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  • 「このままじゃ、もったいない!」: 学術界の“常識”に挑み続ける、一人の挑戦者の本音。 | JPCOARウェブマガジン

    学術情報流通を支える人々 Series 学術情報流通を支える人々 「このままじゃ、もったいない!」: 学術界の“常識”に挑み続ける、一人の挑戦者の本音。 永井 裕子 25/12/3 ScholAgora 学術の世界には、分厚い壁がある。研究者と社会を隔てる壁。組織と組織の間にそびえる壁。そして、私たちの心の中にある「どうせ専門家じゃないし」という諦めの壁。 その壁を壊し、誰もが知を語り合える「広場(アゴラ)」を作ろうと奮闘する女性がいる。NPO法人「ScholAgora(スカラゴラ)」代表、永井裕子さん。長年のキャリアを通じて第一線で活動する今なお、その情熱は衰えることを知らない。 なぜ彼女は、この長く険しい戦いに身を投じたのか。その原点から、日本の学術界が抱える課題、そして私たちが見るべき未来まで、インタビューにお答えいただいた。永井さんの熱量あふれる言葉の数々をお届けする。 話し手:永井裕子(ScholAgora代表) 聞き手:野中(JPCOAR広報・普及作業部会主査/京都大学)・山岸(JPCOAR広報・普及作業部会/京都大学) すべての始まりは、ある日の「なぜ?」だった ――永井さんのキャリアの原点はどこにあるのでしょうか? もともと大学図書館員でした。アルバイトではありましたが、逐次刊行物を担当していてインパクトファクターの話を聞くこともあったので、ジャーナルの出版ということに大変興味がありました。 そこへ、縁あって動物学会で人を探しているという話があり、事務局長になりました。 ――そこで、大きな衝撃を受けたと。 そうなんです。行ってみたら、そこがなんと、税金(科研費)を使ってジャーナルを出版しているっていうんですから! のけぞるほど驚きました。 当時私は38歳。最初の理事会ではわけもわからず、「これは、国が出版しているジャーナルなんですか?」みたいなことを言っちゃって、それはもう、理事からあれこれと言われてしまいました。「あなた何もわからないのに余計なこと言うな」とか「科研費もわかってないのに」とか言われて。 でも私、本当にわかっていないのはやっぱり先生方なのではないか?と思いました。 科研費が不採択であった年はどうやってジャーナルを出版するのだろうかと不安になりました。 ――その感覚は、どこから来るものだったのでしょう? 税金を払うっていう苦しさをよく知ってるから……。うちは主人が企業のオーナーで、大きな利益を上げて好調な時期もありますが、消費税っていうものは、2年後にその年の支払いを行うのです。2年後に同じだけ儲けがあるかっていうと当然そうはいかない。景気が悪いときは税金を払うために借金をするなんてことも、ありました。 SPARC Japanがスタートして、前職の学会はそれにアプライしたので、私は否応なく取り込まれたわけですが、ここで、税金を使って仕事をしたことが、自分の中の一番大きなモチベーションになってるかもしれない。税金を使って仕事をする責任とは、単に決められたことをミスなく繰り返す「現状維持」のために、ただ正しくあれば良いというのではないと思います。社会からの「未来への投資」だと捉え、常に新しい挑戦をしながら、次の世代のためになる価値を生み出し続けることこそが、本当の責任の果たし方だと私は思います。 それでも、税金で給与を受ける方々のお立場になれば、そんな簡単なものではありませんよ!とおっしゃると思います。違う立場だからこそ、勝手なことを申しているとそれもわかっています。 次の10年後の、次の人たちのために何をするかっていうことを考えるために、税金は投資されているはずなのです。だからずっと先へ先へと思って仕事をしてきました。同じことやってお金もらってやればいい、というような人生は一度も私にはありません。 「ScholAgora」に込めた、広場への願い ――NPO法人の名前を「UniBio Press」から「ScholAgora」に変えたのはなぜですか? 一つは活動を拡大したことです。UniBio Pressでは生物学分野の支援[1]でしたが、ScholAgoraでは全科学分野の支援に活動を拡大しました。それともう一つは、やっぱり「広場に集まって賢者が情報交換をする」という意味を踏まえているということですね。 だから、「Schola(学術)」プラス「Agora(広場)」。 ScolAgoraロゴマーク ――素敵な名前ですが、決まるまでには紆余曲折が? 名前は一緒に仕事をしてくださる方が、考えてくださいました。私は最初、その方がおっしゃる「サイエンスコミュニケーション」をもじって、「エスキャム」という名称が良いと思ったのですが。ネイティブの人に聞いたら、「SCAM(詐欺)」みたいに聞こえるからダメって言われて(笑)。一方「ScholAgoraっていうのはとてもいい」と言われたので、よしこれで行こう、と。 ScholAgoraのメンバーの一人の方は、過去のご自分の経験から大学図書館コミュニティは、学会に対して十分な貢献ができなかった、という葛藤があったようです。だからこそ、所属の枠組みも越えて、日本の学術コミュニケーションを真剣に考える「賢者」たちが集まる場が必要だと考えました。普段は交わることのない、異なる分野の人々が集まり、互いが何を考えているのかを知るための広場です。その必要性は、私自身が図書館の方から「こんなにも感覚が違うのか」と学んだ経験があるからこそ、痛いほどわかるのです。 ――永井さんご自身は、普段どんなお仕事をされているのですか? ふふふ、「全部」と言ってしまうのが一番近いかもしれませんね。よく「手が8本くらいあってやってるみたい」なんて自分でも思うくらい、本当に多岐にわたる仕事をしています。 私の仕事を理解していただくには、まずScholAgoraの前身である「UniBio Press」時代からのお話を少しだけさせてください。 UniBio Pressでの主な仕事は、日本の生物学系の学会が出版する学術雑誌を、パートナーとして支えることでした。例えば、論文を電子化して、海外の有力なプラットフォームである「BioOne」に搭載するためのデータを作成し、送付するといった実務です。その上で、ジャーナルを「購読モデル」で国内外図書館に購読していただく事が基本でした。これだけ?と思えるかもしれませんが、私は契約書を見るのもはじめてという初心者状態でした。そして、そのような私が、いくらBioOneの力を借りるとはいえ、日本の生物系ジャーナルを取りまとめて、世界へ発信するのです。「日本の生物系学会ジャーナルは世界中で読まれ得るか」「各学会はその購読料を得ることができるのか」という責任を、ひとりで背負って立っている、という気分でした。 ScholAgoraになって、その土台の上に、「各組織との連携、協働」と「個人と個人の連携」を図るという、言うは易く、行うは難い活動が加わりました。そのために、新しく、具体的に開始した活動が大きく2つ加わりました。一つは、UniBio時代とは異なる大学図書館との連携です。きっかけは「Unsub」という、大学が購読する電子ジャーナルの契約を見直すためのツールでした。 実際にいくつかの大学で試していただいたのですが、そこで示されたデータは各機関の購読と利用の「実情」を示す興味深いものでした。 私たちのミッションは、多くの方々と学術情報流通を協働して支えることにあります。私と一緒に仕事をしているある方は、Unsubを利用された大学からの様々な相談にご対応くださっています。この仕事で得られるのは月に数千円程度であるにもかかわらずです。その姿勢こそ、私たちの活動の真髄だと思います。その方は、図書館員であった方ですが、その方がおられなければUnsub支援はできませんでした。 もう一つの新しい挑戦は、未来への投資としてのオープンサイエンスの推進です。「OpenAlex」という誰でも無料で使える学術情報のデータベースが、鍵になります。OpenAlexは海外では国レベルのオープンアクセスのモニタリングにも使われており、特にURA(リサーチ・アドミニストレーター)の方々はこのツールの可能性に大変興味を持ってくださっています。彼らや大学図書館、研究者を繋ぐことで、海外の真似ではない日本独自のオープンサイエンスの仕組みを創り上げることができたら、と考えています。 そのほか、 ウェブサイトの更新やセミナーの補助、会計ソフトへの入力といった部分は、それぞれに経験のある方々が、自宅勤務などでしっかりと支えてくれています。ですが、それ以外の業務は基本的にすべて私が担当しますし、連携する方々との仕事にももちろん全部関わっています。 例えば、先日事務所を引っ越したのですが、それは単に物を運ぶだけでは終わりません。法務局での登記手続きに始まり、労働局や税務署といったところへ書類を提出することなどもあります。 それに加えて、今年から大変有能な方が我々の活動に加わってくださいました。その方の力も借りながら、OpenAlexのワークショップを企画したり、図書館総合展の出展準備を進めたりと、未来に向けた活動の仕込みも常に同時進行です。常に1年先を見越したスケジュールを引き、国内外の関係者と対話するのも、私の重要な仕事です。 NPOの代表としての私が、何をしているかと思われるかもしれませんが、実際にはこうした地道で実務的な部分が、仕事の大部分を占めています。 「何をしてくれるの?」ではなく、「一緒に何をしようか」 ――その「広場」は、誰かのためのサービスを提供する場所とは、少し違うのでしょうか? そうです、そこが一番大事な点です。一方的に何かを提供するだけの場所ではありません。まず大前提として、今の研究者の方々は本当に大変なんです。本来の研究や社会との対話よりも、研究費を獲得するための「申請書」を書くこと、多くの論文を書くことに忙殺されている。そのうえに、大学運営に関わらねばならない方も多くおられます。私は、そんな研究者をもっと自由にさせてあげたい。「野原に放ちたい」とさえ思います。 以前、ある学会の方に「ScholAgoraが何をしてくれるかはっきりすれば、学会はお金を出す」と言われたことがあります。でもね、「何をしてくれるか」じゃなくて、「一緒に何をしようか」という関係を、私たちは築きたいのです。 ――まさに、利益を求める企業とは違う、NPOならではのあり方ですね。 そうなんです。でも、日本では「NPOって何かっていうこと」が、まだあまり理解されていないと感じることがあります。 例えば、個人会員になろうとすると「利益相反に なるのではないか 」と心配される方がいます。年会費3,500円、1日10円にも満たない金額で、その方が所属する組織に 、その方に 何か特別な利益 を誘導する、もしくは利益を損なわせる なんてことは、あり得ません。相談した弁護士も「これをどうして利益相反だと思うのか、僕にはどうしてもわからない」と言っていました。ただ、皆様、お立場があるので、ご心配になられるお気持ちはわかります。そして、心配されているのは、ScholAgoraに参加したいというご意志をお持ちであればこそです。 日本では、NPOが「社会の共通の利益(Public Interest)」のために活動する存在だということが、まだ十分に浸透していないからかもしれません。 ――過剰な心配が、かえって連携の壁になっていると。 そう感じます。お互いにWin-Winになることであっても、立場を気にしすぎて踏み込めない。例えば、業者さんと食事もできない、ちょっとしたお土産もダメ、という話もそうですよね。もちろん不正は論外ですが、過剰に萎縮して、人と人として腹を割って話す機会まで失われているとしたら、それは本当にもったいない。 もっと普通の場で、一人の人間として会って話をするってことに、日本はならなきゃいけない。常に自分が「〇〇大学の人間として」「〇〇出版社という立場で」と振る舞うのは、大変じゃないですか。 ――大切なのは、組織の肩書ではなく個人そのものであると。 私は、人の地位といったものに全然興味がありません。ScholAgoraは、個人の集まりでありたい。組織の壁を越えて、「日本の学術コミュニケーションを良くしたい」という同じ思いを持った人たちが、対等な立場で知恵を出し合う。そういう「広場」を、私たちは目指しています。 学会も、図書館も、みんなで繋がる未来へ ――ScholAgoraとして、これからやりたいことは何ですか? 学会との連携、そしてURAとの連携ですね。ただ、ここで一番大事なのは、その連携の「形」なんです。ScholAgoraとどこかの学会が1対1で繋がるだけでは不十分で、その方々がScholAgoraを通じて図書館や研究者と繋がることが大事です。 繰り返しになりますが、ScholAgoraは広場です。「みんな」と繋がらなければ、私たちのミッションは果たせません。 ――「みんな」と繋がる上で、現状の課題はどこにありますか? 一番の課題であり、今一番欠けていると感じるのが、やはり学会との連携です。学会を、この大きな連携の輪の中にどう巻き込んでいけるか。そこが、これからの一番の挑戦ですね。URAの方々とは、OpenAlexという共通の関心事があるので、連携の芽はすでに出ています。多くの方が興味を持ってくださっているので、良い関係を築いていけると感じています。 さあ、あなたも「広場」の主役に ――そうした連携を阻む、見えない「壁」のようなものを感じますか? すごく感じますね。それは「立場」とか「ルール」という名前の、壁かもしれません。 もちろん不正を防ぐルールは大切ですし、遵守すべきことは我々にはそれぞれあります。でもその前に少なくとも、学術情報流通になんらかの形で関わっているのは、自分たちではないかという意識を持つことが大事であり、皆様、おひとりおひとりが主役であるのだと考えます。 ――最後に、この記事を読む人へメッセージをお願いします。 ScholAgoraの活動や会員になることについて、少し受け身になってしまったり、なかなか一歩を踏み出せない方が多いのは、本当にもったいないなと感じています。皆さん、本当は素晴らしい力をお持ちなのです。 だからこそ思うんです。私みたいな人間でも、こうやっていろんなことを考えて、諦めずに動いています。だから、この記事を読んで「自分も何かやってみようかな」と思ってくれる人が一人でも増えたら、それが何よりの希望です。 私たちが作っているのは、完成されたサービスではありません。皆さんと「一緒に何をしようか」と考えるための広場です。この国の学術コミュニケーションの未来を支えるだけでなく、あなた自身の新しい学びにもなる。そんな仲間になってくれることを、心から信じて待っています。 私自身、皆さんから学ぶことばかりです。組織の立場は一旦置いて、一人の人間としてお話がしたい。何か分からないことがあったり、少しでも、我々の活動に興味を持たれたら、どうぞ、いつでもお気軽に声をかけてください。 みなさま、「 夢見つつ深く植えよ 」[2]ですよ。 ▼NPO法人 ScholAgoraの活動に興味を持った方はこちら https://scholagora.smoosy.atlas.jp/ja [1] UniBio Pressについては、こちらのイベント時の永井氏ご発表でも触れられています。 学術情報流通に関する連続セミナー第5回「オープンアクセスと日本の学会誌の展開」(2024年10月11日 研究大学コンソーシアム(RUC)) https://www.ruconsortium.jp/tf/cat2/cat/gakujyutsu_seminar_5.html [2] メイ・サートン. 夢見つつ深く植えよ. みすず書房, 1996, 247p. 話し手:永井裕子(ScholAgora代表) 特定非営利活動法人ScholAgora代表。大学図書館での勤務(逐次刊行物担当)を経て、動物学会事務局長に就任。在職中よりSPARC Japan(国際学術情報流通促進協議会)の活動に深く関与し、日本の学術情報流通とオープンアクセス化を推進する。その後、学術雑誌の出版支援を行うNPO法人UniBioPressを設立。同法人をScholAgoraと改称し、代表として学術コミュニケーションの発展に尽力している。 聞き手:野中雄司(JPCOAR広報・普及作業部会主査/京都大学) 京都大学附属図書館 研究支援課長。2001年北海道大学附属図書館採用、2008年から2010年にかけて北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP)の運用に携わる。その時期のCSI委託事業において、当時、日本動物学会事務局長であった永井氏と「機関リポジトリへの登録が学術文献流通に対して及ぼす効果についての定量的解析のための文献蓄積及びデータ整理」(通称 ZS Project)に取り組む。その後、しばらく機関リポジトリを直接担当する機会がなかったが、京都大学において再び機関リポジトリに携わることになったこともあり、永井氏とも久しぶりに再会。 ※ZS Project 平成21年度CSI委託事業報告交流会(コンテンツ系)【領域2】ポスター発表「ZSプロジェクトに見るOA論文の役割」 https://www.nii.ac.jp/irp/event/2010/debrief/ https://www.nii.ac.jp/irp/event/2010/debrief/pdf/p_hokudai_2-3.pdf 聞き手:山岸瑶果(JPCOAR広報・普及作業部会/京都大学) 2020年4月京都大学に入職。吉田南総合図書館、経済学部図書室を経て、2024年4月から附属図書館にてリポジトリ業務に携わる。業務を通じてオープンアクセスを学び始めた矢先、着任2か月目で参加した国際会議で世界のリポジトリ関係者の熱量に衝撃を受ける。その熱意に触発されて参加した図書館総合展で永井氏の発表に出会い、活動に強く惹かれたことが、本インタビューの原動力となった。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 外国のリポジトリの実像が我々には見えてないような気がする | JPCOARウェブマガジン

    杉田茂樹氏(JPCOAR運営委員会委員長)インタビュー 第2話 Interview 杉田茂樹氏(JPCOAR運営委員会委員長)インタビュー 第2話 外国のリポジトリの実像が我々には見えてないような気がする 杉田 茂樹 / 野中 雄司 24/1/23 京都大学 / 富山大学 杉田茂樹=JPCOAR運営委員長 と 野中雄司=JPCOAR広報・普及作業部会主査 のインタビュー第2話。 機関リポジトリの普及はひとつの達成である一方、出版社の掌の上だということを感じた( 第1話 )-と話す杉田委員長。話題はオープンアクセスの理念・歴史から、大学図書館の役割、国際化へと移っていきます。 利用者ってさぁ、来ないじゃん N|先ほど、科学の進歩に役立つことをするのが大学図書館の仕事だというお話がありました。僕にはちょっと新鮮だったんですけど、それはいつ頃から思っていたのでしょうか。就職前から漠然と思っていたのか、就職して時間が経ってから、そう思ったのか。 S|もちろん後者です(笑)。でも、なんでそんなこと思うようになったんだろうね。 N|いつ頃からですか。 S|わかんない(笑)。なんだろう、利用者のため利用者のためって、みんなが言うのが理解できなかったんだよね。利用者ってさ、来ないじゃん。学生、何千人もいるけど、その何割かしか図書館に来ない。 N|確かにそうですね。 S|昔は雑誌の最新号が出るたびに、教員はその目次を見に図書館に来てたけど、今ほとんど来ないじゃない。で、たまたま図書館に入館してくれる、一部の人だけをえこひいきしてちゃダメだと思ったんだよね。だから、「図書館は来館利用者のためにあるのではない」というふうに考えたわけだけど、じゃあ何のためにあるのかというと、構成員みんなのためにあるんだと。そうやってターゲットを広げていくと、究極的には大学というのは科学の進歩のためにあるんだな、だから我々は科学の進歩のための仕事をしなければいけないのだなと、まあ半ば無理矢理やりこじつけていったんだと思います(笑)。 N|なるほど。で、科学の進歩によって、世界平和や人類の幸福に向かうと。 S|はい。 N|でも、世界平和への道のりは長いというか永遠というか。知識へのアクセスの自由を求めるオープンアクセスはそれを保障するための基本的な大事なことかなと思うのですが、なかなかうまくいかないところもありますね。 杉田茂樹氏 N|そういえば、本日記録をとってくれている兵庫教育大学(JPCOAR広報・普及作業部会)の永井さんが、以前戦争とオープンアクセスとを関連付けて話していたことがありました。これまでオープンアクセスの仕事は商業主義への対抗とだけ捉えていたけど、戦争とか民主主義を脅かす力への対抗という、別の大きな物語があることに気づかされたと。そのきっかけになったのが、岡部先生、佐藤先生、逸村先生が書かれたBOAIの思想的背景についての論文[1]だったそうです。このなかで思想的背景として紹介されている本[2]、えっと、なんてタイトルか忘れてしまいましたが(笑)、その本は当時のナチス・ドイツとソ連の「全体主義」に向けて書かれたものだったそうです。正直何言っているのか半分わからなかったけど(笑)、そんな思想的背景もあるんだなぁ、と思ってしまいました。 N(永井)|『開かれた社会とその敵』です。去年、岩波文庫から新訳が出ました。 S|そうだね。ただ、それとは反対の議論もあってね。反対というか、ちょっと別の観点だけど、昔、オープンアクセスはコミュニズムであるという論もありました。自由に研究者が研究をして、自由に投稿先を選んで、というのではなく、出来上がった研究成果をパブリックなところでみんなの共有物にするというのは「科学の共産主義化」であるというふうな批判があった。オープンアクセスの歴史の、もう一番最初の頃ね。 N|共産主義(全体主義)に対抗する手段としてのオープンアクセスという見方がある一方で、オープンアクセスが共産主義そのものであるという意見もある。難しいですね。 S|一方、そのあと研究助成機関がジャーナル出版に手を染めるケースも出てきて、「それって国家社会主義の民業圧迫なんじゃないの?」と、当時Research Works Act法案[3]を推していたエルゼビアこそ自由主義陣営の旗手だ!と応援したい気持ちにもなったね。 Daniel Mietchen, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons N|なるほど。 S|ほら、また硬くなってきた(笑)。 N|話題を変えましょうか(笑)。 大本営発表ばっかりなんだよ、お互い。 N|杉田さんはかつてCOAR(国際オープンアクセスリポジトリ連合)の副議長を務められていましたよね。国際的な視野から、JPCOARについて思われるところはありますか。 S|外国のリポジトリの実像が我々には本当には見えてないような気がする。というのはね、“大本営発表”ばっかりなんだよ、お互い。こんな検討報告書が出ましたとか、こんな政策が出ましたとか、そういうニュースで我々は外国の動きを知るだけで、本当に一人一人のリポジトリ担当者が何を考えて、どんな毎日を送っているかというのを僕らは見えてないので、どこそこが面白いことをやってるとか、ここは真似するべきだとかいうことを知れてない気がするんだよね。もっともっと外国に出ていって、向こうの生身のリポジトリ・マネージャーと話をすべきだと思うし、交流すべきだと思います。ユネスコがこう言いましたとか、そんなの聞いてても、本当にどうやってるか分からないんじゃないかな、って思うんだよね。 N|海外のリポジトリ担当者との往復書簡みたいな記事コンテンツとか面白いかもしれませんね。 S|あー、そういうのできるといいね。でも、それも大本営発表になっちゃうかな…。 N|僕、語学ダメなんですけど、やっぱり語学できる人にどんどん出て行ってもらいたいですよね。僕も海外出張の経験はありますけど、まあはっきり言って、“ガキの使い”で話を聞いてくるだけだったり、せいぜい事前に作っていったプレゼンを喋るくらい。でもやっぱり、意思決定の場で意見を言うということが絶対に必要なんじゃないかと思うんです。そういうことができる人にぜひ託したいなと。日本の組織論的な考え方としては良くないかもしれないけど、僕はできる人がやればいい、属人化上等!と思ってまして。 S|うん、同じ人がずっと出なきゃダメだと思う。入れ替わり立ち代わりじゃ覚えてもらえないからね。 N|日本のジョブローテーションの考え方からは、理解されないのかもしれませんが、やっぱりコミュニケーションを取れる人が、長くそこで活躍できるというのがいいですよね。 S|僕、もしかしたら英語ペラペラだと思われてるかもしれないけど、そんなこと全然なくて喋れないのね。だから、野中さんが言ったことすごくよくわかる。ちゃんと英語がペラペラ喋れる人に安定的に外国との窓口になってほしいよね。で、たとえ英語ができなくても、交流を…あのさぁ、自動翻訳してくれるチャットっていつできるだろうか。もうできてるのかな。 [1]岡部 晋典, 佐藤 翔, 逸村 裕. Budapest Open Access Initiativeの思想的背景とその受容. 情報知識学会誌. 2011, 21(3) https://doi.org/10.2964/jsik.21-032 [2]カール・R.ポパー. 開かれた社会とその敵. 岩波書店, 2023 [3]The Research Works Act(Creative Commons Japan) https://creativecommons.jp/2012/02/02/the-research-works-act/ → 第1話にもどる → 第3話につづく 話し手:杉田 茂樹( 京都大学 ) 1967年生まれ。1993年に北海道大学附属図書館入職。2005年から2009年にかけて北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP)の設立に携わったのち流れ流れて現職。 https://www.janul.jp/sites/default/files/2025-01/cast1-118.pdf (NO.034 やもしち) 聞き手:野中 雄司(富山大学) 富山大学 学術推進部 学術コンテンツ課(附属図書館)。2001年北海道大学附属図書館採用、室蘭工業大学附属図書館への3年間の出向を含め16年間を北海道大学で過ごす。その後、東京大学附属図書館を経て現職。山も川も海も食べ物も素晴らしい富山を満喫中。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • read & greenモデルの利用実態に迫る | JPCOARウェブマガジン

    かたつむりの気になる国際動向 Series かたつむりの気になる国際動向 read & greenモデルの利用実態に迫る 佐藤 翔 25/8/27 同志社大学 1.IEEEがRepository License Feeを開始  話題になるまですっかり見逃していたのですが、2025年3月、IEEEが研究助成機関によるオープンアクセス義務化に対応するための新たなオプション、”Repository License Fee(RLF)”を開始していました[1]。従来、IEEEとしてはオープンアクセス義務化について、オープンアクセス雑誌やハイブリッドOA(Gold OA) 、もしくは著者最終稿のリポジトリ登録(Green OA)で対応していましたが、前者はCC BYライセンスを付与できるものの、後者へのCC BYライセンス付与はIEEEは認めていませんでした。最近出てきた、CC BYライセンスを付与してのオープンアクセス義務化を求める方針に対応しつつ、APCを支払ってのGold OAを選択していない著者に対応するために新たに導入されたのがRLFで、雑誌論文は1,275ドル、会議予稿集論文は400ドルを支払うと、CC BYライセンスを付与して、著者最終稿をリポジトリ等に掲載することができるようになる、とのことです。ただしRLFオプションを選択できるのは、CC BYライセンスを付与してリポジトリに論文を掲載せよ、というタイプのオープンアクセス義務化方針の影響下にある研究者に限定されるとのことで、誰でもRLFを払えば自分の著者最終稿をCC BYで公開できるようになる、わけではありません。  当然のようにリポジトリ関連団体からは反発を買うわけで、6月にはオープンアクセスリポジトリ連合(COAR)が反対声明を発表し[2]、7月には我らがJPCOARとJUSTICEが、その反対声明を翻訳しつつ[3]、共同で反対声明への賛同(ややこしい)を表明しています。  反対声明の内容の詳細は、せっかく邦訳もしていただいたのでぜひそちらをご確認いただきたいところですが、反対の理由として挙げられているのは以下の点です。 ・料金が恣意的。莫大な利益を上げている出版社にとって新たな資金源に過ぎない ・資金を持たない著者に不利益をもたらす ・出版社版は有料なので、二重払いである(ハイブリッド型の時と同じ議論) ・大学・研究機関がその成果を誰もがアクセスできる形で記録する妨げになる  そこでCOARの声明としては、権利保持戦略によって最初から出版社に著作権を譲渡せず、著者側が保持すること、助成機関は著者に権利保持を義務付けることによって、RLFのような料金支払いを要求される状況にならないようにしよう、ということを提言しています。  これについてはその通りというか、どなたかも「著作権を譲渡してしまっている時点で……」とぼやいていましたが、著作権が出版社側に移っているのであれば、他者が著作権を有するものの転載とか、利用許諾を求めるってなると、そりゃお金とられるのは普通な話だよね、ということにはなってしまいます。最初に譲渡しているから話が厄介になるので、譲渡契約を結ばなくて済む手を講じましょうと言う……その話はすでに過去に本連載でもしたのでこのあたりにとどめますが……[4]。 2.ところで米国化学会(ACS)のADCってどうなったの?  ところで、 IEEEのRLFの話を聞いておそらく多くの方は、2023年に米国化学会(A CS)が開始していたArticle Developing Charge(ADC)のことを思い出したのではないでしょうか。ADCもまた、Green OAをする権利に料金を課すモデルです。なんで学会出版に限ってそういうことをするんだという話ですが、ADCとRLFでは課金の対象が異なり、RLFの方はCC BYを付与することに料金を課していますが、ADCはエンバーゴ期間を無視して、即時でGreen OAをしたい場合には料金を払うように、というものでした。   通常、ACSの雑誌のエンバーゴ期間は12カ月に設定されています。即時オープンアクセス義務化等のためにそれより早く論文を公開したい場合には、(割引なしの場合)4,500ドルのAPCを支払えばハイブリッド型も選択できますが、なかなかの高額です。そこで導入されたのがADCで、論文1本2,500ドルを支払えば、著者最終稿を即時Green OAにすることが認められる、というものでした[5]。RLFに比べてもさらに高額な料金設定でもあり、ADCもまた導入当初、様々な団体から反発を買い、こちらもJPCOAR・JUSTICEも反対声明を出しています。「ADC モデルは何の付加価値も提供せず、その必要性も不明確」、「本来費用負担がかからない機関リポジトリを通じたオープンアクセスに、不必要な費用負担の壁(ペイウォール)を設ける」、そしてRLF同様「購読料とADCの二重取り」であると、いずれももっともな指摘です[6]。  ただ、RLFの方は最初から対象者を非常に限定していますが、RLFほど条件を厳しく設定しているわけではないADCの方も、実際にはあまり選ばれないのではないかという指摘もありました[7]。即時オープンアクセスが義務化されているものの、APC補助や転換契約の恩恵を受けられていないという人くらいで、そんな人はあまりいないのではないか、というのです。実際、2025年6月に公開されたADC導入後18カ月にあたってのACSの記事では、ADCの利用実態等についてあまり触れられていません。やはりあまり選ばれていないんじゃないか、という気配は濃厚です[8]。  その中でADC関連の例外的に大きな動きとして、2024年6月にフランスのナショナル・コンソーシアム、CouperinとACSとの間で結ばれた覚書、いわゆるread & green契約があります。 3.read & green契約とは  Couperinはフランスの250以上の大学や教育・研究機関が参加するコンソーシアムです。覚書締結時にACSが発表した声明によれば、Couperin所属機関の研究者はACSの購読型ジャーナルにアクセスできることに加え、ハイブリッド型ジャーナルに掲載された論文について、即時のGreen OAにすることもできるとされています[9]。「ん、ハイブリッド型ジャーナルってどういう……?」という話ですが、ACSもOA雑誌タイトルも刊行しているので、そうしたOA雑誌に論文を掲載する場合には当然ながら普通にAPCを払ってもらうとして、非OA雑誌に掲載された論文について、ハイブリッド型のAPCを払わなくても即時にリポジトリに登録できる、という話でしょう。要はADC版のread & publishing契約で、ACSはこれを”read & green”モデルと呼んでいます[10]。   ただ、read & greenも興味深いモデルではあるものの、結局は購読契約料に上乗せして料金を支払っているんだとすると、様々な反発の根本は特に解決していません。フランスのほかにはベルギーでもread & green契約を結んだ機関はあるそうですが、それ以外に大きく波及しているわけでもないようです。ただ、これから米国の即時オープンアクセス義務化方針が実施されていく中で、対応する機関が出てくる可能性が皆無というわけではないかもしれませんが……ACSのADC導入後18カ月の記事もそれを見据えたものでもあるようですし……(記事末尾で米国の即時オープンアクセス義務化に言及しています)。 4.仏read & greenの実態  さて、フランスではCouperinを中心に導入されたread & green契約なわけですが、それで実際、どれだけの論文がGreen OAになったのかは特にACSの記事では触れられていませんでした。   正確にread & green契約で公開された論文の数を把握するのは困難ですが、ざっくりとした状態であれば、フランスの場合は国のアーカイブHAL[11]が主なGreen OAの場になっているはずなので、それなりに調べられそうな気もします。ACSが刊行するすべての雑誌を対象にすると条件がそれぞれに違って見通しが悪くなりそうなので、とりあえず代表的な雑誌であるJACS(Journal of the American Chemical Society)について、調べてみることにしました。確実にエンバーゴ期間内である、2025年刊行論文を対象にします。   Scopusによると、2025年1月~2025年8月1日までにJACSに掲載された、著者にフランスの機関所属者を含む論文は98本でした。一方でHALに収録されている、同じ機関のJACS掲載論文数は40本(約41%)です。……おお、案外と箸にも棒にも掛からぬくらいの本数しかないんじゃないかとかひねくれたことを考えていたのですが、けっこう収録されている!   「そうは言っても実はハイブリッド型でオープンにしたやつを、そのままリポジトリにも登録しているだけなんじゃない?」と、これまたひねくれたことも考えたのですが、ざっと見る限り、HALに登録されているのはほとんどが組版のされていない、著者最終稿でした。また、HALに登録されている論文の出版者版を確認したところ、ACSのジャーナルサイト上ではステータスが”subscribe”になっているものが大半でした(ハイブリッド型でOAにしていれば”open access”になっているはず)。明らかにエンバーゴ期間中の論文が、ハイブリッド型でもないのに、リポジトリでGreen OAになっている。これはまごうことなく、read & green契約の成果と言えそうです。おおー、けっこう効果あるんじゃん。まあお金払って契約しているんだし、そりゃそうか。   ちなみに念のため、日本の研究者の論文の状況をIRDBで確認しましたが、2025年のJACS掲載論文で日本の機関リポジトリに登録されているものは3本のみでした。3本すべて物質・材料研究機構(NIMS)のリポジトリに登録されたもので、すべてハイブリッド型でOAになっており、VORがリポジトリに載っています。少なくとも2025年中において、ADCを払ってJACSの論文を日本の機関リポジトリに登録している奇特な研究者は皆無のようです。なお日本の研究者によるJACS掲載論文は198本とフランスの倍以上あるので、分母の問題ではありません。   なるほど一応、Green OA論文を実際に増やす効果はread & green契約にも期待できそう……ではありますが、とはいえ、あまり納得のいく出費の仕方ではないのも確かなので……前回連載で見た通り、フランスはHALを通じたGreen OAの推進にかなり前のめりなようなのでACSとも契約したのでしょうが、他に広がっていくものではなさそうな……。その点でいくと、むしろフランスがIEEEのRLFについてはどんな動きを見せるのかも気になるところです。RLFは即時オープンアクセスのためではなく、CC BYのための料金だから、また違う動きになるのでしょうか? [1] “Repository License Fee”. IEEE Open. 2025-03-14. https://open.ieee.org/repository-license-fee/ , (参照 2025-08-01). [2] “Unfair publisher fees for deposit into repositories highlight the need for authors to exercise their rights”. COAR. https://coar-repositories.org/news-updates/unfair-publisher-fees-for-deposit-into-repositories-highlight-the-need-for-authors-to-exercise-their-rights/ , (参照 2025-08-01). [3] オープンアクセスリポジトリ推進協会, 大学図書館コンソーシアム連合. “IEEE Repository License Fee等に対する声明”. 2025-07-04. https://doi.org/10.34477/0002000617 , (参照 2025-08-01). [4] 佐藤翔. 権利保持戦略、みんなちゃんとやってる?. JPCOARウェブマガジン. 2024-03-13. https://magazine.jpcoar.org/news/5aabc96d-2345-4d03-b1fa-f9f732531d9c , (参照 2025-08-01). [5] “Zero-Embargo Green Open Access”. ACS Publications. https://acsopenscience.org/researchers/zero-green-oa/ , (参照 2025-08-01). [6] 佐藤翔. 即時セルフ・アーカイブする権利を「売る」. 企業会計. 2024, vol.76, no.5, p.689-691. [7] 佐藤亮太. 米国化学会によるエンバーゴなしのグリーンOAをめぐる動向. カレントアウェアネス-E. 2023, no.470, e2654. https://current.ndl.go.jp/e2654 , (参照 2025-08-01). [8] Armstrong, David. “Zero-Embargo Green Open Access: A Look Back at the First 18 Months”. ACS axial. 2025-06-21. https://axial.acs.org/open-science/zero-embargo-green-open-access-a-look-back-at-the-first-18-months , (参照 2025-08-01). [9] “ACS Publications and French consortium together support open access publishing”. ACS. 2024-06-21. https://www.acs.org/pressroom/newsreleases/2024/june/acs-publications-and-french-consortium-together-support-open-access-publishing.html , (参照 2025-08-01). [10] ACS Publications. “New Agreement Brings Green OA Publishing Option to Researchers in France”. ACS axial. 2024-06-21. https://axial.acs.org/publishing/new-agreement-brings-green-oa-publishing-option-to-researchers-in-france , (参照 2025-08-01). [11] Archive ouverte HAL. https://hal.science/ , (参照 2025-08-01). 文:佐藤翔(同志社大学) 1985年生まれ。2012年度筑波大学大学院博士後期課程図書館情報メディア研究科修了。博士(図書館情報学)。2013年度より同志社大学助教。2018年度より同准教授。2024年度より同教授。 図書館情報学者としてあっちこっちのテーマに手を出していますが、博士論文は機関リポジトリの利用研究で取っており、学術情報流通/オープンアクセスは今も最も主たるテーマだと思っています。 学部生時代より図書館・図書館情報学的トピックを扱うブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」を開始。現在は雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』誌上で同名の連載を毎号執筆中。2024年12月には同連載をまとめた書籍『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいにならないのか』を刊行。6月には同書の縁で岡田准一さんのラジオ「GROWING REED」にも出演させていただきました。自分の博士論文の公聴会よりも緊張した……。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • ずっと応援してた地下アイドルがメジャーデビューしちゃったような感じ | JPCOARウェブマガジン

    杉田茂樹氏(JPCOAR運営委員会委員長)インタビュー 第1話 Interview 杉田茂樹氏(JPCOAR運営委員会委員長)インタビュー 第1話 ずっと応援してた地下アイドルがメジャーデビューしちゃったような感じ 杉田 茂樹 / 野中 雄司 23/10/23 京都大学 / 富山大学 杉田茂樹=JPCOAR運営委員長と野中雄司=JPCOAR広報・普及作業部会主査 のインタビューシリーズ(全3話)。第1話は、リポジトリ草創期からこれまでの歴史を振り返ります。 ILLという病 N|今年度から広報・普及作業部会の主査になりました野中です。就任当初から、ウェブマガジンの立ち上げという、結構大きい仕事に関わることになったんですけど、ちょうど委員長も交代するタイミングでもありましたので、杉田委員長にインタビューさせていただこうと。とはいえ、杉田さんとは旧知の間柄なので、なんか小っ恥ずかしいです…。 S|そうだよね。委員長として特別扱いされるのは恐縮なので、インタビューシリーズのひとつぐらいの扱いでお願いします(笑)。 N|杉田さんとは機関リポジトリの草創期に、北海道大学で一緒に仕事をさせていただきました。あの頃に比べると、オープンアクセスもずいぶん進展しましたよね。当時は国が関与してくれるなんて思ってもみなかった。 S| 思ってもいなかったよね。政府の文書にオープンアクセスという言葉が出てくる。こんな日が来るとは思わんかったね。 N|初期の頃って、オープンアクセスという言葉を広めるためだけの説明会とかやってましたもんね。 S|ほんとだよね。オープンアクセスって言ったらさ、床にLANケーブル這わせる話しかなかったよね当時は。われわれの係はシステム管理係だったからね。 N| “シス管” でしたね。それに比べると、近年はオープンアクセスやオープンサイエンスが国を巻き込みながら大きなうねりをもって進展している、ある意味時代の転換期にもあるのかなと思います。そのような中で、今JPCOARでも、たとえばオープンアクセス推進検討タスクフォースで色々やろうとしているし、ウェブマガジンも刊行したということで、会員館の方々や世の中に向かって、委員長から「こういうこと考えてるよ」ということを発信してもらいたいと思ったんです。でも、そんなこと言うと硬くなっちゃいますよね(笑)。 杉田茂樹氏 S| そうだね。僕は質問されると硬い返事しかできないから。 N| いやいや、それは誰も頷かないのでは(笑)。僕は、杉田さんはつくづく文系(文学部)の人だなと思っているんです。言葉の魔術師みたいなところがあると思っています。一番印象に残っているのは「ILLという病」という言葉を使われた(※)ことがありますよね。 ※ 杉田 茂樹, 学術情報流通の逆転, 大学図書館研究, 2016, 103 巻, p. 1-8, 公開日 2017/09/29, Online ISSN 2186-103X, Print ISSN 0386-0507, https://doi.org/10.20722/jcul.1428 S|ああ、はいはい、懐かしい。 N|ILLって、大学図書館業界の人の目には「Inter Library Loan (図書館間相互貸借)」にしか映らないわけですが、ill=病気と言う意味を忘れてしまうくらいILLが自明のサービスになっている。その状況をある意味ユーモラスに、やや挑発的に表現した言葉だったと思います。 S|まあただのダジャレみたいなものですけど。でも確かに挑発的だよね、ILLを病なんていうのは。でもね、実際「病気」だと思うんですよ。ILLと言うのは、図書館が文献を行き渡らせることができないがためにやってることだから。機関リポジトリもそうなんです。文献が行き渡らないから、行き渡らないところまで届けようとしている。 図書館って、利用者のためにあるんじゃなくて、科学の進歩のためにあるんじゃないか N|なるほど。さっき「転換期」であると言いましたけど、こういう時代って、やはり言葉の力が必要だと思うんですね。あるいは物語と言ってもいいかもしれません。つまり、モチベーションの話です。 S|モチベーション。難しいね。 N|例えば、私が図書館の仕事をしているのはなぜかと言うと、知識を入手することができないという状況は、最終的には貧困とか戦争とかに全部つながっていくと思っているからで、つまりちょっと恥ずかしいけれど、世界平和のためにやっていると思ってるんです。 だから、ウェブマガジンのキャッチコピーを「オープンアクセスで世界を幸せにするウェブマガジン」としたのも、そういう意図があるんです。 野中雄司氏 S|うん、僕もそこは同じ考えです。我々図書館の仕事は機関リポジトリも含めて、すべて世界平和のためというか、人類の幸福のためだと思っています。ただ人類の幸福に直接貢献するんじゃなくて、科学の進歩によって人類を幸福にするのが大学の役割だと。で、その科学の進歩に役立つことをするのが図書館の仕事だと思っていて、だから図書館って、利用者のためにあるんじゃなくて、科学の進歩のためにあると、僕は思ってるんだよね。 ほら、硬くなるでしょ(笑)。 N|そういうオープンアクセスの理念というか、物語という点において、日本の我々に最初に大きな影響を与えたのは、スティーブン・ハーナッドだったと思うのですが、杉田さんもその影響はあったでしょうか。 S|影響は大きかったと思いますね。ハーナッドはオープンアクセス論者だけど、そもそも研究者だもんね。研究者はこう思ってんだと当時思いましたね。 ハーナッドが来日したとき(2004年)って、僕はNIIに居たんですよね。その頃、既に軽井沢でDSpaceとEPrintsをインストールするというプロジェクトがスタートしていたので、機関リポジトリの理念的なことはみんな少し分かってたんだけども、雑誌が高いということへの対抗として説明されることが多かった。図書館員としてもそれは理解しやすいしね。そう理解していたんだけど、研究者の生の声として「我々は科学を加速させたいんだ。そのためのオープンアクセスだ。セルフアーカイブだ」ということを言われた。それも、記事として読むのじゃなくて、目の前で熱く語っていたのが印象に残っています。 N|私は生で見たことないんですけど、そんなに熱い人なんですね。 S| ハーナッドって、なんだろう魔導師みたいな感じがあるじゃない。修道僧みたいな風貌だし。 N|確かに。 S|そういう風貌の人からそんな風に語りかけられたので、「ああそうなのかな」って思い込まされちゃった。 間違えたとは言わないけれども、これだけじゃダメだというふうに、すごい最近思うね N|言葉の魔術師という点では、杉田さんもハーナッドに似た雰囲気がありますね。 ところで、当時はJPCOARに活動を引き継ぐ前のDRF(デジタルリポジトリ連合)の時代でしたが、その頃からすると、JPCOARもずいぶん規模が大きくなりましたよね。 S|ほんとだよ、DRFってたかだか150機関ぐらいだったよね。 N|途中まで、ほぼ顔が見えてましたよね S|見えてたね。今、JPCOARは700を超えてる。 N|今はもう 顔までは見えないですものね 。 運営の大部分を 業務委託している図書館も増えてきていると聞きます。 S|業務委託でやってたら、顔なんて見えるわけないもんね。 N|小規模な大学が機関リポジトリを“戸建て”するのは大変だからと、“集合住宅”としてのJAIRO Cloudが登場したわけですけど、機関リポジトリの草創期は、“戸建て”モデルで進みましたよね。これは、当時総合目録データベースであるNACSIS-CATに慣れていた図書館員にとって、新しいことだったと思います。 S|そうだよね。例えば、紀要のことで言えば、かつて中央(NII)に「目次速報データベース」というサービスがありました。各大学が発行する紀要の目次を各大学の図書館が入力していた。そのうち本文もアップロードするようになって、NIIに紀要が溜まっていってたんだけど、その紀要の仕事をわざわざ機関リポジトリにばらしちゃったわけです、我々が。 N|ばらした張本人の一人が杉田さんだったというわけですが、あの時ここまで機関リポジトリが普及すると考えていましたか? S|考えてないよ、そんなの。 N|では、今の日本における機関リポジトリの状況をどう感じていますか? S|そうだなあ。草創期の頃は、蚤の市みたいだなぁと思ってたんですね。そこここに、手作りの機関リポジトリが出てきて。その頃からすると、今の状況はなんというか、ずっと応援してた地下アイドルがメジャーデビューしちゃったような感じかな。 N|それは、杉田さんにとってうれしいことなのか、悲しいことなのか、どちらなんですか? S|どうだろう。メジャーデビューなんかとても無理だと思ってたので。予想もしなかったから、感想も持てない感じ。 N|でもこれだけ普及したということは、ひとつの達成ではないですか。 S|機関リポジトリだけの話でいえば、そうですね。一方で、これまでグリーンと信じてやってきたけれども、グリーンでは所詮は出版社の掌の上だなというのをすごく感じるようになりましたね。頑張って頑張って大きくなってきて、国レベルでもオープンアクセスが言われるようになったけれど、結局のところ機関リポジトリは出版社の査読を経て出版社の雑誌上に発表された論文のセルフアーカイブでしかないと。 だからこれをいくらやっても、根本的にひっくり返すことはできないなぁと思って。間違えたとは言わないけれども、これだけじゃダメだというふうに、すごい最近思うね。 N|今年の国際オープンアクセスウィークのテーマは「商業化を超えたコミュニティ」ですね。 S|これさ、日本語がぬるいよ。僕が訳すとしたら「商業主義をぶっ飛ばせ」だね。  → 第2話につづく 話し手:杉田 茂樹( 京都大学 ) 1967年生まれ。1993年に北海道大学附属図書館入職。2005年から2009年にかけて北海道大学学術成果コレクション(HUSCAP)の設立に携わったのち流れ流れて現職。 https://www.janul.jp/sites/default/files/2025-01/cast1-118.pdf (NO.034 やもしち) 聞き手:野中 雄司(富山大学) 富山大学 学術推進部 学術コンテンツ課(附属図書館)。2001年北海道大学附属図書館採用、室蘭工業大学附属図書館への3年間の出向を含め16年間を北海道大学で過ごす。その後、東京大学附属図書館を経て現職。山も川も海も食べ物も素晴らしい富山を満喫中。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • メゾン・ド・ヌイグルミ | JPCOARウェブマガジン

    ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ) Series ワタリポ(ワタクシ的リポジトリ) メゾン・ド・ヌイグルミ 佐藤 知生 24/7/29 国立情報学研究所  みなさんの家にぬいぐるみはありますか?  日頃はハードボイルドで通している私ですが、少しずつではあるものの着実に部屋の中にぬいぐるみが増殖する現象にみまわれています。ナイスミドルへの道を駆け上る独身男としてイメージ的に由々しき事態。しかし、琴線に触れる一体と出会うとつい家に招きたくなり、気づけば棚に並べています。なんとか威厳を取り戻そうとバカラ風ダイソーグラスでバーボンを傾けてみたとて、視界の端にはモコモコした連中が並んでいます。ハードボイルドもへったくれもありません。   今回のワタクシ的リポジトリでは、そんな悩ましいほど中毒性のあるぬいぐるみたちの話にお付き合いください。 二心房二心室(ポーチ)     近くにありながら、直接見ることや触ることがかなわない存在。人はそういったものに憧れ、手元に置いておきたいと思わせるのかもしれません。  みなさんご存じの二心房二心室です。  のっけからぬいぐるみじゃないという無慈悲な批判はお控え願います。初期設定はポーチでも、私にとっては切開機能がついた心臓のぬいぐるみです。ジッパーを開けると中はぬらぬらと真っ赤で、懐炉を入れれば冬場に手を温めるのにも良さそうです。ハムスターを寄生させても大変かわいらしいかもしれません。  心臓は臓器界のアイドル五臓六腑の一角を担い、その中でもセンターを張っている存在です。特に二心房二心室は、その高度な機能性から心臓のフラッグシップモデルとして鳥類や哺乳類に採用され、「これがないと生きていけない」と口にする人も少なくないとか。  このぬいぐるみでは、そんなハイテクな二心房二心室を乳頭筋や腱索まで細かく再現しており、そのディティールにときめきが止まらずクラクラしてきます。私の二心房二心室が共鳴しているのでしょうか。それともバーボンの飲み過ぎでしょうか。 ミジンコ(Daphnia pulex)  軍隊の激励や往年のツッパリ界隈では、しばしば「このミジンコ野郎!」というセリフを耳にしますが、リスペクトの意味ではないと知った時は驚きました。ミジンコは、人間より遺伝子が8,000個近くも多いのに(多ければ良いわけではない)。プランクトン界のアイドルとして高い人気を誇るミジンコですが、知られていないことも意外とあるようです。  このぬいぐるみを見て勘のいい方は気づかれたかもしれませんが、泳ぎ方はバタフライです。クロールするのはカイミジンコで、犬かきするのはケンミジンコであって、このポピュラーなミジンコではありません。左右の腕を同時に振ってパタパタと泳ぐ姿は、やはりミジンコ( Daphnia pulex )ならではの愛らしさです。  なにより私たちを驚かせてやまないのは、その形態(フォルム)。ミジンコと聞いて多くの人がイメージするのは、教科書や図鑑で目にしたかわいい横顔のポートレートだと思います。つぶらな瞳が印象的で、正面から見たら一層魅力的だろうと誰もが想像を膨らませます。ところがどっこい、真実はいつも私たちの想像を超えるのです。このぬいぐるみを正面からみると...まさかのサイクロプス。左目だと思っていたのが単眼の左端だったとは。  人が美人に見える条件は、「夜目、遠目、傘の内」といいます。本当は少し見えないくらいが魅力的なのです。しかし、本当の姿を見て初めて気づく魅力もあり、その魅力を知っていくことが愛なのです。  ミジンコの目の真実を知るとき、人は一歩大人に近づきます。 アノマロカリス・カナデンシス    カンブリア爆発のアイドルといえば、アノマロカリスをおいて他にないでしょう。なんといっても「史上最初の覇者」です。しかし、著名とはいってもそこは化石、地下アイドルの域は出ません。結局のところ、大多数の方がアノマロカリスについて抱いているイメージといえば、「なにそれ美味しいの?」といったところだと思います。  2011年に報告された1m級の巨大アノマロカリス化石に関する論文[1]の共著者であるYale大学Peabody自然史博物館の責任者、Derek Briggs氏によると「これほど大きなエビなら、軍隊を1カ月でもまかなえただろう。巨大で、しかも間違いなくかなりの美味だったはずだww」とのことで[2]、専門家的には“じゅるり”という見解です。また、アノマロカリスの料理法が記載されている文献にも、その味や食感について言及があります。『古生物食堂』に掲載されているレシピ「アノマロカリス しんじょう揚げの甘酢餡かけ」は、アノマロカリスのフワッとした触感と独特の苦みを活かした料理[3]。こちらも専門家の考察を元にしているということで、味への期待はいよいよ高まります。  アノマロカリスのぬいぐるみを見ると、いつの日か実物を蘇らせ、しんじょう揚げで一杯やりたいと科学の発展を支える志がふつふつと湧いてきます。 食物連鎖  ずるいほどメッセージ性が光るのがこちらの1体(1システム?)。自然界のドグマがぬいぐるみ化される時代になったということで、見つけたときは感慨深いものでした。  「食物連鎖」とは、地球上に存在する生物が、お互いに「食べる」「食べられる」の関係にあることをいい、網の目のように複雑に関わりあっていることから「食物網」とも呼ばれます。生態系(エコシステム)は、生物とその生物を取り囲む自然環境をあわせたシステムですが、「食物連鎖」はその中で生物間の関係性の軸となる要素です。オキアミは魚に食べられ、魚はペンギンに食べられ、ペンギンはシャチに食べられ、シャチの糞や死骸がプランクトンを育て、オキアミの餌になる。ミクロスケールでみれば、搾取し、搾取されるように見える関係性が、マクロスケールでみると支えあっているというのはなんだか不思議な感じがします。往々にしてエコシステムというのは、視界の中に納まる範囲では計りにくいものなのかもしれません。  オープンサイエンスの界隈でも、近頃国内外でこのエコシステムという言葉を耳にすることが多くなったように思います。しかし、自然界のエコシステムがそうであるように、研究のエコシステムもまた様々な環境やステークホルダーが入り組むため、そのゴールはまだ誰にも分かりません。論文が、査読が、研究データが、研究者が、AI技術が、研究評価が、図書館が、大学が、助成機関が、政府が、社会が、それぞれどう絡み合うのが最適なのか、すべてこれから手探りです。ひとつの生態系が溶けていき、また別の形を得ようと蠢いている。そんな時代にこの業界に携われるなんて、なんと面倒で愉しいことでしょうか。  「オープンサイエンス」というぬいぐるみがあったら、いったいどんな形をしているのでしょうね。  さて、知識もスキルも追い付かず、楽しそうなことをつらつら考えているだけのハーフボイルド(半熟者)な私ですが、JPCOARではコンテンツ流通作業部会と研究データ作業部会で活動しています。これらの作業部会では、会員機関のリポジトリが擁する学術論文や研究データをはじめとする多様なコンテンツについて収集・管理・保存のノウハウを共有したり、メタデータの標準化や FAIR 原則への対応、流通促進などに取り組んでいます。  研究データ管理については、国立情報学研究所の本務においても深く関わっていますので、今後図書館がどう支援していくかという課題に留まらず、研究者の需要や評価まで含め広い視点でより良いエコシステムの構築に向けて微力ながらお力になりたいと思っています。どうぞよしなに。 [1]Van Roy, Peter, and Derek EG Briggs. "A giant Ordovician anomalocaridid." Nature, 473(7348), 2011 ,510-513. [2]Christine Dell'Amore. “3-Foot "Shrimp" Discovered—Dominated Prehistoric Seas”. National Geographic. 2011-05-28. https://www.nationalgeographic.com/science/article/110526-giant-sea-fossils-science-nature-briggs-anomalocaridids , (accessed 2024-06-17) [3]土屋健, et al. 古生物食堂. 技術評論社, 2019, 223p., (生物ミステリー), ISBN9784297108199 文:佐藤 知生(国立情報学研究所) 濃尾平野で世界一なっがーい大根を作っている町...の隣町出身。愛知県立大学職員を経て2015年神戸大学入職。2023年より国立情報学研究所へ出向中。農学修士、環境計量士(濃度)、気象予報士。 お豆腐をこよなく愛しており、1パック30円の絹ごし豆腐を頬張ることで幸せが得られるコンビニエンスな性質ゆえ、今日も幸せが確定しています。人生における唯一の懸念は、大豆アレルギーの発症。   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • 「べらぼう」をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ | JPCOARウェブマガジン

    オープンアクセス論文紀行 Series オープンアクセス論文紀行 「べらぼう」をもっと深く楽しむためのOA論文ピックアップ JPCOAR 広報・普及作業部会 25/2/21 国内の大学や研究機関、助成機関では、様々な調査研究の文献を機関リポジトリで公開しています。「OA論文紀行」では、毎回テーマを決めて専門家の方以外にも親しみやすい日本語文献を紹介します! 今回のテーマは、今年、大河ドラマでも評判の「江戸の出版」です。気になる文献があったら、是非ご覧ください! Google Mapを見る→ 浮世草紙・遊里本・諸種稀本について ―和漢書貴重図書目録の周辺― 大原 理恵, 東北大学附属図書館調査研究室年報, 9, 25-37, 2022 東北大学機関リポジトリ 美濃派俳書の版元について : 橘屋治兵衛の江戸出店野田太兵衛と江戸の広井秀峨 鹿島 美千代, 図書館情報メディア研究, 7(1), 1-15, 2009 つくばリポジトリ 書肆・貸本屋の役割 高木 元, 19世紀の文学 岩波講座「日本文学史」第10巻, 1996 千葉大学学術成果リポジトリ 錦絵に見る料理茶屋情報 : 「江戸高名会亭尽」を中心に 大久保 純一, 国立歴史民俗博物館研究報告, 222, 81-100, 2020 国立歴史民俗博物館学術情報リポジトリ 寛政期の歌麿と蔦屋重三郎 洲脇 朝佳, 國學院大學大学院紀要 : 文学研究科, 50, 69-92, 2019 國學院大學学術情報リポジトリ 春町作黄表紙の成立考 中村 正明, 國學院雑誌, 124(4), 1-18, 2023 國學院大學学術情報リポジトリ 文運東漸の一側面 -出版現象面の再整理- 中野 三敏, 国文学研究, 28, 22-39, 1963 早稲田大学リポジトリ 吉原細見の研究 山城由紀子, 駒沢史学, 24, 111-134, 1977 駒澤大学学術機関リポジトリ 洒落本の空間 田中 優子, 日本文學誌要, 42, 10-17, 1990 法政大学学術機関リポジトリ 江戸における新刊本販売点数の推移に関する考察 松田 泰代, 書物・出版と社会変容, 2, 83-96, 2007 一橋大学機関リポジトリ 浮世絵における美人画について 稲田 俊志, 岐阜大学教養部研究報告, 20, 157-164, 1984 岐阜大学機関リポジトリ 伊勢商人川喜田好文の「読書控」から見る書物意識 早川 由美, 愛知淑徳大学論集. 文学部篇, 49, 15-32, 2024 愛知淑徳大学知のアーカイブリポジトリ 『源氏物語五十四帖絵尽』から『源氏物語絵尽大意抄』への再版小考 ― 版元、和泉屋市兵衛の新たな読者層獲得の方法 ― 池田 大輔, 滋賀文教短期大学紀要, 24, 19-30, 2022 学校法人 松翠学園 滋賀文教短期大学 江戸版長唄正本における株板化の動き : 中村座を事例として 漆﨑 まり, 日本研究, 48, 55-100, 2013 日文研オープンアクセス 須原屋市兵衛の出版活動 : その書肆像の見直し 横地 智, 文化學年報, 73, 303-360, 2024 同志社大学学術リポジトリ 広告図像の修辞学 : 歌麿筆「美人画」を手がかりに 岸 文和, 經濟學論叢, 64(4), 1414-1378, 2013 同志社大学学術リポジトリ 三段なぞのおもちゃ絵資料二種紹介 小野 恭靖, 大阪教育大学紀要 第I部門 人文科学, 62(2), 81-86, 2014 大阪教育大学附属図書館 蔦屋重三郎と寛政の出版統制 小林 真利奈, 寧楽史苑, 58, 1-18, 2013 奈良女子大学学術情報リポジトリ 江戸幕府の特定写本禁止法とその思想(上) ─ 幕府出版規制が実は書物規制であること ─ 山本 秀樹, 岡山大学文学部紀要, 61, 116-104, 2014 岡山大学学術成果リポジトリ 陽のあたる戯作 : 蔦屋重三郎の戯作出版をめぐって 鈴木 俊幸, 雅俗, 4, 11-31, 1997 九大コレクション 編集後記 今回の記事編集では興味深い論文を数多く見つけることができました。そして、出版活動がその時代の社会や文化と密接に関わっていることを改めて感じました。(野村) 今回記事の担当をきっかけに大河ドラマ「べらぼう」を観はじめました。ドラマの展開を追いつつ、本記事で紹介している論文を読むことで、より一層ドラマを楽しめることを、いち視聴者として期待しています。(阿部) 「べらぼう」は観ていないのですが、古典落語が好きなので江戸の文化も好きです。落語は吉原の話がよく出てくるので「べらぼう」も観たいと思いつつ…(南雲) 江戸時代にて木版製本が発達し、分業や規格化の体制整備がすすめられていることや読書人口増加など興味深く論文を見ることができました。(井上) ヘッダの画像は 『画本東都遊 3巻』(国立国会図書館デジタルコレクション) を改変して作成   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • はじめてのJAIRO Cloud:個別か一括か それが問題だ。 | JPCOARウェブマガジン

    Column はじめてのJAIRO Cloud:個別か一括か それが問題だ。 JPCOAR広報・普及作業部会 26/5/15 とある大学図書館を舞台に、はじめてリポジトリ業務を担当する後輩さんと、それなりに経験を積んできた先輩さんが、アイテムを登録しようとしています。 二人と一緒に、JAIRO Cloudにアイテムを登録するときの、個別登録と一括登録の違いについて、概要を確認してみましょう。 |登場人物| 後輩さん 他の図書館業務も行いつつ、リポジトリ業務も担当しはじめました。JAIRO Cloudにはまだ慣れていないので心配です。会ってみたい図書館(美術館)猫はエルミタージュの猫。 先輩さん 大学図書館でのお仕事もリポジトリ担当としてもそれなりに経験を積んできました。JAIRO Cloudは頑張って勉強中です。好きなAIはTARSとCASE。 1. 機関リポジトリ運用の重要性 後輩さん 今日から紀要のアイテム登録を任されたんですけど、これってどういう意味があるんでしょう? JAIRO Cloudも初めてだし正直、ちょっと不安です……。 先輩さん 機関リポジトリの運用は、大学の『知』を世界へ可視化するための、 重要で戦略的な仕事 なんですよ。 後輩さん 戦略的、ですか? 大げさじゃありません? 先輩さん 全然。JAIRO Cloudに登録されたメタデータは、IRDB(学術機関リポジトリデータベース)やCiNii Researchへと繋がっていろいろな場所で公開されていくんです。リポジトリ業務は単に登録するというだけでなくて、大学の『デジタルの顔』として世界中の研究者に公開され、研究成果の国際的評価にもつながる業務なんですよ。もし登録手法を間違えたり、入力が不正確だったりすれば、検索にヒットしない『見えないデータ』になってしまいます。 後輩さん 大事な業務なんですね。……急に責任の重さを感じてきました。 先輩さん 不安にならなくても大丈夫。まずは、JAIRO Cloudでのアイテム登録作業にどのような選択肢があるのか整理してみましょう。 2. 個別登録と一括登録(インポート)の違い 先輩さん JAIRO Cloudのアイテム登録には、画面上でシステムと対話しながら進めるアイテム個別登録と、データを一括で流し込むアイテム一括登録があるんです。それぞれの違いを理解することが、効率的な運用の第一歩ですよ。 登録手法の比較表 評価項目 アイテム個別登録 アイテム一括登録(インポート) 推奨ケース まだJAIRO Cloudに慣れていないとき 学術雑誌論文など1件ずつメタデータの内容が違うとき JAIRO Cloudに慣れてきたら 紀要1号まるごとや博士論文などメタデータに共通する内容が多いとき メリット 初心者でも直感的な操作ができる 入力内容をすぐに確認できる 外部データベースからメタデータの自動取り込みができる 大量データの一括処理ができる Excel上でメタデータ作成ができるので似たようなデータをたくさん作りやすい デメリット 1件ずつ作業するので時間がかかる 文字化けやサーバーエラーが起きることがある 一括登録用テキストファイルの作成に慣れが必要 制約や留意点 ブラウザで「戻る」ボタンを押すと登録完了しない 同じユーザIDで複数の担当者が同時に作業ができない 同じアイテムを複数の担当者が同時に編集できない 推奨件数は〜300件程度(サーバー環境のため) 一度にアップロードできる上限は20GBまで 後輩さん 個別登録と一括登録の違いがわかってきました。 先輩さん いいですね。メリットとデメリットを理解して、やりやすい方法を使っていきましょう。 3. 失敗しないメタデータ準備:外部データベースとの連携のために 先輩さん 次はメタデータ登録の上で注意することを確認しましょう。登録したデータが外部のデータベースに正しく拾われる(ハーベストされる)ためには、とても重要です。間違えると、IRDBでハーベストエラーが起きたり、検索結果に表示されなくなったりするんです。せっかく登録したのに、流通しなければ成果として見つけてもらえないですから、もったいないですよね。 後輩さん それは避けたいです! 特に注意すべき項目はどこですか? 先輩さん 必須項目をちゃんといれることとJPCOARスキーマを守ることが特に大事ですね。 後輩さん JPCOARスキーマというと、リポジトリでメタデータを登録するためのルールブックのようなものですか? 先輩さん その通りです。JPCOARスキーマガイドラインを参照して入力していきましょう。気を付けた方がいいところをまずは4つ上げますね。 識別子の入力 CiNii Researchに連携する際、同じデータか、連携できるデータはあるか、などはそれぞれ固有のID(識別子)を元に行われます。 このため作成者や所属、出版社版の論文などを一意に表すことができる識別子がわかる場合は、積極的に入力します。 メタデータ要素の追加 JAIRO Cloudのアイテム個別登録では、メタデータの要素を追加するときに「+New」をクリックします。どの要素(階層)に追加するのかを間違えないように注意しましょう。 親要素の「+New」はその要素のメタデータ項目を増やすときに使います。例えば、複数の著者がいて2人目の著者を入力したい場合は、親要素になる作成者の「+New」をクリックします。 子要素の「+New」はその要素の中に新しいメタデータの値を入れたいときに使います。例えば、同じ著者の氏名を日本語と英語の両方で登録したい場合は、同じ作成者の枠内にある「+New」をクリックします。 これは、JAIRO Cloudの操作と正しくメタデータを入れるという両方の点で気を付けたいですね。 収録物識別子 JAIRO Cloudでは、収録物の識別子にPISSN(冊子版)またはEISSN(電子版)の利用が推奨されています。ISSNは非推奨で、冊子版か電子版かがわからない際に使用します。JPCOARスキーマに則ったメタデータを作るうえで留意しましょう。 巻・号の入力ルール(階層の読み替え) JPCOARスキーマでは、号(issue)または通号のみを持つ場合は、巻(volume)の階層に記入することになっています。これは、書誌情報の階層構造において、上位階層(巻)が空欄のまま下位階層(号)だけに数値が入っていると、データの構造が不完全であるとみなされて、外部のデータベース等で書誌情報が正しく表示されないことがあるからです。 そこで、資料に号しかない場合でも、メタデータを入力するときは巻の項目に号の数字を入力します。(例:第1巻第8号の場合は、巻に「1」、号に「8」を入力する。第15号 の場合は、巻に「15」を入力、号は空欄とする) これはJPCOARスキーマの特徴のひとつです。ガイドラインに倣って登録するよう留意しましょう。 後輩さん なるほど、必須項目をきちんと入れること、JPCOARスキーマに沿って入力することは基本的に思えますけれど大事ですね。識別子はデータを連携して世界に届けるためのものですよね。はじめに説明された、リポジトリ業務の重要性とつながってきました。 先輩さん そう思ってくれて嬉しいです。では作業に取り掛かりましょう。 4. 個別登録と一括登録、それぞれの注意点 後輩さん 作業を始める前に、気をつけるべきことを教えてください。 先輩さん まずは個別登録です。基本的な操作なのですが、次の3つは気を付けましょう。 ブラウザの「戻る」ボタンを使わない 個別登録の操作中に、Webブラウザの「戻る」ボタンで前のページに戻るのはやめましょう。これをすると、ページ未検出エラーが出るなど、処理が不安定になってしまいます。 前の操作に戻って修正したいときは、WebブラウザではなくJAIRO Cloudのシステム内の「戻る」を使ってください。 同時に複数のタブを開いて作業しない 同じブラウザ内で複数のタブを開き、同時にアイテムの登録や管理画面の操作を行うのはやめましょう。これをすると、ページ未検出エラーや操作のロックなど、思わぬ不具合が出ます。 承認(Approval)ステップを忘れない 編集内容は保存しただけでは公開されません。「図書館員」の権限を持つユーザーで承認(Approval)して初めて、リポジトリに反映されますので、忘れないようにしましょう。 後輩さん ついつい癖で戻るボタンを押しちゃいそうです。気をつけます。一括登録の方はどうですか? 先輩さん 一括登録(インポート)は、データの構造がとても重要です。次の2つは特に覚えておいてください。 文字コードと改行コードに注意する 一括登録するときは、メタデータをタブ区切りのTSV形式で保存する必要があります。 このTSVファイルでは、 文字コードは「UTF-8(BOM付き)」、改行コードは「LF」 で保存します。メタデータの編集後、 必ずテキストエディタ(たとえばWindowsのメモ帳など)でファイルを開き、文字コードと改行コードを確認しましょう 。 Excelは便利なのですが、 日本語版Excelの文字コードのデフォルト保存形式はShift_JISです。Excelで保存するとせっかくUTF-8で作ったファイルのコードが置き換えられて、文字化けやエラーになります。 一括登録用のZipとTSVファイルの情報を一致させる 一括登録用ファイル(ZIP)内の物理的な「フォルダ構成とファイル名」が、TSVファイルに記載された「file_path(パス情報)」とが一致している必要があります。 PDF等のファイルは任意のディレクトリ(フォルダ)において問題ありませんが、TSV内の「file_path」列の記述と、実際のディレクトリ構造は同じにしましょう。特に、ファイル名に半角スペースや特殊文字が混ざっていないかなどをよく確認しましょう。 後輩さん 一括登録は便利だけど、それだけ緻密な準備が求められるんですね。じゃあ、間違いをなくすにはどうしたらいいんですか? 先輩さん 過去のデータをエクスポートしてそれを元に作成することかな。うまく登録できているメタデータをお手本にして、それに倣うのが一番確実です。 でも、もしエラーが起きても解決策はあるから安心してくださいね。 5. 役立つトラブルシューティング 後輩さん 一括登録をした後、アイテムタイプを編集しようとしたら『Error: Item type cannot be updated because import is in progress.』というエラーが出て保存できませんでした! 先輩さん 一括登録中に、インデックスの追加や編集、アイテムタイプの編集を行うと起きる「インポートロック」というエラーですね。ほかにも起きやすいトラブルがあるので3つ紹介しますね。どれも解決策があるので安心してください。 「インポート中」ロックで操作不能になる インポート中はインデックスやアイテムタイプの操作ができません。インポートに時間がかかっている場合は、終わるまで待ってからもう一度作業してみましょう。 一括登録での環境依存文字によるサーバーエラー ローマ数字(Ⅰ, Ⅱ)や著作権マーク(©)は、インポート時に「?」に化けたり、エラーを引き起こします。事前に「I, II」や「(C)」のようにラテン文字(IIなら大文字 I (アイ)を2つ)や記号に置き換えましょう。 個別登録での再現性のない「必須未入力」エラー まれに発生することがあります。一度強制終了してログインし直すか、解消しない場合はメーリングリスト(ML)へ状況を報告し、他機関の知恵を借りましょう。 6. 一歩を踏み出すために 後輩さん ありがとうございます! 単なる入力作業ではなく、世界に成果を広めるお手伝いができるのだと感じて前向きな気持ちになりました。登録作業も不安でしたが、まずは慎重に、個別登録から始めてみます! 先輩さん 素晴らしいですね。最後に、着実に習熟するための3ステップです。これはあくまで私の考えなので、状況に応じて自分でもよい方法を身につけていってくださいね。 「個別登録」でJAIRO Cloudを理解する まずは1件、必須項目の挙動や承認までの流れをマスターし、システムに慣れましょう。 「小規模一括登録」で検証する 2〜10件程度の「パイロット登録」を行い、文字コード、改行コードの維持やディレクトリ構造が正しいかを確認しましょう。 コミュニティの知見を活用する 一人で悩まず、 Slackやメーリングリスト などで共有されている他機関の事例を参照しましょう。 JAIRO Cloudサポートポータル には「 機関のリポジトリ担当者が交代する場合の対応ガイド 」や「 JAIRO Cloud登録ガイド 学術雑誌論文編 」などJAIRO Cloud作業部会の方が作ったためになる資料も掲載されていますよ。 リポジトリ業務、はじめは不安ですよね。でも機関リポジトリを担当している人やJAIRO Cloudを使っている人はたくさんいます。資料をよく読んで、時には他機関のだれかと助け合って、業務をしていきましょうね! ※この記事はJAIRO Cloudのマニュアルや研修資料をNotebookLMを使って情報の整理と素案の生成を行い、広報・普及作業部会の担当者が作成・編集しました。監修はJAIRO Cloud作業部会です。ソースは下記のとおりです。 JAIRO Cloudサポートポータル JAIRO Cloud(WEKO3)基本マニュアル アイテム一括登録(インポート) JAIRO Cloud(WEKO3)基本マニュアル アイテム個別登録 JAIRO Cloud(WEKO3)基本マニュアル 著者DB管理 JAIRO Cloud(WEKO3)操作説明会(2024年度第5回JPCOAR Webinar) 事前質問 JAIRO Cloud(WEKO3)操作説明会(2024年度第5回JPCOAR Webinar) 当日質問 2024年度リポジトリ担当者の基礎知識研修(2024年度第3回JPCOAR Webinar)機関リポジトリの 実務と機能 JAIRO Cloud (WEKO3) 非公式まとめ - Code4Lib JAPAN 編集後記 はじめてJAIRO Cloudでの登録業務を担当される方などに、少しでもお役立ていただける点があれば幸いです。ちなみに小中学生の頃は人工知能RDが登場する児童書が好きで、よく読んでいました。(野村) 最初にテーマ案をもとにNotebookLMなどで作成された記事案を見て、「今はこんなことまでできちゃうんだ」とびっくりしたのが、遠い昔のように思いだされます。ちなみに好きなAIはタチコマ/フチコマです。(金子) リポジトリ業務に携わる方々の経験や環境は多様だと思いますが、皆様の業務の一助になれば幸いです。ちなみに小説に登場するAIで思い出すのは〈ムネーモシュネー〉というコンピュータです。(熊﨑) ヘッダ画像は Unsplash の Kalen Emsley が撮影した写真を改変して作成   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

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  • リポジトリ収録論文が「撤回」されたらどうする? | JPCOARウェブマガジン

    かたつむりの気になる国際動向 Series かたつむりの気になる国際動向 リポジトリ収録論文が「撤回」されたらどうする? 佐藤 翔 26/7/10 同志社大学 1.生成AIと増加する「撤回」  2026年3月、オープンアクセスリポジトリ連合(COAR)がAIとオープンサイエンスに関する声明”Navigating the Uneasy Interdependence of AI and Open Science”を発表しました[1]。研究におけるAIの急速な普及がオープンサイエンスのエコシステムに良い影響だけでなく、危機的な影響も与えている……との問題意識の元で、出典表示の欠如の問題(自分たちの成果がAIの学習に使用されているのに、出力結果に明示されない。もちろん特定の文献を引用しているケースは最近では性能向上して出典も表示できますが、一般論的な話をしているところだって無数の文献の学習の成果でしょうに、という話)、誤情報の拡散(根拠のない情報や偽の引用情報の拡散、さらにそれがAIの学習サイクルにも取り込まれてしまう問題)、攻撃的なボットによるリポジトリ等への負荷の問題、という3領域への懸念が表明されています。そのうえで、「開かれた状態を維持する」、「信頼性を示す指標を改善する」、「人間の関与を維持する」、「研究コミュニティと関わる」、「オープンソースAIモデルにコンテンツを提供する」、「コミュニティ規範を発展させる」という6つの具体的な行動が、オープンサイエンスのエコシステムを持続させるために、リポジトリコミュニティが取るべきものである、とされています。  このうち「人間の関与を維持する」というのは、機関リポジトリに登録されるアイテムを検証し、それらが(科学に対する)正当な貢献であることを確認すること、と詳述されています。詳述されていると言っても奥歯にものが挟まったような言い方ですが、有り体に言えば、機関リポジトリに登録されたコンテンツがAI生成されたものではないことを検証しましょうね、ということでしょう。  その背景には以前に本連載でも取り上げたとおり、生成AIによって粗製乱造された論文などが世界中で増えている、という動向があります[2]。AI生成であることが発覚した場合や、論文工場の関与が確認された場合には論文が取り下げられる(撤回される)ことも多く、特に中国やインドでは、論文撤回の主な理由が近年では論文工場等による、組織的な機械生成論文であることの発覚になっている、とも指摘されています[3]。元々、論文の撤回自体、年々増えているものの、それでも2021年時点で論文の撤回率(その年発行の論文が後に撤回された割合)は0.12%、10,000本につき12本程度とごくまれな現象ではあったとのことですが[4]、果たして今後、どうなっていくでしょうか。  割合としては低いものの、そもそも世界の論文数自体が多いので、2021年出版論文の中で後に撤回されたものは6,000本以上にも及びました。それだけ数があれば当然、その中には機関リポジトリに登録されているものもあるでしょう。そこでCOAR声明が言う「信頼性を示す指標を改善する」や「人間の関与を維持する」という話、あるいは別の行動例である「信頼性を示す指標を改善する」(メタデータをキュレーションし、PIDを採用し、関連コンテンツときちんとリンクさせるなど)とも絡んでくるのですが、そうした「撤回」された論文について、機関リポジトリではどんな風に扱われているのでしょうか? 2.リポジトリにおける撤回・訂正論文  リポジトリにおける撤回された論文、もしくはなんらかの訂正が入った論文の扱いについては、2025年にフランス・国立土木学校(Ecole nationale des ponts et chaussées)のBordignon氏が、調査結果を論文にまとめて発表しています[5]。同氏はCrossRefとRetraction Watchが公開した2013年から2023年にかけての撤回・訂正論文のデータから、DOIの付与されている24,430本について、Unpaywallを使って世界中のオープンリポジトリでの登録状況を調べるとともに、フランスのHALについてはHALのAPIを使って、別途、登録状況を確認しています。さらにHAL登録論文に限定して、メタデータ情報や本文も確認して、どこかに撤回・訂正に関する情報が掲載されているかもチェックしました。  調査結果から、まずUnpaywallを用いたリポジトリ登録状況の確認からは、24,430本中、7,560本(約31%)がなんらかのオープンなリポジトリに登録されていました。お、けっこうな収録率!(なんで撤回論文の登録率が高くて喜んでいるんだという話ですが、悲しい性として、どんなものでもリポジトリ登録率が高いとうれしくなるのです) ただし、内訳を見ると圧倒的に多いのはPubMed(6,728本。ただ、PubMed自体はデータベースであってリポジトリではないので、PMCのことでしょうか?)とEurope PMC(3,951本。PubMedと足すと7,560本を超えますが、重複登録があるためと考えられます)で、機関リポジトリが強いわけではなさそうです。それでも重複も含めて、世界369のリポジトリに撤回・訂正論文が登録されていた、とのことでした。  もう一つのHALの調査では、撤回・訂正論文のうち141本について、HALに登録されていることが判明しました。さらにそれらの論文について、HAL上になんらかの形で撤回・訂正情報が掲載されているか確認したところ、残念ながら91%(128本)と、ほとんどの論文が、なんの情報も掲載されていませんでした。なんらかの問題があって撤回された論文であっても、HALを見ている人はそうとは知らずに利用する状態になっていたと言えます。  詳しく内訳を見ると、なんらかの情報が掲載されている場合、タイトルに撤回・訂正の情報を加えている場合が多く(11本)、それ以外の形での掲載は2本のみでした。また、撤回と訂正では撤回の方が情報を明示しているケースが多く(撤回論文87本中では13本、15%がHAL上にも撤回情報あり)、訂正はほとんど情報が明示されませんでした(訂正論文63本中、HALに情報があるのは1本のみ)。  撤回論文については、なんらかの問題があって撤回された(なんらかの研究上の欠陥があるとされた)論文であるにもかかわらず、気づかずなのか、あるいは意図的になのか、その後もその研究が参照され続け、引用もされ続けてしまうことで継続的に科学のサイクルにダメージを与えるという、いわゆる「引用汚染」といった問題もしばしば、指摘されます。HALの調査結果を見る限り、現在の機関リポジトリはこの引用汚染の一翼を担うものになってしまっていると言えそうです。Bordignon氏はこうしたリポジトリの状況について、学術雑誌が学術情報流通で果たすとされている4機能(登録、報知、保存、認証)[6]に関して学術雑誌とリポジトリを対比・検討しています。その検討によれば、登録(研究の先取権確立)についてはリポジトリ(この場合はプレプリント・サーバも含む)も学術雑誌も大差なく、報知(情報流通)や保存についてはむしろリポジトリの方が学術雑誌よりも長じているとしています。しかし認証(査読等により論文の質を保証する)についてはリポジトリは学術雑誌に大きく劣っており、それは単独で査読しているケースはあまりないのだから当然でもあるのですが、学術雑誌では撤回・訂正された論文でもリポジトリではそのままであるとなると、ますます「認証」機能の問題は深刻であることを指摘しています。 3.リポジトリは撤回にどう対処すべきか?  世界的な撤回論文数の増加を受け、近年ではBordignon氏以外にも、リポジトリと撤回論文の関わりに関する論考が出てきています。例えばインドのSubaveerapandiyan氏らの研究チームはインド[7]やイラン[8]の大学図書館員を対象に、論文の撤回と大学図書館員の役割に関する認識状況を問う質問紙調査を実施していますが、いずれもその背景には機関リポジトリ業務との関わり、つまり機関リポジトリという形で論文の保存・発信に関わる以上は撤回論文の扱いのことも考えなければいけない、という問題意識が述べられています。ちなみに調査の結果、インドの大学図書館員の間では、機関リポジトリ内での撤回論文を監視する、といった役割はそこまで重きが置かれていなかった一方、イランの大学図書館員は、約81%の回答者が図書館員は機関リポジトリにおける撤回論文を監視すべきとしており、また79%が撤回論文に関する研究データの適切な取り扱いも図書館員の役割と認識するなど、リポジトリにおける撤回論文・関連データの扱いにより高い問題意識を持っていたようです。論文撤回状況調査ではインド・イランとも撤回の多い国なのですが[4]、図書館員の意識にはやや差があるようで興味深いです。  しかし監視するのはいいとして、実際に撤回論文がリポジトリ内にあるのを見つけてしまった場合はどうしたらいいのでしょうか。再びBordignon氏の論考に戻ると、プライバシー侵害などの特殊なケースを除けば、撤回論文だからと言ってファイルごと取り下げる対応等は望ましくなく(学術雑誌においても撤回論文も本文の公開は続けるべきとされています)、撤回された論文であることをメタデータ・本文中などで表示できるようにすべきである、とされています。そして現状の機関リポジトリにおいてはそうした、撤回・訂正情報を学術雑誌からフィードバックする構造がなく、リポジトリは「一方通行」の情報発信になっていることをBordignon氏は問題視しています。  ちなみに日本の場合はどうかというと、少なくともJPCOARスキーマに撤回・訂正に関するフィールドはないかと思います……ないですよね? 日本の場合、マクロに見ると撤回件数はさほど多いわけではないのですが、ミクロに見ると、個人レベルでの論文撤回数トップランカーの多くは日本の研究者という話もあり―Retraction Watchのランキングでは2026年6月現在、撤回論文数上位2~4位、7位、11位、22~23位に日本の研究者がランクイン[9]―、決して撤回論文問題は他人事ではありません。  ただ、Bordignon氏の調査では日本のリポジトリについてはほとんど触れられていないので、まずは日本の機関リポジトリに現状、どれくらい撤回論文があるのか、というところを調べて見ることが必要でしょうか。……と、ここまで書いて、そういえば今年から自分も、論文の撤回等の動的変化に関する共同研究プロジェクトに参加していたことを思い出しました[10](表現上のレトリック等ではなく、本当にほとんど書き上げてから思い出しました……)。これは「調べて見る必要がありますね!」とかではなく、「お前がやれや!」という話では?? ……まあ手法はもう確立されていてあとはやるだけなんだし、じゃあ、やるかー……。結果についてはいずれどこかで公表すると思いますので、乞うご期待!(期待できるような明るい話ではなさそうな??) [1]”Navigating the Uneasy Interdependence of AI and Open Science”. COAR. 2026-03-03. https://coar-repositories.org/news-updates/navigating-the-uneasy-interdependence-of-ai-and-open-science/ , (参照 2026-06-09). [2] 佐藤翔. 生成AIによって「冗長な出版」が増えている?. JPCOARウェブマガジン. 2025-11-05. https://magazine.jpcoar.org/news/0e352104-59d2-4c26-942c-294e6faa1b5d , (参照 2026-06-09). [3] Saqr, K. Dissecting AI-related Paper Retraction Across Countries and Institutions. Preprints.org , 2026. https://doi.org/10.20944/preprints202601.0314.v1 , (参照2026-06-09). [4] Venturini, S. et al. The Retraction Epidemic in Science Across Publishers, Fields, and Countries. arXiv, 2026. https://doi.org/10.48550/arXiv.2604.02302 , (参照2026-06-09). [5] Bordignon, F. Moving Open Repositories out of the Blind Spot of Initiatives to Correct the Scholarly Record. Learned Publishing. 2025, vol.38, no.2, e1655. https://doi.org/10.1002/leap.1655 , (参照2026-06-09). [6] 佐藤翔. 学術情報流通の多様化:査読誌の「4機能」の変化. 情報の科学と技術. 2023, vol.73, no.1, p.2-8. https://doi.org/10.18919/jkg.73.1_2 , (参照2026-06-09). [7] Subaveerapandiyan, A. et al. Managing retracted articles: Awareness and responsibilities of library professionals. Journal of Information Science. 2025. https://doi.org/10.1177/01655515251389164 , (参照2026-06-09). [8] Subaveerapandiyan, A. et al. Library Professionals’ Roles in Addressing Article Retractions. Collection Management. 2026. https://doi.org/10.1080/01462679.2026.2675893 , (参照2026-06-09). [9] “The Retraction Watch Leaderboard”. Retraction Watch. https://retractionwatch.com/the-retraction-watch-leaderboard/ , (参照2026-06-09). [10] “学術情報の動的変化とウェブ上での参照スタンスを考慮した知識基盤に関する総合的研究”. KAKEN. https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-26K03247/ , (参照2026-06-09). 文:佐藤翔(同志社大学) 1985年生まれ。2012年度筑波大学大学院博士後期課程図書館情報メディア研究科修了。博士(図書館情報学)。2013年度より同志社大学助教。2018年度より同准教授。2024年度より同教授。 図書館情報学者としてあっちこっちのテーマに手を出していますが、博士論文は機関リポジトリの利用研究で取っており、学術情報流通/オープンアクセスは今も最も主たるテーマだと思っています。 学部生時代より図書館・図書館情報学的トピックを扱うブログ「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」を開始。現在は雑誌『ライブラリー・リソース・ガイド(LRG)』誌上で同名の連載を毎号執筆中。2026年4月、『教養としての査読 なぜ「論文」を信用できるのか』を刊行。査読制度を中心に学術情報流通を扱う本で、オープンアクセスの話もしています。本連載の内容も一部、反映されていたり……?   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

  • ダイヤモンドの原石は、われわれの手の中に! -オランダ・ドイツ出張報告記2025- | The diamond in the rough is in our hands! – Report on Business Trip to the Netherlands and Germany 2025 – | JPCOARウェブマガジン

    Report ダイヤモンドの原石は、われわれの手の中に! -オランダ・ドイツ出張報告記2025- | The diamond in the rough is in our hands! – Report on Business Trip to the Netherlands and Germany 2025 – 菊谷 智史 | Satoshi Kikutani / 村西 明日香 | Asuka Muranishi 26/7/16 大阪大学, JPCOAR国際連携対応タスクフォース | The University of Osaka, JPCOAR International Collaboration Task Force / 名古屋大学, JPCOAR国際連携対応タスクフォース | Nagoya University, JPCOAR International Collaboration Task Force 菊谷智史(きくたにさとし・大阪大学附属図書館箕面図書館課) 2016年12月大阪大学入職。2023年度から外国学図書館で多言語目録を担当している。言語は好きだが、色々な形の文字と目録ルールと格闘し、途方に暮れることも。心ある人たちの支えの中で何とかやっている。 村西明日香(むらにしあすか・名古屋大学附属図書館事務部東山地区図書課) 2009年4月名古屋大学入職。現在は法学図書室担当。この旅で買ってよかったものは、帰りの空港にて菊谷さんを付き合わせ、どれにしようかさんざん迷って購入したミッフィー。オランダの名産品が描かれたワンピースを着ていてとてもかわいいんです!!   本記事は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 ライセンス の下に提供されています。 ただし、記事中の図表及び第三者の出典が表示されている文章は CC BY の対象外です。 Previous Next

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