹運営委員長や鈴木雅子運営委員の発表を聞いたのですが、すごく面白かったんです。10数年前から同じような話を聞いてるんですけど、相変わらず新鮮で面白い。それはなぜかと考えると、お二人にとっては歩き慣れた道なのに、いつもそれが初めてであるかのように歩いているからなんだと思ったんです。この、同じ場所に居続けながら「異邦性」を保つことって、簡単そうですごく難しいことだと思うんですよね。 Y|なるほど。 N|だから、ロゴの鳥は論文のメタファーということですけど、もうひとつJPCOARに参加するひとりひとりが、こういうエイリアン的視点を持とう!という隠れたメッセージが込められていたらいいなと個人的には思いました。 Y|そうですね。オープンアクセスは論文やデータをできるだけオープンにしていくことだと思うんですが、そのことは、オープンアクセスに限らずどんなことにも言えることですよね。エイリアンとか、異邦人になりきって、外に出ることで、ありふれた日常が、違って見えること、新鮮に見えることって素晴らしいことだと思います。絵本版の『おさるのジョージ』もまさにそうでね。ジョージってジャングルから連れてこられて動物園の檻の中にいるんですよ。そこから逃げ出して黄色い帽子のおじさんと出会うんです。 N|確かにアニメの主題歌も、「いろんなこと やってみようよ / 分からないこと なんでも聞いてみよう」[3]って、これJPCOARコミュニティそのものですよね。 Y|で、その後に「きっとすばらしいことが ほら まってる!」と来る。 N|オープンアクセスの未来はきっと明るいですね! Y|おしまい [1]H.A.レイ. ひとまねこざる. 光吉夏弥訳. 岩波書店, 1983 [2]みうらじゅん. 黄色い帽子のひみつ(みうらさん、どうしてこうなるだジュか。第2回). ほぼ日刊イトイ新聞.  https://www.1101.com/n/s/jun/fes_tokorozawa/2023-04-28.html [3]岩崎良美とモンキーブラザーズ. 好奇心いっぱいのジョージ(原曲 Curious George Theme Song. Universal Studios, c2009) 話し手:山下真人( 兵庫教育大学 ) 1981年生まれ。2010年~兵庫教育大学教材文化資料館に展示スタッフとして採用され、展示企画等を行う。 2013年~大学広報など事務畑を耕す。2021年~附属図書館(3年目) 好きな映画監督:アンドレイ・タルコフスキー https://www.janul.jp/sites/default/files/2025-01/cast1-118.pdf (NO.032遠木声」 ) 聞き手:永井一樹( 兵庫教育大学 ) 1977年生まれ。大学時代に太宰治に傾倒したせいか、友達ができず、図書館引きこもりに。社会人になっても引きこもりを続けるべく、公共図書館等をハシゴした後、2003年に兵庫教育大学附属図書館に就職。以後約20年以上同館で引きこもりを継続してきたが、さすがに外の空気が吸いたくなり、最近 BLUE CLASS という屋外ラーニングコモンズ計画を進行中。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • RA協議会参加レポート | JPCOARウェブマガジン

    Report RA協議会参加レポート 市地 七実子 / 髙橋 辰弥 26/2/27 岡山大学 RA協議会、正式にはリサーチ・アドミニストレーション協議会。毎年秋に開催される年次大会ではリサーチ・アドミニストレーション業務に携わる方々が研究支援の最新知見や課題を共有されているとのこと。2025年の第11回年次大会に岡山大学から図書館職員のお二人が参加、ポスター発表をされました。JPCOARとしては、OA(オープンアクセス)やOS(オープンサイエンス)の話題が気になるところですが...。お二人にお話を伺いました。 話し手 : 市地七実子 / 髙橋辰弥 (岡山大学) 聞き手 : JPCOAR広報・作業部会:大園(岡山大学)/ 中谷(鳥取大学)/ 村木(北海道大学) 1. なぜ図書館職員がRA協議会年次大会へ? JPCOAR(以下J)| RA協議会というと、大学からは主にURAが参加するものというイメージですが、今回、図書館職員としてRA協議会年次大会(以下、年次大会)に参加された経緯をお聞かせください。 市地(以下I)| 岡山大学では、昨年度実施されたオープンアクセス加速化事業において、図書館とURA協働による研究支援の取り組みが進みました。図書館に配属されているURAから、その成果を年次大会で発表してはどうかと提案をいただきました。さらに、図書館とは異なる職種のイベントに参加することで図書館職員の役割や業務を客観的に見つめ直す良い機会になるだろうという上層部の考えもあり、参加が決定しました。 J| 岡山大学では 図書館にURAの方がいらっしゃるのですか? 髙橋(以下T)| 岡山大学はOA関連の経費でURAを一名雇用しています。主に図書館と連携したオープンサイエンス推進に関わる業務を行っていただいて、現在は1週間のうち2日を図書館で勤務しています。 J| 年次大会はどのような雰囲気なのでしょう。図書館で言うと図書館総合展のようなイメージでしょうか? I| はい、毎年参加して情報共有する場なのではと思います。岡山大学のURAは昨年も参加していました。参加されていたURAの方々は、知的探求心に溢れた方が多かったです。ポスター発表の際、図書館という異なる畑からの参加なので質問はあまり来ないのではと心配していましたが、実際にはこちらが想定していたよりも多くの質問が飛び交いました。全体を通して、熱意を持って活発に議論されている場という印象を受けました。 2. ポスター発表 : URAとの協働 J| ポスターは二つ[1][2]発表されたのですよね?会場での反応についてお聞かせください。 T| はい、一つは岡山大学のOA支援に関するポスターです。岡山大学では、2023年から転換契約を導入しました。また、2024年の即時OA義務化への対応として転換契約を拡大し、転換契約でカバーしきれないものについてはAPC支援、さらにAPC支援が適用されないものについてはリポジトリ登録支援、という三つの支援を行っており、これらの取り組みを紹介しました。発表の目玉はURAと共同で作成した「オープンアクセス支援制度マッチングツール」で、投稿先の出版社やジャーナルランク等の質問に回答していくと研究者がどの支援を利用できるかを簡単に判断できるというものです。 J| URAとの共同作業は、主にマッチングツールの作成に関わる部分だったのでしょうか。 T| URAとは転換契約の選定やAPC支援制度の設計段階から共同で取り組んできました。例えば、研究成果のインパクトを向上させるにはどの出版社と転換契約を結んだらよいか、どのジャーナルにAPC支援するのが適切かなど、URAが分析した上で決めています。支援制度が少し複雑になってきたので、わかりやすくする仕掛けがあったらいいね、ということで作成したのがマッチングツールです。今回のポスターでは、オープンアクセス加速化事業の部分だけではなく、図書館にURAが関わった上でどういう支援を行ってきたのか、ということを発表させていただきました。 J| どのような反応があったのでしょうか? T| APC支援については、支援額の決め方、転換契約については、契約の進め方や著者負担金の決め方といった具体的な仕組みに関する質問を受けました。URAと図書館の連携事例として関心を持っていただけたかと思います。 J |もう一方のポスターについてはいかがでしたか? I| もう一つは、人文研究支援を目的とした資料のデジタル化に関する内容で、昨年度のオープンアクセス加速化事業で図書館に新設した電子化スタジオの取り組みを紹介しました。このスタジオでは、研究者による電子化と図書館職員による電子化とを想定しています。前者は研究者自身が管理する資料のデジタル化を支援するもので、他者の権利侵害の恐れがない資料を対象としています。後者では図書館が所蔵する貴重資料のデジタル化を進め、IIIF対応のアーカイブで公開予定です。最終的には、JAPAN SEARCHとの連携やメタデータの共通化を進め、研究支援に繋げることを目指しています。発表は、図書館はデジタルヒューマニティーズの文脈で電子化を通した研究支援に力を入れています、ということをURAの方々にアピールする目的もありました。 J |反響はあったのでしょうか? I| 研究者自身がデジタル化できるのがよい、という肯定的な感想がありました。図書館と研究者で求めるデジタル化の質が異なる場合があり、研究者自身がこだわりを持って作業できる点を評価されたようです。一方で、研究者は忙しいのに自分で作業するのかという指摘や、学外利用の可能性に関する質問もありました。また、単にスキャンして電子化するだけでなくメタデータを付与しなければいけない、その作業にAIを活用すべきという意見も出ました。これは図書館配属のURAの方からの意見でした。 T| わたしたちの他には、直接OAやOSをテーマとしているポスター発表はなかったと思いますが、セッションではOSに関するものがありました。 ポスター発表 3. セッションに参加して J |OSに関するものとして、どのようなセッションがありましたか? T| セッション「データスチュワードが切り開く研究の新境地」がOSやJPCOARに関連が深そうかと思いました。初めて知ったのですが、「データスチュワード(Data Steward)」という、研究データ管理(Research Data Management : RDM)やOS推進を目指してデータの収集・管理の面で研究者を支援する職種があるそうで。ヨーロッパではすでに配置されている大学がいくつかあるということで、データスチュワード先進国のオランダで実際に働いている方が発表されていました。 J| データスチュワードは図書館職員や研究者ではないのでしょうか。データ管理は分野ごとに異なるかと思いますが、データスチュワードには分野による専門などあるのでしょうか、それとも、分野を横断して業務をされているのでしょうか? T| 図書館職員や研究者とは別で、RDMに特化した新しい職種ですね。立場としては日本におけるURAと似ているかと思います。発表事例では分野横断的にデータ管理をされているようでした。日本ではまだデータスチュワードの雇用がなく、RDM支援がまだ制度として必須化されていない状況もあって、あまり浸透していないという話もありました。今後、日本でRDM支援が必須化された際に必ず出てくる職業なのかなと思いました。中小規模大学でURAがデータスチュワードの役割を担う必要が出てくる可能性についての懸念がある一方、そのことに前向きなコメントなども寄せられていました。 J| セッションのタイトルにある「新境地」とはどういったことでしょう。 T| RDM支援の専門職を紹介しつつ国内でそれを広げていくにはどうすればいいのかという話もあったので、「新境地」という言葉で目指すところは、国内でRDM支援をしっかり行っていくことに伴って、データスチュワードの存在が知れ渡って表に出てくるような状況になるのかなと思います。個人的な感想になりますが、データスチュワードの役割については、RDM支援をすべて任せるのではなく、リーダーシップを取ったり全体のハブになったりしてもらうとよいのかなと想像しました。 J| RDM支援をどうするかという問題意識がURAにもあるのですね。それでは実際に誰が支援を行うのかという課題に繋がるかと思うのですが、そのあたりの話はありましたか? I| 「「結局誰が何をやる?研究データ管理支援」を 議論の場はどこなのか?」という「イエス・ノー」の札を用いた会場参加型のディスカッションがありました。テーマごとに札をあげて、少数派の方に積極的に意見を聞くというような流れでした。「RDMの主体は基本的に研究者自身だと思うか?」というテーマでは約7割が「イエス(研究者自身)」で、「ノー」と答えた大学からは、既にデータ管理を担う部署があるためという意見が出ました。「当該機関のRDM・公開支援体制は万全だ」では、「イエス(万全)」との回答は3%くらいで、多くが「ノー(構築中)」でした。「イエス」と回答していた大学からは、URAと共同で研究者が管理しやすいシステムを構築し、運用が軌道に乗っている事例が挙げられました。「支援体制構築に学内連携は不可欠だ」では、9割以上が「イエス」と回答していて、図書館・研究推進部門・情報部門との連携がメインという事例が紹介されていました。 J| 誰がやるかについて結論は示されたのでしょうか。 I| 結論は出されず、議論を通して最適な地点を探ることが目的だったのではと思います。個人的には、単独の部署で行うことは難しいと感じました。 T| 各大学の事例などを聞きながら、それぞれの部署が強みをもっていることが会場全体で共有され、学内で連携してRDM支援を進めていくことが大事だよねという雰囲気になっていました。 セッション会場 J| 参加者が多かったり、印象に残っているセッションはありますか。 I| RDMに関するセッションは参加者が多くて、URAの方も関心が高いなと感じました。他には、事務職員出身のURAのセッション会場が埋まっていたなという印象です。 J| 「立ち上がれ!ジム(事務)~URAの多様性を考える~」ですね。どのような内容だったのですか。 T| URAは民間とか研究者とか色々な出身の方がいらっしゃるんですが、事務職員出身という方々もいて。そのURA3名で事務職員出身の強みと弱みについて議論するという内容でした。強味としては学内のルールに詳しいこと・異動を通じて得た豊富な経験があること、弱みとしては博士号を持つ研究職出身者などと比べて専門性が低いことが挙げられていました。登壇者の事例として、事務職員が2年間事務系URAとして現場を経験する研修プログラムも紹介されていて、おもしろいなと感じました。 4. 年次大会で見えた課題:URAからのヒント J| 今回の年次大会への参加を通して、OAやOS、RDMの支援におけるURAとの連携などについて気づいたことはあったでしょうか? T| OAは図書館が担当するイメージなのか、あまり話題にあがっていない印象でした。RDM支援やOSについてはURAの方々も問題意識は持っているものの、具体的に誰が、何を、どう進めていくのかという体制や役割分担については、まだ固まっていないと感じられました。 I| ポスター発表でお会いしたURAの方から、図書館は研究者へのアプローチが上手くないなどの耳の痛いご指摘がありました。例えば、研究者に対してCCライセンスの説明をする際「広く再利用される上に、許可のやり取りの手間も減る」といった研究者目線のメリットを伝えればよいのにできていない、などですね。こういったことはやはり言われないと分からないので、指摘していただいたり、URAと図書館の協働や、あるいはURAの方に研究者との交渉をお任せするなど、いろいろ交えながらやっていかなきゃいけないと思いました。 T| 岡山大学ではURAが週2日図書館勤務しているので、そういった視点も入ってきているかな、と思います。今回の年次大会参加の提案もそうですが、生成AIを利用した文献検索の講習会を図書館で実施したり、図書館職員が研究室のメンバーとなって研究データ管理の実務に触れてみてはどうですか?と提案したり、前例にとらわれずに自由に考える人なので、その自由さが図書館職員にもいい影響を与えていると思います。 J| 今回、お二人は別の職種のイベントに参加して、さまざまな気づきがあったのですね。今後に向けてのヒントなどは見つかったでしょうか。他の図書館職員に伝えたいことはありますか? I| やはりURAの方を見て感じたのは多様性があるなと。民間出身の方、研究者出身の方、事務出身の方とか、多様性があることに強みがあると思います。URAの方と協働するのも大事ですし、幅広い経歴の方が図書館の職員になったり図書館から違う部署を経験するようなキャリア環境の整備も考えていかなきゃいけないのかな、ミックスしていかないと変わっていかないのかなと思いました。 T| 多様性が図書館には不足しているポイントかなっていうのは本当に感じました。今回、参加して図書館にはなかった視点を共有することができたので、良い経験となりました。幸いと言っては何ですが、岡山大学図書館では組織改編があり、2025年10月から地域連携などを担うグループが図書館の中に加わりいろいろな方々と一緒に仕事をするので、多様性が広がる状況になっています。 5. 参加の意義と今後の展望 J| 来年以降も年次大会に参加したいと思われますか?また、どのような方に参加をおすすめされますか? I| 情報収集という意味でも、ぜひまた参加したいです。URAは多様な経歴の方がそれぞれの専門分野を活かして業務を進めており、図書館とは別の職種の視点に触れることができたのが新鮮でした。ただ、現在私は利用者サービスを担当していて、研究支援については理解しきれないところがあったと思うので、OS関係の業務を担当されている方が行ったら理解が進むのかなというのが正直ありました。色々理解した上で参加したいなっていうのはすごくあります。 T| 転換契約を担当している方もいいですよね。でも、その人たち以外だったら得るものがないっていうことはなくて。URAがどのような方々で、どのような業務をされていて、どのようなことを気にされているかもセッションを通じて学べるので、参加はとても良いと思います。今回はポスター発表があっての参加で、図書館総合展のように誰でも参加できるイベントではないようなのですが、そのハードルを越えても参加の意義はありましたし、今後も機会があれば参加したいなと感じています。 [1]一つめのポスター研究者とURA・図書館が築くオープンアクセス:岡山大学図書館の研究支援事例 https://www.lib.okayama-u.ac.jp/documents/20251021_RA2025_OA.pdf [2]二つめのポスター岡山大学図書館における人文系研究データデジタル化支援:OS時代に向けて図書館ができる研究支援業務 https://www.lib.okayama-u.ac.jp/documents/20251021_RA2025_denden.pdf 話し手 : 市地七実子 (岡山大学附属図書館) 広島県出身。2014年岡山大学入職。ILL、リテラシー、電子ジャーナル契約担当を経て、2021年から2年間、文部科学省行政実務研修で文化庁著作権課に勤務。2023年からサービスを担当。 話し手 : 髙橋辰弥 (岡山大学附属図書館) 徳島県徳島市出身。2023年岡山大学入職。サービス一筋3年目ですが、ひょんなことから参加が叶い光栄です。はじめてのポスター発表は上手くいかず落ち込みましたが、からし蓮根をたべて復活し、良い思い出になりました。次回は横浜で開催のようで、日本のほぼ真ん中で行きやすい!来年はみなさまもぜひ会場へ…   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 「生成引用」時代のオープンアクセスバイアス | JPCOARウェブマガジン

    かたつむりの気になる国際動向 Series かたつむりの気になる国際動向 「生成引用」時代のオープンアクセスバイアス 佐藤 翔 26/1/19 同志社大学 1.いつもAIの話をしている気がする  なんだか最近は学術出版業界も、図書館業界も、生成AIの話ばかりしている気がします。どんどん新しい話が出てくるし、図書館業界とも関連の深いトピックなので当然ではあるのですが、前回の本連載も生成AIを使った「冗長な出版」が増えているという話でしたし、並行して『情報の科学と技術』誌で行っている連載「続・オープンサイエンスのいま」でも、2025年10月にはオープンな研究データと生成AIを使って論文工場が論文を大量生産している話[1]、2026年1月には生成AIを使ったレビュー論文の投稿に苦慮したarXivが、査読前のレビュー論文を原則、受け付けない方針を発表したこと[2]を取り上げました。割と本当にいつもAIの話をしている……。  ここまで佐藤が取り上げた話題はどれも、生成AIの悪用というネガティブな話なのですが、もちろんポジティブな側面もあります。ポジティブな話題の一例として、2025年11月にSpringer Nature主催の図書館総合展オンラインフォーラム「生成AI時代の学術コミュニケーション ー出版社と図書館の役割ー」の中で[3]、「生成AI時代の大学図書館員の役割」と題したお話をする機会をいただきました。本連載読者の中にもご参加いただいた方もいらっしゃるかもしれませんが、このフォーラムでは佐藤は主に、学生・教員が情報・文献を検索する場面を想定し、すでに生成AIを用いた検索が学生・教員に浸透していることを紹介したうえで、その中で大学図書館の役割としてはどんなことが想定されるか、という話をしました。と言っても、生成AIで図書館員の役割ががらっと変わる……みたいな話ではなく、生成AIを用いた検索ツールにもいろいろな種類・製品があって、無料のものも有料のものもあり、学術出版者が出しているものには既存サービスにプラスアルファでお金を払う(主に機関契約が想定される)ことで使えるものもある。それぞれに得手・不得手もあり、向いている使い方や利用時に考慮しなければいけないことも多い。それらのツールのどれが自分の機関の学生・教員にとってよさそうかを検討して契約し、利用できる環境を提供する、そしてその利用方法を講習やパスファインダー等を通じて利用者に伝えていく……というのが図書館に求められる役割で、それって結局、既存のツール・データベースを利用者に提供・紹介してきたときと似た流れだよね、という。ARLが発表した大学図書館向けのAIに関する原則でも似たようなことが指摘されており[4]、「CiNiiが出てきたときのことを思い出しつつ、いつもどおりにやっていきましょう」という話をしまして、おおむねご参加の方にも好意的に受け止めていただいたようでした。 2.「生成AI時代における大学図書館員の役割」の舞台裏  ところで、この「生成AI時代における大学図書館員の役割」講演の準備をするためにいろいろなAIツールを試してみたのはもちろんのこと、最近はネタ探しとは関係なく、日常の原稿・論文執筆にも自分自身、生成AIツールをよく用いるようになっています。特によく使うのはChatGPTにDimensionsやConsensusを連携させられる機能で、英語論文を日本語で検索し、結果の要約も日本語で提示してもらいつつ、きちんとした検索サービスと連携しているのでいわゆる「幻覚」、存在しない文献を参照されることも少ない、という優れものです。いくら英文での検索に慣れているとは言っても日本語話者ではあるので、日本語で検索出来れば大幅な時間節約になりますし、見逃していた文献を提示してもらえることもしばしばあり、たいへん助かっています!  助かっている……こともあるのも確かなんですが、その一方でこれは先述の講演の中でもネタにしたのですが、その講演のために生成AIツールで検索し、提示された文献は、結局1本も講演中では引用しませんでした(苦笑)。あるいは最近、別の原稿で引用文献を追加するために検索した結果も、たくさん論文は提示されたものの使ったのはそのうち1本だけ、ということがありました。後者についてはその1本が引用している文献に使えるものが多くて、結果的には助かったのですが、じゃあ最初からその「使える文献」の方をAIが提示してくれていればもっと時短になったのに……とも思います。ぱっと見ではAIの検索結果は検索キーワードに合致していて、AIによる要約を見ても使えそうに思えるんだけど、中身をちゃんと読んだら微妙で(検索トピックとの合致度が微妙なこともあれば、クオリティ自体が微妙なことも)、そのままじゃあ使いものにならないな、というケースがけっこう多いのです。冒頭に紹介したarXivのレビュー論文対応に関する声明の中で、生成AIによるレビュー論文のクオリティの低さにも触れられていますが[2]、文章の質とか批判的吟味の問題以前に、一見AIが得意としていそうな網羅性とか選出した論文の妥当性にも、この分だと問題が多いのではないかと推測されます。  なんでそうなるのかと思い、生成AIが出してきた結果と、最終的に自分が引用することにした文献とを見比べてみると、生成AIの提案論文はオープンアクセス雑誌掲載のものが多く、一方で自分が最終的に引用した文献の中には有料雑誌掲載のもの、古くてデジタル化されていなかったり、抄録がなくて書誌事項も最低限しかデータベース等に収録されていないものが多数含まれていました。考えてみれば当然で、現在、比較的よく使われているAI検索ツールは電子ジャーナル等の機関購読を前提としていないので、本文有料の論文の、本文にはアクセスできておらず、当然デジタル化されていない論文の本文も読めていないわけです。現在の生成AI学術文献ツールはだいたいRAG(Retrieval-Augmented Generation, 検索拡張生成)という技術を用いており、モデル自体だけではなく、外部のデータベースも参照して回答を生成していますが、参照できる範囲には制約があります。書誌事項や抄録は有料のものでも参照できているでしょうが、豊富な本文テキストにもアクセスできるオープンアクセス文献の方がヒットしやすくなり、よく参照されるのではないかと考えられます。  もちろんそのことには学術出版者も気づいており、有料本文にアクセスできることを自社の強みとする展開も見られます。例えばElsevier社はScopus(他社論文も含むデータベース)とScience Direct(自社の電子ジャーナルプラットフォーム)でそれぞれ異なるAI製品の提供を開始していますが、これもScopus側では抄録情報までしか使えないけれど、Science Directなら本文情報まで生成AIに読ませられるので、より踏み込んだ結果が得られるよ、という点が売りになるわけです……ただし、Elsevierの雑誌掲載論文なら。  実際のところ、研究者の日常の文献探索で、特定の出版者の雑誌掲載論文だけ探したい、なんて場面はあまりありません(ある雑誌、ならあっても、Elsevierの雑誌、なんて探し方はあまりしません)。出版者を横断して検索したいのは当たり前であって、生成AIによる文献検索にはどこの出版者の論文でも提示してほしい(ChatGPTやScopus AI的な使い方をしたい)わけですが、そのときに有料の出版者の論文はあまり出てこない。 よく、コンテンツを持っている点は出版者のAIに対する強みと捉えられることがありますが、実際にはむしろ「有料だと本文がAIに参照してもらえない」って、有料論文の「弱み」なのでは? AIによる検索がますます普及していった場合、有料論文はあまりAIが引用しないとなると、有料雑誌掲載論文のインパクトが落ちていくことにつながる、のではないでしょうか。 3.「生成引用」と「AI媒介可視性バイアス」  そんなことを考えていたら、まさに同じことを扱ったプレプリント”From Prestige to Presence: Algorithmic Visibility and Citation Bias in the Age of Generative AI”が2025年9月に、SSRNで公開されているのを見つけました[5]。著者はノルウェー・University of South-Eastern NorwayのMadsen氏らです。  このプレプリントの問題意識はここまでの佐藤の話とほぼ同じで、生成AIによる文献検索結果を人々が使うようになった時代、すなわち「生成引用(Generative citation)」の時代においては、論文の被引用数(引用される回数)において、生成AIが引用しやすいオープンアクセス状態にあることのバイアス(偏り)がますます大きくなるだろうことを、関連研究を引用しつつ、筋道を立てて説明しています。もともとオープンアクセスバイアスの存在はオープンアクセス界隈でずっと議論されてきて、「あるような、ないような」と言われてきたわけですが、生成AIはここまで見てきたように強烈にオープンアクセスバイアスがかかるので、人間が文献を探索・入手していた時代よりもバイアスが大きくなる。言い換えれば、購読型・有料の雑誌掲載論文は生成AI上で冷遇されるようになり、しかもそうした生成AIを用いた検索結果を、(ちゃんと見直しせず)そのまま自分の論文に使う人が増えれば、本文の入手可能性だけではなく、多くの論文から引用されているという点でもオープンアクセス論文の方がAIからの可視性が高まっていく。このフィードバックループの発生により、さらにオープンアクセスバイアスが強化されていくということで、こうしたAIによるバイアスのことを著者らは「AI媒介可視性バイアス(AI-Mediated Visibility Bias)」と呼んでいます。  AI媒介可視性バイアスの結果、従来の学術界で重視されてきた雑誌の権威や厳密性への評価が、可視性(オープンであり、AIに引用されやすいこと)にとってかわられる可能性についてこのプレプリントでは論じられています。オープンアクセスであることが価値を持つのはリポジトリ関係者にはいい話のようにも思えますが、predator(いわゆるハゲタカ)に悪用されたり、そこまでいかずとも厳密さより可視性が優先されるのはあまりよくない側面もあるのでは、という話ではあります。  もっとも、件のプレプリントはこうした可能性を指摘したうえで、今後のありえる研究の方向性等を指し示すにとどめたもので、実際に生成AIによってオープンアクセスバイアスが強化されているのか、AI媒介可視性バイアスが存在することを確かめたものではありません。これを確かめるためには、実際に生成AIによる引用ではオープンアクセスのものが多くなることや、それを人間が活用しているので世間的にもオープンアクセス論文の引用が増えていること等を明らかにする必要があります。今後はこれを実証する調査・研究が望まれるところで……たぶん表に出ていないだけで、すでに多くの人が着手し始めているのかも……? 動向には引き続き注目していきたいところです。 4.今年の推し活はオープンアクセスバイアスで!  いいことばかりとは言えなさそうだ、という話も紹介したわけですが、機関リポジトリをはじめオープンアクセスを推進したい立場としては、オープンアクセスバイアス・AI媒介可視性バイアスの存在は、論文をオープンアクセスにすべき理由の一つとしてこれからぜひ推していくべきポイントではないかと考えています。みんなが使う生成AIに、ちゃんと見つけて紹介してもらうためにも、論文をオープンアクセスにしましょう!  それに危機感を覚えたら、出版者がAIツールに対してはコンテンツ本文を提供する、という未来もあるかもしれませんが……それはそれで利用者が便利になるなら嬉しい話だし、そういう未来を引き出すためにも、オープンアクセスバイアスの話は推していけるのではないかと思います。今年の推し活はオープンアクセスバイアスに決めた! [1] 佐藤翔. オープンな研究データが論文工場の餌食に?. 情報の科学と技術. 2025, vol.75, no.10, p.518-521. https://doi.org/10.18919/jkg.75.10_518, (参照 2025-12-03). [2] 佐藤翔. 生成AI時代のレビュー論文. 情報の科学と技術. 2026, vol.76, no.1, p.30-32. https://doi.org/10.18919/jkg.76.1_30, (参照 2026-01-07). [3] “生成AI時代の学術コミュニケーション ー出版社と図書館の役割ー【シュプリンガーネイチャー】”. 図書館総合展. https://www.libraryfair.jp/forum/2025/1832, (参照 2025-12-03). [4] Association of Research Libraries Releases Guiding Principles for Artificial Intelligence. https://www.arl.org/news/association-of-research-libraries-releases-guiding-principles-for-artificial-intelligence/, (参照 2025-12-03). [5] Madsen, Dag Øivind; Sohail, Shahab Saquib. From Prestige to Presence: Algorithmic Visibility and Citation Bias in the Age of Generative AI. SSRN. 2025-09-09. https://dx.doi.org/10.2139/ssrn.5464818, (参照 2025-12-03). 文:佐藤翔(同志社大学) 1985年生まれ。2012年度筑波大学大学院博士後期課程図書館情報メディア研究科修了。博士(図書館情報学)。2013年度より同志社大学助教。2018年度より同准教授。2024年度より同教授。 図書館情報学者としてあっちこっちのテーマに手を出していますが、博士論文は機関リポジトリの利用研究で取っており、学術情報流通/オープンアクセスは今も最も主たるテーマだと思っています。 学部生時代より図書館・図書館情報学的トピックを扱うブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」を開始。ブログの更新は絶賛滞っているものの、現在は雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』誌上で同名の連載を毎号執筆中。本連載タイトルもそれにちなんだもの。2024年12月には同連載をまとめた書籍『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』を刊行。SPARC Japanセミナー2025当日は子どもの習い事と重なっており、パネルディスカッション部分はイヤホンをつけて、ながら視聴することになりそう。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • JAIRO Cloud(WEKO3)ビギナーQ&A ~リポジトリ登録で困った時は~ | JPCOARウェブマガジン

    Talk JAIRO Cloud(WEKO3)ビギナーQ&A ~リポジトリ登録で困った時は~ JPCOAR広報・普及作業部会 24/3/29 JPCOARがNIIと共同で運営している、機関リポジトリ環境提供サービスJAIRO Cloud。 その基盤となるソフトウェア「WEKO」は昨年2023年にWEKO2からWEKO3へ大幅なバージョンアップが行われました。 今回はWEKO3を使った機関リポジトリ(以下、リポジトリ)業務に初めて携わる方や、基本的なサポート情報を一から知りたい方に向けて、JPCOAR作業部会のメンバーで話し合った様子をお届けします。 今回のメンバー 安田 翔子(広報・普及作業部会/富山大学) リポジトリ業務は7年目になるんですけど、見ながら見よう見まねでやっています。今でも知らなかったなって思うことがいっぱいあってまだまだ手探りな状態です。 伊藤 文 (広報・普及作業部会/富山大学) 私はリポジトリ関係は 一切携わってなくて。今回も事前の資料に目を通そうとしたらどこがどこかよくわからないなあみたいなそんな状態です。 南雲 修司(広報・普及作業部会/東京学芸大学) 本格的にリポジトリを担当して1年目になります。メーリングリスト見てるといろいろみなさん難しいところがあるなと思っていたので役立つ記事ができればいいなと思います。 永井 一樹(広報・普及作業部会/兵庫教育大学) リポジトリ担当は2006年からやってますけどあんまり詳しくないです。2021年までDSpace使ってまして、そこからJAIRO CloudのWEKO2でやって、昨年WEKO3に更新しました。 大澤 紗都(次期JAIRO Cloud移行TF/広報・普及作業部会/国立情報学研究所) 図書館でのリポジトリ業務の経験はないんですけれどもJAIRO Cloudに関わって2年目になります。今はアップデートと移行で起きた問題の対処を中心にしています。 加川 みどり(次期JAIRO Cloud移行TF/イベント運営作業部会/神戸松蔭女子学院大学) ITスキルも知識もないですが、中小機関の担当者の立場でJAIRO Cloud移行TFに参加させていただいています。少しでも皆さんの役に立つことがあったらお伝えしたいなと思っています。 Q.はじめてのリポジトリ担当。まずは何から学べばいいでしょうか? 安田 リポジトリ担当者に向けて発信しているウェブサイトは様々ありますが、初めてリポジトリ担当になった時に、まずどこを見て知識を得ればいいでしょうか? 南雲 初めてリポジトリを担当するとなると、リポジトリとはなんぞや?という話からだと思います。参考になる資料としては、JPCOARのウェブサイトに研修資料アーカイブというのがあって、そこに新任担当者研修の資料があるので参考になるのではないでしょうか。 JPCOARの研修資料アーカイブ 担当者研修は毎年やっていて、最新版は「学術コミュニケーションセミナー(JPCOAR Webinar)まとめ」にまとめられています。2023年度に開催された第2回JPCOAR Webinar「オープンアクセス新任担当者相談会」では、基礎知識やリポジトリの概論のようなお話をされいます。永井さんも講師を担当されていますね。 第2回JPCOAR Webinar「オープンアクセス新任担当者相談会」 (「学術コミュニケーションセミナー(JPCOAR Webinar)まとめ」) 安田 定期的に開催されてるウェビナーを見ていただくと勉強になるということですね。 南雲 ですね。全部見るのは大変なので、まず新任向けの資料でリポジトリとはどういうものかということを最初に学ぶのがいいんじゃないかと思います。実務のことだけ早く知りたいという方もいると思いますが。 加川 あとですね、リポジトリに登録したデータを収集するIRDBについて取り上げた第4回のウェビナー「IRDB-カラクリと役割:どこから・どこへ・どのように-」は最近IRDBのハーベスト(収集)に関する問い合わせが増えていて企画したんです。 内容は少し難しいのかもしれないですけど、知っていたらかなり解決できる問題が出てくるんじゃないかなと思って。これはおすすめです。私の一押しです。 第4回JPCOAR Webinar「IRDB-カラクリと役割:どこから・どこへ・どのように-」 (「学術コミュニケーションセミナー(JPCOAR Webinar)まとめ」) 南雲 とても勉強になって面白かったです、あのセミナー。ML(メーリングリスト)を見ていても、ハーベストは初任者の方がつまりやすいポイントなのかなと思います。 加川 IRDBがどのようなことをしているのか、ということをわかりやすく解説されていますし、後半は実務担当者目線で活用方法やエラー解消をどのようにしているのか、事例を紹介してくださっています。 その2つの動画を合わせたらある程度IRDBのハーベストについては理解できるのではないでしょうか。 Q.WEKO操作に関する情報はどこを見ればいいでしょうか? 伊藤 話は戻りますがリポジトリの登録作業をする際に、操作に関してまず一番最初にどれを見ればいいとかってあるんですかね? 加川 操作する際に最初に見て欲しいと思って作っているのは基本マニュアルだと思っています。上から順番に項目を見ていただくと、どう操作するのかわかると思うんですが、言葉が専門的で難しい点が少し初心者には厳しいかなと。 JAIRO Cloud(WEKO3)基本マニュアル 南雲 用語集 というのがあるんですよね。 伊藤 一通り読んでみました。一つ一つ記事を読んでいけば、とってもわかりやすいんですが一番最初にこれ全部読むのは多いというか…。作業に対する流れが把握できて知りたいことがあったらパッと調べられるみたいな感じにはならないんでしょうか? 大澤 作業の流れというのは機関によって大きく変わるので、なかなかサポートが難しい点ではありますね。 文字だけで見るのが大変だったら、移行サポート動画もあります。WEKOを操作するのが初めてという方は動画を見ていただいた方が大体のイメージがつかめてわかりやすいかもしれません。 次期JAIRO Cloud(WEKO3)操作説明会 - YouTube 伊藤 ここにたどり着ければ行けそうな気がします! Q.最新の情報はどこで得られますか? 伊藤 基本的な操作はマニュアルや動画を見るとして、新しく情報が更新されたりリアルタイムで発生している現象については、どこかに情報が載っていたりするんでしょうか。 安田 基本マニュアルの他にもリリースノートというページにWEKO3の最新の情報や今まで発生した問題の解消方法や課題などの大事な情報が載っていますよね。 リリースノート 大澤 最新のリリース予定日のページ下に「最新の課題リスト」っていうものがついています。ちょっと見づらいので、ダウンロードした方がエクセル形式で見やすいですね。ここに発生したバグやその対策が書いてあるので、操作していて何かおかしいな?と思ったときに、まずここをチェックしてみてください。 安田 キーワード検索で知りたい事をリストから探せばいいでしょうか? 加川 キーワードだと自分が想像してることと実際の事象とが食い違っているとなかなか行き着かないので、カテゴリーごとに分けて、知りたいカテゴリーを上からざざっと見ていくと、見つけやすいかな、と思います。 課題リスト 南雲 MLで問い合わせる前に、一度リリースノートを見て既に同じ問題が上がっていないかどうか確認してみるのもいいですね。 大澤 そうですね。また、リリースノートの他に「本番移行における重要情報まとめ」というページも見ていただきたいなと思っています。基本情報にマニュアルやリリースノートなど見て欲しい資料の一覧が載っています。 特に 「データ移行ツールに関連する問題点まとめ」 は今でもよく更新されているので見てもらいたいです。 本番移行における重要情報まとめ Q. データの入力は何を参考にすればいいでしょうか? 安田 データを入力する作業も悩むポイントは多いですよね。どこに何を入れたらいいのか、この書き方で合っているかとか…。 永井 データを入力する際によく参考にするのは 「JPCOARスキーマガイドライン」 ですね。各項目わかりやすく編集されてて、非推奨の項目とか見ればこういう書き方はだめなんだっていうことが分かりやすいです。 JPCOARスキーマ項目の説明 加川 アイテムタイプを設定する時にはこちらを見るのが必須なんじゃないでしょうか。エラーが出た時はここも確認するとよいと思います。 大澤 IRDB(学術機関リポジトリデータベース)から届くエラーについては、「本番移行における重要情報まとめ」の 「本番移行後のIRDBハーベストについて」 という、ハーベストの話をまとめているページがあるんですね。 JAIRO Cloudを使っている方だったらこのページを見ていただくと、基本的な情報がまとめられているので、このページからIRDBに飛んだり、サポートページに飛んだりっていうことがしやすいのかなと思います。エラーのメールが届いたらここを見ていただければ。本当は先に見ておくといいかもしれないんですけど、それはちょっと難しいのかな? 安田 いろんな情報が多すぎてパンクしそう…。 加川 書いてある事を全部見て、エラーを起こさないようにっていうのはちょっと難しいっていうか、それをしていたら登録できないと思うんです。 エラーはそんなに怖がらなくてもいいんです。先ほど一押しした 第4回JPCOAR Webinar で、エラーが来た時にどうしてますか?という事例報告を取り上げているので、とりあえず他機関のやり方を真似てみて順番に潰していけばいいんじゃないでしょうか。 Q. 初任者に向けてアドバイスはありますか? 安田 これからWEKO3を初めて使う方に向けて伝えたいことがあれば教えてください。 永井 僕、昔ちょっとだけサーフィンしてたことあるんですけど、ドルフィンスルーっていう基本ワザがあるんですよ。沖に出るために向かってくる波をすっと潜ってかわすワザ。結構難しいんですけど、でもそれを超えると急に水平な場所に出て視野が開けるんです。 WEKOの仕事もこれに似ていると思います。運用開始までのハードルが結構大きいですよね。でも、それを超えるとフラットな地平に出ると思います。だから、とりあえず最初だけ頑張ってくださいとお伝えしたいです。 加川 マニュアルに沢山難しい言葉があると、言葉の意味を調べるじゃないですか。そうすると今度はそもそも何を探していたか忘れちゃうんですね。わけのわかんないカタカナ用語で止まっちゃって。そこで止まってしまうと分からないっていう状態が続いてしまうので、時には今は分からなくても次に行っちゃっていいんです。 新しい言葉とか概念とかって一回聞いただけでは理解できなくて、何回も耳にすると理解できるんですね。その繰り返しです。 WEKO3は移行したばかりでいろいろ課題もあるんですけど、登録作業については怖がらなくてもいいのかなと思います。私の経験上、理解が進んだのは、学んでいた側から教える立場になった時点でポンと蓋が開いたっていう感じだったんです。だから人に教えるっていうことを、例えば同僚さんとかに教えてあげるような機会があればもっと理解が進みますよ。 大澤 まずJAIRO Cloudに慣れるところまでどうしても頑張りが必要になってしまう部分もあるんですけれども、その頑張りが必要なところをどれだけサポートできるか、こちらとしては頑張りたいと思っていますので引き続き使っていっていただけたらなと思います。今回はウェブサイトを中心にお話ししましたが、アナウンスでも重要な情報を案内しているので、長文になってしまって読みにくい部分もありますがなるべく見ていただけると嬉しいです。 安田 今回のお話を聞けて今までなんとなく知っていた情報が整理できた気がします。リポジトリは専門的な言葉や知識が多く、初任者には大きな壁に感じるかもしれませんが、皆で知識を共有しながら進んでいきたいですね。 今回ご紹介した各種ウェブサイトはJPCOARウェブサイトの左メニューにまとめられています。 ぜひウェブサイトのお気に入り登録をお願いします! JPCOARウェブサイト  左側のメニュー   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

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