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  • 変わりゆくオープンアクセスメガジャーナル | JPCOARウェブマガジン

    かたつむりの気になる国際動向 Series かたつむりの気になる国際動向 変わりゆくオープンアクセスメガジャーナル 佐藤 翔 26/3/25 同志社大学 1.なにかと目立つMDPI  本記事と公開順がどうなっているかわかりませんが、2025年のJPCOARウェブマガジン人気記事トップ5の発表がありまして[1]、ありがたいことに2024年公開の自分の記事「オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?)」[2]が栄えある第1位を獲得したとのことでした! それも2年連続だとか。それだけ大量の特集号を核とする新型オープンアクセスメガジャーナル(OAMJ)の動向に注目が集まっている、ということでしょう。  実際、2026年も早々から、新型OAMJビジネスの代表例たるMDPI社の雑誌に関する話題がXでトレンド入りしていました。室蘭工業大学の学部生らが執筆した論文が国際査読誌に掲載されたということで、同大学がプレスリリースを打ったのですが[3]、その版元がMDPIだというので議論沸騰。「MDPIはクズ論文ばかり」など痛烈な批判、指導教員は別の投稿先に導くべきだったなど指導体制の問題を指摘する声もある一方、MDPIだってちゃんと査読をしている、出版社で一括りにしてバカにするな、普通に祝えばいいのになどなど、MDPIを擁護する意見も多数、投稿されています[4]。MDPIを批判する側も、擁護する……というか批判者を批判する側も、日ごろから溜まっていた言いたいことがこの機にあふれ出したようです。  近年の学術出版の中でMDPIが良くも悪くも目立つのはSNS上に限った話ではありません。計量書誌学・科学計量学分野の専門誌、 Scientometrics (同誌自体の版元はSpringer Nature)の近年の掲載論文を探してみても、MDPIの功罪を扱う議論が出てきます。例えばルーマニアの研究者の間で起きている成果発表媒体のMDPIへの大規模な移行については、論文公開後、複数回のコメントがやり取りされ、誌上討論の様相を呈しています[5][6][7]。MDPIの擁護者は可視性・インパクトの向上を肯定的に評価している一方、批判者は可視性・インパクトの向上は限定的だし、同社の慣行はAPC目当てで質より量である、と批判を展開しています。また、チリの研究者の出版慣行に関する研究からは、MDPIとFrontiersに、ラテンアメリカ伝統の出版の場であるSciELOのシェアが奪われていることが報告されています。特にMDPI掲載論文の増加は顕著で、SciELOという効果的なOAモデルがあるはずなのに、多額のAPCが必要な新型OAMJへ移行していることへの懸念が示されています[8]。 2.2025年掲載論文数トップ10雑誌の動向  なにかとやり玉にあがりがちなMDPIですが、ここでいったん、2024年公開の自分の記事に倣って、実際どれくらいの論文が同社の雑誌等に掲載されているのか、現状を確認してみましょう。前回記事では2023年発表論文を対象にしていましたが、今回はその2年後、2025年発表論文について、掲載論文数上位10雑誌を表1にまとめました。分析には前回同様、Scopusを用い、対象は原著論文に限定しています。参考に、前回(2023年時)のランキングもあわせて示しました。 表1. 掲載論文数トップ10雑誌:2023と2025の比較 2023トップ10 順位 雑誌名 論文数 出版者 1 Scientific Reports 22,188 Springer Nature 2 PLOS ONE 14,525 PLOS 3 Sustainability 13,627 MDPI 4 International Journal of Molecular Sciences 12,614 MDPI 5 Applied Sciences 12,135 MDPI 6 IEEE Access 10,074 IEEE 7 Heliyon 9,398 Elsevier 8 Sensors 8,488 MDPI 9 Chemical Engineering Journal 8,242 Elsevier 10 Nature Communications 8,008 Springer Nature 2025トップ10 順位 雑誌名 論文数 出版者 論文数増減 1 Scientific Reports 44,643 Springer Nature 22455 2 PLOS ONE 18,195 PLOS 3670 3 IEEE Access 13,089 IEEE 3015 4 Chemical Engineering Journal 12,515 Elsevier 4273 5 Applied Sciences 11,681 MDPI -454 6 Nature Communications 11,222 Springer Nature 3214 7 Sustainability 10,298 MDPI -3329 8 International Journal of Biological Macromolecules 8,909 Elsevier New! 9 International Journal of Molecular Sciences 8,514 MDPI -4100 10 Journal of Alloys and Compounds 7,975 Elsevier New! 情報源:Scopus。文献種別を”article”に限定。 2025年掲載文献数については2026-02-10にデータ取得。 2023年掲載文献数は引用[2]のまま。 文字色緑:順位変動なし。オレンジ:順位上昇。青:順位下降。 セル着色有:2023もしくは2025のみに出現するタイトル。  2025年と2023年では上位の顔ぶれはかなり似ていますが(2023年から2誌がランク外へ、別の2誌がランクイン)、順位や掲載論文数にはだいぶ違いがあります。まず首位の Scientific Reports は、順位は前回と変わらずですが、掲載論文数が約22,000本から約44,000本へと倍増しています。2位 PLOS ONE も4,000本近く掲載論文を増やしてはいるものの、 Scientific Reports の伸びはすさまじいです。ただ、これは Scientific Reports の伸びが例外的であって、3位以下の雑誌も IEEE Access (約10,000本⇒約13,000本)、4位 Chemical Engineering Journal (約8,000本⇒約13,000本)、6位 Nature Communications (約8,000本⇒約11,000本)など、 PLOS ONE と同様に数千本単位での増加が一般的です。というか数千本単位での伸びでも十分、驚きの数字ではあります。  ここまで挙げた雑誌はすべて掲載論文数が増えています。一方でMDPIの雑誌については、2025年も3誌がトップ10入りしているものの(2023年は4誌)、掲載論文数が増えた雑誌はなく、 Applied Sciences は微減、その他は数千本単位での減少となっています。その他の雑誌の伸びもあり、2023年には掲載論文数第3位だった Sustainability も7位にまで順位を落としました。集計時期の違いもあるかもしれませんが(前回は2024年5月にデータ取得、今回は2026年2月にデータ取得。2025年出版論文でデータベースに索引付けしきれていないものがある可能性はあります)、それは他の雑誌も同様であると考えると、前回調査時ほどのMDPIの勢いはない、あるいは他の出版者も多くのOAMJを手掛けるようになり、競争がより熾烈になった、と捉えるのが妥当でしょう。  MDPIとの競合として特に注目に値するのはElsevierの雑誌です。トップ10中、 Scientific Reports (Springer Nature) 、PLOS ONE (PLOS)はもちろん、 IEEE Access (IEEE)、 Nature Communications (Springer Nature)など、他社が手掛ける雑誌はすべて分野を限らない、あるいは大くくりにした、昔ながらのいわゆるOAMJスタイルの雑誌です。一方、Elsevierの雑誌はすべてタイトルからもわかるとおり、分野をある程度、限定した雑誌です。分野を限定しつつ大量の論文を掲載するという点でMDPIの雑誌スタイルに近いわけですが、ただ、Elsevierの雑誌については特集企画もないではないものの、MDPIのような大量の特集企画を組むということは行われていません。分野を限定しつつも、特集号に頼らないOAMJを実現しているわけで、いったいどうやって運営しているんでしょう。恐るべき力業……! 3.撤回や不祥事が起きるのは特集号ビジネスだけではない?  そんなわけでElsevierを中心に更なる変革が起こりつつあるOAMJですが、気になる動向もあります。2023年⇒2025年でランク外になった2誌のうち、 Sensors (MDPI)は論文数が多少減り、トップ10圏外になったものの、未だに第11位にはつけており、多くの論文を出しています。一方でElsevierの Heliyon は掲載論文数が約9,000本から約2,000本へと急落、大幅なランク圏外へと落ちてしまいました。実は Heliyon については掲載論文の質に懸念があるという指摘により、2024年からWeb of Scienceへの索引付けが停止されています。一時は年間10,000本を超えていた掲載論文数も急減し、一方でElsevierは同誌掲載論文全体の監査を実行することに決定、2025年に390本以上、2026年もすでに140本以上という大規模な論文撤回が実行されています[9]。撤回理由は参考文献の問題、引用操作、著者変更、倫理審査など多岐にわたるようです。著者変更は論文工場の関与を示す兆候でもあります。  また、同じくElsevierの雑誌の中では、2023年のトップ10には入っていなかったものの、掲載論文数約8,000本で第11位につけていた雑誌 Science of the Total Environment についても、2025年は掲載論文数約2,700本と大幅に減少しました。こちらも2025年に、質への懸念からWeb of Scienceへの索引付けが停止されています。同誌については他の研究者の名前を騙って偽の査読レポートを提出する、という査読不正が行われ、多数の論文が撤回されたともされていますが、この不正の実行者は同誌の元編集長と共同研究を行っていました。この元編集長についてはサウジアラビアのキング・サウド大学教授として名を連ねていたものの勤務実態はなく、大学ランキングを操作するための不正だったのではないか等、その他の研究不正への関与を疑う報道もなされています[10]。  たまたまElsevierの雑誌の話題が2つ続きましたが、Elsevierが(Elsevierだけが)駄目だ、という話がしたいわけではありません。ちょうどサウジアラビアの話題が出たところですが、2026年1月に Scientometrics 誌で公開された論文でサウジアラビアの研究者がかかわる論文撤回に関する分析結果が報告されています[11]。サウジアラビアが関与する研究において、2022年発表論文における論文撤回の発生率は論文1,000件あたり7.5件で、中国(3.9件)やインド(2.3件)の2~3倍にも相当する撤回発生率であるとされています。ちなみに撤回件数がもっとも多かったのは、先にも名前があがったキング・サウド大学でした。そして撤回論文の72%がOA雑誌に掲載されたもので、出版者の内訳としてはHindawi(335件)、Elsevier(150件)、Springer Nature(114件)、PLOS(81件)、MDPI(54件)……といった順となっています。Hindawiについてはブランドの停止にまで追い込まれた論文工場汚染問題がかかわっていると考えられますが[12]、ElsevierやSpringer Natureといった大手伝統出版者、PLOSのような非営利出版者についても、MDPIを大きく超える撤回が発生しています。もちろんMDPIに比べて掲載論文数も多いはずなので単純に比較はできませんが、撤回につながるような問題のある論文は、一部の出版者の雑誌のみ、掲載されているわけではないのです。 4.やはり「メガ」には無理がある?  MDPIに問題がないとは言いませんし、特集号ビジネスに問題がないとも言いませんが、では伝統的な出版者だから大丈夫とか、特集号ビジネスモデルじゃないから大丈夫かと言えば、そういう話でもなさそうです。何かとMDPIが悪目立ちしがちではありますが、根本的には同社に限らず、OAMJのような迅速・大量出版の「メガ」モデルそのものの歪さが原因であるように思えます。  「メガ」には無理がある……とは思うものの、一方でそれがビジネスとして成立し、伝統出版者にも取り入られているのは、それだけ研究者に支持されているからでもあるわけで……なんだかんだ言って、自分だって研究が終わったら早く発表したいし、できればいっぱい発表したいですからね……MDPIやElsevierが手を引けば他のプレイヤーが参画するだけでしょうし、両社(あるいは参入した他社)を批判するだけでは根本的な解決には至らないでしょう。 当面は、ひどい玉石混淆になるのは承知の上で、様々なスタイルのOAMJと付き合っていきつつ様子を見るしかない感じでしょうか。「注目されているみたいだしOAMJをめぐるアカデミアの混乱解消に寄与したい」と思って筆をとってみたものの、解消できないどころかなんだか自分も混乱してきたかも……。 [1] JPCOAR広報・普及作業部会 . 発表!2025年度もっとも読まれたJPCOARウェブマガジン記事トップ5 . JPCOARウェブマガジン. 2026-03-24. https://magazine.jpcoar.org/news/1a2720ed-bd5a-4cfb-a4c2-814a5cb9c670 , (参照 2026-03-24). [2] 佐藤翔. オープンアクセスメガジャーナルの逆襲(?). JPCOARウェブマガジン. 2024-07-10. https://magazine.jpcoar.org/news/3c7f8b6b-e910-4af1-acfb-693fd2ce4ba9 , (参照 2026-02-10). [3] “本学学部生の論文が国際雑誌に掲載されました”. 室蘭工業大学. https://muroran-it.ac.jp/info/post-10153/ , (参照 2026-02-10). [4] “室蘭工大学部生のMDPI論文掲載が議論の的”. https://x.com/i/trending/2015057266529931472 , (参照 2026-02-10). [5] Cernat, V. The unprincipled principal: how Romania’s inconsistent research reform impacted scientific output. Scientometrics. 2024, vol.129, p.5557–5575. https://doi.org/10.1007/s11192-024-05118-9 , (参照 2026-02-10). [6] Nazarovets, S. Paradoxical growth of publications by authors from developing countries in gold open access journals: a commentary on Dr. Cernat’s, 2024 article. Scientometrics. 2024, vol. 129, p.7981–7984. https://doi.org/10.1007/s11192-024-05186-x , (参照 2026-02-10). [7] Cernat, V. Is Romania’s surge in MDPI publications a success story? A response to Nazarovets (2024). Scientometrics. 2024, vol.129, p.7985–7988. https://doi.org/10.1007/s11192-024-05187-w , (参照 2026-02-10). [8] Andrea, P., Pablo, M., Soledad, BM.M. et al. Open access dynamics in Latin America: insights from the Chilean case. Scientometrics. 2025, vol.130, p.7031–7052. https://doi.org/10.1007/s11192-025-05483-z , (参照 2026-02-10). [9] Orrall, A. “Mega-journal Heliyon retracts hundreds of papers after internal audit”. Retraction Watch. 2026-02-03. https://retractionwatch.com/2026/02/03/mega-journal-heliyon-retracts-hundreds-of-papers-after-internal-audit/ , (参照 2026-02-10). [10] Ansede, M. “The fall of a prolific science journal exposes the billion-dollar profits of scientific publishing”. El Pais. 2025-11-28. https://english.elpais.com/science-tech/2025-11-28/the-fall-of-a-prolific-science-journal-exposes-the-billion-dollar-profits-of-scientific-publishing.html , (参照 2026-02-10). [11] Mhamdi, R. The retraction problem in collaborations with Saudi Arabia: evidence from 2014–2023. Scientometrics. 2026. https://doi.org/10.1007/s11192-026-05549-6 , (参照 2026-02-10). [12] 佐藤翔. オープンアクセス雑誌における特集号(Special Issue)の問題(Issue). 情報の科学と技術. 2024, vol.74, no.7, p.267-270. https://doi.org/10.18919/jkg.74.7_267 , (参照 2026-02-10). 文:佐藤翔(同志社大学) 1985年生まれ。2012年度筑波大学大学院博士後期課程図書館情報メディア研究科修了。博士(図書館情報学)。2013年度より同志社大学助教。2018年度より同准教授。2024年度より同教授。 図書館情報学者としてあっちこっちのテーマに手を出していますが、博士論文は機関リポジトリの利用研究で取っており、学術情報流通/オープンアクセスは今も最も主たるテーマだと思っています。 学部生時代より図書館・図書館情報学的トピックを扱うブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」を開始。現在は雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』誌上で同名の連載を毎号執筆中。2024年12月には同連載をまとめた書籍『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』を刊行。先日、京都は大雪が降り、翌日は路面が完全に凍結。北海道なら平常運転の気候ですが、京都で雪・凍結の中の運転は怖すぎる……。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • RA協議会参加レポート | JPCOARウェブマガジン

    Report RA協議会参加レポート 市地 七実子 / 髙橋 辰弥 26/2/27 岡山大学 RA協議会、正式にはリサーチ・アドミニストレーション協議会。毎年秋に開催される年次大会ではリサーチ・アドミニストレーション業務に携わる方々が研究支援の最新知見や課題を共有されているとのこと。2025年の第11回年次大会に岡山大学から図書館職員のお二人が参加、ポスター発表をされました。JPCOARとしては、OA(オープンアクセス)やOS(オープンサイエンス)の話題が気になるところですが...。お二人にお話を伺いました。 話し手 : 市地七実子 / 髙橋辰弥 (岡山大学) 聞き手 : JPCOAR広報・作業部会:大園(岡山大学)/ 中谷(鳥取大学)/ 村木(北海道大学) 1. なぜ図書館職員がRA協議会年次大会へ? JPCOAR(以下J)| RA協議会というと、大学からは主にURAが参加するものというイメージですが、今回、図書館職員としてRA協議会年次大会(以下、年次大会)に参加された経緯をお聞かせください。 市地(以下I)| 岡山大学では、昨年度実施されたオープンアクセス加速化事業において、図書館とURA協働による研究支援の取り組みが進みました。図書館に配属されているURAから、その成果を年次大会で発表してはどうかと提案をいただきました。さらに、図書館とは異なる職種のイベントに参加することで図書館職員の役割や業務を客観的に見つめ直す良い機会になるだろうという上層部の考えもあり、参加が決定しました。 J| 岡山大学では 図書館にURAの方がいらっしゃるのですか? 髙橋(以下T)| 岡山大学はOA関連の経費でURAを一名雇用しています。主に図書館と連携したオープンサイエンス推進に関わる業務を行っていただいて、現在は1週間のうち2日を図書館で勤務しています。 J| 年次大会はどのような雰囲気なのでしょう。図書館で言うと図書館総合展のようなイメージでしょうか? I| はい、毎年参加して情報共有する場なのではと思います。岡山大学のURAは昨年も参加していました。参加されていたURAの方々は、知的探求心に溢れた方が多かったです。ポスター発表の際、図書館という異なる畑からの参加なので質問はあまり来ないのではと心配していましたが、実際にはこちらが想定していたよりも多くの質問が飛び交いました。全体を通して、熱意を持って活発に議論されている場という印象を受けました。 2. ポスター発表 : URAとの協働 J| ポスターは二つ[1][2]発表されたのですよね?会場での反応についてお聞かせください。 T| はい、一つは岡山大学のOA支援に関するポスターです。岡山大学では、2023年から転換契約を導入しました。また、2024年の即時OA義務化への対応として転換契約を拡大し、転換契約でカバーしきれないものについてはAPC支援、さらにAPC支援が適用されないものについてはリポジトリ登録支援、という三つの支援を行っており、これらの取り組みを紹介しました。発表の目玉はURAと共同で作成した「オープンアクセス支援制度マッチングツール」で、投稿先の出版社やジャーナルランク等の質問に回答していくと研究者がどの支援を利用できるかを簡単に判断できるというものです。 J| URAとの共同作業は、主にマッチングツールの作成に関わる部分だったのでしょうか。 T| URAとは転換契約の選定やAPC支援制度の設計段階から共同で取り組んできました。例えば、研究成果のインパクトを向上させるにはどの出版社と転換契約を結んだらよいか、どのジャーナルにAPC支援するのが適切かなど、URAが分析した上で決めています。支援制度が少し複雑になってきたので、わかりやすくする仕掛けがあったらいいね、ということで作成したのがマッチングツールです。今回のポスターでは、オープンアクセス加速化事業の部分だけではなく、図書館にURAが関わった上でどういう支援を行ってきたのか、ということを発表させていただきました。 J| どのような反応があったのでしょうか? T| APC支援については、支援額の決め方、転換契約については、契約の進め方や著者負担金の決め方といった具体的な仕組みに関する質問を受けました。URAと図書館の連携事例として関心を持っていただけたかと思います。 J |もう一方のポスターについてはいかがでしたか? I| もう一つは、人文研究支援を目的とした資料のデジタル化に関する内容で、昨年度のオープンアクセス加速化事業で図書館に新設した電子化スタジオの取り組みを紹介しました。このスタジオでは、研究者による電子化と図書館職員による電子化とを想定しています。前者は研究者自身が管理する資料のデジタル化を支援するもので、他者の権利侵害の恐れがない資料を対象としています。後者では図書館が所蔵する貴重資料のデジタル化を進め、IIIF対応のアーカイブで公開予定です。最終的には、JAPAN SEARCHとの連携やメタデータの共通化を進め、研究支援に繋げることを目指しています。発表は、図書館はデジタルヒューマニティーズの文脈で電子化を通した研究支援に力を入れています、ということをURAの方々にアピールする目的もありました。 J |反響はあったのでしょうか? I| 研究者自身がデジタル化できるのがよい、という肯定的な感想がありました。図書館と研究者で求めるデジタル化の質が異なる場合があり、研究者自身がこだわりを持って作業できる点を評価されたようです。一方で、研究者は忙しいのに自分で作業するのかという指摘や、学外利用の可能性に関する質問もありました。また、単にスキャンして電子化するだけでなくメタデータを付与しなければいけない、その作業にAIを活用すべきという意見も出ました。これは図書館配属のURAの方からの意見でした。 T| わたしたちの他には、直接OAやOSをテーマとしているポスター発表はなかったと思いますが、セッションではOSに関するものがありました。 ポスター発表 3. セッションに参加して J |OSに関するものとして、どのようなセッションがありましたか? T| セッション「データスチュワードが切り開く研究の新境地」がOSやJPCOARに関連が深そうかと思いました。初めて知ったのですが、「データスチュワード(Data Steward)」という、研究データ管理(Research Data Management : RDM)やOS推進を目指してデータの収集・管理の面で研究者を支援する職種があるそうで。ヨーロッパではすでに配置されている大学がいくつかあるということで、データスチュワード先進国のオランダで実際に働いている方が発表されていました。 J| データスチュワードは図書館職員や研究者ではないのでしょうか。データ管理は分野ごとに異なるかと思いますが、データスチュワードには分野による専門などあるのでしょうか、それとも、分野を横断して業務をされているのでしょうか? T| 図書館職員や研究者とは別で、RDMに特化した新しい職種ですね。立場としては日本におけるURAと似ているかと思います。発表事例では分野横断的にデータ管理をされているようでした。日本ではまだデータスチュワードの雇用がなく、RDM支援がまだ制度として必須化されていない状況もあって、あまり浸透していないという話もありました。今後、日本でRDM支援が必須化された際に必ず出てくる職業なのかなと思いました。中小規模大学でURAがデータスチュワードの役割を担う必要が出てくる可能性についての懸念がある一方、そのことに前向きなコメントなども寄せられていました。 J| セッションのタイトルにある「新境地」とはどういったことでしょう。 T| RDM支援の専門職を紹介しつつ国内でそれを広げていくにはどうすればいいのかという話もあったので、「新境地」という言葉で目指すところは、国内でRDM支援をしっかり行っていくことに伴って、データスチュワードの存在が知れ渡って表に出てくるような状況になるのかなと思います。個人的な感想になりますが、データスチュワードの役割については、RDM支援をすべて任せるのではなく、リーダーシップを取ったり全体のハブになったりしてもらうとよいのかなと想像しました。 J| RDM支援をどうするかという問題意識がURAにもあるのですね。それでは実際に誰が支援を行うのかという課題に繋がるかと思うのですが、そのあたりの話はありましたか? I| 「「結局誰が何をやる?研究データ管理支援」を 議論の場はどこなのか?」という「イエス・ノー」の札を用いた会場参加型のディスカッションがありました。テーマごとに札をあげて、少数派の方に積極的に意見を聞くというような流れでした。「RDMの主体は基本的に研究者自身だと思うか?」というテーマでは約7割が「イエス(研究者自身)」で、「ノー」と答えた大学からは、既にデータ管理を担う部署があるためという意見が出ました。「当該機関のRDM・公開支援体制は万全だ」では、「イエス(万全)」との回答は3%くらいで、多くが「ノー(構築中)」でした。「イエス」と回答していた大学からは、URAと共同で研究者が管理しやすいシステムを構築し、運用が軌道に乗っている事例が挙げられました。「支援体制構築に学内連携は不可欠だ」では、9割以上が「イエス」と回答していて、図書館・研究推進部門・情報部門との連携がメインという事例が紹介されていました。 J| 誰がやるかについて結論は示されたのでしょうか。 I| 結論は出されず、議論を通して最適な地点を探ることが目的だったのではと思います。個人的には、単独の部署で行うことは難しいと感じました。 T| 各大学の事例などを聞きながら、それぞれの部署が強みをもっていることが会場全体で共有され、学内で連携してRDM支援を進めていくことが大事だよねという雰囲気になっていました。 セッション会場 J| 参加者が多かったり、印象に残っているセッションはありますか。 I| RDMに関するセッションは参加者が多くて、URAの方も関心が高いなと感じました。他には、事務職員出身のURAのセッション会場が埋まっていたなという印象です。 J| 「立ち上がれ!ジム(事務)~URAの多様性を考える~」ですね。どのような内容だったのですか。 T| URAは民間とか研究者とか色々な出身の方がいらっしゃるんですが、事務職員出身という方々もいて。そのURA3名で事務職員出身の強みと弱みについて議論するという内容でした。強味としては学内のルールに詳しいこと・異動を通じて得た豊富な経験があること、弱みとしては博士号を持つ研究職出身者などと比べて専門性が低いことが挙げられていました。登壇者の事例として、事務職員が2年間事務系URAとして現場を経験する研修プログラムも紹介されていて、おもしろいなと感じました。 4. 年次大会で見えた課題:URAからのヒント J| 今回の年次大会への参加を通して、OAやOS、RDMの支援におけるURAとの連携などについて気づいたことはあったでしょうか? T| OAは図書館が担当するイメージなのか、あまり話題にあがっていない印象でした。RDM支援やOSについてはURAの方々も問題意識は持っているものの、具体的に誰が、何を、どう進めていくのかという体制や役割分担については、まだ固まっていないと感じられました。 I| ポスター発表でお会いしたURAの方から、図書館は研究者へのアプローチが上手くないなどの耳の痛いご指摘がありました。例えば、研究者に対してCCライセンスの説明をする際「広く再利用される上に、許可のやり取りの手間も減る」といった研究者目線のメリットを伝えればよいのにできていない、などですね。こういったことはやはり言われないと分からないので、指摘していただいたり、URAと図書館の協働や、あるいはURAの方に研究者との交渉をお任せするなど、いろいろ交えながらやっていかなきゃいけないと思いました。 T| 岡山大学ではURAが週2日図書館勤務しているので、そういった視点も入ってきているかな、と思います。今回の年次大会参加の提案もそうですが、生成AIを利用した文献検索の講習会を図書館で実施したり、図書館職員が研究室のメンバーとなって研究データ管理の実務に触れてみてはどうですか?と提案したり、前例にとらわれずに自由に考える人なので、その自由さが図書館職員にもいい影響を与えていると思います。 J| 今回、お二人は別の職種のイベントに参加して、さまざまな気づきがあったのですね。今後に向けてのヒントなどは見つかったでしょうか。他の図書館職員に伝えたいことはありますか? I| やはりURAの方を見て感じたのは多様性があるなと。民間出身の方、研究者出身の方、事務出身の方とか、多様性があることに強みがあると思います。URAの方と協働するのも大事ですし、幅広い経歴の方が図書館の職員になったり図書館から違う部署を経験するようなキャリア環境の整備も考えていかなきゃいけないのかな、ミックスしていかないと変わっていかないのかなと思いました。 T| 多様性が図書館には不足しているポイントかなっていうのは本当に感じました。今回、参加して図書館にはなかった視点を共有することができたので、良い経験となりました。幸いと言っては何ですが、岡山大学図書館では組織改編があり、2025年10月から地域連携などを担うグループが図書館の中に加わりいろいろな方々と一緒に仕事をするので、多様性が広がる状況になっています。 5. 参加の意義と今後の展望 J| 来年以降も年次大会に参加したいと思われますか?また、どのような方に参加をおすすめされますか? I| 情報収集という意味でも、ぜひまた参加したいです。URAは多様な経歴の方がそれぞれの専門分野を活かして業務を進めており、図書館とは別の職種の視点に触れることができたのが新鮮でした。ただ、現在私は利用者サービスを担当していて、研究支援については理解しきれないところがあったと思うので、OS関係の業務を担当されている方が行ったら理解が進むのかなというのが正直ありました。色々理解した上で参加したいなっていうのはすごくあります。 T| 転換契約を担当している方もいいですよね。でも、その人たち以外だったら得るものがないっていうことはなくて。URAがどのような方々で、どのような業務をされていて、どのようなことを気にされているかもセッションを通じて学べるので、参加はとても良いと思います。今回はポスター発表があっての参加で、図書館総合展のように誰でも参加できるイベントではないようなのですが、そのハードルを越えても参加の意義はありましたし、今後も機会があれば参加したいなと感じています。 [1]一つめのポスター研究者とURA・図書館が築くオープンアクセス:岡山大学図書館の研究支援事例 https://www.lib.okayama-u.ac.jp/documents/20251021_RA2025_OA.pdf [2]二つめのポスター岡山大学図書館における人文系研究データデジタル化支援:OS時代に向けて図書館ができる研究支援業務 https://www.lib.okayama-u.ac.jp/documents/20251021_RA2025_denden.pdf 話し手 : 市地七実子 (岡山大学附属図書館) 広島県出身。2014年岡山大学入職。ILL、リテラシー、電子ジャーナル契約担当を経て、2021年から2年間、文部科学省行政実務研修で文化庁著作権課に勤務。2023年からサービスを担当。 話し手 : 髙橋辰弥 (岡山大学附属図書館) 徳島県徳島市出身。2023年岡山大学入職。サービス一筋3年目ですが、ひょんなことから参加が叶い光栄です。はじめてのポスター発表は上手くいかず落ち込みましたが、からし蓮根をたべて復活し、良い思い出になりました。次回は横浜で開催のようで、日本のほぼ真ん中で行きやすい!来年はみなさまもぜひ会場へ…   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 「国内博士論文の収集」の舞台裏!〜国立国会図書館インタビュー | JPCOARウェブマガジン

    「博士論文インターネット公表」の現在地 3(終) Series 「博士論文インターネット公表」の現在地 3(終) 「国内博士論文の収集」の舞台裏!〜国立国会図書館インタビュー 植山 廣紀 24/10/29 岡山大学 はじめに  前回の記事では、機関リポジトリで博士論文を登録する際に確認が必要なポイントについてまとめました。博士論文をリポジトリに登録した後は、IRDBを経由してCiNiiや国立国会図書館とデータ連携が行われる、というところまでを追いました。  博士論文がリポジトリに登録された後、IRDBを通して自動的にメタデータが連携されることになりますが、連携先ではどのような業務が行われているのでしょうか?  今回は、博士論文の網羅的な収集を行なっている国立国会図書館の担当者に書面インタビューを行いましたので、その模様をお届けします。   話し手:国立国会図書館関西館電子図書館課 博士論文担当  聞き手:植山 廣紀 国立国会図書館関西館外観 出典:国立国会図書館ウェブサイト( https://www.ndl.go.jp/jp/kansai/about/index.html ) -国立国会図書館における博士論文収集の歴史について、概要を教えてください。 ▼国立国会図書館は、学術研究成果の公開・利用の促進に資するため、博士論文を重要なコレクションと位置付け、網羅的に収集しています。  昭和10(1935)年に、当館の前身の一つである帝国図書館に、文部省(当時)が保管していた博士論文が移管されました。以降、帝国図書館が当館に引き継がれてからも同様に、文部省に送付された博士論文の移管を受ける形で収集してきました。そして、文部省大学局長通知「博士の学位授与に関する報告等について」(昭和50年文大大第150号)により、昭和50(1975)年度以後は、学位授与大学等から直接、博士論文の送付を受けてきました。  平成25(2013)年3月11日に学位規則(昭和28年文部省令第9号)が改正され、同年4月1日から施行されたことに伴い、博士論文がインターネットの利用により公表されることになったため、機関リポジトリからの自動収集又は学位授与機関からの送付により電子形態の博士論文を収集するようになり、現在に至ります。  詳細は、以下の国立国会図書館Webサイト等をご覧ください。 ◆国内博士論文の収集 https://www.ndl.go.jp/jp/collect/hakuron/index.html ◆外垣豊重「博士論文の収集とその経緯について」(『国立国会図書館月報』 205 号(1978年4月)) https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1151907 ◆リサーチ・ナビ>博士論文 https://ndlsearch.ndl.go.jp/rnavi/kansai-kan/post_100044 ◆遠隔研修>日本の博士論文の調べ方 https://www.ndl.go.jp/jp/library/training/remote/phd.html -博士論文の収集状況について教えてください。 ▼令和6(2024)年3月末時点で、冊子体の博士論文を約60万点、電子形態の博士論文を約12万点所蔵しています。また、冊子体の博士論文は、当館で順次デジタル化を実施しています。令和6年7月末時点では、昭和62(1987)年度から平成12(2000)年度に送付を受けた冊子体の博士論文約18万点のデジタル化が完了し、 国立国会図書館デジタルコレクション (以下、デジコレ)で提供しています。このうち、インターネット公開資料約1万点、図書館・個人送信資料(※)約14万点については、当館に来館せずに本文画像を閲覧することが可能です。一方、電子形態で収集した博士論文は全てデジコレに収録しており、基本的には国立国会図書館の施設内での閲覧に供しています。 ※インターネットに公開していないデジタル化資料のうち、絶版等の理由で入手困難な資料については、図書館向けデジタル化資料送信サービス(図書館送信)及び個人向けデジタル化資料送信サービス(個人送信)で提供しています。博士論文でも図書館送信・個人送信での利用が可能なものもあります。 -博士論文のインターネット公表に至った理由の一つに、学位論文の利用ニーズが高いことが挙げられますが、インターネット公表の開始以降、国立国会図書館での利用傾向に変化はありましたか。 ▼博士論文の利用傾向の変化がわかる統計は採取しておらず、具体的な数値をお示しすることができません。ただ、冊子体の時は関西館に来館するか東京本館に取り寄せないと利用できなかった博士論文が、インターネット公表やデジタル化により簡便に閲覧できるようになったことで、利用者がアクセスしやすくなったということは言えると思います。 -大学等においては、博士論文を機関リポジトリに公表し、IRDBのデータ連携を確認するまでを行っています。IRDBにデータが連携された後、データはどのような形で連携されていますか。例えば、システム上で確認ができるようになっているのでしょうか。 ▼博士論文のデータ連携(当館視点では自動収集。大学側視点では自動提出)は、IRDB、国立国会図書館サーチ(以下、NDLサーチ)及びデジコレ間でのシステム連携により実現しています。  機関リポジトリからIRDBへ連携されたメタデータは、博士論文に限定しない全件をNDLサーチが収集しています。これによりNDLサーチでは、機関リポジトリに収録された各種学術成果の検索が可能となっています。博士論文の自動収集は、NDLサーチがIRDBから収集したメタデータのうち、自動収集の条件[1]に合致する博士論文のメタデータをデジコレに取り込むことにより行います。デジコレでは、メタデータに記述されたURIを用いて機関リポジトリから博士論文の全文ファイルを取得し、メタデータとファイルをセットで登録しています。デジコレに登録された博士論文は、職員がシステム上で確認をした後、公開します。 管理画面(国立国会図書館提供)  このように、システム連携経路の整理・効率化の観点から、機関リポジトリとデジコレが直接連携するのではなく、アグリゲーターであるIRDBやNDLサーチを経由して連携しています。  自動収集の状況を確認したい場合は、デジコレで検索してみてください。IRDBへ連携済みの博士論文がデジコレで見つからず、収集状況の確認をご希望の場合は、個別にお問合せください。 [1]“データ連携 - 国立国会図書館”. 学術機関リポジトリデータベースサポート. https://support.irdb.nii.ac.jp/ja/harvest/jpcoar/dataprovide_ndl , (参照 2024-09-18). 国立国会図書館による博士論文の自動収集(イメージ)出典:国立国会図書館ウェブサイト   ( https://www.ndl.go.jp/jp/collect/hakuron/index.html ) -自動収集された博士論文の内容のチェックはどのようにされているのでしょうか? ▼収集したメタデータをもとに、当館の収集対象ではない、全文ファイルを持たないデータが含まれていないかを確認しています。加えて、全文ファイルについては、メタデータと全文ファイルのタイトル・著者等が対応しているか(大きな齟齬がないか)、利用提供に支障がないか(ファイルの閲覧・印刷可否、大部分の図の欠落・文字化け等)を確認しています。機械的な処理と、人力による作業があり、一部は外部委託作業により行っています。  確認の結果、正しい全文ファイルが収集されたのかを当館側で判別することが困難である場合や、電子ファイルに不備がある場合には、各学位授与機関へ確認・修正を依頼しています。 -カレントアウェアネス「 国立国会図書館による博士論文収集の現況と課題 」 では博士論文の未収集・誤収集の原因が触れられています。これに関連して「未収集の原因」についてお伺いします。カレントアウェアネスは2017年現在のものですが、それから現在までにJPCOARスキーマ対応をはじめ、大学側でも状況が一部で変わりました。2024年現在、「未収集の原因」として大学図書館が注意したほうが良いことは何でしょうか? ▼「未収集の原因」についての分析には至っていませんが、IRDBへ連携されたメタデータのうち、所定の条件を満たしているものが当館へ自動収集されますので、IRDBのご案内[3] [4]に沿ってメタデータを記述いただくことで未収集となってしまうケースが減ると考えられます。ご協力いただけますと幸いです。  また、機関リポジトリのシステムリニューアルなど、大きな変更が生じたタイミングで、博士論文の自動収集が途切れてしまうケースがあります。機関リポジトリ全体に係る変更が発生した際には、博士論文のメタデータが正しく移行・設定されているか、改めてご確認ください。 [3]“データ連携 - 国立国会図書館”. 学術機関リポジトリデータベースサポート. https://support.irdb.nii.ac.jp/ja/harvest/jpcoar/dataprovide_ndl , (参照 2024-09-18). [4]“データ連携 - 国立国会図書館”. 学術機関リポジトリデータベースサポート. https://support.irdb.nii.ac.jp/ja/harvest/junii2/dataprovide_ndl , (参照 2024-09-18). -メタデータの入力の際に気を付けてほしいポイントやよくある誤りと、どのようにすれば改善できるか、教えてください。 ▼ご注意いただきたいポイントや、よくある誤りは以下のとおりです。 【メタデータ】 ○メタデータフォーマットが「JPCOARスキーマ」の場合 資源タイプ(dc:type)は“doctoral thesis”か。 →“thesis”等、別の値が設定されていることがあります。 本文URL(jpcoar:file/jpcoar:URI)にobjectType属性=“fulltext”が設定されているか。 →設定が漏れていることがあります。また、要旨や要約に対して、“fulltext”が設定されているケースもあります。 全文ファイルがインターネット公開されており、アクセス権(dcterms:accessRights)は“open access”か。 →設定が漏れていることがあります。また、全文ファイルがインターネット公開されていない場合に、“open access”が設定されていることもあります。 ○メタデータフォーマットが「junii2」の場合 著者版フラグ(textversion)に“ETD”が設定されているか。 →設定が漏れていることがあります。また、全文ファイルを公開していないアイテムに対し、“ETD”が設定されているケースもあります。 学位授与番号 (grantid)が「科研費機関番号(5桁)+ [甲|乙|*]+第*+報告番号+号」(*は0字以上の任意の文字列、+は文字列の連結)の形式になっているか(例:12345甲第123456号)。 →異なる形式で記述されている、または科研費機関番号が記載されていないことがあります。    なお、IRDBのご案内によると、メタデータが正しく条件を満たしている場合、IRDBのマイコンテンツの一覧表示「OAI連携先種別」に「ndl」が表示される仕様とのことです。IRDBの連携結果を定期的にご確認いただきますと、メタデータの入力誤りに気が付きやすくなると思われます。 【コンテンツファイル】 全文ファイルが登録されているか(要旨等でないか)。 電子ファイルにデータ破損が生じていないか。 メタデータと全文ファイルの組み合わせが、誤りなく登録されているか。 全文ファイルに印刷制限がかけられていないか。  また、メタデータの入力に関することではなく、機関リポジトリをリニューアル等される際の移行仕様やシステムの設定に起因する事象かと思いますが、ご協力いただきたいポイントがあります。  機関リポジトリのリニューアルにより、連携されるメタデータの更新のキーに用いる識別子(OAI-PMHのidentifier)が変更されるケースがあるようです。更新のキーが変更された場合、当館が収集済みのメタデータに対し、以降の更新情報が正しく反映されません。システムリニューアルにおいては様々な制約があるかと思いますが、可能な範囲で更新のキーとなる識別子を維持するようご協力をお願いします。 -収集の漏れは、国立国会図書館側では調査・把握されているのでしょうか。それとも、大学側に任されているのでしょうか。 ▼各学位授与機関には、文部科学大臣に提出する学位授与報告書[5]の写しを当館へお送りいただくようお願いしていますが、一部送付漏れが生じています。また、当館にはExcel形式で送付いただくようお願いしていますが、機関ごとにExcelの書式が異なり、報告番号等の記載内容に表記ゆれがある場合もあります。このような事情で学位授与状況の全容把握が困難であるため、調査の着手には至っていません。  学位授与報告書は、当館において収集漏れを確認するためにも必要なものだと考えていますので、記載内容に誤りがないようにご注意いただき、引き続き、当館への送付にもご協力をお願いします。  また、網羅的な収集を達成するため、各機関のお手間が少ない納入方法として自動収集をご活用いただきつつ、学位授与日から1年以内のインターネット公表が困難な博士論文(学位規則第9条第2項)については、当館が提供する送信システムを利用して、メタデータ及び全文ファイルの納入をお願いします。送信システムのご利用には、ID及びパスワード(機関ごとに発行)が必要となります。ID、パスワードの発行を希望される場合は、ご連絡ください。 [5]編注:学位授与報告書の提出方法と様式は、以下に掲載されています。 (別添2)学位規則の一部を改正する省令の施行等について(通知) https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakuin/detail/1332305.htm 文部科学省Webサイト トップ > 教育 > 大学・大学院、専門教育 > 大学院教育について > 学位規則(昭和28年文部省令第9号) https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/daigakuin/detail/mext_02402.html -最後に、博士論文のインターネット公表を担っている大学図書館のリポジトリ担当に一言、お願いします! ▼当館では、博士論文が印刷公表されていた時代から長きにわたり、学位授与機関のご協力により、博士論文を網羅的に収集・保存してきました。インターネット公表されるようになってからは、各学位授与機関において機関リポジトリを維持いただき、また、所定の記述ルールに則ってメタデータを入力いただくことで、自動収集という効率的な収集を実現・維持することができています。まず、ご協力に深く感謝いたします。  今回はお願いごとばかりを並べてしまいましたが、博士論文の網羅的収集と長期保存、オープンアクセス推進のため、引き続き適切な納入にご協力をお願いします。博士論文の納入に関してお困りの事柄や不明点は、お気軽にご相談ください。  今回のインタビューが、読者の皆様の日々の業務の参考となりましたら幸いです。 (取材を終えて)    博士論文のインターネット収集は、IRDBを通して自動的に連携される点で効率的ではありますが、リポジトリ担当者が気を付けなければいけないポイントが少なくないことがわかりました。私も誤って図版のみのファイルを全文として公表してしまったことがあり、これについてご指摘をいただいて修正したことがありました。気を付けなければならないと思う一方で、細やかなチェックをいただいており大変ありがたいと感じました。  国立国会図書館の担当者様、インタビューへのご協力をいただきありがとうございました。改めましてこの場でもお礼申しあげます。そして、今後もよろしくお願いいたします。 シリーズ「博士論文インターネット公表」の現在地  第1話   「博士論文の公表」を振り返る  第2話  やってみよう! 博士論文のリポジトリ登録  第3話  「国内博士論文の収集」の舞台裏!〜国立国会図書館インタビュー 文:植山 廣紀(岡山大学) 兵庫県西播磨の出身。小学生のときの職業体験をきっかけに図書館の仕事に興味をもちました。点字図書館での勤務を経て、2020年~岡山大学に入職。これまで目録→機関リポジトリの管理・システム→雑誌受入→図書・和雑誌の支払などを担当。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

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    JPCOARウェブマガジンがめざすもの 1 キャッチコピー 「オープンアクセスで世界を幸せにするウェブマガジン」 2 ミッション 「オープンアクセスが広がることで、世界はきっと幸せになる」という信念のもと、オープンアクセスリポジトリ(以下、リポジトリという)に携わる人々や学術情報流通に関わるすべての人々を応援するメディアになる。 3 ターゲット オープンアクセスや学術情報流通に関する先進的・実践的な情報をわかりやすく編集し、JPCOAR会員および学術情報流通に関わる人々にとって、有益かつ励みとなる記事づくりをめざす。ただし、先進的な記事であっても、誰もがわかりやすい記事づくりを意識する。 4 姿勢 ① 個人的な思いが込められた記事づくりを心がけること(ウェブマガジンを通じて、会員機関や関係する人々に伝えたいメッセージがある)。 ② リポジトリ業務の初任者やリポジトリ業務に携わっていない読者層をも意識し、わかりやすい記事づくりを心がけること。 ③ リポジトリに携わる現場の人々が、業務の励みとなるような記事づくりを心がけること。 ④ オープンアクセスの意義や、リポジトリが社会や世界とつながっていることが実感できるような記事づくりを心がけること。 ※ 編集室(広報・普及作業部会)の姿勢 ⑤ 成長していくウェブマガジンを目指し、変化を面白がる気概をもつこと。 ⑥ Must(でなければならない)やShould(べき)ではなく、Can(できる)やMay(かも)で企画を語れる空気の醸成に努めること。 ⑦ 編集室がそこに属するメンバーにとって、仕事として意味があり、楽しく、やりがいのある場として機能すること。

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    2023年2月1日制定 2025年12月11日改定 オープンアクセスリポジトリ推進協会運営委員会 JPCOARウェブマガジン 刊行要領 1.趣旨 JPCOAR は、会員および学術情報流通に関わる全ての者が対話・交流する場として、オープンアクセスや学術情報流通に関する先進的かつ実践的な情報等を発信する、JPCOARウェブマガジン(以下、「本誌」とする)を刊行する。 2.編集・刊行 (1)本誌の編集・刊行は広報・普及作業部会に設置する編集室(以下、「編集室」とする)が担当する。編集室が年度ごとに企画内容を検討し、運営委員会に承認を得ることとする。 (2)編集室は企画内容に従い、以下の者に記事の執筆を依頼する。 ・JPCOAR 運営委員会委員・作業部会員 ・JPCOAR 会員機関関係者 ・上記の者以外の、編集室及び運営委員会が依頼を適当とした者。 なお、記事の執筆は、本誌執筆要項に従うものとする。 (3)公開にあたっては編集室で確認したのち、運営委員会の承認を経るものとする。 (4)本誌は各記事をオンラインで配信するほか、JPCOAR の機関リポジトリでDOIを付したうえで保存・公開する。 3.記事の内容 本誌で取り扱う記事の内容は以下のとおりとする。 (1)機関リポジトリやオープンアクセス、オープンサイエンスに関する情報 (2)JPCOAR 及び関連団体が主催するイベントに関する情報 (3)JPCOAR の作業部会等の活動報告・紹介 (4)会員の事例報告 (5)その他、学術情報流通に関する情報全般 4.著作権と公開ライセンス 本誌に掲載される記事の著作権は著者に帰属する。ただし、本誌の記事は原則、オープンアクセスとし、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス「CC-BY(表示)」の下で刊行する。 5.記事内容の責任の所在と取り下げについて (1) 記事内容については執筆者が責任を負うこととする。万一、記事内容が第三者の権利を侵害した場合や適法性や正確性に疑義が生じた場合は、運営委員会了承の元、編集室から執筆者に連絡を取り、以後の対応を委ねることとする。 (2) 連絡がつかない場合や対応に緊急を要する場合等、運営委員会が認める場合は、執筆者の了解を経ずに取り下げ等の処置を取ることとする。 (3) 記事の公開後は、執筆者からの申し出による記事の修正・取り下げは原則行わない(内容の変更を伴わない軽微な修正や誤字等の修正、必要な追記等を除く)。ただし、第三者の権利侵害が生じているなど特段の事情がある場合は、必要な理由を付して編集室に申し出る。申し出について運営委員会が認める場合は、取り下げ等の処置を取ることとする。 6.CoCOAR:JPCOAR Newsletter 本要領の制定に伴い、従来の「CoCOAR:JPCOAR Newsletter」の名称および「JPCOARオンライン情報誌刊行要領」は廃止する。

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